不屈の精神を携えて 世界を目指したウマ娘の新たな夢が 芽吹く
※ 正式タイトルは長大になるため、当記事では「スターブロッサム」表記とする。
概要
漫画:保谷伸 / 脚本:文殊咲 / 原作:Cygames
クロスコンテンツプロジェクト『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するウマ娘の一人、サクラローレルが、“遅咲きの桜”と呼ばれた競走馬サクラローレル号が刻んだ不屈のストーリーを辿っていくコミカライズ作品である。公式略称は「スタブロ」。
サクラローレル号の現役時代にあたる1994~97年をメインに描くものと思われる。
集英社が運営する『少年ジャンプ+』『となりのヤングジャンプ』『ヤンジャン!』のウェブ漫画3媒体で2023年4月10日から同時連載。同日にはゲーム版にてサクラローレルが育成ウマ娘として実装されている。
2024年12月2日の掲載を最後にジャンプ+からは撤退する。
ウマ娘 プリティーダービー スターブロッサム(第1話)- 少年ジャンプ+
作風
史実のサクラローレル号の波乱万丈な競走人生も相まって、作風はややシリアス寄り。登場するトレーナーの数もアニメ版や同系統のスピンオフ漫画『ウマ娘シンデレラグレイ』よりも多く、よりチーム間のやり取りが多くなっているのも特徴。
GⅠ勝利まで多くの苦難を経験したローレルが題材だけあってかモブウマ娘やいわゆるGⅡ以下のレースにも焦点が置かれ、未勝利〜GⅡ級ウマ娘目線から見た一線級のウマ娘への感情なども描かれている。
良くも悪くもこの時代の覇者と言えるナリタブライアンの最盛期ということもあってか、ある意味ではスター級のウマ娘達が鎬を削り合う『シンデレラグレイ』とは逆のスタンスと言えるだろう。作中でも一貫してナリタブライアンの強大さが描かれており、ゲーム版のブライアンのシナリオとはまた違った切り口となっている。
対するローレルは初登場時はまだまだデビューしたての無名のウマ娘であり、いかにして彼女がトレーナーと共に這い上がっていくのかという点がフィーチャーされている。ゲーム版のある程度達観して大人びたローレルとは異なり、本作ではより年相応の少女然とした姿が描かれているので、興味があるなら両方の媒体でキャラの違いを比べてみるのも一興だろう。
なお、本作のモブウマ娘(というより仮名ウマ娘)やトレーナー達は作画担当である保谷氏がデザインしている。一部のキャラは設定イラスト集という形で初期案のデザインも公開されている。
登場人物
作中に登場するチーム名は、ゲーム版のメインストーリーやアニメ版同様、実在する星の名前が由来となっている。
チームアルケス
「だから私は走り続けなきゃいけないんです」
明朗で礼儀正しいジュニア組のウマ娘。同年代の最強格・ナリタブライアンのライバルを目指し、「世界」の代名詞たる凱旋門賞の頂点に焦がれる情熱の持ち主。自らの志への直向きさは、“ガラスの脚”と成長途上の身体で負荷の強い走りをする危うさにも結びついている。
- 明石椿(あけいし つばき)
「一緒に行こう! パリロンシャンに!」
チームアルケスのサブトレーナー。フランスで「マダム」の薫陶を受けた若手だが、そそっかしいため生傷が絶えず、保健室の常連。チームメンバーが出走する朝日杯ジュニアステークスでナリタブライアンに声援を送るサクラローレルと出会い、翌日の模擬レースで目にした彼女の未完成で大胆な走りに強く惹きつけられる。
- 明石梧郎(あけいし ごろう)
「レースを走るのはウマ娘です。我々はどこまでいってもウマ娘にはなれない。努力なんて当然ですよ」
チームアルケスの大黒柱にして椿の父親。ヨシノには「おやっさん」と呼ばれ慕われている。ベテランとしての実力も高く、未熟な娘達を時に厳しく、時には優しく支えている。公私はしっかり分けるタイプで椿を娘としてでなくサブトレーナーの一人として扱っている。
- 桃さん
チームアルケスのサブトレーナーである眼鏡を掛けた女性。一応椿の先輩に当たるが意外と見た目に反してドジな所があり、第6話ではニンジンの発注日を間違えてしまった。
- 河瀬
アルケスのサブトレーナーにしてアマギのサポート係でもあり、アマギの4ヶ月程の遠征に同行していた。アマギとの仲はすこぶる良かったらしく、旅の途中2人で写真撮影したり沢山のお土産を買ったりしていたようだ。
- 猿野
チームアルケスのトレーナーの一人である、三白眼の女性。一応見習いではないのだが、梧郎の補佐的な役割。アルケスのトレーナーの中では椿を除いて一番背が低い。
「スプリンターズSで!ローレルさんの模範となるレースをご覧に入れてみせましょう!」
アルケスのエースにして学級委員長。ローレルと同じヴィクトリー倶楽部の門下生でもあり、彼女とは幼少期からの付き合い。アホの子ではあるが不世出のスプリンターで、スプリンターズステークスを制しGⅠウマ娘となった。
「困難な状況であるほど不屈の精神と忍耐で立ち向かう。ローレルさんはそういう方です」
格言をこよなく愛する、ローレルやバクシンオーと同じヴィクトリー倶楽部の門下生にしてアルケスの一員。アルケスでは常識人で、良くも悪くも大胆なバクシンやヨシノにしょっちゅう振り回されている。日本ダービーを優勝したダービーウマ娘だが、『シンデレラグレイ』の彼女とは一応パラレルワールドの別人。年代を考えるとこの時代には史実のサクラチヨノオー号は引退しているのだが、本作では普通にチームメンバーとして参加している。
「気に入らねェ気に入らねェ あたしは口だけのヤツがいちばん気に入らねェんだ」
ローレルと同期デビューのオリジナルウマ娘。そのワイルドな見た目通りの野生児で強力な先行力の持ち主。口は悪いが悟郎や椿のことは心から慕っており、根は素直な子。ナリタブライアンのライバルになると豪語したローレルとタイマン勝負し、友人になった。モチーフ馬はサクラエイコウオー号と思われるが、この漫画では冠名が「サクラ」ではないためかヴィクトリー倶楽部に所属していない。
「いるらしいじゃねぇか私らの世代にえらく強ぇウマ娘が。そいつとなら、きっと極上のレースができるだろ?」
どこに行くにも帽子を欠かさない寅さんじみた風貌のオリジナルウマ娘。アルケスの正式なチームメンバーでローレルよりも古株だが、「極上の景色」を追い求めて各地を転々としていたため登場はアルケスメンバーの中でも遅かった。皐月賞でナリタブライアンの2着になった後、また旅に出る。根っからの旅行好きではあるが梧郎を「親父さん」と呼び、日々欠かさず彼に手紙を送り届けるマメな一面も(劇中の描写から、彼にお土産も多く買ってきていたことも示唆されている)。ヨシノとは犬猿の仲でしょっちゅう喧嘩を繰り返しているが、実力は認められている様子。モチーフ馬はサクラスーパーオー号と思われる。
「今できる最善とは…日々得た糧の積み重ね それが…私の信条でございます」
個別メニュー消化を終えて合流した、チームアルケス芝中距離最強のウマ娘。第39話で公式サイトでのキャラデザインの公表と同時に登場した。「薬食同源」の考えを大事にしており、八角入りの薬膳カレーをポットに入れて弁当にしたりしている。幼少期は体が弱く、ヴィクトリー倶楽部のコーチからも将来競技の場に立てるか心配されていたが、日々最善を尽くし、焦らず自分の走りを信じる姿勢はローレルにも尊敬されており、芝1600mの日本レコードを叩き出すほどのウマ娘になった。
チームハダル
- 阿武隈紗季(あぶくま さき)
「あれ撤回していい?いいよ。本気出しちゃって」
チームハダルのトレーナーにしてブライアンの担当者。サングラスとアロハシャツを欠かさず身につけるチャラい見た目の女性だが、気性の荒いブライアンの手綱を上手く握りながら彼女の実力を引き出させる手腕は本物。ブライアンのことは妹のように溺愛している。
「言われるまでもない。全力で走って_叩き潰す」
怪物と称される程のポテンシャルを秘め、後に5人目の「三冠ウマ娘」となったウマ娘。ゲーム版と比べるとより鋭い目つきかつマッシブな体格で、立ちはだかる者を捻り潰す。劇中ではすでにヨシノやシュガーと言った面々に畏敬の念を持たれており、同世代の中でも別格の存在として扱われている。ローレルからはいずれ彼女を倒したいと一方的なライバル心を抱かれている。
「別に…アタシはただ今週末の春天でハヤヒデに勝ちたい。ただそれだけ」
チームハダルのメンバーにして、かつてビワハヤヒデ達とクラシックレースで鎬を削ってきた「BNW」の一角。親友でもあるハヤヒデの妹たる後輩のブライアンには何やら思う所があるらしく…?
チームハダルのメンバー。ハダルのメンバーの中でも年長者の部類で、阿武隈と共によくタイシンやブライアンのレースを観戦しに行っている。練習後のタイシンにタオルを投げ渡したりと、チームの面々とも仲は良い模様。
チームデネボラとその関係者
- 石上勲(いしがみ いさお)
「そうだね…僕も見たいんだ。スノウの心に火が着く瞬間を」
チームデネボラを率いる男性トレーナー。勝利した担当に真っ先に称賛を送る気の良い男だがどこか頼りない一面もあり、普段は跳ねっ返りなスノウにはよく押され気味。一方で彼女の才能と可能性を信じており、本来の彼女の走りが発揮される事を願っている。
「あの子の走りじゃぼくに勝つのは不可能だよ」
大柄な体にフードを深く被った寒がりのオリジナルウマ娘。姉に北米芝チャンピオンウマ娘を持つアメリカ育ちで、ヒシアマゾンとは幼少期から姉の元で暮らしてきた。実力があるばかりに勝ちへの執念や情熱が欠けていると評されており、ヒシアマからもその癖を危惧されている。故郷を離れたのも姉から「自分の殻を破ってこい」というアドバイスから。ただ、負けても良いという訳でもないようで、劇中ではローレルをライバル視する。モチーフ馬はタイキブリザード号。
「せっかく才能があるんだから、本気で走ってくれたらねぇ」
ローレルのクラスメイトで、トレセン学園の美浦寮長を担う皆の姉貴分的存在。同じアメリカ育ちで幼少期からの付き合いがあるスノウのことが心配で、しょっちゅう話しかけに来ている模様。
チームアルデバラン
ナリタブライアンの姉。妹の担当でもある阿武隈とはそれなりに仲が良いのかたまに会話もするらしい。
チームレグルス
- 黒田自由(くろだ みゆ)
「ここをさっくり突破して、本番の日本ダービーで、あの怪物(ナリタブライアン)に一発カマしたろうや」
チームレグルスを率いるトレーナー。ツーブロックヘアーの強面と関西弁が印象的な男性。薔薇の描かれたネクタイを付けている。名門チームであるレグルスを率いる事もあって、個性的なチームメンバーをまとめ上げる指導力とレース展開の分析力に長けている。基本的に冷静な人物であるが、「ダービーで怪物(ブライアン)倒すんやろ!!!」と語り掛ける熱さも併せ持つ。
「当然────そのつもりです」
レグルスメンバーのオリジナルウマ娘。冷静沈着でクールな顔立ちだが、心の奥底にはウマ娘らしく強い闘争心を秘めている。早仕掛けのロングスパートをかけても2400mを走りぬく無尽刻のスタミナを持つ。黒田からは不器用と評される所もあるが、不器用なりの戦い方があるとも言われる。打倒ナリタブライアンの誓いのもと、日本ダービーの優先出走権がかかった青葉賞に出走する。モチーフ馬はエアダブリン号。
「…ではもう半分は?」
レグルスにおける最古参枠、青葉賞では黒田の隣に座りレースを観戦している。最古参ということで表にこそ出さないもの、レムリックの健闘を讃える黒田を見るときの表情など黒田とは関係浅からぬ雰囲気がある。
レグルスのメンバー。作中では春天で5着に入っており、黒田から「よう頑張ってんやけどなぁ」と評価されている。青葉賞ではチームメイトのウイニングチケットと並んで、ダンスリムリックを応援していた。
レグルスのメンバー。作中での去年のダービーウマ娘。感動すると泣きだす性格は多媒体と変わらず、青葉賞でリムリックが勝つと「頑張っだねぇ~~っ」と号泣し、健闘を讃えていた。
レグルスのメンバー。ボードを片手に冷静な表情で青葉賞を観戦していた。この時点ではデビュー前である。
チームアルファルド
天性のセンスと持ち前の勘の良さから何事も「分かって」しまう天才児。劇中登場時ではまだデビュー前の新人ではあるが、後にローレルやブライアン達と熾烈なレースで競い合うこととなる。
チームベテルギウス
何事にも常にポジティブ思考な「マーベラス」を追い求める天真爛漫な少女。同じ感覚派でもあるマヤノトップガンとは親友であり、別のチームではあるがよく行動を共にしている。ジュニア級にして先輩ウマ娘にも圧勝する程の実力を持っていたが、物語当初は怪我で療養中。
ベテルギウスに所属するジュニア級のウマ娘。まだまだルーキーと言えるポジションではあるが、この時点で既にリーダーシップを発揮し仲間達や同級生にも信頼されている。
サクラローレル・ナリタブライアンと同世代のウマ娘
「__なりたい。私もお姉ちゃんたちみたいになりたい」
ローレルが未勝利戦で対戦したオリジナルウマ娘。「シュガー」の名前通り、パフェが大好物。右耳にはプリンの耳飾りを付けている。重賞で活躍している姉達にコンプレックスを抱いており、ナリタブライアンに本気で勝とうとしているローレルを「自分とは違う世界に生きてる子」と思っているが、未勝利戦を通じてバイトも一緒に行う友人となった。モチーフ馬はシクレノンヴォルク号。
本作初出の実名ウマ娘。ナリタブライアンを「ブーちゃん」と呼ぶ。
クラシックレースの打倒ナリタブライアン最有力候補。モチーフ馬はナムラコクオー。
マツカゼリュウオーのライバル。モチーフ馬はエアチャリオット。
青葉賞でローレルと戦うマイペースウマ娘。モチーフ馬はノーザンポラリス。
その他のウマ娘
- モンシュシュクレ
日経新春杯でメジロパーマーに差し切り勝ちしたオリジナルウマ娘。シュガーネイションの三姉妹の長姉。モチーフ馬はムッシュシェクル号。
- シュガーセーフティ
BNWの皐月賞で3着になったオリジナルウマ娘。シュガーネイションの三姉妹の次姉。モチーフ馬はシクレノンシェリフ号。
「“もっとも早いウマ娘が勝つ”皐月賞、いかなる一冠目になるのだろうか…」
トレセン学園の生徒会長にして、クラシック3冠・GⅠレース7勝もの偉大な快挙を成し遂げたレース界の重鎮。現役でも最強クラスの実力を持つビワハヤヒデが何かに追いやられていることを見抜いていた。
第1話でゲスト出演したシンボリ家のウマ娘。劇中では凱旋門賞に出走するもサンダンスブレイズに惨敗する場面でフェードアウトしている。ゲーム版では中々見せない憔悴した表情が印象的だが、本作では一言も台詞がない。この凱旋門レースは椿とローレルが出会う数年前の話なので、本編では既に現役を退いていると思われる。
ほぼモブキャラではあるが、主人公のサクラローレルの同室相手として登場。関係も良好らしく、第10話では両者の会話も描かれている。