313系
さんびゃくじゅうさんけいまたはさんいちさんけい
概要
1999年より営業運転を開始したJR東海(東海旅客鉄道)の直流近郊形電車。当初は東海道線新快速用、および中央線の103系・165系置き換え用に投入された。その後も東海道線新快速の輸送力強化、および最後まで残った113系・115系・117系・119系・123系の老朽化に伴う置き換えのために増備が続けられ、15年にわたる増備の結果、東海管内のほぼ全ての国鉄型車両を置き換えている。JR東海管内の在来線一般電車の内約6割を占める大所帯。運用範囲も愛知県 岐阜県 三重県と静岡県は勿論、神奈川県、滋賀県、山梨県、長野県など関東~関西・信州までとかなり広範囲。
JR東海の在来線電化区間における標準形車両となっており、1999年~2014年(2019年に代替車2両を新造)まで仕様変更を加えながら増備が続けられていた。(後に気動車にもキハ25形という当形式がベースとなっている車両が開発される。)
JR東海の体質を揶揄したジョークに「そのうちJR東海はN700系でN700系を置換えて313系で313系を置き換え始める」というものがあった程。
なお2020年のプレスリリースで、今後は313系の増備ではなく211系・213系・311系を新形式の315系で置き換えると発表された。
JR型車両の中では本線系統の快速列車からローカル線のワンマン列車、果てには有料快速列車や他社線乗り入れなど様々な線区に対応するためか、様々なバリエーションが製造されている。番台区分の数では民営化後に製造された車両の中ではぶっちぎりで多い。ただし数編成作ったのみで100番単位で同種別マイナーチェンジ車へ番号を飛ばすこともままあり、いずれ枠が枯渇してしまわないか疑問もあった。
一般的に静岡地区ではロングシートのみ。それ以外の路線ではセミクロスシートか転換クロスシート以上の設備を備えた車両が多い。ちなみに転換クロス車とロングシート車の座席定員は0番台のクハを除き全く同じ座席定員となる。
営業最高速度 | 120km/h(セントラルライナーのみ最終的に130km/h) |
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設計最高速度 | 130km/h |
起動加速度 | 2.6km/h/s |
減速度 | 4.3km/h/s(常用最大、非常) |
歯車比 | 15:98=1:6.53 |
駆動方式 | TD平行カルダン駆動方式 |
主電動機 | かご形三相誘導電動機・1時間定格出力185kW
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制御方式 | VVVFインバータ制御・IGBT素子・3レベル電圧型
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制動方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(遅れ込め制御付き) |
発電・空制ブレンディング制御 ※一部車両 | |
台車 | 円錐積層ゴム式ボルスタレス台車
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製造所 | 日本車輌製造・近畿車輛(3次車まで)・東急車輛製造(1次車のみ) |
走行機器
373系を基本としており、主電動機・歯数比は同じである。
制御装置は373系のGTO素子2レベルインバータに代わり、IGBT素子を使用した補助電源装置一体型の装置を採用した。従来の個別制御ではなく台車単位での制御となっている。制御用インバータによる補助電源のバックアップにも対応。
また、一部の車両は回生失効対策としてブレーキチョッパ装置と発電ブレーキ用抵抗器を装備する。
電動車比率が373系の1M2Tから1:1を厳守するよう改められ、重量あたり出力は概ね1.5倍になった。これによる加減速性能の向上と定速制御の搭載により、311系新快速から所要時間短縮を実現した。
台車は伝統の円錐積層ゴム式。付随台車には踏面清掃装置を搭載し、踏面ブレーキを省略。5000番台はセミアクティブ左右動ダンパを装備している。
車体構造
旅客需要の変動が大きいこと(ラッシュ時-データイム)、沿線には7.8㎞の丹那トンネル・6㎞弱の塩嶺トンネル(中央東線)・5㎞の大原トンネル(飯田線)、3.6㎞の峯トンネル(飯田線)、2.9kmの愛岐トンネル(中央西線)等2㎞を越える長大トンネルが随所にあることから先頭車に乗用貫通路を設けており、併結編成の場合、必ず中間の先頭車の貫通路を使用することとされている。2連×4の8両編成や2連×3組+4連の10両編成など、短い編成を繋いでの長編成が組まれることがある。
静粛性を高めるため、床構造はゴムチップをキーストンプレートと床敷物の間に敷き詰めた構造となっており、車内は基本的に非常に静か(但し併結編成を組んだ場合、正面貫通扉を防災上開いておかねばならないため当該部分貫通幌が車外騒音の侵入路になり、中間に入った先頭車に限り若干静粛性が下がる。どちらかの先頭車が必ずMc車となり外部モーター音を拾うため)。なお吸音材として敷かれているゴムチップは実は廃タイヤのリサイクル品で、こんなところでも環境にも配慮されている。
ロングシートから転換クロスシートまで単一の構体から艤装品の変更のみで対応できるよう設計されているため、車体の垂直荷重は車端部以外はすべてドアの戸袋部で受けており、戸袋窓は省略された。そのため、ロング・セミクロスで3本、転換クロスで4本ある窓内の柱は、荷重を受け持たない。
座席
ロングシートは「旅行者」としては不人気とされるが、座席そのもののレベルは高く、同じロングシートである211系のそれより数段快適である。少なくとも腰痛には苛まれない。
逆に固定クロスシートは、尻を前にずらして背中を丸めた状態でフィットするよう作られている上座布団前端同士の間隔が狭く、閑散時ならともかく、混んできた時間帯には膝を鋭角にかがめねば足先が互いに干渉するので、下手したら113・115系の初期車より脚が窮屈に感じるかもしれない。
転換クロスシートは8000番台を除き一般的なシートピッチより35mm狭い875mmピッチで並べられている。しかし、足元空間は910mmピッチと同じ座面前後間420mmを確保しており、その分座面奥行きが35mm詰められているが、中折れ機構付きの背もたれを採用することで視覚的な空間の狭さを感じないような工夫がされている。
番台区分
第1次車・第2次車
0・300番台
0番台は4両編成。300番台は2両編成。大垣車両区に4両編成15本と2両編成16本が配置されている。主に東海道線掛川-米原間普通列車を中心に一部の快速列車、武豊線で運用される。転換クロスシートを主体に、ドア脇と車端部に固定クロスシートを配置している。
1000番台・1500番台
1000番台は4両編成。1500番台は3両編成。神領車両区に4両編成3本と3両編成3本が配置されている。主に中央線名古屋-中津川間と関西本線名古屋-亀山間で運用される。転換クロスシートとドア脇固定クロスシートの配置は0番台と同じだがクハのトイレ脇の座席を除き車端部がロングシートに変更されている。
クハは大垣配置の0番台と仕様が同じため0番台を名乗っている。編成を組み替えることはほぼ無いため、管理を優先してクハについても1000番台を名乗ったほうが整合性が高かったと思えるが、こうした措置は一貫してなされているため、編成内部で番号はゴチャゴチャになっている(増備車である1100~1700、ロングシートの2000番台の各編成、後から仕様違いの出た5300番台などがそれである)。
ちなみに313系で最初に登場したのがこのグループである。
第3次車・第4次車
共通の仕様変更
- 行先表示器をフルカラーLED、前照灯を白色LEDに変更。快速以上の種別は幕と同じフォントを使用する
- 車内トイレのスペース拡大、トイレ向かいの座席を廃止
- 安全対策のため保安装置・ブレーキ装置などのバックアップを構築
- 回生ブレーキが停止直前まで動作するようになる
1100・1600番台
1000番台、1500番台の仕様変更版。2006年から配備された。1100番台は4両編成3本が神領区に、同じく4両編成7本(第5次車として3編成追加投入)が大垣区に配置されている。1600番台は3両編成4本が神領車両区に配置されている。クハが400番台なのは、仕様見直しの結果300番台相当の艤装品を有しており、その100番台という理由である。
1300番台
第4次車で登場した2両編成。2010年デビュー。1100番台の2両編成版と考えてもいいが、ワンマン運転対応設備や寒冷地対応設備が設けられているのが特徴。ただし編成番号がB40Xの8本はワンマン運転対応設備や乗客用ドア開閉スイッチが準備工事になっている(本設した1309号車~はB5XXの編成番号)。神領車両区に2両編成24本が配置されている。
ワンマン車は3000番台に代わって、中央線・関西線で運用されている。全編成が架線の霜対策としてクモハ313形にパンタグラフを2基搭載。半自動ドアを備える。
ネタ車番としてB505編成のクモハ313-1313が存在する。
1700番台
3両編成。1600番台に寒冷地と列車本数過疎線区対策の装備を盛り込んだバージョン。神領車両区に3編成配置されているが飯田線と中央線・篠ノ井線で運用され、1編成が神領に常駐している以外は基本的に豊橋運輸区や伊那松島運輸区に常駐している。神領常駐時も、走行キロ調整のため1500・1600番台の運用に入ることがある。車内広告は本来の運用先である飯田線の沿線向けのものが入っており、長野県の観光名所や企業のものが多い。
快速「みすず」として長野まで乗り入れる運用もあったが今は松本駅までで単なる普通列車として運用している。
変わった運用としては、本来JR東日本受け持ちの211系(かつては115系)の代走として、松本~中津川間を走行する事がある。これは主として諏訪湖の花火大会のときに起きる。
2500・2600番代
3両編成。2500番台が17本、2600番台が10本それぞれ静岡車両区に配置されており東は国府津まで、西は豊橋まで幅広く運用されている。オールロングシートで18切符ユーザーからの評判は悪いが、静岡地区の211系にはトイレが一切なく、それと併結させる運用を増やすことでトイレの確保に努めている。
2300・2350番台
2両編成。2300番台と2350番台の合わせて9本が静岡車両区に配置されている。2300番台と2350番台に大きな仕様の差はないが、2350番台はパンタグラフを2基搭載している。御殿場線や身延線で運用されているが、ローカルでのオールロングシートのため鉄ヲタには評判は良くない。
3100番台
2両編成。3000番台に3次車相当の改良を加えた番台で、静岡車両区に2本が配置されている。ロングシート地獄の静岡なだけあって、ある意味出会えたらラッキーな車両である。編成記号は3000番台からの続番。
5000番台
6両編成。名古屋地区を中心に運用される新快速・特別快速のグレードアップ用に2006年に登場した313系のフラッグシップ的な存在。大垣車両区に6両編成17本が配置されている。
新幹線で培われた技術をフィードバックし、乗り心地は在来線トップクラスと言われている。連結部に車体間ダンパが装備されているのが大きな特徴。
車内は扉間5列の転換クロスシートで、全ての座席が転換可能である。
2017年3月に発生した踏切事故でY102編成の神戸方2両が大破。2年以上運用を離脱していたが、2019年9月に神戸方2両を代替新造して復帰した。
代替新造された2両は車番が原番号+100されている他、製造年が元の2006年のままになっている、車体が5次車相当の仕様になっているなどの異端児。
5300番台
第4次車で登場した2両編成。2両編成5本が大垣車両区に配置され、300番台と共通運用を組んでいる。
5000番台とは異なり、車体間ダンパを装備しない。
第5次車
武豊線電化開業用に増備された28両。1100番台と1300番台が製造され、1100番台は大垣へ、1300番台は神領に投入されている。
仕様変更点
- 車内照明をLEDに変更。消費電力が減ったのみならず、車内照度が大幅に引き上げられている。既存車両も一部交換が進められている模様である。
編成記号一覧
編成記号 | 番台 | 所属 |
Y0 | 0番台 | 大垣 |
Y30 | 300番台 | 大垣 |
Y100 | 5000番台 | 大垣 |
Z | 5300番台 | 大垣 |
R100 | 3000番台 | 大垣 |
J0 | 1100番台 | 大垣 |
J160 | 1600番台 | 大垣 |
J170 | 1700番台 | 大垣 |
B0 | 1000・1100番台 | 神領 |
B100 | 1500番台 | 神領 |
B400 | 1300番台非ワンマン車 | 神領 |
B500 | 1300番台ワンマン車 | 神領 |
T | 2500番台 | 静岡 |
N | 2600番台 | 静岡 |
W | 2300・2350番台 | 静岡 |
V | 3000・3100番台 | 静岡 |
S | 8000番台 | 静岡 |
315系投入に伴う動き
2020年初頭、JR東海は国鉄からの引き継ぎ及び民営化直後に増備した211系、213系、311系の老朽取替を目的として次世代通勤型電車の315系導入を発表した。
2021年12月、翌年3月のダイヤ改正で中央本線名古屋-中津川間の全列車が8両編成に統一されることが発表され、関西本線の各駅では5両編成・3両編成の列車を2両編成または4両編成に変更することも告知された。
これに伴って神領区の313系3両編成に動きが生じ、2022年3月3日にB106・107編成が大垣区へ転属しJ163・164編成へと編成記号・番号を変更。6日にはB104・151編成が大垣へと転属し、B104はJ161編成、B151編成はJ171編成へと変更。
少し間を空けて11日にはB105・152・153編成も大垣へと転属しそれぞれJ161・172・173編成となった。これにより1600・1700番台は全編成が大垣区所属となり、1500番台も改正当日に3編成まとめて大垣へと回送されている。
更にライナー用のB200編成もダイヤ改正前日より動きがあり、改正前日と当日に全6編成が静岡へ回送された。なお静岡転属後、編成記号はSに変更された模様。
鉄道模型化
KATO、TOMIX、MODEMOからNゲージとして発売されている。
KATOは様々な種類の編成を取り揃えているのだが、併結相手の異形式が存在しないのが玉にキズ。ホビーセンターカトー東京は「米原駅で並ぶ新快速用車両」という共通点から、実車では有り得ない223系及び225系との併結を推奨なんて事をやらかしている。
ソース:https://twitter.com/katoshoptokyo/status/1142350612937367553
実車通りの異形式併結再現は211系0番台東海仕様や鉄コレの213系5000番台(要加工)があるTOMIX(トミーテック)が一番やりやすい。KATOも211系を発売しているがJR東日本仕様のみである。ただし、KATOの製品はグリーンマックス製211系5000番台用にKATOカプラー装着用アダプターが別売で用意されているため(カプラーそのものはKATO純正の383系用を使用する)、こちらを使うのもアリかも。