概要
フェストゥムの思考中枢を司り、彼らを生み出して同化により情報を収集させる光子結晶体。基本的には結晶体の形を取っているが、条件や経緯により様々な形を取る。総士曰く「ミールとフェストゥムは、未知の物理法則で(事象の)地平線のエントロピーを得る〈無の申し子〉」である。
要するに、フェストゥムの親玉で意思や知性を持ち、学習さえすれば何にでもなれる可能性を秘めた、すごいエネルギー。
互いに同化し合うため、異なるミールが1ヶ所に根付くことはできない。
変容したミールは「ミール変異体」と呼ばれ、『EXO』の時期には竜宮島ミール・シュリーナガルミール・アザゼル型の活動が新国連に確認されている。また、純粋ミールの一つ・アルタイルの到来に伴い、全世界のミールの欠片が「滅びではない未来」を模索している。
『HAE』の時点でミールとの交信ができる日野美羽が生まれており、『EXO』では彼女と同じ力を持つ〈エスペラント〉と呼ばれる人々が登場した。
『TBE』から「人の心と姿を持ちながらフェストゥムに近い存在」の総称として、〈エレメント〉という用語が登場した。フェストゥムに同化されながらも個を保った人間やミールの祝福を受けた人間、人との関わりで学習し人の姿を取るミールのコアが該当する。これに当てはまると明言されているのは、一騎、総士(転生前と転生後の両方)、甲洋、真壁紅音、乙姫、皆城織姫、2代目の操。
本編で確認されたミール
- 超古代ミール
遥か昔に地球に来訪し、類人猿からホモサピエンスへの進化の要因となったミール。
人類の大発展により極小化したが、現代でも人類の染色体と一体化して遺伝され、フェストゥムが現人類の思考を読めるのはその名残りとされている。
詰まる所、人類とフェストゥムは同じ起源を持つ同族である。
『TBE』まで作中で具体的明示はなく、公式の裏設定としてのみ明かされていた。
- 瀬戸内海ミール
超古代ミールに引き寄せられ、その次に来訪したミール。
2085年に瀬戸内海の海底で発見され、研究されていた。しかし、北極ミール襲来後、このミールが「生まれて死ぬのなら、生まれなければ死ぬことはない」と「死」の概念を誤解し、日本中の生物を死から守ろうとした善意から放たれた毒素が原因で、日本中の生物が受胎能力を失った。なお皆城鞘や近藤彩乃など、当時国外にいた日本人女性は難を逃れている。
2118年の新国連の核攻撃で日本列島が消滅してからは、研究のために三分割され、三つのアルヴィスに保管された。
第一アルヴィス・竜宮島(Dアイランド)のミールは、擬装鏡面内の島の大気に変異して被曝した世代の島民を守っており、現在の島のコアおよびファフナーにこのミールの欠片が使用されている。また、子供たちはミールの遺伝子汚染を防ぐフェストゥム因子を組み込まれている。
1期の後半ではミールが「死」を学ぶ過程で島に異常現象を起こし、コアである乙姫と共に滅びようとしたが、「ワルキューレの岩戸」に還った乙姫と完全に同期することで「生命の循環」を理解した。
『EXO』では「ウルドの泉」にて、命を終えた島民や島で倒した敵の数に比例して成長し、パイロットたちのSDP(超次元現象)の引き金となるゴルディアス結晶が十数年振りに発生した。更にミールは亡き島民の姿を取り、眠るパイロットと「存在と無の地平線」である結晶のもとで言葉を交わすようになった。
第二アルヴィス・蓬莱島(アヴァロン)と第三アルヴィス・海神島(アトランティス)はいずれも新国連に編入された後、前者は消滅し、後者は無人島になっていた。
- 北極海ミール(ポラリス)
人類が外宇宙探査機でメッセージ(あなたはそこにいますか?)を送ったことで来訪したミール。
地球の衛星軌道上に幾つもの分身(小ミール=コア)を配置し、全地球規模のネットワークを形成している。
シリーズを通して人類と戦っているフェストゥムの中核であり、少なくとも1期の時点では地球上の全人類を同化する目的で行動を行っていた。
第一次蒼穹作戦でマークザインに強化されたマークジーベンの狙撃によって砕かれたが、その直前にフェストゥムに個体であることを与えて全滅を免れている。砕かれた破片は小ミールとして活動を再開し、フェストゥム内に派閥を生んだ。
なお、「ポラリス」という通称は『EXO』で判明した。
- ボレアリオスミール
第一次蒼穹作戦の後で生まれた小ミールの一つで、北極ミールの欠片。空母ボレアリオスに根付いている。人類への敵意を抱かずに新しく生まれようとしていた中、人類軍の核攻撃で痛みに苛まれ、生まれることを恐れてしまう。
2148年、自身の派閥で体を構築していた総士と捕えていたミョルニアの情報から竜宮島の位置を割り出し、人型フェストゥム・来主操を遣わして、痛みを消すべく共に人類や他のフェストゥムと戦おうと勧誘した。しかし、島民がこれを拒絶したことで強硬策に出る。
最終的に美羽との対話で沈静化するが、人類軍の再度の核攻撃によって恐慌状態に陥り、美羽すらも取り込みかけた。しかし、操の制止と最期の導きで美羽を同化せず、地球生まれのミールとして新生した。
『EXO』では操の名前や姿、更に記憶を受け継いだコアと美羽の契約により、竜宮島と共闘する。
空母ボレアリオスの姿、及び保有戦力はそのままだが、当初は別の存在に擬態していた。
第一次蒼穹作戦の後で生まれた小ミールの一つ。元々はエメリー・アーモンドの弟が拾った保持していた北極ミールの欠片で、弟がミールに同化された後はエメリーが保持していたもの。今ではインドのシュリーナガルにて結晶の大樹の形態を取っていることから、世界樹や無憂樹とも呼ばれる。争いを教えないよう戦闘能力を放棄しているためにフェストゥムを生み出さず、竜宮島と同じく地球でも数少ない人類とミールが共生できる地域を形成している。
そのため、シュリーナガルエリアに限っては禁忌とされた広域通信も問題なく行える。
本人の意志とはいえ、アルタイルとの対話のために美羽の身体を急成長させようとした。
その翌日にロードランナーによって樹の部分を破壊されるが、コアにまで手が及ぶ前に戦闘が終結し、新たに根付くために海神島へと移送されることとなった。
ロードランナーの攻撃を受けたファフナー部隊に防壁を張ったり、余命幾許もない一騎に祝福を提案したりと、共存派の人類を庇護しようとする姿勢を見せる。しかし、成長過程であるために生命などについては美羽の身体の他、一度死んだ人間を二度にわたって蘇生するなど、完全な理解には及ばず、人間の生命に関してはまだ成長過程にある。
ベイグラントの干渉で瀕死の状態にまで追い詰められたが、第四次蒼穹作戦中、生き長らえさせていた数名の人間、更にエスペラントたちの命と引き換えに海神島に根付き、新たな人型のコアが誕生した。
『TBE』に登場するルヴィ・カーマが成長したコアである。
- フェストゥムの森
『EXO』第18話にて派遣部隊とペルセウス中隊が立ち寄った群れの密集地。敵意を持たないミールの欠片が流れ着き、森の形で群れを形成する。
大元のミールが敵意を持たないために攻撃される心配はないが、不用意に触れれば同化される危険はある。
戦いばかりの人類から憎しみを覚えた北極ミールが砕けたことでこのミールの影響下の群れは憎しみ以外の道を求め、逆に人類は戦い続けるばかりという皮肉な状況を物語ってもいる。
『EXO』で2151年に外宇宙から接近しつつあるミール。美羽曰く「おおきなおほしさま」で、BD-BOX付属のブックレットによると呼んだのはアザゼル型。
ナレイン・ワイズマン・ボースたちは人類とフェストゥムの共存派にとって有益な存在へと変えようと考えており、最も早く接触できるアショーカを通じて交信を試みているが、アザゼル型に阻まれている。そのために危険を冒してまで竜宮島と接触し、世界最高のエスペラントである美羽を、アショーカが最初に根付いた「バルカの水底」へと導いた。交信には成功したものの、幼い美羽では対話が成り立たなかった。
アザゼル型はアルタイルを各々の派閥に連ねようと行動しており、ベイグラントの情報からその存在を知った新国連も同様(破壊するという発言もある)であり、『EXO』では織姫曰く「ミールの奪い合い」と言える状況が展開されることになった。
最終話で地球に到達したが、甲洋をして「みんな支配される」、操をして「あんなのどうしろっていうの?」と言わしめ、ベイグラントの同化要請も無視している。
織姫と美羽の交信によって竜宮島側へ誘導したが、当初はフェストゥムの姿を取って竜宮島を丸ごと同化しようとした。
個体防壁も相当強力で、ツヴォルフの攻撃を弾いたうえでカウンターで結晶槍を打ち出し、ツヴォルフを一撃で沈黙させている。
未だに対話をなせる相手が世界に存在せず、その時に向けて竜宮島に眠りに就かせ、約2千人の住民は無人になっていた海神島に移住するという苦肉の策を取らざるを得なかった。未来を知る織姫曰くこれが最も希望のある結末であり、世界は「滅びではない未来」を迎えた。
個体活動とそれに伴う発展
北極ミールが破壊され、フェストゥムは個体活動を行うようになり、似通った思考を持つ個体とそれらを統率するミールの元で群れを構成するようになる。
『HAE』の来主操はその代表例であり、ミールがなくとも存在を望んだ個体。皆城総士と個人的な交流を持ち、「空を綺麗」と感じるなど人の感情を学んでいく。
『EXO』では40年に及ぶ戦いで人類が命をつなぐ術、飲食とその根幹を学習してそれを支える人類軍の重要拠点を襲うなど、人間に近づいた思考を獲得し、特にアザゼル型は悪意に基づいた嘲笑など人間の悪意の影響を最も受けたフェストゥムである。
『TBE』ではコアであるマレスペロ率いるベノンが本物の竜宮島で暮らした人間の記憶を元に偽竜宮島を作った上で本物の人間を交えた人間の生活を通じてその文化までも模倣し、家族という概念とその感情を獲得するまでに至った。ただし、生と死の概念を学んでも死者を悼む感情まではまだ及ばず、「灯籠流しが願いを書いたランタン飛ばし」になるなど、七夕とお盆が混ざった様相になっている。しかし、それを除外しても半世紀を通して限りなく人間に近づいている。