概要
アニメ版ポケットモンスターシリーズにおいて、主人公マサラタウンのサトシがリーグで優勝するという展開もないまま、実力・年齢などがリセットされながら20年過ぎても主人公でありつづける状態。
特に新シリーズになると実力がリセットされ弱体化しているように見えると指摘されていた事が多く、肯定的な意味で使われることはほとんどない。
なお、こういったことがあるからといって、サトシのキャラクターそのものを中傷すること、実際の製作に携わっている脚本家などスタッフ陣や声優陣への非難は筋違いと言わざるを得ないだろう(後述の『理由』参照)。
『リセット』について
実力
XYの放送開始までは新シリーズ序盤になるとリセットされ、以前の経験が生かされずに新人トレーナー・素人に負けるのが当たり前だったと言っても過言では無かった。
それが繰り返されていたきっかけとしてサトシは、AG編に入る前のライバルシゲルの影響により、新しい地方に旅立つ際はピカチュウ以外のポケモンをオーキド博士の研究所に預け、初心に帰って冒険をしていた。
サトシが強くなったポケモン達であっさりジム戦を突破していくなどと言った展開を防いでいる他、メタ的な理由としては新しいゲームのポケモンの販促の為ではないかと言われている。
一方、サトシのトレーナーとしての実力そのものが落ちているのではないかと疑れたケースとしては『ダイヤモンド&パール』で徹底的に自身のバトルスタイルの欠点を突いてくるシンジとの度重なるバトルでの敗北を糧にリーグベスト4で終えるほどの実力を身につけたサトシが直後の『ベストウイッシュ』で博士に貰ったばかりのシューティーのツタージャにピカチュウが負けた事が挙げられる。
記憶
記憶に関しても、今までのシリーズで会ったことがあるはずのポケモンも初対面のようにポケモン図鑑で調べることもある。
ただしこれは長期におけるキッズ・販促アニメの都合上、初見の視聴者への説明の為だろうとする評も有る。
サトシ自身も知ってこそいるが、確認を兼ねて調べるという風に描写されることもあるし図鑑を開いている余裕の無い状況(悪人や野生ポケモンに追いかけられ命の危険が有る)のときはすんなりとポケモンの名前を口に出している。
また一部のシリーズでは図鑑を見る人物が、サトシは新ポケモン、別キャラは既存ポケモンと分担分けされる場合もあるのでサトシやアニポケスタッフが忘れていると決めつけるのは早計である。
同様に劇場版ポケットモンスターでの出来事は、映画未視聴者・海外展開への配慮のためか、アニメ本編で触れられることはほぼない(例外は現時点ではアヤカやラティオスぐらいであり、しかも映画を見た人なら気づく程度のファンサービス)。
リーグ戦
約25年、6つのシリーズを終えているが、オレンジリーグでの「名誉トレーナー認定」を除くと、直前に会って親しくなったライバルに敗北し優勝どころか勝利すら逃すケースが多いので長らく批判されてきた。
このアニメはサトシを優勝させる気が無いのではと評された事も有ったがS&Mのアローラリーグで優勝を果たしネット上で大きく取り上げられ話題になった。
ただし、他の地方のリーグのようにバッジを一定数所有するなど出場条件が設定されていなかったり四天王と対峙する等が無かったのでポケモンリーグ協会の公認大会であるかは不明。
(とはいえ、四天王→チャンピオン戦→殿堂入りという原作に存在するやりとりがアニポケにおいては曖昧である。)
現シリーズのポケットモンスター2019年版(以下、第7期と表記)ではチャンピオンシップに挑戦中である。
現時点での成績
- 【無印】ポケモンリーグ・セキエイ大会:ベスト16
- 【無印:金銀編】ジョウトリーグ・シロガネ大会:ベスト8
- 【AG(アドバンスジェネレーション)】ホウエンリーグ・サイユウ大会:ベスト8
- 【DP(ダイヤモンド&パール)】シンオウリーグ・スズラン大会:ベスト4
- 【BW(ベストウイッシュ)】イッシュリーグ・ヒガキ大会:ベスト8
- 【XY】カロスリーグ・ミアレ大会:準優勝
- 【S&M】アローラリーグ・マナーロ大会:優勝
理由
ピカチュウや魅力的な悪役ロケット団の人気が出すぎた結果、特に商業的な意味において主人公交代などの機会を失ってしまったことが主な理由と考えられている。
ピカチュウは言わずもがな世界的に圧倒的な知名度を誇り、ロケット団もファーストシングル『ロケット団よ永遠に』(2001年)が約22万枚の売上を挙げたように、主役回も名作ぞろいで非常に人気が高かった。
総監督湯山邦彦氏は、放送開始当初の人気から、アニメポケモンを10年は続けたいと考えていた(その10周年は『DP』中に達成)。
前述の人気と総監督の思惑もあってサトシとピカチュウ・ロケット団は『AG』『DP』と10年間ほど続投し続け、結果としてサトシ達は国民的アニメに準ずる知名度を得た主人公・キャラクターである。
そのため、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』等のように、世代が違っても「サトシとピカチュウとロケット団」という共通の話題をすることが出来る、「サトシだから」と再びアニメを見るようになるといった効果も狙えるほどになったとファンの反論もある。
キャラクターの人気が出すぎたために、ゲームのような登場人物達の世代交代の機会を失ってしまったのである。
初代を除いた多くのシリーズで「初心者ないし中級者扱いのトレーナー」といったポジションとなっている。
また、『XY』の矢嶋哲生監督は『アニメスタイル010』(2016年12月27日発売)のインタビューにて、「サトシは(この後のシリーズでも活躍し続ける予定のため、簡単に成長を描くわけにもいかず、)成長を描くのが難しかった」と語っている。
例え物語上無理があることではあったとしても主人公交代に失敗し人気の失墜していった作品はよくある話であり、商業的な面において交代をさせる必要性が失われた。
そのため、主人公交代をスタッフの上層部ないしスポンサーがリスキー・不安に感じていることが原因と思われる。
矢嶋監督の発言からも『XY』の時点で、サトシの主人公続投はすでにシリーズの既定路線であったことが伺える。
サトシがリーグ優勝を中々果たせなかった、年を取るといったことがないことも、上層部があくまでターゲット層は幼年層という理由から、サトシをそういった一般の少年のポジション(初期の主人公)から動かしたくないと考えているのかもしれない。
最初の構想
最初のシリーズ構成である首藤剛志氏は、1年半放送予定(長くて4年程度)の元、ストーリーを想定していた。
元々はバトルを極め『ポケモンマスターになる物語』ではなく、『自己存在とは何か』『共存は可能なのか』といったテーマの元に「ポケモンと人間の抗争」「ロケット団の3人組を見本とする人間とポケモンの共存」を描き、そして『子供が成長し、大人の世界を歩む』ような話にしたいという思いから「最後はポケモン達のいる夢の世界を卒業し、他者との共存を志し現実世界を歩みだすサトシ」という物語を構想していた。
アニメ無印の「ディグダ」回・ロケット団のニャースの過去回、劇場版の『ミュウツーの逆襲』など、いくつかの話はそれらの伏線の名残でもあり、最終回に深くつながるはずだったらしい。
しかしポケモンの人気が予想外の勢いで急上昇したためにその構想は頓挫した。
その詳細についてはポケモンの没プロットを参照。
問題点
大人の事情
サトシが少年であり続けることに対して、「新しい世代がターゲットだから少年のままなのは当然」という擁護や作品ごとに挑戦していくスタイルは素晴らしいという評価もあったりするが、そういった挑戦自体はいいものとしても新しい世代・子供をターゲットとしているならば、尚更新しい主人公ではなくサトシで続ける理由もない。
リーグ優勝すらできないことに対して「負けても、続けていくことに意味がある」という擁護もあるが、『DP』等はそんな積み重ねを無視した暴力的な展開そのものだった。
結局の所、サトシの続投は、『ドラえもん』のような日常系の作品でもないにもかかわらずキャラを固定しようとし続ける、商業的な大人の都合でしかなくなっていることは否めなかったのである。
終わりが見えない
20年ほど続いているアニメ作品は『ちびまる子ちゃん』『ドラえもん』『サザエさん』『クレヨンしんちゃん』『忍たま乱太郎』『おじゃる丸』等、日常系アニメがほとんどである。
日常系ではないストーリー作品においても、『名探偵コナン』『ONEPIECE』など、原作者の手により現在進行形で原作が描かれ、話が進んでいくことが普通である。
原作又はあまり原作者の関わってない物語ものの長期シリーズでも、『遊戯王(GX以降)』シリーズ等のように、少しずつ主人公を成長させ、数年毎に主人公や場合によっては世界観も改められる、というのが基本的な流れである。
しかし『アニメポケットモンスター』の場合、ストーリー作品でありながら、サトシは肉体面も含めて成長させてもらえていない。
ゲームでは一つのクライマックスであるリーグでの四天王との対決さえも、リーグで挑むどころかまともにバトルしたことがわずかであり、シリーズによっては四天王が登場しないことさえ普通にある。
その上、アニメオリジナル作品であるため、原作者のいる上記の作品とも異なり、明確な話のゴールは存在しないことが、「終わりが見えない」という形になって出ており、ファンの不満に繋がることが多い。
そのためか、BWとSMは日常系の演出・ギャグ回を多くしたり、逆にXYでは年齢設定が(一時的に)無くなりサトシが仲間をリードする先輩ポジションに、第7期では1話完結型にする…と近年のシリーズではこの不自然さを和らげようと試みる作劇が取られるようにもなっている。
アメコミなどはシリーズ毎にキャラクターや世界観を一新・リファインして新たな物語を描くことで解消しているのに対し、こちらはそういったこともなし・もしくは曖昧なまま続けているのも不自然さの一因といえるだろう。
こちらは、『キミにきめた!』 以降の劇場版シリーズなどにおいて、ようやく“世界観のリセット”が行われるようになった。
ポケモンマスター
サトシの夢のポケモンマスターとは具体的に何なのか、実はほとんど言及されたことがない。
サトシは無印1話にて「最高のポケモントレーナー、いや、ポケモンマスター!」と話しており、作中での度々の発言から「最高のポケモントレーナー」であることは分かるが、『ONEPIECE』の「海賊王」や『NARUTO』の「火影」などのような、「○○をすればポケモンマスター」のような明確なゴールラインが存在しない(設定されていない)様子。
メタ的なことを言えば、「最高のポケモントレーナー」以上には詳しく設定はされていないだろう。
ちなみに最初のシリーズ構成首藤剛志氏自身は、前述の『最初の構想』の項の通り、ストーリーのゴールラインを「ポケモンマスター」に設定しておらず、「(前略)となれば、『ポケモン』のエピソードの中に、主人公の本来の目的である、ポケモンを戦わせるポケモン使い(?)の最高位であるポケモンマスターになるという事以外に、何か別の価値観を入れる事が必要となる。」と述べていた。
「サトシがポケモンマスターになり、最強のポケモンとなったピカチュウはポケモン達のリーダーとしてポケモンと人間の対立に巻き込まれる」構想をラストの物語に考えていたため首藤氏自身も、ポケモンマスターについて最高位のトレーナー程度の認識で、そこまで重点的に考えていなかった様子。
『DP』より構成を引き継いだ冨岡淳広氏自身も度々サトシに「ポケモンマスター」を発言させていたが、具体的な内容は語っていなかった。
初代や『AG』ではサトシ以外にもポケモンマスターを目指す人物が登場していたが、映画『キミにきめた!』や第7期では、周囲の人物が聞いたこともない造語?として扱われている。
第7期では「ポケモンバトルで最強を目指す」ことを夢に掲げ、今まで曖昧だった「サトシの目指すポケモンマスターとはどのような存在か」に一定の方向性が与えられた。
日常回のワンパターン化(〜『DP』)
『無印』において、シリーズ構成首藤剛志氏が考え出したロケット団の存在とその人気により、首藤氏にとっても予想外であった(首藤氏はロケット団を単なる三枚目にしたいとは考えていなかった)が日常回が完成された形になってしまった。
具体的には、
- サトシ達がゲストキャラと出会う
- ゲストキャラないしサトシ達が自分の問題と向き合う
- ロケット団が妄想したり貧乏生活に向き合いながら作戦を練る(AG・DPに多い)
- ロケット団が来襲。交戦し、苦戦しながらも自らを成長させて撃破する
この形が完成され過ぎたこと、放送が長期間であったこと、シリーズ構成が無印後半から『AG』まで不在であり話の軸が立てづらかったこと、登場人物のうちサトシ・ピカチュウ・ロケット団は固定されていたこともあってか、結果として『DP』まで日常回はワンパターン化しており、これが使われないのは時折あるバトル回かロケット団主役回、悪の組織対決回程度だった。
その反省を生かしてか『BW』ではロケット団がシリアス化してレギュラーから外れ日常回に幅が出るようになったり、『XY』ではスポットをキャラクターの成長に当ててロケット団の出番を若干減らしたり、『SM』では従来の旅からポケモンスクールを主軸にした学園ものに変えて日常回の幅をいっそう広げる、『新ポケットモンスター』は1話完結方針にする等、以降はワンパターン化しないように変更している。
主人公交代の試み
前述の「理由」の通り、長期化により続投となったサトシだが、今まで主人公交代の試みはなかったのかというとそれらしきものは過去に一度あった。
2001年12月30日には『ポケットモンスタークリスタル ライコウ雷の伝説』というスペシャルが放送。
世界観はアニメ本編と共通ながらも、金・銀・クリスタルVerの主人公を元にしたケンタが主役。
ケンタはジョウト御三家の最終進化系のバクフーンを相棒として使う・ムコニャではないロケット団がシリアスな悪役として登場する等、アニメ本編とは趣を変えた試みがなされたものの、満足する結果にならなかったのか主人公を変えた大規模なスペシャルはスピンオフや世界観が違うものを除いて殆ど行っていない。
他にも、世界観はアニメ本編と共通しているスピンオフ企画には『ポケモンサイドストーリー』、映画『神速のゲノセクト_ミュウツー覚醒』の序章となるバージルが主役のスピンオフ『覚醒への序章』があるが、こちらは単なるゲストキャラ・レギュラーに焦点をあてた番外編か映画の宣伝を兼ねたもの。
『ポケットモンスターXY』では、アランを主人公として、時系列が同じの『最強メガシンカ』という特別篇が度々行われたが、こちらは本編で扱いづらいメガシンカについて重点的に取り上げたもの。
本編『ポケットモンスターXY&Z』での前日談ともなっており、アランは本編でサトシ達とバトルしたり共闘している。
世界観が異なる作品としては、ゲームのストーリーをアニメ化した『ポケットモンスターTHE_ORIGIN』『Pokémon Generations』が作られている。
第7期ではダブル主人公のゴウを新しく据え大きくスポットを当てられている。
関連イラスト
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ポケットモンスターSPECIAL…読者からの人気は高い一方で、アニメ化などはなされたことがない。
バディファイト…小学生低学年向けのTCGアニメ。主人公は同じながら、新シリーズ毎に周囲のキャラが変わったり成長がリセットされる似たスタイルを取っていた。最終的に、4.5期のオールスターファイト編を最後に、主人公の息子の代へと世代交代することになった。
アスラン・ザラ…機動戦士ガンダムSEEDの準主人公。原因が違うものの、続編に突入すると同時に突然弱体化するスタイルを取っていた。