概要
萩尾望都(本名同じ 1949年5月12日~)は、日本の女性漫画家。
「24年組」の一員。
作品のジャンルはSF・ファンタジー・ミステリー・ラブコメ・バレエもの・心理サスペンス、歴史ものなど幅広い分野にわたる。
作品は多くの文化人に批評の対象とされている。
- よしもとばななに「彼女はドストエフスキーのようだ」と強く勧められた文学評論家のジョルジョ・アミトラーノは「私にとって萩尾望都の漫画は未知の新しい物体だった」と評している。
- 宮部みゆきは「天才とはこういう人のことを言うのです」、山岸凉子は「私が初めて出会った天才」と評している。
- 安彦良和からは神と呼ばれている。
- 河出書房は近年「少女漫画界の偉大なる母」と表現した。
来歴
1949年5月12日、福岡県大牟田市で4人兄弟の次女として生まれる。父は三井鉱山の関連会社の社員。
1957年、大牟田市に戻る。
1958年、両親は望都の絵の才能を伸ばそうと画塾に通わせる。教育熱心な両親により漫画を読むことを禁止されたが、本屋をしている親戚の家に遊びに行っては漫画を読み模写していた。
1962年、中学校に入学。漫画を描く友人・原田千代子(漫画家・はらだ蘭)と知り合い、2人で貸本雑誌などに投稿した。
1965年、大阪府立吹田高等学校に入学。
1967年、手塚治虫の『新選組』(『少年ブック』(集英社)に1963年連載)に感銘を受け、本気で漫画家を目指す。再び大牟田市に戻り、福岡県立大牟田北高等学校に転校。原田千代子の紹介で漫画同人誌「キーロックス」に参加。
1968年、高校を卒業し、福岡市の日本デザイナー学院ファッションデザイン科に入学。『別冊マーガレット』(集英社)に投稿した『ミニレディが恋をしたら』(ペンネーム:萩尾望東)で5月号の「少女まんがスクール」金賞を受賞(雑誌掲載はなし)。
1969年、冬休み中に手塚プロに勤務していた原田千代子を訪ねて上京し、初めて手塚治虫と会う。同郷の漫画家、平田真貴子のつてで『なかよし』(講談社)に持ち込みをし、「何か短い作品を」と言われて描いた漫画のうち『ルルとミミ』が『なかよし』の夏休み増刊号に掲載されてデビュー。
1970年、講談社の編集者に一晩だけ竹宮惠子のアシスタントを頼まれたところ、竹宮から一緒に住まないかと誘われる。10月頃上京し、練馬区大泉の貸家「大泉サロン」で2年間竹宮と同居。後に24年組と呼ばれることとなる漫画家たちと交流を深める。
1972年、竹宮の紹介で会った小学館の編集者・山本順也から素質を認められ、『ポーの一族』シリーズ第1作「すきとおった銀の髪」が『別冊少女コミック』(小学館)3月号に掲載される。
1974年、『週刊少女コミック』(小学館)で『トーマの心臓』を連載するが読者アンケートが最下位で編集長から打ち切りを宣告される。しかし、単行本化された『ポーの一族』がヒットすると『トーマの心臓』の順位も上がり、連載を続けることができた。
1975年、『別冊少女コミック』でSF漫画『11人いる!』を連載。
1976年、『ポーの一族』、『11人いる!』で第21回小学館漫画賞を受賞。
1977年、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で『百億の昼と千億の夜』(原作:光瀬龍)を連載し、少年誌に進出。
1980年、『プチフラワー』(小学館)で『メッシュ』を連載。
1982年、モスクワ郊外で乗っていた観光バスとトラックが正面衝突し重傷を負う。
1984年、『プチフラワー』1月号に『半神』を掲載。
1992年、『プチフラワー』で『イグアナの娘』、『残酷な神が支配する』を連載。
1996年、『イグアナの娘』がテレビドラマ化(テレビ朝日)された。
1997年、『残酷な神が支配する』で第1回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞を受賞。
2002年、『月刊フラワーズ』(小学館)で『バルバラ異界』を連載。
2006年、『バルバラ異界』で第27回日本SF大賞を受賞。
2011年、引退を考えていたところに東日本大震災が起き、『月刊フラワーズ』で『なのはな』を発表。女子美術大学芸術学部アート・デザイン表現学科メディア表現領域客員教授に就任。
2012年、『YOU』(集英社)で『王妃マルゴ』を連載。紫綬褒章を受章。
2016年、『YOU』の『天使かもしれない』(作画:波多野裕)で漫画原作を担当。朝日賞を受賞。
2019年、『YOU』が休刊し、『王妃マルゴ』の連載は『Cocohana』(集英社)に移籍(~2020年2月号)。文化功労者に選出される。
2021年、大泉時代を振り返ったエッセイ集『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)を出版。
2022年、アイズナー賞の「コミックの殿堂」入り。旭日中綬章を受章。
現在も精力的に新作を発表している。
代表作
舞台化
復刊ドットコム
余談
- 幼い頃から母親に、姉妹と比較されたり漫画を否定されたトラウマから、多くの作品において「母親」は不在であるか死亡する。「母と子」の確執と「親殺し」をテーマとした作品が多い。
- 漫画家・水木しげるを妻(武良布枝)の目から描いたエッセイ、およびNHK連続テレビ小説の「ゲゲゲの女房」を見た母親が漫画家に対する考えを180度変え、娘の偉業を認めるようになった。
- 「バルバラ異界」で日本SF大賞を受賞。漫画でSF大賞を受賞した作品は、他には大友克洋の「童夢」のみ。星雲賞のコミック部門も3度受賞しており、最多受賞者となっている。
- 手塚治虫に影響されて漫画家を志し、『残酷な神が支配する』で第1回「手塚治虫文化賞マンガ優秀賞」を受賞している。
- 2016年に発表した「寄生獣」のトリビュートでは、田村玲子の娘を描き話題となった。