害虫
がいちゅう
概要
害虫とは、人間に局所的に何らかの被害をもたらす、あるいはもたらす危険性を示唆されている陸生節足動物および陸生無脊椎動物を指した言葉。類似語として害獣、害鳥、害魚などが存在する。
例として挙げると、農産物に対して食害や育成における被害を与える虫に対して用いられる「農業害虫」など。
他にも、病原菌やウイルスを運ぶ、または媒介する虫を「衛生害虫」などとも呼ぶ。
元々は、上記のような専門用語として用いられていたのだが、一般的に使用されるにつれて、指定範囲があいまいになり、害虫という単語そのものに的確な意味を持たないものが莫大に増えてしまった という現実である。
「害虫」という単語
前述したとおり、人間の利益を前提にした分類であり(益虫も同様)、一般的に用いられるようになって、その「害虫」という単語の意味するものは希薄になっている。
生物というものは自然に生きる上で、必ず何かしらのメリットを生み出し、また何らかのデメリットを生み出すものである。
例えば、一見無害に見えるモンシロチョウなどのチョウの仲間は、幼虫の時に植物を食害するので、「害虫」としてカテゴライズできるわけだ。
逆に、年間に多くの被害者を出しているスズメバチは、本来人を刺傷するとして「害虫」にカテゴライズされるが、スズメバチは非常に制圧力がある(特に日本で一番強大なオオスズメバチは、他のスズメバチすら食い殺す)ため、外来生物を帰化させないなどの働きを見せることもあり、一概に「害虫」とひとくくりに出来ない場合もある。
不快害虫
「容姿がキモいから」という人間的な、あまりにも人間的な理由で嫌われる哀れな虫達のこと。その定義は人によって異なる。
土を食べるミミズや落ち葉を食べるダンゴムシやワラジムシも、土壌を豊かにする第一次消費者なのだが、人によっては「害虫」として扱われ、たちまち殺虫剤の犠牲者となってしまう。
外見、または性質・生態を生理的に嫌悪すること、一部の虫に対して過剰に恐怖する一種の精神病・恐怖症は、昔から往々に存在していたものだが、文明発展と都市化が著しい近現代では、都会を中心に虫との関わりが薄くなっているため、虫を見ることに精神的被害を被る人が増加。人々の虫への嫌悪は留まらず、都市化の進展により影響は全世界に及んでいる。
また虫には危険な寄生虫・細菌・ウイルス・毒などがあることが多いため、進化の過程で虫嫌いが生き残ってきたということも考えられる。
養老孟司などは虫嫌いは社会問題としており、度々議論のタネとなっているようだ。
対策
このように、害虫とはあくまで人間のエゴによるものであり、生態系保護の観点ゆえ「皆殺しにしてしまえ、絶滅させろ」などと一概に言えない事情もある。
とはいえ農林業は元より工業、日常生活においても野放しにはできないため、人類と虫の数百万年に渡る抗争を経て様々な対策が取られていた。
要するに殺虫剤や消毒剤、農薬により虫を殺害する。木材害虫や衛生害虫などに効果的。農業においても当然使用される。
ただしやりすぎると益虫まで一緒に殲滅してしまう他、耐性を持つ進化体が出てくる。第一、人間や家畜にも影響が出ないわけではない。無論、カブトムシなどを飼育している部屋で蚊取り線香やゴキジェットを使うのは言語道断である。
昆虫の多くは嗅覚が発達しているため、虫の嫌う成分などを置いておき、撤退させる。
衣類害虫や穀物害虫、野外における衛生害虫などに使用される。タンスにゴンとか。
害虫の好む成分や刺激物により集めて捕獲し殲滅する。
なお昔は冬にマツカレハ対策として、松の根元に蓆を巻いて、蓆ごと剥がして焼き捨てるという「こも巻き」というトラップもあったが、実は全く効果が無かった。むしろ、蓆の中には益虫の方が多かったらしく、現在では衰退している。
害虫の居つきそうな餌や住処となる対象を天日干しにすることで駆除する。衣類害虫や書物害虫などの対策になる。
近年では書物や衣類に害のない二酸化炭素による窒息駆除なども行われる。
ちなみに七夕はもともと虫干しに因んだ行事である。
- 天敵農法
農業害虫に主に使用される手法。天敵となる益虫や病原菌を使用し駆除する。
具体例はカイガラムシ対策のためのベダリヤテントウなど。
一見便利そうだが、ヨソから外来生物を持ってくるのはマングースの例を挙げるまでもなく生態系の破壊につながるので乱発は出来ない。
イラストにおける害虫
名前の指す通り、あまり(というより全く)良いイメージを持つものではないため、概して批判・否定的な内容を多分に含んだイラストが描かれている。
一般的に言われている害虫から、中には個人的な偏見が入ったものも存在する。
だがここで逆に、そこまで嫌な存在だと自覚しているにも関わらず、時間を割いてまで描こうとする意欲を与えていることを考えると、あながち内心はそこまで強い嫌悪心を持っているわけではないのかもしれない。