「咆えろグレイモン!!」
「あのデジモンがビッグスクリーンで大暴れ!!」
概要
1999年3月6日に『遊☆戯☆王』と『ドクタースランプ アラレのびっくりバーン』と共に公開されたアニメ映画。監督は細田守。
公開翌日から放送開始したTVアニメ『デジモンアドベンチャー』のエピソード0に当たる作品で、上映時間わずか20分の短編である。
企画は劇場版のほうが先で、後からアニメ版との連動が決定した。
なお、『デジモンアドベンチャー』の名を冠する作品はこの映画よりもかの有名な「Vテイマー01」が先んじており(1998年11月21日連載開始)、本作の製作にも影響を与えている。
作中の音楽は「ボレロ」のみが流れており、テレビ本編(第18話など)でも使用された。
テレビアニメと劇場版では相違点が若干あるが(本編とキャラが違う八神家の両親など)、この映画に相当する事件の話はアニメ版でも明かされる(そちらでは『光が丘爆弾テロ事件』として世間では処理された事になっている)。
なお、太一とヒカリ以外の後の選ばれし子供達も登場しているが、ほぼモブ扱いで声優も違う。
そのためデジモンシリーズでタケルが活躍していない数少ない作品でもあるのだが、太一とヒカリの視点で描かれているのだから当然といえば当然である。
特撮作品との関係
細田守監督と関弘美プロデューサーによるスペシャルインタビュー(『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(東映ビデオ)収録の映像特典「細田守監督・関弘美プロデューサースペシャルインタビュー」より。本編は本映像ソフトにも同時収録)によれば、「同時期にガメラ、モスラ、ウルトラマンが公開されるので怪獣映画で行け」(原文ママ)という東映からの指令を受けて「子供にとって怪獣とは何か?」という疑問を膨らませ、現在の形に至ったという旨の発言をしている(元々は「禁じられた遊び」のような作品を想定していたという)。
その為か、デジモンという名を冠していながら、テレビシリーズよりもデジモン達の表現は生物的であり、ダメージ描写も生々しい。
加えて大人たちの顔は伏せられ、出番も著しく少ないなど徹底して子供の目線で描かれており『ミツバチのささやき』というスペイン映画からの影響が明言されている。
ちなみに先ほど挙げた3作品は制作時期から考えて『ガメラ3邪神覚醒』、『モスラ3 キングギドラ来襲』、『ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』の事だと思われる。
このうち、『ガメラ3』と『超時空の大決戦』は同日に公開され、前者のプロデューサーは本作を視聴して絶賛していたのだが、実はガメラとデジモンにはもう一つ接点がある。
平成ガメラ第1作にあたる『ガメラ大怪獣空中決戦』には小中兄弟による構想の一つとして子供が見つけた卵がガメラになるというものがあり、このアイデアは『デジモンテイマーズ』や『小さき勇者たち~GAMERA~』になったとされている。
要は平成ガメラが存在しなければ現在のデジモンが存在していなかったのかもしれないのである。
ウルトラシリーズにもデジモンとの接点が存在し、後年になって販売されたデジタルモンスターの育成ギアの一つバイタルブレス(より正確には派生機の「バイタルブレスキャラクターズ」と「バイタルブレスBE」)では同期であるTDG三部作のヒーローが育てられるようになり、デジモンとウルトラマンが一つの機種に共存するという当時のスタッフには想像し得ない光景が実現している(加えて『BE』以前の機種ではVS_DimカードとVS_VBMカードを使えばクロスオーバーバトルまで実現可能)。
あらすじ
これは、後に太一達がなぜ選ばれし子供達に選抜されたのか、タケルが三軒茶屋、彼以外がお台場に引っ越した理由が今明かされるはじまりの物語。
1995年春。
光が丘団地に住む八神兄妹はある晩、書斎のパソコンで謎の卵の出現を目撃する。
翌朝、外出する母に留守を頼まれた太一は、ヒカリがその卵を抱えているのを発見。
その卵はヒカリの手から離れると、すぐに孵化して黒い奇妙な生き物が誕生。
太一は珍しそうに感じるが、ヒカリはその生き物と仲良くなる。
そして太一が目を離している間に、生き物の形が変わり2人の目の前に桃色の生き物がいた。
ところがヒカリが姿の変わった生き物に猫のミーコの餌を与えると、案の定ミーコは怒り出し爪を振るう。
餌を与えた張本人のヒカリは無事だったものの、食べた張本人である生き物とミーコを止めようとした太一が餌食になってしまう。
そして母が帰宅してきた夕方、生き物が口を開き『コロモン』と名乗る。
しかし、その夜コロモンの体に異変が起こり黄色い恐竜に変化して太一の部屋を出ようとする。
そしてしがみついていたヒカリも行方不明になってしまう。
胸騒ぎを覚えた太一は必死にヒカリを探しに行くと、上空に巨大なタマゴが現れそこから巨大な鳥が姿を見せる。
太一は合流したヒカリと共に鳥の攻撃に遭うが、コロモンは巨大な恐竜に変化して鳥と戦うも圧倒されてしまう。
しかし太一がヒカリの笛で応戦し、コロモンは鳥に攻撃する。
そして、夜が明けるとコロモンと鳥は忽然と消えてしまった…。
登場人物
本作の主人公。小学1年生。すでに一人で目玉焼きが作れる。
父のパソコンから出現したタマゴから生まれたコロモンと出会い、初めは警戒心を示していたが、コロモンをミーコからかばったことで親しくなる。
本作のヒロイン。幼稚園年少組。
父のパソコンから出現したデジタマを拾い、そこから生まれたコロモンと仲良くなる。
初期は言葉を話さずに笛でコミュニケーションを取っていたが、終盤では言葉を話していた。
なお、本編で本作での出来事を覚えていたのは彼女一人だったが、本編第29話にて彼女以外の子供達も思い出すことになる(というのも戦場が光が丘であった為である)。
八神家のパソコンから出現したデジタマから生まれた謎の生き物。
食欲旺盛でミーコの餌でも食べられるが、ミーコの逆鱗に触れ彼をかばった太一と共に餌食に遭う。
その夜、2人と1匹はパロットモンに襲われ、コロモンはアグモンに進化し、パロットモンと戦闘になり、グレイモンにも進化して、激闘を繰り広げた末、幻のように姿を消した。
後のテレビ版で太一とヒカリが出会うことになるコロモンはこの個体とは違う個体だが、「太一と初めて会ったとき、懐かしい感じがした」とも言っているので、この劇場版のアグモンと本編のアグモンの間には何らかの関係があると思われる(死亡してデジタマとして転生したという説とデジタルワールドと現実世界の間には時間の流れに差があることから本編アグモンの先祖である説などがある)。
八神家の飼い猫。
餌を奪われた際はコロモンに襲い掛かり、コロモンを庇った太一共々コロモンに引っかき傷を負わせた。
八神兄妹の両親。
当時はまだ設定が固まっていなかったため、共に「少し老けた倦怠期の夫婦」といった雰囲気。
完全体デジモン。
光が丘でコロモンと戦闘になり、その直後姿を消す。
小説版ではコロモンの回収に現れたホメオスタシスの使者という扱いになっている。
アグモンとパロットモンとの戦闘を一部始終見ていた光が丘に住む子供達。
スタッフ
- エンディング曲
関連イラスト
関連タグ
LASTEVOLUTION絆:本作のオマージュでパロットモンが登場。
THE_BEGINNING:該当作に登場する大和田ルイの回想シーンはこの映画の後の時系列となる(1996年頃)。
マンモン:本編の時間軸にて光ヶ丘に現れた古生物型のデジモン。対決した相手は奇しくも鳥型デジモンであり、この戦いを以って子供達は本作での出来事を思い出すに至る。