曖昧さ回避
1.ワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball Classic)の略称。
アメリカの大リーグ機構(MLB)とその選手会が主催する、野球の国・地域別国際大会の略称。
特に野球の盛んな日本ではツール・ド・フランス、ラグビーワールドカップを上回る人気を持つ。詳細は本項で解説。
2.世界ボクシング評議会(World Boxing Council)の略称。
3.セガの競馬メダルゲーム「スターホース」に登場する架空のレースシリーズである「ワールドブリーダーズカップ」(WORLD BREEDER'S CUP)の略称。
通常のG1レースと異なり出走するには所定の条件が必要。
上位シリーズであるSWBCもあり、そのレースにはサラブレッド三大始祖のダーレーアラビアン、ゴドルフィンバルブ、バイアリータークをはじめとしたさまざまな名馬も参戦する。
なお開催される競馬場はスイスのサンモリッツ競馬場を除いてすべてスターホースオリジナルの架空の競馬場である。
4.スマホゲーム「ウマ娘プリティーダービー」のグランドマスターズに登場する、前述の「3」を基にしたレースで、クラシック級終了時に開催される。
なお開催されるレースコースはすべて実在の競馬場である。
5.ソーシャルゲーム「シンデレラナイン」で開催されていたイベント「ワールドベースボールシンデレラ」の略称。
概要
MLBの海外市場の開拓戦略の一環として、野球の魅力を世界に広める目的で2006年より開催。2009年に第2回が開催以降4年ごとに開かれている。
世界野球ソフトボール連盟(WBSC)公認の野球の世界一決定戦である。
第1回、第2回大会は日本が連続優勝し、第3回大会はドミニカ共和国、第4回大会は野球の本場であるアメリカ合衆国が優勝した。第5回大会は、「漫画や映画でも絶対に描けない」とまで言われた程の劇的な試合運びを重ねて2大会連続3位を経た日本が3大会ぶりに王座を奪還した。
2012年に野球が夏季オリンピック種目から外された(その後、東京五輪で一時的に復帰するも、パリ五輪で再び除外、2028年のロサンゼルスオリンピックで再度復帰予定)ため、これにかわる野球の世界大会として特に野球の盛んな北中米や極東地域で関心が高まった。
関連大会
2015年からは、WBC開催の中間年にWBSCが野球の世界ランキング上位12チームによる国際大会「プレミア12」を開いている。
また、2017年から定期的に開催されている「アジアプロ野球チャンピオンシップ」は、同年開催のWBC第4回大会で日本も3位で終えた事を始めとしたアジア勢が不振に終わったことを受け、アジア圏の野球レベルの向上を目的に開催されるようになったという経緯がある。
参加国 (尚、3位、4位についてはリーグの勝敗数で反映される事とする。)
2006(第1回大会)
第1回試合結果
- 優勝…日本(初優勝)
- 準優勝…キューバ
- 3位…韓国
- 4位…ドミニカ共和国
2009年(第2回大会)
A組 | 中国 | チャイニーズタイペイ | 日本 | 韓国 |
---|---|---|---|---|
B組 | オーストラリア | キューバ | メキシコ | 南アフリカ |
C組 | カナダ | イタリア | アメリカ | ベネズエラ |
D組 | ドミニカ共和国 | オランダ | パナマ | プエルトリコ |
第2回試合結果
- 優勝…日本
- 準優勝…韓国
- 3位…ベネズエラ
- 4位…アメリカ
2013年(第3回大会)
(この年から予選がスタート)
予選ラウンド1組 | スペイン | フランス | イスラエル | 南アフリカ |
---|---|---|---|---|
予選ラウンド2組 | カナダ | チェコ | ドイツ | イギリス |
予選ラウンド3組 | ブラジル | コロンビア | ニカラグア | パナマ |
予選ラウンド4組 | ニュージーランド | フィリピン | タイ | チャイニーズタイペイ |
本戦A組 | 日本 | キューバ | 中国 | ブラジル |
---|---|---|---|---|
本戦B組 | 韓国 | オランダ | オーストラリア | チャイニーズタイペイ |
本戦C組 | ベネズエラ | プエルトリコ | ドミニカ共和国 | スペイン |
本戦D組 | アメリカ | メキシコ | イタリア | カナダ |
第3回試合結果
- 優勝…ドミニカ共和国
- 準優勝…プエルトリコ
- 3位…日本
- 4位…オランダ
2017年(第4回大会)
予選ラウンド1組 | オーストラリア | ニュージーランド | フィリピン | 南アフリカ |
---|---|---|---|---|
予選ラウンド2組 | メキシコ | チェコ | ドイツ | ニカラグア |
予選ラウンド3組 | コロンビア | パナマ | フランス | スペイン |
予選ラウンド4組 | ブラジル | イギリス | イスラエル | パキスタン |
本戦A組 | オランダ | チャイニーズタイペイ | 韓国 | イスラエル |
---|---|---|---|---|
本戦B組 | 日本 | キューバ | 中国 | オーストラリア |
本戦C組 | ドミニカ共和国 | アメリカ | カナダ | コロンビア |
本戦D組 | プエルトリコ | イタリア | ベネズエラ | メキシコ |
第4回試合結果
- 優勝…アメリカ
- 準優勝…プエルトリコ
- 3位…日本
- 4位…オランダ
2023年(第5回大会)
予選A組 | ドイツ | チェコ | スペイン | イギリス | フランス | 南アフリカ |
---|---|---|---|---|---|---|
予選B組 | パナマ | ニカラグア | ブラジル | アルゼンチン | パキスタン | ニュージーランド |
本選進出
予選A組 | イギリス(1位通過) | チェコ(敗者復活) |
---|---|---|
予選B組 | パナマ(1位通過) | ニカラグア(敗者復活) |
本戦A組 | チャイニーズタイペイ | オランダ | キューバ | イタリア | パナマ |
---|---|---|---|---|---|
本戦B組 | 日本 | 韓国 | オーストラリア | 中国 | チェコ |
本戦C組 | アメリカ合衆国 | メキシコ | コロンビア | カナダ | イギリス |
本戦D組 | プエルトリコ | ベネズエラ | ドミニカ共和国 | イスラエル | ニカラグア |
第5回試合結果
- 優勝…日本
- 準優勝…アメリカ
- 3位…メキシコ
- 4位…キューバ
大会の課題点
MLB選手参加の難しさ
今でこそ日本ではサッカーにおけるFIFAワールドカップとほぼ同列どころかそれ以上に注目を集める大きな大会となっているが、世界的に見ればまだ局所的な盛り上がりでしかなく、本場のアメリカですら地域によってはまったく認知されていない事すらある。
その原因の一つとして、MLB選手が満足に参加できない状態であることが挙げられる。
そもそもこの大会は3月というプロ野球、メジャー共にシーズン開始直前(ちょうどオープン戦(スプリントトレーニング)が行われている頃)に開かれる為、大会中ケガをしたり、代表に選ばれた投手はシーズンに向けて調整が難しくなることから、参加を拒む選手も少なくない。
今では考えられないことだが、過去には日本でも韓国と同様にトップ選手が参加出来ているのは素晴らしい一方、「プロ野球選手は世界大会よりペナントレース優勝を優先するべきだ」という風潮が根強く、チーム単位で参加を拒否した事もあった(アトランタオリンピックまで日本代表の選手がすべて社会人野球の選手で構成されていたのもそれが原因。また、イチロー選手も基本的にこの考えを指示しており、プロ野球選手の参加が認められてからも、度々オリンピック代表入りを打診されても最後までそれに応じることはなかった)。
アメリカではその事情がさらに厳しく、選手が参加を希望しても、契約しているチームや保険会社からケガ時の保証をしてもらえず泣く泣く参加を辞退しなければならなかったり、企業の側から選手の登板やスタメンでの起用回数を要求されたりすることから、ベストメンバーを選び難いという事情もある。実際、第5回大会でも、ドジャースの剛腕:クレイトン・カーショウ投手がアメリカ代表入りを希望したが、上記の理由で無念の出場辞退となったという経緯がある。
一方で、チーム一丸となって優勝を目指してプレイする充実した日々(当時北海道日本ハムに在籍し2015年にプレミア12に出場したあの選手風に言えば「ヒリヒリしたシーズン」とでも言うべきか)を送れたことが、結果的に本シーズンへの大きなモチベーションを抱くことに繋がったという者もいる(第5回大会の大谷選手やトラウト選手等)ため、シーズン前の開催が、一概にマイナスの要素ばかりというわけでもないという意見もある。
収益分配の不平等さ
にもかかわらず、大会の収益はMLBとその選手会が6割以上を取っていく上に、放送料も割高で各国の放送局の財布を圧迫しかねない…というかなり不平等な収益構造となっている。これではナショナルチームの強化費用が充てられなかったり、せっかく出場できても母国が放映権を取得できず試合の内容が中継できなかったりということになりかねず、次の大会に向けての準備や選手たちの参加へのモチベーションも大きく下がってしまう。
日本はまだそこからある程度の収益を獲得できるためまだ恵まれた方とはいえ、この不平等さに対して日本プロ野球はWBC不参加を表明した事もある(というより、第1回大会も「もし参加しなかったらWBCが失敗した原因が日本にあるものとして賠償を求める」という半ば脅しめいた要求で渋々参加した経緯があったりする)。
この収益分配率は今でもあまり変わっておらず、苦肉の策として「日本代表チームのグッズは侍ジャパンブランドで展開し、こちらの収益をNPBに還元する」という形で落ち着いている。日本で大会中WBCのグッズより侍ジャパンのグッズやロゴが多いのはこういった事情がある。
会場の偏りと予選カードの不平等さ
サッカーのように主催国がその都度変わる訳でもなく、今のところ本大会の会場は日本、韓国、北米、台湾が中心となっている。大会の為に新たに会場を作る手間がかからないというメリットはあるものの、移動の面ではヨーロッパ、中南米、アフリカ、オセアニア、日韓台以外のアジア圏の選手たちに負担がかかる形となり、またその開催地の事情から対戦カードがある程度コントロールされてしまう不平等さがある(特に日本は地理的関係から予選で強豪の揃う北中米勢と戦うことがほぼなく、かつ準々決勝までホーム戦であるため非常に有利)。また、準決勝および決勝はいずれもアメリカで行われるため、北米ラウンドのチームが必然的に有利となる。
また、2023年の第5回大会では決勝トーナメント表が当初のスケジュールと違うのではないかという混乱(アメリカ代表が日本と準決勝で戦うと思われていたが、何故か決勝でのみ当たるようになっていた)も起こった。
今後の展望
このようにまだ若い大会かつアメリカのMLB主導という体制が目立つため、世界大会としてはかなり課題の多い大会となっているが、集客や野球の世界的な普及は大会の度に成果を上げており、今後少しずつ改善され、洗練されていくと思われる。
日本でも第1回大会は(結果的に優勝したとはいえ)「何のための大会かわからない」と選手たちも参加に疑問を持っていた程だが、幼少期に侍ジャパンの活躍を見ていた野球少年たちがWBCの参加が目標だったと語るように、選手たちの参加モチベーションも年々高まっている。
WBCで日本代表になってMVPを取るという夢を掲げたある野球少年は、現実離れした能力で本当にその夢を達成した。
加えて、まだ野球発展途上国の多いヨーロッパやアフリカでも、スポーツにおける一つの大きな目標が出来たことで、この大会を歓迎している国も多いと言われている。
関連項目
オンドジェイ・サトリア:第5回大会チェコ代表