ガザC
がざしー
ジオン公国残党軍「アクシズ」が開発した可変量産型モビルスーツ(MS)。型式番号AMX-003。
ガザシリーズでは初となる戦闘用MSとして開発されている。
型式番号について
『機動戦士Ζガンダム』放送当時は、本機の型式番号はMMT-1で、グリプス戦役末期に地球連邦軍がアクシズと協定を結んだ際、地球連邦軍から「AMX-003」のナンバーが追加で与えられたとされていた。
しかし、『機動戦士ガンダムΖΖ』ではネオ・ジオンのMSの型式番号がAMXとされるようになったため、『ガンダム・センチネル』ではアクシズ内ではAMX-003で、地球連邦軍から「MMT-1」のナンバーが追加で与えられたと変更された。
なお、旧キット「1/144 ガ・ゾウム」プラモデル説明書では、本機の型式番号はMMT-3とされている。
また、『ガンダム・センチネル』においては、ネオ・ジオン内で「カエサル」のコードネームで呼ばれる様子が描かれている。
「カエサル」の元ネタは宇宙世紀以前のドイツ軍の戦闘機Bf109のC型の呼び名(ツェーザー=カエサル)と思われる。
機体形状は有機的な曲面構造で、MS形態の頭部は可動がオミットされた代わりに、大型で十字モールドが入った魚眼レンズを思わせるような広角モノアイを装備して視界を確保している(この十字モノアイは、ガザシリーズの大きな特徴の1つである)。
コックピットは頭部に設置され、ハイザックと同型のものが採用されている(リニアシートや全天周モニター等はアナハイム・エレクトロニクスとの技術的取引によって入手したもので、恐らくガンダリウムγやドワス改の供出時の見返りと思われる)。機体構造には、機体の主要パーツをブロックモジュールと見做した上で、それを動力パイプ・ケーブル・シャフトなどで繋ぐ「ブロック構造」を採用している。作業用MS譲りのこの構造は、従来のMSに比べて機体の生産性が高く、各ブロックモジュール単位の故障の場合には、該当ブロックモジュールを交換し再接続するだけで修繕が可能なメンテナンスの容易さなど、量産における優位性があった。このブロック構造技術は後にAE社に渡り、リック・ディアスなどエゥーゴ系機体の機体構造である「ブロックビルドアップ構造」へと発展していく。
機体色はコーラルピンクを主体にしており、この点でも旧来のジオン公国軍系MSとは趣を異にする。
開発当時のアクシズ兵はモウサ居住の若者を中心とした志願兵が多く、パイロットの練度の低さが問題となっていた。それを補うため、本機は砲撃戦を中心とする集団戦術を想定して設計されている。よって、機体コンセプトは支援用兵器のそれであり、単機での戦闘能力は低く、特に運動性が極端に悪い点から接近戦にはかなりの困難を伴う。そのため、本機は従来のMS以上に3機1個中隊の編隊行動・密集戦法を厳守し、近接戦闘を避けるのがセオリーとして徹底された。
また、本機体はエゥーゴやティターンズに先んじて量産化に成功した可変機ではあるが、前述の通り一般的な第2世代MSよりも前の技術で開発されており、尚且つ戦闘を想定しない作業用MSから発展した出自の為、機体構造は恐ろしく脆弱である。前腕部にシャフト1本で取り付けられたバインダー、簡易式の華奢なマニピュレータ、非常に細い胴体等、機体各所に残る剛性面での不安は、特に近接戦闘の不得手に拍車をかけるものであった(鹵獲機の調査を行ったエゥーゴのメカニックマンの言葉を借りれば『3回出撃すれば空中分解を起こす』『変形を4、5度繰り返せば接続部に異状を来たす』レベルなどと酷評された)。加えて、拠点近辺での活動を旨とする作業用MSの流れを汲む機体であるが故に、航続距離が非常に短い欠点も抱えており、従来の高機動型MAの用途である筈の強襲・突撃戦法に用いた場合、強襲はできても帰るための推進剤がない状態になる危険性を孕む。
総じて本機体は、格闘戦の苦手なMS形態と突撃できないMA形態と、各形態の長所を殺すような特性になり、MSとしてもMAとしても非常に中途半端な機体になってしまった。
この結果、不慣れなパイロットが性能を引き出せないまま無闇に射撃を繰り返す運用に終始するような有り様を晒し、MA形態でのマニピュレーターを本来の脚部として接地した中間形態の姿も相まって、周囲からは「可変砲台」や「可変自走砲」などと揶揄される(実際『機動戦士Ζガンダム』劇中でも遠距離から不用意な火線を放つ姿を見たクワトロ・バジーナに「実戦慣れはしていないようだな」と看破されるシーンがある)。
ただし、工業力が低い中で軍事力増強を誇示する必要があったアクシズにとって、前述のようにブロック構造による良好な生産性を持つ本機体はうってつけの存在であったため、グリプス戦役にアクシズが介入して以降、新型機投入までの繋ぎとして300機近くが戦役終結時までの主力として投入された(生産自体はグリプス戦役中期に打ち切られている)。
母艦や拠点の周囲に散開しての威圧行動や一斉射撃等で一定の戦果を挙げたため、ガザCの有用性が認められ多数のバリエーション機が開発されている。
なお、その後も残存した機体はグリーンに塗装された機体が袖付きで、作業用として使われていた機体が地上のジオン残党で使用された他、115年ではハイザック、マラサイといったティターンズ機や後継機のガザDとともに宙賊で使用されている。
ナックル・バスター
本機専用に開発された、ガザシリーズの象徴でもある高出力メガ粒子砲。角柱状の砲身と機体のメインジェネレータをケーブルで直結しており、MS形態では右脇で抱えるように保持・射撃し、MA形態では背部バックパックにマウントされる。
その出力は6.7MWとスーパーガンダムのロングライフルに匹敵する大火力で、胸部センサーとのリンクにより命中精度も高い。これを複数の機体で発砲して弾幕を張るのが、本機の基本戦術にして生命線である。ただし、半固定式のため携帯火器に比べて射角や取り回しに劣り、元々苦手な格闘戦を更に困難にさせる弊害も生じている。
尚、一部のゲーム作品では上記の設定を無視した、弱いスペックの場合がある(同世代のMSが武装するビームライフルに負ける作品もある)。
ビーム・サーベル
出力0.4MW。両肩のバインダーに1基づつ内蔵される。前腕部にバインダーの付いた簡易な腕部でサーベルを振り回す行為は、機体に大きな負荷を掛けるため多用はできない(だが、劇中では本機で百式に近接戦闘を挑んだ強者がいたりする)。
ビーム・ガン
出力2.3MW。背部ジェネレータボックスに装備されるためMA形態時にのみ使用可能で、ナックルバスターと同一射撃軸になる。当初はビームサーベルを兼ねる予定だったが、コスト削減のためオミットされた。
ガザDなどの系列機はガザシリーズを参照。
ガザC(ハマーン・カーン専用機)
型式番号AMX-003。
劇場版『機動戦士Zガンダム』に登場。
ハマーン・カーン専用のガザC。機体カラーがハマーンのパーソナルカラーである白と紫に塗られている以外は、通常のガザCと性能に差異は無いとされている。
ガザC(袖付き仕様機)
型式番号AMX-003。
小説・アニメ『機動戦士ガンダムUC』に登場。
ネオ・ジオン残党「袖付き」が運用する機体。カラーリングはグリーンで、前腕に『袖』の装飾が施されている。袖付きの拠点衛星パラオに配備されており、先述の欠陥もあって半ば自走式の移動砲台として運用されている。
ガザC改
型式番号AMX-003S。
漫画『ダブルフェイク・アンダー・ザ・ガンダム』に登場。
第一次ネオ・ジオン抗争後に、反連邦テロ集団「カラード」で運用されたガザCのバリエーション。
詳細はガザC改を参照。
ガザCZ
ゲーム『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』に登場。
第一次ネオ・ジオン抗争中に旧式化し第一線から退けられたガザCを、ズサ・ブースターなどのパーツを組み込み改修した爆撃支援機。
詳細はガザCZを参照。
ガザCⅡ
型式番号AMX-003B。
雑誌企画『MOBILE SUIT in ACTION ジオンの星』に登場。
ガザCからガザDへ発展する過程の試作機とされ、ジェネレーターの改良により出力が若干上昇している。また、ナックルバスターが廃された代わりに、新たに両シールドにビーム砲が装備されている。
地球降下作戦の際には5機が投入された。
ガザT
型式番号AMX-003T。
ゲームブック『機動戦士ガンダムΖΖ vol.2 ヘルメス夢幻』に登場。
ガザCの複座練習型で、練習機ではあるが武装はそのまま残されている。
試験のためにバリュートを装備した機体がサダラーン級機動戦艦「サザダーン」に艦載されており、艦内からの脱出と地球降下を目論む主人公によって強奪されている。
ガ・スタン
模型雑誌『B-CLUB』にイラストが掲載された機体。
旧式化したガザCを砲撃戦用に改造したもので、胴体を丸ごと大型メガ砲に挿げ替えたような形状をしている。また、脚部も大型のものに換装されており、ガザCの面影はあまりない。