『────────俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ。』
概要
CV:梅原裕一郎
(幼少期:松田颯水)
本作の主人公にして、“小鬼を殺す者(ゴブリンスレイヤー)”の渾名を称する只人(ヒューム)の冒険者。
『辺境の街』を活動拠点としており、作中では最弱モンスターと言われている小鬼(ゴブリン)の退治依頼のみを単独で受諾し、数年に亘って淡々とゴブリンを狩り続けている変人。
冒険者としての等級は、在野における最高等級である第三位『銀等級』。
この等級に上り詰めたとは言っても、彼にしてみれば「ギルドが勝手に決めた事」であるらしく、小鬼退治に夢中で昇級審査に積極的でなかったのか、あるいはその功績のみを純粋に評価された結果として現在の階級に収まっていると思われたが、漫画版イヤーワンにて「ゴブリン退治以外をしなければ昇級できないならそれでもいいが、世話になっている受付嬢の顔を立てて審査を受けるし、昇級できるなら承る」というスタンスだった事が判明した(その上で、昇級しても変わらずゴブリン退治のみし続ける事を査察官に明言した)。
同業の冒険者たちからは、「雑魚狩り専門」というレッテルと不気味な外見や素行から実力は低く見られがちで、同階級はおろか格下の冒険者からも快く思われず、嘲笑されナメられている事が少なくない。
彼がゴブリン退治を始めたばかりの頃を描いたイヤーワンにおいては、「楽な依頼ばかりをこなして昇格しようとしている」「新人が経験を積む小鬼退治の依頼を根こそぎ取って行ってしまっている」と陰口をたたかれていた(書籍1巻当初もそれに近い状態だった)。
しかし物語の進行と共に実力や人柄を理解されるようになり、偏屈な人物扱いであることに変わりはないものの頼られたり信用されていることがうかがえる描写は増えている。
容姿・装備
左腕に小振りな円盾を括り付けており、雑嚢にはゴブリン退治に使用する小道具が詰まっている。
用心を兼ねて鎧と鉄兜を外す事はほとんどなく、彼が周囲に素顔をさらす事も滅多にない。
食事の時ですら兜のまま、面頬の隙間から器用に食べている。兜を脱いだ時は、他の冒険者たちが大騒ぎするほどの珍事らしい。
実はまだ20歳。その為子供に『おっさん』と呼ばれた時は即座に否定した。
素顔は意外に美男子らしく、一部では正体はゴブリンであるとか、実は女性であるとか憶測していた者達もいた模様で、彼の知らぬ所で賭けの対象になっていた。
ゴブリンは主に狭い洞窟や古い遺跡を住処とする故、武器は中途半端な刃渡りの剣を好んで使用する。血脂に濡れて斬れ味が落ちた場合は投擲や投棄も辞さないため、武器屋で購入する際も安価な粗雑モノを選んで仕入れる。
小円盾は暗い洞窟内で松明を持つ為に腕へ括り付けており、防御は勿論、状況次第ではこちらも武器として振るい、ゴブリンを撲殺する。叩き切るような使い方もしており、盾の縁を研ぐなどしてある程度の切れ味を持たせている(この辺りは外伝:イヤーワンにてそうするようになった経緯が描かれている)。
また、ゴブリンの使う剣や弓、あるいは棍棒や石斧といった原始的な武器をも殺して奪い、使い潰した手持ちの武器と交換して代用するなど、略奪種族たるゴブリンの性質を最大限に利用している。
臭いを察知されないために装備の汚れ落としは一切行っておらず、破損した場合も滅多に買い替えはせず修理に出す。
装備品にへこみなどが見られる場合は自身で修繕することもあり、防具の買い替えの際は“安物しか買わないくせに注文が多い”点をしばしば工房の翁に皮肉られている。
そのため鎧兜は常に薄汚れており、新人冒険者の方がまだまともな格好をしていると指摘される事もしばしば。初見の者からはリビングメイルやさまようよろい、亡者の類などに見間違われる事すらある。
やる夫スレ版で当てられたAAはさまようよろいといった戦士系である他、兜に「鬼殺」の文字が入れられている。小説版のイラストでは文字は無い。小説版でも元ネタのさまようよろいはネタ元としてしばしば使われている。
なお、彼のイラストでは兜の奥で赤く輝く眼光が描かれることが多いが、書籍4巻によると実際に瞳の色は赤な模様。
イヤーワンでは革鎧のデザインと色が現在のものと異なる。首から背中にかけて黒い羽毛で覆われており、腰には革製の腰巻きが巻かれている。鎧下には針金製の帷子を装備。また手足の肌の露出が多い。
兜も角があり、付け毛が長い。角は両方共にゴブリンに掴まれたのを振り払う際に折れてしまった(最初の冒険で左の角が、村の防衛戦で右の角が折れた)。角の重量が無い分都合が良いためか、スペアの兜も同様に角を折っている。
兜については武器屋から「顔を覚えて貰うつもりがないなら兜でも被れ」と勧められたためである。
人物
善悪に偏らない中庸な性質で、無愛想且つ大真面目。口数もけして多くはなく話し方は無機質で淡々としており、およそ巫山戯などは似合わない。
ぶっきらぼうで、他人との日常的な会話では「ああ」、「いや」、「そうか」、「そうだな」だけで返答としてしまう事もしばしば。更には面倒くさくなると露骨に話題を切り替えようとする悪癖まであるが、女神官や妖精弓手から指摘されたのを機に、少しずつコミュニケーションの改善の努力はしている模様。
最低限のことしか自分からは話さず、ゴブリン以外の案件には基本的に興味を示さない(良く言えば)ストイックな性格。下手をすれば人として壊れ、乾いている印象さえ受ける。
ギルドに所属した上での冒険者という身分も、ゴブリン退治に都合が良い為所属しているようなもので、基本的には冒険者ではなく「ゴブリンスレイヤー」を自称している。
本人にとってはゴブリン退治の為に必要な事をしているだけだが、周囲の多くからは頑固で偏屈な変人・狂人と思われている。
事実、これまでゴブリン殺しに特化し過ぎた生き方をしてきた為に、過去の復讐や村の被害者を減らしたい(という想いはまだあるが)などの目的を通り越し、「ゴブリンを殺す」事自体が使命感を越えた一種の“愉悦”や“趣味”、“生きがい”に近い意味を持った生涯の“目的”となってしまっている節がある。
とはいえ仲間達との共闘や交流から、後述する元々幼少の頃から持っていた冒険者が行うような冒険に対しても多少なりとも興味を示していたりすることが本編や外部出演等でも描写されている。
ゴブリン殲滅に対して常軌を逸するほどの執着を持つ一方、ゴブリン以外の怪物に対しては関心が無く、やむなく戦う事になっても「邪魔なその他」として名前すら覚えようとしない。
実際、経緯が複雑な事件に直面した時は『ゴブリンを相手にした方が気楽だ』と心中でぼやき、話がゴブリン退治に収束した途端『やっと話が単純になってきた』と安堵した様子を見せていた。
しかし各地のゴブリンが他のモンスターと組む頻度が増えてからは、最低限の知識くらいは必要性を感じて渋々覚えるようになり、仲間達に驚かれた。
また、ドラゴンのような寒村の子供でも知れ渡るくらい有名なモンスターなら流石に知っている(ゴブリン退治よりも更に簡単な下水道の鼠退治も認知しており、書籍2巻では水の街でジャイアント・ラットの討伐依頼がないことを確認している)。
また、『ゴブリンは最弱の怪物』という認識には理解を示しており、安物の武具でも倒せるゴブリンに比べ、再生能力や桁違いの体力と能力を持つ他の怪物に対しては、退治するためにかかる準備と費用、手間から相手をすること事態面倒くさがっている節がある。
実際劇中において、オーガや大目玉、シーサーペントなどと対峙した際は正面からまともに戦っても歯が立たず、下記の奇策で辛くも逆転勝利を掴み取っている。
ゴブリンと呼ばれるものは問答無用で鏖殺するものと思われがちだが、民衆から(時に悪意を持って)そう呼ばれている者に関しては風評を鵜呑みにせず、しかるべき対応を行っている(例を挙げると「海ゴブリン」とあだ名されている半魚人族や、褐色の肌をしている事から「ゴブリンの娘」と噂を立てられた葡萄尼僧など)。
ボイスドラマにて、「依頼人の誤認の可能性があるため、まず(自分が知っている)ゴブリンがいるかどうかを確認する」事を前提でやっていると語っており、作中でもゴブリンを見かけたらすぐに殺そうとするのではなく、冷静に状況を観察してから仕掛けている。
それ故、敵性勢力のやり口があまりにもお粗末な事が分かると、それが同じヒトであろうと「小鬼並」と引き合いに出して毒づく事もしばしば。
他人からの評価もほとんどの場合意に介さずで、悪口や陰口なども特に気にせず、余程の悪意や直接的な害意がない限りは不条理に対して根に持つことをしない。
また、たとえ幼馴染や仲間に害を及ぼそうとした者の親族であっても、ゴブリンに殺されて良いとは考えず、乞われれば救いの手を差し伸べる(一応、相手に誠意があるかの確認はするが)。
ぶっきらぼうではあるが根は真面目で質問には実直に応え、受付嬢などに叱られた時は戸惑ったりすることも。
仲間内からは「ボンクラで放っておけない」「意外と周りを見ているしどこかわかりやすい」「約束事はきちんと守ろうと努力するあたり、良い意味でも悪い意味でも律儀」と言われている。
実際のところは、(内心の描写や立ち振る舞いを見るに)他人のことなどどうでも良いというような身勝手な性格には程遠く、相手を思いやった行動を取っていることも多い。
ただ、自身が他人からの評価はどうでもよいがためにマイペースで、かつ無口であるためそれがものすごく分かりにくい(そういったところで女神官などの仲間からは「仕方のない人」と呆れられている。)
内心描写を見る限り、自己評価は低く謙虚とも評せる思考をしている。
ただし礼儀作法などは「よくわからん」としており、どこであってもズカズカと足を踏み入れ、立場のある相手との会話でも敬語・丁寧語の類を使う描写はない。コミュニケーションも苦手で、思考中は無言になるタイプ。
相手と話している最中であっても考え事をしてしまい(相手からふられた話に対して彼なりに真面目に思考しているのだが)、兜により表情が見えないこともあって相手からは突然黙り込む姿に引かれてしまったりもしている。
態度には全く出さないが、彼なりに仲間に対する情や感謝の気持ちは持ち合わせており、逆に他人を踏み台としか考えていない冒険者には淡々とだが辛辣なコメントを下した事もある。
小鬼禍(ゴブリンハザード)が個人や村単位にとっての“大変な害悪”ではあっても、国全体にとって見れば“重大な脅威”ではないため、冒険者の間でも実入りの少なさから敬遠されがちなゴブリンの退治依頼に頭を悩ませるギルド(特に受付嬢)からは非常に感謝されている。
また、報酬の多寡に関わらず自らゴブリン討伐を買って出る彼の存在は、ゴブリンの跋扈に怯える貧しい村落などにとっては救世主にも等しく、不気味な外見に反して庶民からの評判は良い。
書籍5巻ではゴブリン退治の傍ら、ゴブリンの襲撃を受けた寒村のケアを手際よく行い、村民の負担を和らげる事に努めるといった、銀等級に違わぬ働きぶりを見せた。
崇められている訳ではないが、その活躍は彼自身知らぬ間に吟遊詩人の創作歌のモデルとして起用されていたほどであり、“辺境最強”“辺境最高”に並び、“辺境最優”の冒険者と称賛されることもある。
料理は出来なくもないが下手っぴ。幼い頃に姉がよく作ってくれたこともあり、好きな食事はシチューである。
また、知識欲が旺盛で、『世の中、俺の知らぬ事を知っている奴の方が多い』と言い、牛飼娘や魔女、炭鉱夫など、いろんな人から様々な知識を得ている。……尤も、ただ単にゴブリン退治に使えそうな知識だからだという可能性は否定できない。
書籍11巻まで、西方辺境の国から出たことは一度もなかったようである。
書籍10巻にて、師匠からの縁で影の中の仕掛人を雇う『ならず者の集まり(ローグ・ギルド)』にツテがいる事が判明する(ただし面識はない)。仁義の切る作法も心得ている。
書籍14巻にて、北方辺境の蛮族の英雄譚が好きだった事が判明し、とある依頼でかの部族の元を訪れた時は、普段の彼からは考えられないくらい、比較的上機嫌で興味津々な様子を見せた。
実力
『無理や無茶をして勝てるならいくらでもするが、それで上手くいくなら、苦労はしない。』
鎧を日常的に着込むため、ガタイはしっかりしていても肌は色白。筋骨隆々ではないが十分に鍛えられた肉体と体力を持つ。
呪文は使えないが、数々の道具や伝聞による幅広い知識、剣術や弓術、投石紐といった飛び道具の扱いなど、ゴブリン退治に有効な攻撃手段は一通り平均以上の技量でこなせる。
単独で活動する事が多かった事情もあり、本職の冒険者ほどではないものの、野伏(レンジャー)や斥候(スカウト)の心得もある。
ただし同じ銀等級と比較した場合、冒険者としての特筆すべき技術や才能を持っている訳ではなく、上述する戦闘技能も地道な訓練の末に獲得したものである(強いて挙げるならば、投擲は幼少時代からの得意技ではあった)。
等級相応の実戦経験と、それに裏付けられた高い戦術眼を持っているものの、純粋な戦闘能力自体は等級に見合うほどのものではなく、彼自身もそれを自覚している。
とある敵は剣を交えた際、彼の剣の腕前を「第六位の翠玉等級相当」と評した(あくまでも敵の主観による評価である)。
一線級の冒険者は貴重な鉱物で製作・強化された上質の装備を所持しており、場合によってはマジックアイテム化させるなどで更に性能を高めることもあり、本人の実力だけでなくこれらも戦闘能力の向上に大きく寄与している。
このため、ゴブリンスレイヤーの戦闘能力が等級に見合わない理由の一つとしては、安物の装備ばかり使っているという点も挙げられる。
普段は一方的に屠っているゴブリン相手ですら、単純な削り合いでは数の暴力の前に劣勢に追い込まれる事も多く、強敵が相手の時はもちろん、たとえ格下でも油断はせず、味方側に犠牲を出さずに確実に状況を打破する為ならば、不意討ちや地形利用を始めとした搦め手をも躊躇せず行う。
つまりは、才能の無い凡人が小鬼退治に必要な技能のみをひたすら鍛えた結果が現在の“彼”であり、トータルで見れば満遍なく鍛え上げた器用貧乏タイプとも解釈出来る。
作中では徹底して対ゴブリンに特化した戦い方を誰よりも熟知しており、その生態系を把握したうえで十全に装備を整え、戦略を練り、極めて合理的かつ効率的にゴブリンを抹殺する。
ゴブリンの敏感な嗅覚を誤魔化す為、仕留めた死骸の血を自身や仲間にかけるという事も彼にとっては茶飯事である。
不意打ちや騙し討ちに限らず、罠の設置に毒や火の使用などの手段も有効なら躊躇わず用い、安価な剣やゴブリンの武器を数回使っては投擲するを繰り返す(冒険者としては)型破りの戦法を執る。
ゴブリン退治の価値や武具を奪われた際の危惧、単純な効果対費用からして魔剣の類は全く使わず、所持もしないしそもそも眼中にない。
およそ“冒険”には使わないような道具を雑嚢に敷き詰めており、意外にも便利なそれらを使い分ける事で窮地を打開する場合が多い。所作封じの催涙弾などは自前で調合し作っている。
メタ的に言えば、TRPGでマンチキンが爆発物や火器などをあの手この手で持ち込もうとする感覚に近い。良い子はGMや仲間とよく相談しましょう。
一党(パーティー)で活動するようになってからは一党の頭目として指示を出したり、斥候(スカウト)及び戦士(ファイター)として前衛を担うようにもなる。
ゴブリン退治における彼の最大の武器とは、ゴブリンという種族に対する理解と徹底した容赦の無さや執着心、奴らを決して侮らない用心深さ(本人曰く「奴らは馬鹿だが間抜けじゃない」)。
そしてゴブリンのもたらした災禍が見せる、反吐が出るほどの悲惨な現実と悪意。これを真っ向から直視する、他の“冒険者”とは別の意味でかけ離れた ある種の強靭な精神性である。
どんな窮地にあっても一切天運に頼る事は無く、知略・戦略を駆使して徹底的に偶然性を排除したその戦いは、神々すらその運命・宿命に干渉する事が出来ないという(メタ的にいえば、どんな状況でも"固定値による確実な成功"を狙うスタイルといえる)。
ちなみに、書籍13巻にて受付嬢から、迷宮競技のトラップ考案を依頼された際、悪辣なデストラップを仕掛けようとして受付嬢に止められた(注:初心者向けの競技です)。
受付嬢の監視もあって比較的安全なトラップになったが、それでも初見殺しなのには変わらなかった。
一党結成後は蜥蜴僧侶に地図役(マッパー)を任せることが多いが、方向感覚や距離感に優れているらしく、槍使いも「この男の頭には方位磁石か六分儀が収まっている」と評し認めている。
経緯
10年前の夏。かつて辺境の町の付近で発生した小鬼禍(ゴブリンハザード)により壊滅した、とある村の生き残り。姉は子供達に読み書きを教える先生、父は腕の良い猟師、母は薬師だった。
物心つく前に両親を亡くし、以来唯一の家族であった実姉が目の前でゴブリンに凌辱され惨殺される光景を目の当たりにし、この一件からゴブリンに深い憎悪を抱き、ゴブリンという種族そのものを根絶やしにすることを誓い、災禍から5年もの間消息を絶つ。
(イヤーワンで明らかになったのは、実際のところは彼の師匠(?)である「先生」に拉致に近い形で助けられ、彼の良いパシリとして使われていたようだった。)
幼少のころは白金や金の冒険者の英雄譚や冒険譚に憧れ、自身もそうなりたいと願うごく普通の少年だったが、歳を重ね己の才能や境遇を知るにつれ難しいことだと理解するようになり、口に出さなくなった。
そして辺境の街に忽然と姿を現して冒険者となり、そこからひたすらほぼ休み無しの単独(ソロ)でゴブリン退治に臨んでいた。
現在は、幼馴染である牛飼娘の伯父が営む郊外の牧場に下宿して定住している。また納屋を借りて倉庫兼作業場として利用している(そのまま寝泊まりしていることも多い)。牧場は勿論のこと、町周辺の見廻りや罠設置など、ゴブリンの襲撃を常に警戒し備えている。
そうして冒険者として5年が経った頃、あるゴブリン退治で女神官の窮地を救って以来頻繁に同行するようになる。
妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶らとは、世間が古代の魔神王の復活を起因とする悪魔の増加に窮していた時分に、近隣種族の会合場所付近にて活発化したゴブリンの退治依頼をきっかけとして即席の一党を組み、この一件以降もなにかと彼を気にかけ、しばしば行動を共にするようになった。
未だに新参冒険者からは白い目で見られているが、ある一件で槍使いや重戦士といった熟練者達とは距離を縮めて良き知人となった。自身の悪評を気にしてはいないが自覚はしていた為、彼らが自分の協力要請を受けてくれた事は意外に思っていた模様。
現在では『律儀なので、声をかければ返事くらいはしてくれる』という事で、気軽に声をかける冒険者も増えてきている。
また、現在少なくとも四人の女性から想いを寄せられているが、どう対応するべきか苦慮している描写も見受けられる。
現在でも冒険者になりたいという望み自体は完全に死んでおらず、ゴブリンの絡まない冒険も少しずつ楽しむことが出来るようになってきてはいるが、それ以上にゴブリンという種族が存在していることに対する恐怖と不安、殲滅しなければならないという使命感から、冒険者には到底なれていないとも感じている。
その武勇伝(?)
時にはゴブリン相手にはもったいなさ過ぎる稀少アイテムを惜しげなく使ってしまうことさえあり、高圧水流や粉塵爆発など、作中の文明からして(読者も)予想できないような手段も取る。
例(書籍10巻まで):
- ゴブリンどもが潜伏する洞窟を爆破して生き埋めにする(無論、巻き込まれる者がいないという裏付けが取れればだが)。
- 砦の外から大量の火矢を放って放火し、女神官の《聖壁》で閉じ込めて蒸し焼きにする。
- 巣穴近くの川や池から水を引っ張って水攻めする。
- 近くに川や池がない場合、貴重な転移魔法の巻物を海中に繋げて水攻めする。または水圧を利用したウォーターカッターで相手を魔法ごと両断する。
- 暗い下水道の中、沼竜の尻尾に女神官の《聖光》を放ち、それを人間達の松明の灯りと錯覚させて誘き寄せ、沼竜の餌にする(ちなみに、沼竜の飼い主は剣の乙女)。
- 女神官の《聖壁》を二重に張らせて相手をプレスする(のちに、元々は三角柱状に閉じ込めて火炎瓶などで焼き殺すつもりだったと判明)。
- ゴブリンが潜む遺跡に毒気の素を投げ入れる。
- 保存食用の干し魚の激臭を煙幕代わりに燻す。
- 矢避けの魔法で飛び道具が効かない相手に、特殊な『剣』を投げて攻撃。
- 数多の魔物と罠が待ち受ける推定60階相当の塔を、外壁を登攀して攻略。
- 『言葉を持つ者』の攻撃を無効化する敵に対して、高所から突き落とす事を提案。
- 鏃を緩めた矢で射掛け傷口に鏃が残るようにして、ゴブリンの巣で疫病を蔓延させようとする。
- 味方の魔法で雪崩を起こしてゴブリンどもを殲滅。自らは水中呼吸用アイテムで窒息を防ぐ。
- 再生能力を持つトロルを、水の街で教わった『あいすくりん』の作り方を応用し凍結させる。
- 水棲モンスターに《水歩》の術をかけて水中から追い出し、窒息させる。
- 転移の巻物を今度は気圧差が発生する程の上空に繋げ、ゴブリンどもを吸い飛ばす。
- 池の氷を削り、牛飼娘に磨かせてレンズにし、廃村のそこかしこに仕掛けて太陽光で家を焼く。それによって生じた煙で敵の暗視能力を封じる。
- 鋭く尖った小石をまきびしの様にばらまく。
- オーガとゴブリンどもを凍った池の上に誘導し、オーガの《火球》の熱を利用して氷を溶かし、まとめて水没させる。
- 影の中の仕掛人を雇って地母神の悪評を広める者に対して、同様に仕掛人を雇って暗躍させる(仕掛人がどう動くかまでは知らないが)。
イヤーワンでは、ゴブリンスレイヤーが現在の装備や戦闘スタイルに至った経緯が書かれている。
特に最初の方では経験・知識不足、今の彼では考えられない失敗で何度も死にかけている。
例:
- 円盾の持ち手のせいで左手で松明が持てない事に、ゴブリンの巣に突入する直前に気付く。
- 横穴を見逃し、背後から奇襲を受ける。
- アイテムの収納を雑嚢ではなく背中に背負うずだ袋にしたため、転倒した時にポーションと毒消しの瓶が割れてしまう。
- 狭い洞窟内にも拘わらず、長剣を使っていたため剣が岩肌に引っかかってしまう(即座に、壁を背にして刺突攻撃する戦法に切り替えた)。
- 油断していた所を生き残りに急襲され、短剣の毒で死にかける(前述の通り毒消しの瓶が割れてしまったため、袋の布地に付着した薬を必死に吸って事なきを得た)。
- 自分の知らない上位種に負けそうになる(当時はゴブリンシャーマンの事を知らず、ゴブリンが魔法を使うとは思っていなかった)。
- ホブを仕留めたと思い込み、油断して不意討ちを食らってしまう。
- ゴブリンの大群を相手にソロで戦い続けたため、武器が刃こぼれ・破損し、袋叩きにされる。
このような苦い経験と失敗があるからこそ、現在の彼が存在している。
後に孤雷の術士の依頼で彼女と共にゴブリンの調査を行い、ゴブリンの生態、体の構造、上位種や職業、肉の盾の存在を知ることとなる。……ついでに内臓をえぐり出しての効率のいい臭い消しの方法も学んだ。
とはいえ、冒険者らしからぬダーティなマンチプレイなので、上記の手段も土砂崩れ、山火事、土壌汚染や土壌変化などのデメリットも考えられ、いくらゴブリン退治のためとはいえ、下手をすればゴブリン以上の災厄として捉えられかねない。
実際、街の重要施設である地下水道に大穴を開けようと考えた事があり、当然そんな事をすれば下水が氾濫して海が汚れるなどの被害が出るため、鉱人道士に怒鳴られた事がある。
しかし、そのマンチプレイで危機を乗り越えてきたのは確かなので、仲間からは『ゴブリンスレイヤーなら何かやらかしてくれる』と呆れと諦めと皮肉と非難が込められたある種の期待を寄せられている。妖精弓手も致し方ない状況であれば、マンチ技を使う許可を出している。
また、ゴブリンスレイヤー自身も、使ってみてデメリットや危険性が大きすぎる策(例:粉塵爆発)は以後使用しないようにしている。
原作者も『良い子(純粋にTRPGをプレイしたい人)は真似しないでね』とコメントしている。
なお、上記の様に彼の奇策の多くは他人から伝え聞いた話・知識・技術が元であり、彼自身が考えた手段は臭い消しや装備の改造、ゴブリンから武器を奪う事などと結構少ない(そしてどれも、自身が死にかけた極限状態で思い付いた事)。
さらに言えば、本編で彼が披露した罠の数々は姉から学んだもの(遡れば猟師の父親から学んだらしい)。
オーガに向かって言い放った『お前なぞよりもゴブリンの方がよほど手強い』という台詞だが、これは『オーガよりゴブリンの方が強い』という意味ではなく、
ボスキャラであるため1体倒せば解決になるオーガと違い、何百体何千体倒しても終わりが見えないほどのゴブリンの数の多さ、
もしくは生き残りの経験がすぐさま群れ全体に還元されるほどのゴブリンの学習能力の高さの事を理由にしていると捉える事ができる。
また、ゴブリン被害に対して国が動かない事を理解しているがそれに対して明確に不平不満を口にした様子はない(不平不満を言うのは大体妖精弓手辺りである)。
書籍8巻では国王にゴブリン対策の改善を頼めるチャンスを得たにも拘わらず、ゴブリン退治の報酬分だけ受け取って辺境の街に帰ってしまう。
ゴブリン退治に失敗した冒険者の事を『良くある事』だと理解しつつも、それはただ運が悪かっただけの事で、常にでも頻繁にでもないとも理解している。そのため、生き延びてる自分が彼らより優れてるなどとは微塵にも思っていない(馬を囮にゴブリンの襲撃を逃れた際は、馬を案ずる牛飼娘を見て、馬が囮になって良かったと思っていた自分を心の中で責めていた)。
だからこそ、ゴブリンに捕らわれた女性を生きていれば救出するし、死んでいれば認識票くらいは持ち帰ろうとする。
女神官と初めて出会った時にも、彼女達が横穴を見逃した事を『新人がよくやるミス』だと説明し、その後の台詞もミスを犯した彼女達を批判している様子が見られない。
読者・視聴者の中にはゴブリンに対して何も対策しない四方世界の住民を無能と蔑む人もいると思われる。
しかし、誰よりもゴブリンの生態と恐ろしさを理解しているゴブリンスレイヤーは、ゴブリン対策しない国や冒険者に不満を言っていない。周囲に対して必要以上にゴブリン対策を強いろうとしないし、ゴブリンの危険性を無理矢理広めようともしない(ボイスドラマでは「(自分はともかく)皆がゴブリン退治ばかりすればいいわけではない」と発言している)。
何故ならゴブリンだけを見て、ゴブリンの危機を声高々に叫ぶ者は、いささか視野が狭くなっている事を彼は分かっているからだ。
そう考えれば妖精弓手との初対面時の「他を当たれ、ゴブリン以外に興味はない」という発言も、槍使いや重戦士という適任がいるという前提での発言とも捉えられる(後の鉱人導士の発言にもあるが、本題はゴブリン退治であり、妖精弓手が回りくどかっただけである。
それに上記の実力の項でも挙げたが、ゴブリン退治に特化したゴブリンスレイヤーに魔神退治を依頼するのは酷であり、魔神の話に興味を示さないのも無理はない。
また、書籍11巻にて『他の冒険者が魔神と戦っている間、小鬼どもの相手をするのが俺の務めだ』と発言している。
他の冒険者達が他の魔物と戦ってくれるからこそ、ゴブリンスレイヤーはゴブリン退治に専念できるし、彼がゴブリン退治してくれるからこそ、他の冒険者や王国や勇者達が魔神を始めとした様々な脅威を相手にできると考えられる、
余談
当然ながら、他作品の善良なゴブリンに対してゴブリンスレイヤーを持ち出すのは、両作品にとってスゴクシツレイに当たる。
原作者も「(善良なゴブリンを出すシナリオにするなら)仲間がゴブリンスレイヤーを説得して、助ける話に持っていく(意訳)」と語っている。
……もっとも、彼の世界のゴブリンは100%の純粋悪だからこそ、そんな展開は決して起こりえず、彼の活躍も活きるのだが。
劇中でもゴブリンスレイヤーは「自分が何者かわかっているならそもそも人前に出ようとしない。ニコニコした顔で友好的な態度を見せてきたら、何かを企んでいるに違いない(意訳)」と結論付けている。上述の原作者のコメントもその後で「全員がゴブリンを駆除するのに賛成したら?その時はゴブリンはノーフューチャーだ」と断じている。
関連イラスト
関連タグ
ゴブリンスレイヤー ダークヒーロー 復讐鬼 一級フラグ建築士
女神官(ゴブリンスレイヤー) 牛飼娘 受付嬢(ゴブリンスレイヤー)
ベル・クラネル・・・同じレーベルの作品の冒険者主人公。中の人は槍使いと同じであり劇中で使用装備を尋ね彼がナイフと答えた時「槍ではないのか...」、という会話がある。両親がすでにおらず、ただ1人の身寄りも居なくなった過去を持ち、年上の女性に好かれやすいという共通点あり。アプリ『メモリア・フレーゼ』で両作品がコラボした際のストーリーにて、女神官に代わってゴブリンスレイヤーとコンビを組んだ(女神官ははぐれて妖精弓手と共に別行動を取っていたため)。
以下、アプリの若干のネタバレ有り
お人好し、純粋、疑うことを知らないというゴブリンスレイヤーとは完全に真逆な性格をしているが、互いに人の良さを持ち合わせていたおかげか作中ではウマがあっていた。事実、初めこそベルはゴブスレの用心深さに面食らっていたもののすぐに順応し、ゴブリンスレイヤーもベルに対して撃てる魔法の弾数に驚いたり、「初めてのゴブリン退治でこれなら、俺よりよほど上だ」と素直に褒めていた。そして中盤の語らいにて、ゴブスレはベルの英雄になりたいという話を聴いて、「俺は冒険者になりたかった」という本音を打ち明けた。すぐにゴブスレ自身がはぐらかしたが、「お前なら(英雄に)なれる…気がする」という不器用ながらも応援するそぶりを見せた。
このように、ベルは本編では滅多に自分を見せないゴブスレの珍しい一面をたくさん引き出した稀有な存在であり戦友の様な間柄になった。最終的にお互い元の世界へ戻り別れたが、また出会うときがいずれ訪れるかもしれない…