概要
アニメ機動戦士ガンダムで描かれた戦争。宇宙世紀0079年に地球統一政府である地球連邦と、宇宙移民の独立国であるジオン公国との間に起きた戦争である。機動戦士ガンダムはこの戦争の後半、9月18日のサイド7強襲作戦から終戦までの期間が描かれる。
背景
開戦の理由については地球からもっとも遠い宇宙都市「サイド3」が、宇宙移民者であるスペースノイドの自治権を要求した事が挙げられる。
宇宙世紀において、人類の大半が宇宙へ移民したにもかかわらず、一部の富裕層や連邦政府の高官といった上流層は地球へ留まったまま(作中でも13話にてカイ・シデンが「地球に家があるだけでエリートさ」と発言している)であり、対して宇宙移民者は重力や空気、水に対して重税を課され、苦しい生活を強いられていた。宇宙移民も半世紀が過ぎる頃にはコロニーのなかで一生を終える者が出始め、自分たちの生活に直接関係しない地球からの独立を訴える声が日増しに強くなっていた。
その不満に応えるかのように、思想家ジオン・ズム・ダイクンが「スペースノイドの間から人類の革新『ニュータイプ』が生まれる」とする思想ジオニズムを説き、コロニー群の一つで月の裏側に位置するサイド3の独立運動を行った。時代の流れに乗ったこの運動はジオン共和国の建国に至り、宇宙移民の独立自治を主張する共和国とそれを認めない地球連邦との緊張は次第に高まっていった。
しかしジオン・ズム・ダイクンは志半ばで病に倒れ(毒殺されたという説もある)、代わってデギン・ソド・ザビが公王を名乗りサイド3をジオン公国として成立させている。デギンとザビ家が主導するジオン公国は連邦との開戦準備を進めていった。
経過
U.C.0079年 1月3日、サイド3はジオン公国と名乗り、独立国家として地球連邦に宣戦布告。戦争状態に突入した。ジオン公国と地球連邦の国力差は実に30倍の開きがあり、普通なら勝負にすらならない状況であったが、ジオン公国は新技術と新戦術によってそれらを覆す方針をとった。
この戦争の初戦、後の『一週間戦争』により核兵器・毒ガスの使用、コロニー落としで、地球圏に於ける総人口の半分が死滅。この結果を受け、両軍はこれら大質量・大量殺戮兵器の使用を禁止し、捕虜の扱いなどを明記した「南極条約」を締結しているが、ジオン側は要求を飲まなければ行為を繰り返すと脅している。
また、開戦当初は艦艇と戦闘機が主力であった連邦に対し、ジオンは人型兵器モビルスーツやモビルアーマー、電磁波に干渉するミノフスキー粒子などを実戦に投入し、これまでの大艦巨砲主義の情景を一変させた。
…とはいえ戦略的にジオン公国の立場が優位に立った訳ではなく、地球連邦との国力差は補給路の長さから戦線を維持する関係で数ヵ月の膠着状態に陥る。
連邦側も初戦の大敗からモビルスーツの能力を認め、MS開発計画「V作戦」が開始され、伝説の名機RX-78-2ガンダムによって戦況は大きく動くことになる。ガンダムがもたらしたデータによって作られた量産機ジムなどの活躍により、ジオン公国との技術格差を埋めた連邦軍は反撃に打って出る。
チェンバロ作戦・星一号作戦によってジオン公国は宇宙に於ける影響力を失い、ザビ家の中心メンバーも戦死しジオン軍は壊滅状態に至った。その後、ザビ家を失ったジオン公国は宇宙世紀0080年1月1日ジオン共和国臨時政府を開き、地球連邦との和平締結にいたり一年戦争は終結した。
影響
一年戦争は宇宙世紀における戦争の幕開けであり、その後の歴史においても大きな爪痕を残した大戦争であった。
宇宙世紀全ての戦史において最も悲惨な戦争であり、開戦前は110億人に及んだ人類の総人口は55億人にまで激減してしまう。
一年戦争の余波は社会の歪みをもたらし、後のグリプス戦役や第2次ネオ・ジオン抗争などの争乱の遠因となり続けた。
∀ガンダムにおいても一年戦争は黒歴史の幕開けとして描かれている。
名称
開戦(1月初め)から終戦(12月末)までほぼ1年だったため、終戦後に連邦によってつけられた名称である。当然ながら機動戦士ガンダム初回放映時には、作中でこの名称で呼ばれていない。
そもそも放映当時の設定では各媒体で異なっており、0078年12月(それ以外にも多数存在する)に始まったとするものや、1月末に終戦条約を結んだとされるものがあり、これらの日付は統一されていなかったが、後に公式歴史をまとめた際に正式に1月開戦、12月終戦とされている。
なおジオン側からすればあくまで連邦からの独立を目指した「ジオン独立戦争」であり、ザビ家崩壊の後に樹立したジオン共和国は連邦の傀儡として、ジオン残存勢力は終戦を認めず、戦後も「独立戦争」の名前で呼んでいた(エギーユ・デラーズの連邦への演説時など)。