曖昧さ回避
- 精神世界。
- 大気圏の内側。
- 1987年に制作されたSF映画。→インナースペース(映画)
- 近年のウルトラシリーズでみられる演出。
ここではウルトラシリーズにおけるインナースペースについて述べる。
『ウルトラマンオーブ』完全超全集で言及されたり、雑誌「宇宙船」の朝倉リク役の濱田龍臣氏のインタビューにも掲載されていたため、ここで個別に取り扱う。
概要
『ウルトラマンギンガ』以降に共通して見られる、ウルトラマンに変身した後にその変身者がいるいわゆる謎空間の通称である。
『ギンガ』以降で共通要素は、その中で変身アイテムや武器の操作をするコクピットのような演出が取られている点が挙げられ、平成ライダーやスーパー戦隊と違い、巨大かつ余計な装備を外部に持てないウルトラ戦士が、違和感なく変身アイテムの操作をする演出ができる点で重宝されるようになったようだ。
ウルトラシリーズのほとんどの変身アイテムは、等身大の人間が変身にしか使わないものであり、変身後も手に取って使用すると、不自然になってしまうのは容易に想像できる。
そのため、ウルトラ戦士自身が変身アイテムを直接操作するのは、(仮面ライダーのように変身後も体の一部を構成しているものや、変身後も武器として使うものを除けば)数少ない例外を除いて行われていない。
『ジード』にて人間態がないウルトラマンベリアルが変身アイテムを操作する際は、変身アイテムのサイズは人間大のまま顔の前で自動的に操作される描写が取られた。
つまりインナースペースは、このような事情で変身者だけが変身アイテムを操作できるように考えられた描写と考えられよう。
大抵は、変身アイテムを構えて起動した際に、インナースペースへ移行し変身バンクに入る。
ただ、変身の際に必ずしもそうしなければならない訳ではなく、現実世界にいるまま変身手順を踏むケースもある。
サブアイテムとの連動によって変身のシークエンスは伸びているものの、高所から落下しながらでも普通にインナースペースに移行後、普通に手順を踏んで変身できているシーンがあったり、インナースペースが映らないシーンでは変身が瞬時に行われている描写がある。この点については、『Z』にてインナースペース内の時空が歪んでいて「中での1分は外での1秒」であると説明されており、他の戦士のものも同様と思われる。
尚、武器の場合はウルトラ戦士自身も使用するので、インナースペース内の操作とウルトラ戦士自身の操作が連動する(ウルトラ戦士自身が武器を操作する様は『ウルトラマンフュージョンファイト!』で見られる他、ごく稀に本編でも披露される場合がある)。
ただし、特定の必殺技の発動時に変身アイテムでスキャンしたり、武器に装填するアイテムを交換したりする際はやはりインナースペース内でのみ操作が行われる(しかしウルトラマンルーブは『フュージョンファイト』でのみだが、武器に巨大化したアイテムを装着して必殺技を撃つ様が描かれている)。
また、シェパードンセイバーやオーブスラッガーランスのように、インナースペース内では扱わない武器もある。
ウルトラマン以外でもダークライブやモンスライブ、ベリアル融合獣などで人間や宇宙人が怪獣に変身する場合にも見られる。
ジャンボーグAなどのように「モーショントレースでウルトラマンをロボットのように操縦しているように見える」 との批判の声がある(実は『ギンガ』で導入される際にも制作サイドで議論されていた)他、変身者が画面に映る状態が前提の演出であるため、何らかの事情で変身者が登場できないとシークエンスを再現しにくいという難点がある一方で、上述したようにアイテム操作をスムーズにできたり、変身者が必殺技のポーズを取るなどを行う場面の没入感を高める効果もある(現在となっては、スタッフの間でも「インナースペースがないと作劇・販促の両面で苦慮した」との証言もある)。
『ブレーザー』以降
『ブレーザー』ではインナースペースの描写がかなり減っており、少なくとも変身者の全身が映るシーンは完全になくなっている。
『ブレーザー』のメイン監督を勤めた田口清隆氏によると、“当初『ブレーザー』はインナースペースを完全に排除して、ブレーザーブレスもブレーザー本人が操作するような演出を構想していたが「子どもたちはウルトラマンの変身シーンになると、テレビの前でアイテムを持って主人公の真似をして夢中で遊ぶ」という話を聞いて居たため、そうやって楽しんでくれる子どもたちは大事にしなければならないとして今回のような形に落ち着いた"とインタビューで語っている。
そして『アーク』では、遂にインナースペースの描写が完全になくなり、変身アイテムもアーク自身が操作する形を取った。ただ、直接触って操作するのではなく、アークアライザーはアークのジェスチャーと連動する形で動き、アークキューブは額のアークストーンから出現して自動的に装填される。
戦士ごとの特徴
主に新世代ヒーローズについて纏める。尚、新世代ヒーローズに登場した全ての戦士に存在するわけではない。悪トラマンであっても、正真正銘の光の国出身者であるトレギアのようにそのような描写が存在しない戦士も存在する。
ウルトラマンギンガの場合
無印の時は辺り一面が青い空間に虹色の靄がかかったもの。
またカラータイマーが点滅すると、インナースペース内も礼堂ヒカルを照らすように赤く点滅する。
最終回でダークルギエルの猛攻を受け力尽きた際に、インナースペース内は輝きを失ったかの様に黒一面の空間となった。
『ウルトラマンギンガS』ではビクトリーに合わせてかインナースペース内が変化し、ヒカルの後ろに奥行きができ、流れ星の様な白い線が手前へ迫ってくる。
またカラータイマーが点滅しても、インナースペース内は点滅しなくなった。
ウルトラマンギンガストリウムになると再びインナースペース内が変化し、ウルトラマンタロウがストリウム光線のエネルギーを溜めた時の様なまだら模様のエフェクトが追加される。
しかし、ギンガのインナースペースで使用されたのはあくまでも変身アイテムと強化アイテムのみであり、またこの頃は武器の使用は行われていなかった。
ウルトラマンビクトリーの場合
青い空間に炎の様な赤い靄がかかったもの。また上記のギンガのようにこちらもショウの後ろに奥行きがあり、水色の波状の様なエフェクトが手前に迫ってくる。
カラータイマーの点滅についてはギンガと同様である。
ウルトラマンビクトリーナイトになるとインナースペース内が変化し、空間・靄が水色になる。ただ、インナースペース内でナイトティンバーの技発動を行うシーンは少ない。
ウルトラマンギンガビクトリーの場合
赤・黄・青の三色に染まった空間。
また、ヒカルとショウの後ろに大きなギンガビクトリーのライブサインが映し出されている。
ウルトラマンエックスの場合
作中では「電脳世界」と呼ばれており、生身の人間が行き来するのは危険な場所だとされる。
空間内は暗い青で染まり、サイバー風の線が所狭しと広がる、まさに電脳空間のような感じ。
カラータイマーが点滅すると、サイバー風の線が赤く染まる。
またザナディウム光線など一部の技を発動すると、サイバー風の線が黄色に染まり、大空大地にエックスの姿が重なる演出が入る。
ウルトラマンエクシードXになるとインナースペース内が変化し、空間が虹色に染まる。
ウルトラマンオーブの場合
無数の銀河系が浮かぶ宇宙のような空間。
フュージョンアップ形態に合わせて、インナースペースの色が形態の属性に応じた色に変化する。
ガイはインナースペースでは服装が黒タイツとなる(例外的につなぐぜ!願い!!』ではインナースペース内でも服装は変化しなかった)。
オーブカリバーで技を放つ際は、 オーブとインナースペース内のガイが並ぶ構図になり、オーブによる操作がメインに映る珍しい形になっている。
尚、特にアイテムを操作する必要がないため『オリジン・ザ・ファースト』の時は一切登場しない。
また『絆の力、おかりします!』でジャグラスジャグラーがゼッパンドンに変身する際に、オーブのインナスペースに良く似た空間で変身している。
ウルトラマンオーブダークのインナースペースもこれと同じ仕様となっており、変身者である愛染マコトが黒タイツ姿になるところまで同じである。
ウルトラマンジードの場合
またリクの顔にジードの顔が重なるような表現もある。ジードクローの必殺技を使用する際にはインナースペース内が変化し、青い空間に波状の様なエフェクトが付いたものになる。
また、ギャラクシーライジングへの変身時にはジードライザーではなく、ウルトラゼットライザーによるウルトラフュージョンでの変身のため、通常時とは違いウルトラマンゼットのインナースペースにも似たエフェクトとなっている。
ウルトラマンゼロ(レイトとの一体化時)の場合
ゼロ自身が喋る事情もあってかあまり登場しないが、青く染まった空間でところどころ光が漏れている。ビヨンドの時は、紫がかった空間になっている。
ちなみに、『サーガ』では変身前はゼロ自身がインナースペースに立っている光景が見られた。この時は一体化していたタイガ・ノゾムの心理を反映してか、光が薄い海底のような空間だったが、タイガがウルトラマンを受け入れる決意を固めた時光が差し込む演出があった。
ウルトラマンロッソ/ウルトラマンブルの場合
使用するルーブクリスタルの属性に応じた背景になる。
例えばタロウクリスタルを使用した場合は、炎が激しく燃え盛る真っ赤な空間、ギンガクリスタルを使用した場合は水中を思わせる無数の気泡が漂う真っ青な空間となる。
ルーブスラッガーやオーブリングNEOを使用する際はインナースペース内が変化し、ロッソの場合は赤みがかかった白い空間、ブルの場合は青みがかかった白い空間となる。
ウルトラマンルーブの場合
辺り一面に結晶体が敷き詰められた、煌びやかな空間の中に湊兄弟が立っている。
ウルトラウーマングリージョの場合
シリーズ初のウルトラウーマンによるインナースペース。
白い空間に黄色い光がアサヒを囲うと、従来のものと比べてかなりシンプルなもの。
ウルトラマングルーブの場合
ロッソの赤、ブルの青、グリージョの黄色が交わり、ルーブ以上に鮮やかな光の空間と化し、その中で湊兄妹が立っている。
3人の立ち位置をよく見ると、カツミには赤、イサミには青、アサヒには黄色とそれぞれの光に分かれている。
ウルトラマンタイガの場合
赤いオーラに宇宙の様な空間が広がっている。
フォトンアースは金色のオーラとなり、トライストリウムでは赤をメインに黄色と青の3色のオーラになる。
ウルトラマンレイガは赤をメインに虹色のオーラが出ている。
尚、演出の関係でウルトラマン本人達が、インナースペース内に出現する場面もある(13話のみ何もない真っ白な空間として描写されていた)。
またタイガスパークにはインナースペースに関する設定も存在している。
ウルトラマンゼットの場合
Xのインナースペースに似た空間が広がっている。
これまでと異なり「ヒーローズゲート」と呼ばれる四角いゲートが開いて入る。第1話では、この中で変身アイテムの使い方をレクチャーする初めての演出があった。
また、寄生生物セレブロに寄生されたカブラギ・シンヤは緑色のインナースペースを秘密基地のように利用しているらしく、中で怪獣メダルの生成を行っていた。
ジャグラーが変身する際はコピー品であるダークゼットライザーを使用している関係上、紫色のインナースペースとなっている。尚、やはりこちらでは服装が全身黒タイツとなる。
他人を入れるのも可能であり、『ウルトラマントリガー』ではマナカ・ケンゴとヒジリ・アキトの2人を招待していた。
また同作では、ハルキがGUTSスパークレンスを誤ってガンモードのまま使用=発砲した際にビームが跳弾した挙げ句、背後のゼットに直撃する描写があり、「ゼットには実体がある」「意外と狭く、ビームを弾く内壁(?)が存在する」事実が判明した。
しかし、ゼット側からハルキに直接干渉・接触などはできないのか、『エピソードZ』ではハルキの異常事態に対処できず、逆にゼット自身も自由を奪われてしまい声をかけるしかできなかった。
ウルトラマントリガーの場合
真っ白な空間。ただそれだけ。
前述のグリージョ以上にシンプルなインナースペースであり、ジードと同様に変身者のケンゴの顔にトリガーの顔が重なる演出もあるが、これまでのインナースペースと比べるとケンゴの演出は極力控えめになっており、変身したら基本的にはトリガーのままであり、喋るシーンも殆ど無い。
トリガーダークとの対話では、薄色とエクルベージュに近い下地に黒いオーラと粒子が漂う空間になっていた。後にイグニスがトリガーダークに変身する様になった際にも、同様の演出が観られる。
グリッタートリガーエタニティ時には、真っ白な空間に金色のオーラが漂うようになる。
トリガーダークの暴走時には赤黒い稲妻が鳴り響き、暗黒が蠢く空間となっている。
また、カルミラがメガロゾーアに変貌した後も、カルミラが喋るシーンではインナースペースと近い演出が取られた(内容は、闇の中からカルミラの顔だけが浮き出て喋っている)。
イーヴィルトリガーもトリガーと同じ力で変身した為か、当初はトリガーと全く同じ真っ白な空間となっていたが、闇と電撃を放出する技を発動した際にインナースペースも闇に染まっている。
ウルトラマンデッカーの場合
基本は真っ白な空間であるが、変身やタイプチェンジの際にはフラッシュタイプの胸や額に見られるような、宇宙を思わせる空間に変化する。カナタの周りに漂う光りの色はタイプ毎に違う。フラッシュ(=紫)、ストロング(=赤)、ミラクル(=水色)等々。
空間内に居るカナタにはデッカー顔が重なる描写はないものの、ストロングタイプofミラクルタイプのカードが現れた際には、体がエネルギーに包まれる現象が発生している。
モンスディメンション時には空間の変化は発生しない。
ウルトラマンディナスの場合
デッカー同様基本的には真っ白な空間で、変身者であるディナスの周りを紫色の光が漂っている。
ウルトラマンブレーザーの場合
青と赤の螺旋が織り交じった宇宙に近い背景で、第8話でブレーザーがニジカガチから溢れ出た虹を掴んでニジカガチストーンを生成・使用した際に初めて描写された。
ブレーザーのインナースペースはゲントの視点でブレーザーストーンをブレスに装填すると、これまでにない変身者視点での演出がなされている(強いて挙げればギンガのストリウムブレスやウルトラフュージョンブレスの操作シーンが近いか)。
また、ブレーザーは基本これまでのニュージェネウルトラマンのように戦闘中にゲントが映って喋るようなシーンはなく、レインボー光輪やチルソナイトソードなどブレーザーストーンを使用して技を発動したり、武器を召喚したりする際の描写のみと必要最低限のものになっている。
ちなみにOPの変身シーンは、このインナースペースと同じ背景で行なっている。
類似の演出
新世代シリーズ以前にも類似の演出はあったが、ほとんどは心理描写の表現程度のもので、まだインナースペースの概念は固められていなかった。
以下、特にインナースペースと演出が近かったものについて記述する。
ウルトラマンティガの場合
意外にもインナースペースのような演出自体は、平成ウルトラマン第1作目で行われている。
ガタノゾーアにより石像に戻されてしまった際に見られたもので、変身者であるダイゴが狭い水晶の中に閉じ込められている演出(この演出は、あくまで力尽きて動けなくなった表現だった)。
水晶のある空間に白い光が差してキラキラと輝いていたが、ティガへ世界中の子供達の光が集まりグリッターティガとなった際は、その光を受け取った様に水晶や空間内全てが金色に発光した。更に空間内に世界中の子供達が一斉にやってきて、ティガと合わせて一斉にグリッターゼペリオン光線のポーズを取るシーンもある。
またゴブニュ(ギガ)との戦いで敗北しかけた際には、変身が解けた直後の気絶したダイゴの精神世界が描写され、何もない真っ白な空間の中でキリエル人の嘲笑や、ユザレの励ましを受ける場面がある。ウルトラマンのインナースペースとは異なるが、前述のトリガーのインナースペース描写に通じる演出ともなっている。
ウルトラマンメビウス/ゾフィーの場合
劇場版で磔にされた場面、最終回におけるフェニックスブレイブへの変身後に見られたもの。
前者は一瞬のみの登場で、磔にされた状態でウルトラ兄弟に対し、変身をやめるように呼び掛けている。
後者はミライがGUYSの仲間達と共に、OPやウルトラの星のシーンでも登場する金色の空間に並び立ち、サコミズ隊長の号令で必殺技メビュームナイトシュートを発射する。
その後、サコミズがゾフィーと融合し参戦した際には、ゾフィーも同様の演出が行われ、別のウルトラマンに融合しているにもかかわらず、サコミズも他のメンバーより一段高い位置で同じ画面に表れる場面もあった。
名場面ではあるが、メビウスが擬態型である仕様もあって、一部から疑問視されてもいる。
ウルトラマンサーガの場合
タイガ、アスカ、ムサシの3人が青い宇宙のような空間に立っていた。
余談
インナースペースの撮影は、主にプロジェクターを利用して背景映像を映しながら演技する方法と、グリーンバックによるCG合成の2種がある。
前者はギンガ(無印のみ)、エックス、ロッソ、ブル、ルーブ、ゼット、後者はギンガ(ギンガS以降)、ビクトリー、オーブ、ジード、トライスクワッドが該当する。
尚、インナースペースが本格的に導入された理由の1つに「タイプチェンジの演出でウルトラマンにCG処理して変化させる よりも、コストが安く済む上に演出的に分かりやすいから」とされている。
関連項目
謎空間 オーブリング 平成ウルトラマン 新世代ヒーローズ 令和ウルトラマン
ダイナゼノン…インナースペースの設定が存在する。