私有貨車
しゆうかしゃ
私有貨車とは鉄道事業者以外の一般企業が所有し、車籍のみを各鉄道事業者に編入及び管理している貨車である。所有者は鉄道事業を営むわけではない荷主の企業であるが、車籍はJR貨物(国鉄)に置かれる。原則として「貨車」の保守点検はJR貨物が引き受けており、JR車と同じ基準において安全検査を行なっている(なお例外として変圧器輸送用大物車は特殊な検査設備や専門知識、体制を要するため企業側がこれを行っている)。
荷主にとっては自社製品専用の貨車であり、他の用途に使いまわす必要がないため汎用性は求められない(国鉄時代の私有貨車制度では、汎用性のある有蓋車や無蓋車、コンテナ車の私有が認められていなかったという側面もある)。そのためタンク車(石油、化学薬品、セメントなど)やホッパ車(セメント、石炭、石灰石など)、長物車(レール製品、コンテナなど)など、輸送製品の特製に合わせ特化した形式の車両が選ばれる事が多い。
また私有であることを示すため、JR線上を走行する私有貨車の場合は車体側面には所有会社社名・社紋、及び常備駅が必ず表示されている(諸般の事情により、意図的に一部の表記を省いたホキ9500形などの例外もある)。
なお私有貨車による輸送についてはJR貨物の輸送運賃から15~20%割り引かれる。さらに復路が空荷で発駅に戻る場合、これに対応して発駅から60kmまでは無賃で返送する。という運賃計算上の「特典」がある。
昨今では鉄道輸送におけるセメントや石炭などの鉱物資源の減少、あるいは消滅に伴い、私有貨車の約8割が石油輸送用タンク車で占められているといわれる。
貨車以外では、国鉄民営化まで郵政省が所有していた郵便車、2004年まで運用されていた日本銀行所有の現金輸送用荷物車、大井川鐵道が使用している日本ナショナルトラスト所有の旧型客車など、客車でも鉄道事業者以外が所有者となる場合がある。
国鉄・JR
(形式名):(所有会社名)を示す。
無蓋車
JR貨物トキ25000形:東邦亜鉛
ホッパ車
主なもののみ記載
ホキ2000:矢橋工業
ホキ5700:太平洋セメント、秩父セメント、小野田セメントなど
ホキ8500:三菱セメント(現三菱マテリアル)
ホキ9500:矢橋工業、新東京国際空港公団
ホキ10000:太平洋セメント