「困っている人がいたら助けるのは当たり前です。それが誰であってもどこの星の人であっても」
演:井上祐貴
概要
『ウルトラマンタイガ』での人間サイドの主人公。漢字表記は「工藤 優幸」。
民間警備組織E.G.I.S.に所属している青年。22歳。
一人称は「僕」。地元は愛媛県(宇宙船Vol.165では広島県とされている)。
右腕に装着したタイガスパークとキーホルダータイプのウルトラタイガアクセサリーを使い、3人のウルトラ戦士に変身する。
人物像
心優しく正義感が強い。未知の存在を恐れずに受け入れることができる度量の持ち主で、人間、宇宙人、ウルトラマンといった三つの種族を結ぶ架け橋となるのが夢。
12年前に小さな怪獣を友達として過ごしていたが、とある宇宙人にその友達を奪われ連れ去られそうになり、必死になって宇宙人の足にしがみ付いたものの振り落とされ、空中に放り出されてしまう。だが、偶然地球に来たウルトラマンタイガの光に救われ、それ以来肉体にタイガの光を宿しているが、第1話で実際に変身するまで、本人に自覚はなかった(一応、タイガが自分に語り掛けてくる声は聞こえてはいたが、どんな姿をしているのかすら全く知らなかった)。
その後もウルトラマンタイタスやウルトラマンフーマにも出会い彼らと良きバディーとなる(出会った当初はさすがに増えていく事に戸惑いを隠せず「勘弁してください…」とぼやくほどだったが)。
時間を持て余したときは筋トレに励んでいることが多い。
誠実な一面もあり、筋トレ中に過失でカナのマグカップを割ってしまったときは、誤魔化したりせず日報の報告で正直に謝罪し、お詫びにドーナツをプレゼントしている。
その一方で、ピリカから報告書のミスの多さを指摘されて叱られる(劇場版ではホマレも一緒に叱られていた)など、割とうっかりやな部分もある模様。若さ故か無茶をしでかすことも多いらしく、それがきっかけで大ポカをやらかしてしまい、社長のカナからお灸を据えられていたシーンもある。ホマレやピリカとのプロレスごっこをカナに見つかった際には、3人まとめてカナからお灸を据えられた一幕もある。
ホマレとトレーニングをした際には手合わせで勝てないことを悔しがるなど、意外に負けず嫌いな一面もある模様(自分の負けた回数まで律義に数えていたため、ホマレからは呆れながらツッコまれていた)。
一見すると物静かで大人しそうな印象を受けるが、例え契約を解除した依頼者であろうと困っていれば助力を続けたり、命を弄んだり軽んじたりするような相手に対しては(相手が悪の宇宙人であろうと同じ人間であろうと関係なく)強い憤りを露わにするなど、熱い一面と揺るぎない正義感も持ち合わせている(これについて先輩である宗谷ホマレからは“熱血バカ”と言われていた)。
一方、怪獣が出現した際も、まずは眼前の怪我人の救出を優先したり、復讐に逸る九条レントを説得して止めようとするなど、いざという時の冷静さも兼ね備えている。焦りもあって、怪我人よりも怪獣の対処を優先して変身を促したり、(仲間が殺されたと思い込んでいたことから)九条の心情に若干の理解を示したタイガを諭すなど、若さ故の未熟さと危うさも見られる彼よりも大人な側面が垣間見える。ウルトラシリーズでは、ウルトラマンの方が人間の主人公よりも精神年齢的に年上となる関係が多いため、ヒロユキとタイガの関係はその意味では珍しい。
そして第14話~第16話ではその立ち位置を存分に発揮し、怪獣リングの効果で感情的になりやすくなるも何とか自制し、闇に呑まれたタイガと分離してしまった際はタイタス、フーマと共にタイガ救出に尽力。カラータイマーからタイガの意識に飛び込み、彼を殴って「お前が欲しかったのは闇の力だったのか!?」と一喝。これによってタイガは正気を取り戻し、トライストリウム覚醒へと繋がった。そして戦闘後、タイガから正式に相棒と呼ばれるようになった。
しかしこれがきっかけで霧崎ことウルトラマントレギアに目を付けられることになってしまい、彼からの陰湿な挑発によって次第に感情的になる事が増えはじめ、遂にはホマレが霧崎の手にかかって重体となった自責の念から、E.G.I.S.に退職届を出しておいて単独で霧崎を探そうとするという直情的な行動までとろうとした。しかしその事をカナに一喝された事で反省し、最後までE.G.I.S.やトライスクワッドと共に戦い抜いた。
一体化・変身について
これまでのシリーズにおいて同じウルトラマンに変身する人物が複数存在するというケースはあれど、ヒロユキは一つの身体に複数のウルトラマンを直接宿すというシリーズでも例を見ない異色の変身者でもある。
よって、従来の一体化と異なる部分がいくつかある。
これまでウルトラマンの変身者が一体化したウルトラマンと会話する際は、声だけでやり取りするか(これは今作でもある)、変身アイテムを介するか、インナースペースのような謎空間で行われるのがお約束だったが、ヒロユキの場合は現実に現れた「アストラル体」というタイガ達の幻影(サイズはヒロユキと同程度な事もあれば小人サイズである事もある)と対面して会話するというこれまでにない形になっている。
その幻影も単にヒロユキと会話するためだけに現れているのではなく、地球を去っていくザンドリアス親子に手を振って挨拶したり、近くにあったゴミ箱をのぞき込んだり、果てはボイスドラマにて筋トレをしたりと、割と自由に行動しているため、普段は一心同体というよりは背後霊のような状態になっていると思われる。
実際、一体化後に身体能力が上がったり、体を無理やり奪われるような事態は起きておらず、霊感がある天王寺藍には守護霊として認識されていた。
ただ、小人サイズで出現したタイガがコーヒーカップの中へ転落して溺れかけた事や、タイタスが天王寺藍の肩で筋トレをしていた際に「肩がなんか重い」と言われていた事等から、この状態でも現実にはある程度干渉できてしまう様子。ただしタイガをカップから救出しようとしたヒロユキがタイガに触れなかったため、ヒロユキ側からは干渉できない模様(一応コーヒーが熱くて指を突っ込めなかった可能性もあるが)。
三人はトレギアとの戦いで光の粒子と化しており、変身バンクで光の粒子から実体化するシーンがある点や、後に明かされたタイガスパークの機能を踏まえると、変身してヒロユキと結びつく事で一時的に実体を取り戻しているのだと思われる。
戦闘中に別のウルトラマンに変身する事も可能で、わざわざ変身解除する必要はなく、インナースペースでウルトラタイガアクセサリーを使う事で従来のタイプチェンジのように姿を変えている。
ただ、別人格を複数宿す事はさすがに負担がかかるようで、変身時間の制限に関しては他のウルトラマンに交代しても消費した時間が引き継がれる。
第5話と第11話の描写から直接別のウルトラマンに変身する場合は、ウルトラマン同士でダメージやヒロユキの消耗の影響はないが、一旦変身解除してしまった場合、ヒロユキにフィードバックされたダメージが他のウルトラマンへ共有されてしまう模様。
最終的に、劇場版ウルトラマンタイガ『ニュージェネクライマックス』の終盤で回復したタイガ達と分離し、彼らと別れた事で、ヒロユキは現時点では新世代ヒーローズで唯一ウルトラマンと分離して結末を迎えた主人公となった。
奇しくもウルトラマンと分離したという点ではハヤタ・シン、そしてウルトラマンに変身する力を失ったという点ではマドカ・ダイゴと、昭和と平成の最初のウルトラマンの変身者と同じ展開となった。
主人公...?と思われた時期
今でこそ主人公らしい存在感を持つ物語の中心人物たる彼だが、実を言うと放送開始当初はこれまでのウルトラシリーズの主人公達と比べて「影が薄い」という声が少なくなかった。
彼の主役回である第2話や、彼の言葉が大きな意味を持った第3話等、ヒロユキメインの話はあるにはあるが、これ以降の話は彼の周辺人物に徹底的に焦点を当てた話が続いており、戦闘シーン以外では彼自身裏方に回ることがほとんどである為、ある意味仕方ないとも言えた。
また戦闘中も彼のようにウルトラマンとバディを組んでいた過去の変身者と比較して、戦闘中にタイガ、タイタス、フーマの会話が多い一方でヒロユキはほとんど会話に混ざらないのもこれに拍車をかけてしまっている面も否めなかった。
これによってトライスクワッドの面々とのやり取りも少なく、普段どのような関係になっているのかがわかりにくいという弊害も起きていた(トライスクワッド単独でならボイスドラマで掘り下げられているが)。
ただしこれは、絆というものを当初信じていなかったタイガがヒロユキに対しビジネスライクな態度をとっていたためとも解釈できる。
またヒロユキ自身、自分なりに逞しさを身につけて自立した人物であることから過剰に周りへ振り回されない・依存しないとも考えられ、それ故に彼を起点とした話を作りにくい点もあったと思われる。
一応、主人公でありながら話のメインにあまり絡まなかったり、出たとしても出番が短めというのは、『ウルトラマン』のハヤタ・シンや、『ウルトラマンティガ』のマドカ・ダイゴ等にも当てはまることであり(後者の場合は演者のスケジュールの都合という面が大きかったようだが)、彼が初めてというわけではない。
因みにヒロユキの立場に近いウルトラマンの変身者は『ウルトラマンジード』の伊賀栗レイトが該当する。それなりに荒事へ慣れたヒロユキに対して、気弱でケンカが苦手、ドジも目立つ頼りない第一印象のレイトだが、自分の家庭を築いていてそれを守るための勇気が出せることから、ヒロユキとは別ベクトルの逞しさを有していることがわかる。
彼と一体化したウルトラマンゼロはジード作中、敵の策略で消滅寸前に追い込まれてしまいタイガたちと似た状態になったことがある。だが、若くして濃い経験を積んでいたゼロはレイトの逞しさを見抜いていて、彼が自分の意思で身体を貸してくれるのを見越した上でギリギリ力を残して休眠状態になっていた。そして予測通り勇気を振り絞ったレイトの協力で復活したゼロは、その流れから限界を超えた姿を得て窮地を脱したのだった。
タイガとヒロユキの場合は、タイガの方が絆の力を信じていないことからこうした形でヒロユキを頼るという発想が思い浮かばないと考えられる。
その後、第9話以降はヒロユキに焦点を当てる話が増え、戦闘中の会話も以前に比べると増えつつある。
そこからさらに進んだ第16話では、彼の存在が闇に陥れられたタイガを救い、トレギアの策略を覆す起点となった。そしてこれにより、タイガは絆の力を実感、その強さを確信したのだった。
再評価
当時こそ、トライスクワッドの面子に押されて影の薄い主人公と言われて来たヒロユキだが、現在まで進んだ令和ウルトラマンにおいて「実はウルトラマンの主人公としては凄かったのでは?」という声が上がっている。
後述のゲーミングヒロユキの件もそうだが、『タイガ』の後続作品である『ウルトラマンZ』と『ウルトラマントリガー』のそれぞれの主人公であるナツカワ・ハルキとマナカ・ケンゴと比べて、後続の二人はそれぞれのウルトラマンに対して『事故とはいえ、銃撃して相棒のウルトラマンに痛い目に遭わせてしまう』『闇の巨人だった頃のウルトラマンと生身で戦うも、一方的に殴られてしまう』というシチュエーションに対してヒロユキは仲間の援護があったとはいえ『闇に堕ちたタイガをワンパンで正気に戻す』というウルトラマンに事実上の勝利を収めているのだ。
他にもウルトラマンの中でも危険な技と言われるウルトラダイナマイトを一緒に発動して燃え上がる等、歴代の変身者と比べて明らかに人間離れした一面がある。
また、TVシリーズではあまり掘り下げられる事は無いが、漫画版『ULTRAMAN』や『DARKNESSHEELS-Lili-』でも言及された『ウルトラマンと一体化していた者は分離後も遺伝子に力が残る』という設定を考慮すると、ヒロユキにはM78星雲・ウルトラの星、U40、惑星O-50と、それぞれ三人分のウルトラマンの力が遺伝子に残っている可能性がある(その場合、タイガスパークの設定的にはそうなっていると欠陥があることになるが)。
そんなことから「ヒロユキだけタロウ世界の住民」とネタにする声もある。
余談
出身地は、演じる井上に合わせ広島県となった。
ヒロユキを演じた井上は幼少期時代は『ウルトラマンコスモス』を見て育ったとインタビューで語っており、井上はコスモスのカラーリングと同じ好きな色は「青」である。ちなみに本作のメイン監督を担当した市野龍一は、『コスモス』の監督も担当していた。
なお、とある理由から分離後のヒロユキは体が七色に輝くことがあるとネタにされる事がある。誰が呼んだかゲーミングヒロユキ。
本編でもタイガを殴り飛ばしていたり、劇場版でトライスクワッドと共にウルトラダイナマイトに挑戦していた為、あり得ない話でもないのが恐ろしいところである。
関連タグ
ウルトラマンタイガ タイガ(ウルトラマン) ウルトラマンタイタス ウルトラマンフーマ
春野ムサシ、大空大地: 設定に共通点の多いウルトラマンへの変身者。
蛭川光彦:ヒロユキよりも先にウルトラマン(の人間態)を殴った地球人。尤も彼が振るったのはヒロユキの様な熱い檄の拳でなく、ただの理不尽な暴力である。
野上良太郎:仮面ライダー電王の主人公で、複数の人外を宿す特撮の主人公繋がり。ただし初期の彼はいい人だが逞しさが足りず、不運にいいように振り回されていた。電王本編は、その状態から良太郎が人外を仲間としてまとめ上げ、自分の強さに気づいて逞しさをつけていく過程を描いた話とも解釈できる。
月浪トウマ:複数の幻魔、剣武魔神の力を使える主人公繋がり。