概要
漸新世後期(3500万年くらい前)の中央アジア(モンゴル・中国・カザフスタンなど)やその周辺(南アジア、西アジア、東ヨーロッパ)に棲息した奇蹄目の絶滅哺乳類。
原始的なサイの仲間で、系統的には小型で軽快な体型をしたヒラコドンに近縁だった。属名は絶滅種のサイのアケラテリウム(角のない獣、の意。サイの仲間だが角がないために付いた名)に似ていたことから、「アケラテリウムに似た者」を意味するが、系統的には別のグループだった。
ヒラコドンが体長1.5m程度(大型犬サイズ)だったのに対し、本種は体長7.4m・肩高4.8m・首長2~2.5m・体重11~20tに達したとされ、陸生哺乳類としては近縁種のアラロテリウムや、長鼻目のトロゴンテリーゾウ(ステップマンモス・松花江マンモス)・ナルバダゾウ (ナウマンゾウの仲間)等と並ぶ史上最大級と言われている。
現在のサイのような角はなかったが、体型は馬に似ていたことから、かなり速く走れたと考えられる。その巨体や体型から、現在のキリンのように背の高い樹木の葉を主に食べていたとされる。そのため木の葉が主食のキリンやクロサイのような柔軟な上唇をもっていたとされるが、バクのような長い鼻だったという説もある。
絶滅した理由としては、かつては気候変動により生息域が寒冷化し、植生などの変化についていけなかったとする説が主流だった。だが近年では、その気候変動が始まったのはパラケラテリウムが出現し始めた頃(漸新世初期)だったので、あまり影響しなかったとされている。むしろ、アフリカ大陸からユーラシア大陸へと進出した長鼻目などの哺乳類との生存競争に敗れたとする説が濃厚となりつつある。更に大陸移動(アフリカ・インドのユーラシアとの接近と衝突開始)やそれによるテチス海(アフリカ・インドとユーラシアの間に広がっていた内海)の後退や造山運動の活発化(ユーラシアプレートがアフリカプレート・インドプレートに押されてアルプスやヒマラヤなどの大山脈を形成していく地殻活動)による地形の大きな変化が、この時代に進行していたことも見逃せない。
いずれにせよ、絶滅要因は単一というより複数の要因が重なったと見なされている。そもそもパラケラテリウムは大変な巨体であるため、成長期間や妊娠期間が非常に長かったと思われ(妊娠期間だけでも推定2年間)、何かを切っ掛けに一度数を減らしてしまうと回復が難しくなる。特に繁殖率が低い(生涯産める子供の数が少ない)が故に大型哺乳類は絶滅しやすい傾向があり、その極致である彼等は尚の事であっただろう。
なお、古い図鑑でよく登場したインドリコテリウムやバルキテリウムは、近年の研究では本種と同一(シノニム)だったと判明している。それが判明するまでは、インドリコテリウムは本種より大型で、バルキテリウムは首の短い復元がされていた