ホウエン種族値
どんそくりょうとうていたいきゅう
ポケモンのステータスを決定づける要素の一つに種族値と呼ばれる俗称がある。
スピアーとミュウツーに圧倒的なステータスの差があり実際の強さも大きく異なるように、これの多寡がポケモンの強さを決定づける要素の一つを成す。
勿論ステータスの合計がそのまま強さに直結しているかと訊かれれば当然そうではない。
合計種族値が同じながら、特攻と素早さを削って耐久を高めているヨクバリスと、攻撃と特攻に多く割り振った結果耐久が低く鈍足なバクーダとではヨクバリスの方が強く見られることが多い。
このバクーダのようなステータスはホウエン地方のポケモンによく見られる傾向である。性能面に問題を抱えることから俗に「ホウエン種族値」と呼ばれている。
ホウエン種族値という俗称に明確な基準はないが、以下の条件をいくつか同時に満たすことがほとんどである。
・合計種族値が低い
・両刀傾向
・合計種族値の割に素早さが"やや"高い
・低~中耐久
・両刀を活かせるポケモンではない
単なる両刀ではホウエン種族値とはならない点に注意。近年でもカプ・コケコなど、技範囲不足ながらも強力な両刀種族値のポケモンは存在している。
ポケモン本編でもキハダが「どっちつかずのステータスだと勝負で力を発揮しにくいぞ!」と言うように、ステータスが洗練されている方が対戦でも強い傾向にあるのだ。もっとも、この発言自体は性格や基礎ポイント(努力値)の振り方を指しているとも取れるが…
もちろん「ホウエンのポケモン」だからといって全てのポケモンが弱いわけではなく、タイプや技、特性で独自性を見出し強みを見出すポケモンもいる。
代表格に挙げられるのが日照り+低速で高い支配力を発揮するコータスである。また、かそくで速さを補い高火力かつ広い技範囲で高い制圧力を誇るバシャーモ、全御三家中トップの種族値と優秀なタイプを誇るラグラージなども挙げられる。言うまでもなく、600族のメタグロスとボーマンダも一定の地位を築いている。ただし、インフレが進んだ第九世代現在においては、種族値が足を引っ張っている感もやはり否めない。
こんな事態になった有力な理由として挙げられるのが、「ホウエンを舞台とするポケモンRSEはじめ第3世代は技の物理・特殊がタイプごとに分かれる最後の世代だった」点である。
第4世代に入ったポケモンDPtからは現在も知られている通り全ての技に個別に物理・特殊の区分が設けられているが、それより前は「ほのおタイプなら全部特殊、じめんタイプなら全部物理」というようにタイプで全てが決まっていた。
これによる矛盾は初代から存在し、例えばほのおタイプは特殊扱いだったにもかかわらず初代ほのおの多くが物理に偏ったステータスであり、第4世代でのほのおのパンチの物理分離やフレアドライブの登場までは満足な火力が出せずにいた。
イメージ優先の種族値配分から(当時基準での)実用性を意識した配分に切り替えたのが第3世代だったのである。
その結果、前述のバクーダのように「両方のタイプを活かすには両方の火力を上げるしかない」ことになったのではないか、と推測されている。ポケモンの合計種族値は厳格(たとえば、600族以外の一般ポケモンの最大種族値は第九世代現在においても未だにウインディである)なルールがあり、さらに当時はトリックルームがなく、素早さの低さのデメリットが大きかったため、できる範囲で素早さを高くしようと調整した…その結果全てが半端になってしまった…というシナリオである。
よって、ホウエン種族値は「当時物理特殊が異なった複合のタイプ」に特に顕著にみられる。
…のだが、例外も散見される。ノクタス(くさ・あく)やサメハダー(みず・あく)は当時両方特殊だったのに攻撃が高い。アブソルの数値から、当時のあくタイプは物理だった可能性も指摘されている。
他に、くさタイプ複合ながら格闘技を主力にする前提でデザインされたと思しきキノガッサや、対になるからと物理特殊も対に成っているグラードンカイオーガなど、デザイン要因をより優先した結果強い種族値になったと思しきポケモンも散見される。
なお、中速中耐久中火力のポケモンは、レベル差がつけられ、努力値調整も不可能な旅パに於いては優秀なポケモンである。わざのタイプに系統が依存していた第3世代以前ならなおさらで、ホウエン種族値という呼び方はあくまで後世代から見た後知恵であることは認識しておきたい。
※攻撃と特攻が他より高く、素早さが高くないポケモンを挙げています。
また、ウインディのように数値が振り切っておらず、平均的に高水準のポケモンは除外しています。