「暗黒のハンター、サー・カウラー・・・」(第15話)
データ
身長:195cm
体重:81kg
演:中田譲治
概要
物語中盤より登場する、エイリアンハンターの元締め。
「暗黒のハンター」の異名を取る孤高の一匹狼的な存在で、副官のボー・ガルダンやバウラを始めとする4人の部下(エイリアンハンター四人衆)、それにザ・ズコンダなど直属の獣戦士を率い、改造実験帝国メスの別働隊として実験材料たる様々な生物の確保に従事する。
元々はとある星間国家の軍人で、叩き上げの一兵卒から将軍の地位にまで成り上がるも、クーデターを起こした末に失脚、国外逃亡の憂き目に遭い、その後はかつてのコネで傭兵部隊を率いて暗殺、テロ、謀略などの仕事を請け負っていたところを、メスに招聘されたという経緯の持ち主でもある(※1)。
物語開始から遡ること20年前、後にフラッシュマンとなる5人の赤ん坊を地球から誘拐した張本人であり、その点において彼等やその家族に降り掛かった悲劇の元凶であるとも言える。作中では特に言及されていないものの、時村博士に偽の記憶を植え付ける処置も施したと見る向きもある。
(※ 出渕裕によるデザイン画稿の添え書きより)
特徴・能力
右目を隠すかのように伸ばした前髪に、口髭・顎髭を蓄えたワイルドな容貌と、漆黒の鎧に身を固めた出で立ちがトレードマークである。
得物の一つで、最長15mにもなる伸縮性の電磁ムチは硬質の槍状へと変化させることもでき、それ以外にも超金属製の爪、左手から放つ光線を駆使することも可能なほか、持ち前の強靭な肉体は猛毒にも耐性を持つ。
その実力の高さも作中トップクラスと評して過言ではなく、フラッシュマンの5人を相手に多くの場面で優勢に立ち、メスの幹部であるネフェルとワンダの連携さえも軽くあしらうなど、作中における強敵、フラッシュマンにとっての超えるべき大きな壁の一つとして位置付けられている。
人物像
その性格は冷徹・残忍にして好戦的で、所謂「生命狩り」における苛烈な姿勢は「その名を聞くだけで宇宙中の生命が震え上がる」と称されるほどである。
頭の回転の速さを活かした知略家としての側面も有しており、自ら誘拐した地球人(ミラン)を改造した獣戦士ザ・ゾバルダが脱走した際にはこれをいたぶるのみならず、彼と交流を持ったサラをおびき出す餌として利用し、獣戦士に改造されていることを見せ付けた上で戦意を鈍らせている。
またベルダ星から自ら連れてきた獣戦士ザ・ゼラギルの能力を利用し、ジンを除く4人のフラッシュマンを洗脳し、彼等をジンにけしかけたこともあり、いずれもカウラーの非道さを語る上では外せない事例と言える。
他方で、自らに忠誠を誓う部下達に対しては情に厚い節もあり、彼等に危害が及んだ際には自ら助けに入り、相手への報復を誓うなど親分肌な部分もある。また敵であっても、部下の命を救ったブンにその礼を述べたり、物語最終盤で「取引」を交わしたサラとの約束をきちんと果たすなど、義理堅い側面も持ち合わせていたりする。
おそらくは単なる気まぐれであろうが、配下であるシベールに地球から持ち帰った絵本『幸福な王子』をプレゼントしたこともあり、これが後にその内容に感銘を受けた彼女の離反、そして彼女の携わっていた作戦の頓挫と窮地のジンを救うことに、回り回って繋がることとなった。
基本的にはシリアスなキャラクターとして扱われているものの、半ばギャグ回である第26話では、ピンクフラッシュに胡椒を振りまかれた直後、クラーゲンを呼び出した際に盛大にくしゃみをしてしまうという、珍しくもコミカルな面が描かれたこともある。
ケフレンとの反目とメスからの離反
メスの大幹部である大博士リー・ケフレンとは、表向きは協調関係にある一方、内心では半ば外様というべき立場ながらも、組織内で大きな顔をするカウラーに対してケフレンは不満をつのらせ、一方のカウラーもまた一向に成果を挙げられないにもかかわらず、組織のNo.2として高圧的な姿勢で接してくるケフレンに反感を抱いており、この両者の対立は物語後半にてカウラーがケフレンに対し、
「私はそもそもあなたが何者なのか存じておるのです。 本当の正体を・・・その素性を!!」
と、思わせぶりな発言に及んだことでいよいよ表面化していくこととなる。前出のザ・ゼラギルを利用した作戦のように、時にはカウラーの目論見が頓挫するようケフレンが密かに仕向けたり、また時には自らの素性を探ろうとするケフレンの動きを看破し、逆にあわよくば大帝ラー・デウスの秘密までも知ろうとしたことまでもカウラーが暴露してみせるなど、次第に両者の対立が激しさを増していく中で決定的な破局を迎えるきっかけとなったのが、ケフレンが立案したザ・ギータンによる作戦であった。
エイリアンハンターを喰らうことによって急成長・パワーアップを遂げるギータンの存在は、ハンター達を配下として抱えるカウラーへのあからさまな挑発であり、そして配下達の身の安全と引き換えに自らの正体にまつわる情報を聞き出そうとする、ケフレンの卑劣なやり口に強い憤りを覚えたカウラーは真っ向からこれを拒否した上で、メスと袂を分かつことを宣言するに至った。
「当たり前だ!!かわいいエイリアンハンターをこれほどまでに痛め付けられて、黙っている俺ではない!!」
「ラー・デウスだろうとリー・ケフレンだろうと・・・ガルダンが駆け付けて来たからにはもう恐れはしない!」
かくして、自らの右腕たるボー・ガルダンを加え、第三勢力へと転じたカウラー達であったが、ハンターの一人であるケラオは前出のギータンの餌食となり、残るハンター達もデウス獣戦士ザ・タフモスに改造された末に命を落とすなど、彼等には茨の道も同然な道のりが待ち受けていた。
ケフレンやデウスへの復讐を遂げ、彼等に代わって宇宙最強の支配者となるべく、カウラーは反撃の一手として時村博士を拉致し、彼に新たな遺伝子シンセサイザーを作らせ、その演奏によって目論見通りデウスを苦しめることに成功するが、対するケフレンも捕らえたガルダンを改造に及び、彼の変わり果てた姿であるザ・ガルデスをけしかけることで、カウラーに深手を負わせている。
傷ついたカウラーはサラに対し、5人の親に関わる秘密を教えることを条件に遺伝子シンセサイザーを代わりに弾かせ、それにより元に戻ったガルダンと共にデウスと直接対決に臨むと、死闘の末にこれを討滅。さらにフラッシュマンとも雌雄を決するべく最後の対決に及び、自らはレッドフラッシュとの一騎打ちに臨んだ。
「そろそろ決着を付けよう・・・夕陽を浴びて流れる血は、綺麗だぜ」
日没になるまで繰り広げられた死闘はしかし、わずかな差でレッドフラッシュの一撃がカウラーを貫き、彼の敗北という形で幕切れを迎えることとなる。しかしそれでもなお、漁夫の利を得る格好となったケフレンに対し、
「何が宇宙の支配者だ・・・! ケフレン、お前は地球人だ!!」
「ケフレン、貴様が・・・ウジ虫と決め付けていた・・・地球人だ!」
と、事ここに至って彼のアイデンティティを崩壊させかねない事実を暴露してみせ、そして残された力を振り絞ってケフレンを倒さんとすべく、自らの宇宙船を駆って改造実験基地ラボーへと特攻。壮絶な最期を遂げるに至った。
そしてその直前、再度連れ去ったサラをとある民家へと運んでおり、約束通り彼女に親にまつわる重要な手がかりを教える格好となったのである。
備考
デザインは前述の通り出渕裕が担当。フラッシュマンを誘拐した張本人である以上、多少なりとも年を食っているキャラクターがいいかなという考えから、デザインに当たっては同時期に放送された時代劇『徳川風雲録 御三家の野望』にて、山内伊賀介を演じた原田芳雄のイメージを念頭に置いていたことを後年のインタビューにて明かしている。
また、出渕がかつてメギド王子(『科学戦隊ダイナマン』)をデザインする際にも用いた片目を隠す手法や口髭など、この手のキャラクターで欠かせない「女子萌えポイント」も様々に意識されたものとなっている。
デザイン段階では、衣装は宇宙服と鎧が一緒になった感じで、また鎧の部分も艶のあるレザーでの作りを想定していたものの、実際の造形物はそこまで作り込まれたものとはなっておらず、デザイン画稿と比べて簡略化された部分も存在する。
演者の中田は、東映特撮へは本作が初参加となるが、後年のインタビューに際して過去に『Gメン'75』出演の際に付き合いのあった、監督の長石多可男からの推薦があったことを述懐している。オファーを受けたはいいものの、実際に出演すべきかどうか悩んだ末に友人の高畑淳子(この少し前に『巨獣特捜ジャスピオン』にレギュラー出演していた)に相談したところ、「本当に面白い。絶対にやるべき」と言われたことで、出演を決意したという経緯がある。
長石は本作以降も、『光戦隊マスクマン』でのゲスト声優としての出演、そして2度目のレギュラー出演となった『超獣戦隊ライブマン』と、度々中田の起用に関わっており、それからさらに時が下った『海賊戦隊ゴーカイジャー』へのゲスト出演も、当時長石の下で助監督を務めていた渡辺勝也のたっての希望があったという。
デザイン担当の出渕は、とにかくカウラーは中田の芝居と声に助けられたと、その熱演ぶりを絶賛しており、後に出渕が小説『ロードス島戦記』のイラストを手掛けた際、カウラーをベースとして登場人物の一人であるカシュー王をデザインしたこともある。奇しくも同作のテレビアニメ版(『英雄騎士伝』)において、カシュー王のCVを担当したのは他ならぬ中田であった。
本作において視聴者人気、中でも女性人気の高かったキャラクターの一人でもあり、1980年代に少女マンガ誌『花とゆめ』にて連載されていた作品『V-K☆カンパニー』では、名前から容姿に至るまでカウラーを多分に意識したことが窺える、坂浦譲治(さかうらじょうじ)なる直球なキャラが登場していたりもする。
また、中島梓(栗本薫)が著した評論本『わが心のフラッシュマン』では、カウラーを主人公とした小編を執筆しており、作中に登場するカウラーは辺境伯が顔を見知っているほどの高貴な出自である、という描写がなされた。