概要
防衛大学校を首席で卒業したエリート中のエリートであり、自衛隊特殊戦略作戦室の室長を務める。自衛隊での階級は三等特佐。「特佐」というのは架空の階級であり、本名は黒木翔(くろきしょう)。
若さ故の粗はあるが、冷静な判断力・指揮能力と大胆な作戦展開により、ゴジラをはじめとする怪獣たちを相手に多大な戦果を上げた人物である。
活躍
ゴジラVSビオランテ
演:高嶋政伸
「私の仕事は、敵に勝つか負けるかです。」
ゴジラ復活まで
およそ5年の沈黙を破り、三原山の火口に沈められていたゴジラが活動を再開したことを受けて、ゴジラ襲来に備えて行動を開始。
権藤吾郎一佐と共に、桐島一人博士や白神源壱郎博士の元を訪れて抗核エネルギーバクテリアの研究開発促進を依頼し、三友重工の開発していたスーパーX2の視察を行う。
ゴジラとビオランテとの初戦まで
ゴジラが三原山の爆発によって目覚めた後は対ゴジラの陣頭指揮を執ることになる。
まず、東京に向けて北上するゴジラを足止めするべく、浦賀水道へスーパーX2を出撃させる。ファイヤーミラーで放射火炎を打ち返してダメージを与えるなど奮戦するが、長時間に及ぶ戦闘の末、ファイヤーミラーが放射火炎の高熱を受けて溶解を始め損傷、さらにゴジラの放射火炎と尻尾の一撃を受けたことで操縦不能に陥り、スーパーX2は撤退を余儀なくされる。だが、ゴジラの進撃を食い止めることこそできなかったものの、東京再上陸という最悪の事態は回避された。
また、スーパーX2とゴジラの戦闘中、サラジア共和国のエージェントにより抗核バクテリアが奪われていたことを受け、「ゴジラは三浦、館山間の海上(東京湾)で釘付けになっている」と虚偽の情報を発表するよう要請。山地統幕議長からは「それは情報操作ではないのか?」と苦言を呈されたものの、結果的に逃走中だったエージェントの国外脱出を妨害することに成功する。
その後、箱根の芦ノ湖でのゴジラとビオランテの戦いを見守り、山地統幕議長の「いったいどうなるんだ?」との問いかけに対し、「勝った方が我々の敵になるだけです」と返答している。
ゴジラの大阪襲撃まで
ビオランテとの戦いに勝利し、駿河湾に姿を消したゴジラを追跡すべく、超能力少女の三枝未希の協力を仰ぎ、遠州灘でゴジラを補足。5年前、ゴジラが核エネルギーを求めて静岡県の井浜原発を襲撃したことを踏まえ、ビオランテとの戦いで消耗したゴジラは、原発の密集している福井県の若狭湾を目指して最短ルートで移動すると推測し、伊勢湾に陸・海・空の戦力を結集させ、ゴジラに総攻撃をかける作戦を立案する。
ところが、黒木の予想に反してゴジラは紀伊水道に姿を現し、大阪市街へめがけて一直線に進行を開始する(この少し前、権藤が「もし、ゴジラが現れなかったらどうする。俺なら確実に相手が現れる若狭だな」とぼやいていたが、その予感が的中することとなった)。
志村幕僚長や山地統幕議長は伊勢湾周辺に展開していた陸上部隊を大阪へと移動させて迎撃する事を提案するが、黒木は到着が間に合わないと判断し(もちろん統幕議長や幕僚長もそんなことは百も承知であり、山地は「そんなことはわかってるよ!しかし、やるしかないだろう!!」と怒鳴り散らしている)、大阪にはマッハ1の巡航速度を誇るスーパーX2のみを派遣し、陸上部隊は若狭に向かわせて体勢を立て直すことを決断する。スーパーX2はファイヤーミラーを損傷して万全な状態ではなく、この決断は大都市:大阪を見捨てるも同然のものであったため、山地らからは反対の意見も上がったが、黒木は、あくまでゴジラ殲滅を優先事項としながらも(冒頭の台詞はこの時に述べたもの)、山地に大阪への避難指示を依頼、市民の避難が完了するまでできる限りの時間稼ぎを行うことを約束した。
大阪に向かうゴジラに対し、黒木はテレパシー能力を持つ三枝未希を関西国際空港建設予定地へと向かわせ、ゴジラを足止めしようとする。自衛官でない一般人の少女をたった1人で立ち向かわせることには異論もあったが、黒木は「彼女も我々のチームの戦力です。少しでもゴジラの大阪上陸を引き伸ばせるかもしれません」と作戦を断行する。…が、やはりゴジラを食い止めることはできず、ゴジラが市街地に接近しすぎたために護衛艦による攻撃も不可能となり、ついにゴジラの大阪上陸を許してしまう。
だが、この間に権藤一佐と桐島博士の手により、抗核バクテリアが奪い返されたため、黒木は大阪市街でゴジラに抗核バクテリアを打ち込むことを計画。スーパーX2をゴジラの元に向かわせ、「ありったけのミサイルとバルカン砲」を発射して、ゴジラを権藤一佐率いる特殊部隊の待ち受ける大阪ビジネスパークの高層ビル街へと誘導する。途中で弾切れを起こすが、黒木は陽動を続行すべく、損傷していたファイヤーミラーの使用を強行、放射火炎の熱に耐えきれずにスーパーX2は爆発炎上して撃墜されるが、ゴジラがスーパーX2の爆発に気を取られた隙に特殊部隊の放った抗核バクテリア弾が命中、さらに権藤一佐の捨て身の攻撃によりもう2発が命中する。これにより、大阪市への多大な被害、スーパーX2の撃墜、そして権藤の殉職という大きな代償を払いながらも、黒木はゴジラに抗核バクテリアを撃ち込むことに成功したのだった。
サンダービーム作戦~ゴジラとビオランテの2度目の戦いまで
ゴジラの体内に抗核バクテリアを撃ち込んだまでは良かったが、ゴジラの体温が抗核バクテリアの増殖には低すぎたために効力がなかなか現れない。そこで黒木は試作中であった人口落雷発生装置M6000サンダーコントロールシステムを設置し、ゴジラに落雷攻撃を仕掛けて体温を上昇させるサンダービーム作戦を決行する。
予想通り若狭に出現したゴジラに対し、自衛隊による総攻撃が行われ、サンダーコントロールシステムの作動によりゴジラの体温が上昇。ようやく抗核バクテリアの効果が出始める。しかし、なおもゴジラは攻撃の手を緩めず、自衛隊は徐々に追い込まれていく。もはやこれまでかと思われた時、突如、植獣形態へと進化を果たしたビオランテが出現し、ゴジラとの2度目の戦いがはじまる。この戦闘の結果、ゴジラの体温はさらに上昇し、抗核バクテリアの作用により、遂にゴジラを昏倒させることに成功する。
直後、サラジア共和国の指示を受けたエージェントが白神博士を射殺して逃亡しようとした。彼を追い詰めた桐島博士は逆に銃を向けられて絶体絶命のピンチに陥るが、黒木は咄嗟の気転でエージェントがサンダーコントロールシステムの電位差発生装置の上に立った瞬間を狙って人工雷を発動、エージェントを消滅させて桐島の命を救った。
その後は、意識を回復して海上へと去っていくゴジラを見送り、山地統幕議長から手渡された帽子を被って部下と共に引き上げていった。
ゴジラVSデストロイア
演:高嶋政宏
「これで来年度の予算はゼロだな。来年度があればだが。」
『VSメカゴジラ』以降、ゴジラとの戦闘を行う組織が国連G対策センターのGフォースへと移行したため長らく出番がなかったが、『VSデストロイア』では、体内炉心の暴走を起こしたゴジラに対してGフォースが攻撃手段を持たなかった(核爆発を誘発する恐れのある火器兵器しか所持していなかったため)ことから、日本政府の要請により、再び自衛隊が日本防衛の任に当たることになる。
黒木はスーパーX2の後継機であるスーパーXⅢに搭乗し、四国電力の伊方原子力発電所を目指して海上を進むゴジラの迎撃に当たった。
ゴジラの周囲に冷凍弾を発射して氷漬けにして動きを封じ、最後は咆哮して口を開けたところへカドミウム弾を打ち込み、体内の核分裂を抑制させることでゴジラを海中に沈めることに成功。これにより原発破壊およびゴジラの核爆発という最悪のシナリオは回避された。
しかし、想像以上の高熱化を遂げていたゴジラは約6時間後に復活。さらにこのままではメルトダウンを起こす可能性が高いことが判明する。伊集院研作博士の要請により、万が一の事態に備えて冷凍兵器を備えた自衛隊の再出撃が決定。黒木も再びスーパーXⅢに搭乗することになる(上記の台詞はこの時につぶやいたもの)。
ゴジラ上陸後はデストロイアとの交戦地帯からやや離れた場所で待機していたが、ゴジラのメルトダウンが近づいたことを受けて離陸。
デストロイアがゴジラの猛攻を受けて空へ逃亡を計った際、陸上の冷凍メーサー車との一斉攻撃によりデストロイアを撃墜・爆死させる((これは、VSシリーズにおいて人類が怪獣に止めを刺した唯一のシーンである)。
最後は、メルトダウンを起こしたゴジラに対し、最大出力の冷凍攻撃を浴びせてメルトダウンの被害を最小限に抑えるべく尽力した。
余談
- 映画では2作のみしか登場していないが、坂井孝行氏による漫画版(別冊コロコロコミックに掲載)では三枝未希を差し置いてVSシリーズのすべての作品に登場しており、ある意味人類側の主人公的な立ち位置にいる人物となっている。
- 当初は『VSデストロイア』でも高嶋政伸が演じる予定だったが、スケジュールの都合で調整が付かず、兄の政宏が代役を務めることとなった。なお、政宏は『VSメカゴジラ』でガルーダのパイロット:青木一馬を演じており、『VSデストロイア』では「あとはよろしく!」という青木一馬を意識したと思われる台詞が存在する。