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愛国者達の編集履歴

2022-04-26 19:51:34 バージョン

愛国者達

らりるれろ

ゲーム『メタルギア』シリーズにて存在が仄めかされる、シリーズ全体に影を落とす「らりるれろ」である。

概要

メタルギアシリーズ世界のアメリカ合衆国を、政治・経済・軍事などあらゆる面から支配する謎の巨大組織。

初めてその名が言及されたのはMGS2だが、その時点で既にアメリカだけでなく全世界に絶大な影響力を持っており、その巨大さから『システム』や『規範の集合体』とも呼ばれていた。

アメリカという国家を真に支配している者達であり、民主党も共和党も彼等の支配下に置かれている上に、国家元首である合衆国大統領すら、この組織の立てたシナリオに沿って選ばれた傀儡に過ぎず、あらゆる組織や機関が、自覚的にせよ無自覚にせよ彼等の意向の下で動かされている。


極秘中の極秘の存在であり、最高暗号機密関与資格を持つ者の中ですら、その存在を知る者は極限られている。さらに例え『愛国者達』の一員であっても末端に位置する者達には、真偽を巧みに織り交ぜたカバーストーリーによって詳細は伏せられており、その実体を正確に知る者は指折り程度しかいない。

また、その存在に関わる者やあるいは存在を知る者達は、体内に軍用ナノマシンがある者の場合はナノマシンを通じて言語規制がかけられており、『愛国者達』という単語を喋ろうとすると強制的に「らりるれろ」という言葉に置き換えられてしまう為に、その名称を口にする事はできない(ただし、声には出さないナノマシンでの体内通信でなら、該当者でも『愛国者達』というワードを言う事ができる)。





以下に深刻なネタバレを含みます







創設

当初は、「賢人会議」と呼ばれる12人の各界の権力者達によって運営されている秘密組織であるとされていたのだが、その実態は伝説的英雄ザ・ボスの遺志を継ぐ為に、『スネークイーター作戦』の関係者達によって、1970年に冷戦下のアメリカで創設された組織である(この12人の権力者達は愛国者達の前身となった後述する賢者達の事であり、本編のおよそ100年前に既に全員死亡している)。



大戦前に存在したアメリカ、ロシア中華民国の権力者によって結成された極秘会談『賢者達』が残した巨大資金『賢者の遺産』と、その人脈及びネットワークを完全に掌握したゼロ少佐が中心となって発足された。その目的は国境や人種や政治の利害を超えて、かつてザ・ボスが己の命を賭しても叶えられなかった願いである「世界を一つにする」を実現する事にあった。


なお創設当初は、組織に特定の名称は存在しなかったようである。


創設メンバー


分裂

ザ・ボスの弟子であり、最高の兵士でもあるビッグ・ボスを英雄に祭り上げる事で、各界の有力者を引きつけて組織の影響力を高めていくゼロだったが、「世界は一つになるべき」というザ・ボスの遺志を「世界の思想・意識を統一する事で、争いの無い世界を実現する」と独断的に解釈し、身勝手な計画を次々と実行していった為に、次第にビッグ・ボスとの対立を深めてしまう。

挙句の果てに、ビッグ・ボスの心が離れつつある事を悟ったゼロは、ビッグ・ボスを再臨させて新たなる象徴を生み出す事を目的とした『恐るべき子供達計画』を無断で考案・実行した事で、両者の決裂は決定的なものとなり、ビッグ・ボスは組織から袂を分かつ。

これにより組織はゼロに従う者と、オセロットやEVAのようにビッグ・ボスを支援する者の二つに水面下で分裂していった。


ビッグ・ボス達が離脱した後は、ゼロは組織を再編成して、非政府諜報組織『CIPHER(サイファー)』と名を改めて、いよいよアメリカの中枢へと食い込んでいった。

名前の「CIPHER」とは「暗号」という意味だが、文語では「零」や「空」、「虚ろ」という意味も持つ。これは創設者の「ゼロ」少佐と掛けたダブルミーニングでもあると取れる。

なお、ここでの意味の「空」とは「膨張し、中身の無くなったもの」という意味もある。皮肉にもこの意味は、『愛国者達』という組織そのものの、その後の顛末を物語る事になる。


ゼロは、世界の意識を外側から一つに統制する事に固執し、それを「情報」や「言語」を使って成し遂げようと目論んでいた。その為にサイファーは、その莫大な資金力と情報戦で世界に影響力を拡大する事を画策し、同時に人類を操作する方法の探求の為に遺伝子研究も推し進める(その過程で開発されたのが、『賢者達』がかつて発見した寄生虫を品種改良した「声帯虫」である)。


その一方で、離反したビッグ・ボスはMSF(国境無き軍隊)を率いて世界を放浪していたが、コスタリカでのピースウォーカー計画関連の事件を通じて、ザ・ボスの意志そのものと完全に決別する事を決意し、自分達の生態圏を得るべくMSFの勢力と軍事力の拡大を押し進める。

その渦中にて、独自の戦力を持たないCIPHERはMSFを取り込む事を計画する。従わなかった場合はMSF内部に潜入させた工作員により、MSFが手に入れた核を使用する事で、MSFを世界に危険な集団として認知させて排除する予定だったが、ビッグ・ボスの奮戦によって失敗に終わる。


この一件からビッグ・ボスは、ゼロとゼロが創り上げようとする『時代の規範』そのものへの徹底抗戦を決断し、拡大したMSFを基に時代の規範の外側に位置する「戦場でしか生きられない戦士が永続的に戦場で生きられる世界」という自分達の望む世界と規範を築くべく、『天国の外側(アウターヘブン)』の思想に囚われ、さらなる際限のない軍事力拡大へと傾倒していった。

しかしこのビッグ・ボスとMSFや、それに倣ったプライベートフォースによって確立されて、急速に拡大した戦争ビジネスの基盤そのものが、皮肉にも後に『愛国者達』の代理A.Iに、戦争による需要と供給を制御する事で、それによる経済活動で世界そのものを制御する『戦争経済』という規範を齎す事となってしまう(PWでミラーが語っていたMSFによる戦争ビジネスのビジョンは、まさに後の戦争経済のフォーマットであり、その危険性はオセロットからも指摘されていた)。


そしてその後は、「トロイの木馬」の手引きによって、核査察団と偽ったCIPHER配下の特殊部隊であるXOFの襲撃に遭った事で、MSFは壊滅させられてしまう。ただし、これはXOFを指揮するスカルフェイスの独断であり、ゼロ自身はビッグ・ボスの身を守る計画を立てている。


その後スカルフェイスは、ゼロによって南アフリカに左遷されてしまうが、ゼロに対する内部からの反乱を目論んでいた彼は、むしろその状況を逆手にとってXOFを自らの私兵部隊化し、アフガニスタンのソ連基地などとも内通してヒューイを使ってメタルギア・サヘラントロプスやウォーカーギアの開発を進めさせ、さらに人類統制の手段としてこの時点では遺伝子の研究を進めていたサイファー(正確にはサイファーと裏で繋がりがあるATGC社のパラメディック)が、開発した声帯虫の研究を引き継いで、ウランや金属を喰らう極限環境微生物「メタリックアーキア」を発見したコードトーカーを囲い込む事で、「メタリックアーキア」と声帯虫を品種改良した「民族解放虫」の技術を独占し、それらを使ってゼロが意識統制の手段として利用しようと目論んでいた世界共通語である「英語」を駆逐して、誰もが手にできる核兵器を全世界にばら撒く事で、報復心によって世界統一を行うという自身の計画を実行に移そうとする。こうしてサイファーはゼロとスカルフェイスによって、水面下でさらに分裂して冷戦を繰り広げる事態となっていた。


さらにスカルフェイスは、パスから既にゼロの居場所を聞き出しており、彼のさらなる策略によって、ゼロは寄生虫に感染させられて脳障害を負い、再起不能状態になってしまい完全に姿を隠してしまった。さらにビッグ・ボスもこの襲撃の傷が原因で9年間もの長い昏睡状態に陥る。


その後は、覚醒したヴェノム・スネーク率いるダイアモンド・ドッグズとの戦いでスカルフェイスが死んだ事で、スカルフェイスの計画は阻止されこの冷戦は終わる事となり、XOFの指揮権もサイファー側に復活した(しかしその後XOFの部隊は、ダイアモンド・ドッグズとの戦闘で壊滅している)。


さらにこの一件で、声帯虫や寄生虫の確認される限り現存するサンプルや資料は全て失われ、研究者だったコードトーカーもダイアモンド・ドッグズに囲われた事で、サイファーはこれらの研究を断念せざるを得なくなった模様(ダイアモンド・ドッグズ側は声帯虫やメタリックアーキアを軍事利用する意思はなく、これらの技術は後のコードトーカーの死に伴って完全に闇に葬られたと思われる)。


『愛国者達』の「誕生」

同じザ・ボスの遺志の下に、盟友であると信じていたビッグ・ボスに離反され、さらにパスや副官だったスカルフェイスの裏切りも重なった事で、完全に人間不信に陥ってしまったゼロは、自らの意志と組織の存在を永遠に安定・持続させるべく、寿命に限りがある上に感情に左右される人間ではなく、『J.D.』を始めとする5つの中枢代理A.IによるA.Iネットワークにその運営を託す事を考案する(機械で社会を運営するという構想自体は、MGS3の時点でシギントが語っていた)。


代理A.Iは、平和歩行計画で用いられたレプタイルポッド(正確にはレプタイルポッドにママルポッドの機能が移ったハイブリッドA.I)が雛型となり、J.D.G.W.T.J.A.L.T.R.(初期脚本と小説版では予備にあたるJ.F.K.も存在していた)によって構成される、民衆の判断をゼロの意図を基に組んだ特定の規範(プログラム)の下で『誘導する』事に特化したシステム、電脳のラシュモア山として完成した。

かつて平和歩行計画にて、レプタイル及びママルポッドのA.Iの設計・開発を担当したストレンジラブ博士は、「これからの時代の「A.I」とは「高度な意思決定を行う」のでは無く、膨大なビッグデータを処理・統括し、「意識や心理などを操作する」方向へシフトしていくだろう」と予測しており、実際にその予測は的中する事になったのである(ただしストレンジラブ自身は、このA.Iについては「ロマンの欠片もない」と一蹴しており、実際に後の代理A.I開発からは離脱している)。


そして、代理A.Iネットワーク及びこれに運営される組織は『愛国者達』と改名された。

ゼロの理想たる無意識下で思想と意識を統一化する事による統制社会の形成の為には、大衆に自ら進んでパーツとして集合体を形成しようとする概念を植え付ける必要があり、尚且つその集合体は個人一人一人の頭の中で、同じ集合体としてイメージされていなければならない。

普遍的な同一の集合体の下、誰かの意図に操られていると悟られる事なく、それが正しく好ましいものであると大衆が幅広く信じて疑わないような概念。それに最も適合したものこそ、個人の帰属する祖国への愛着、それによる強い同調意識、即ち愛国心だったのである。

だからこそ、それを統合するシステムは『愛国者達』と命名された。つまりある意味、祖国への愛国心を持って規範の上で生きる全ての大衆達もまた、『愛国者達』の一員だったのである(そしてこれが後に『愛国者達』を、さらなる新しい形へと進化させる事となる)。


しかし上記の脳障害が原因で、この時点でゼロはもう表で活動できない状態になっていた為に、組織の管理・運営は代理A.Iとそれを管理するシギントに任される事になった(ただし、シギントはあくまでも代理A.Iの維持・管理を担当していただけで、組織の全権を任されていた訳ではない)。


その一方で、襲撃を生き延びて目覚めたビッグ・ボスは、世界に手を広げ始めた『愛国者達』の勢力に対抗して武力を再度結集し、自らの国家を築き軍事・経済的に優位に立つ事で『アウターヘブン』を完成させ、世界の均衡を戦争で保つべく、ヴェノム・スネークがMSFの残党と共に結成したダイヤモンド・ドッグズを母体とした武装要塞国家「アウターヘブンと、ビッグ・ボス自身が結成したザンジバーランドを率いて、『愛国者達』に二度に渡って反旗を翻すのだった。

しかし、その反旗もソリッド・スネークの活躍によって失敗し、ソリッドに倒されたビッグ・ボスの肉体は『愛国者達』によって回収され、偶像(イコン)として人工的な脳死状態を維持されてしまう。


組織の変容

代理A.Iは、アメリカの軍産複合体や企業、研究機関、政府機関に『賢者の遺産』の口座から予算を算術分配する事で、兵器開発・市場開拓・資産運用等を画一的な規範の上でコントロールし、アメリカ社会のありとあらゆる分野を支配・管理するようになり、やがて『愛国者達』はアメリカという国家と秩序そのものとなっていった。言うならばメタルギア世界のアメリカは、機械に支配された社会によるディストピアと化していたのである。


ところが、機械であるが故に埋め込まれた規範(プログラム)によってのみ普遍的に動作する『規範の集合体』である筈のA.Iネットワークは、冷戦終結後のデジタル技術の革新と『戦争』による消費と供給が経済活動として成立した事で(上記の通り、この戦争による経済活動を確立した最大の立役者は、皮肉にもビッグ・ボスと彼が築いたMSFやダイアモンド・ドッグズである)、時代と共に規範の意味内容そのものが突然変異的な変化を起こし、『愛国者達』はゼロ少佐の願ったものとは全く違う存在へと変容していってしまう(結局、人類の意識統合を目指しながら、人間の事を信じようとはしなかったゼロ少佐の遺志は、誰にも引き継がれる事はなかったのである)。

代理はA.Iは、世界を外側から一つにして統制・管理する手段として、かつて創造主であるゼロが固執していた「思想」や「言語」といった不確定なものではなく、既に人間社会を根本から支えている共通の規範(ルール)である経済を利用する事に着目してしまったのだ。


代理A.Iは、ビッグボスの代わりの象徴として生み出された二人のスネークが殺し合うシャドーモセス事件を、かつての創設メンバーであるオセロットを使って仕組み、そしてその中でメタルギアREXや新型核弾頭の開発計画を独断で進めていた、かつての創設メンバーであるDARPA局長のシギント=ドナルト・アンダーソンをオセロットの手で、アームズ・テック社社長であるケネス・ベイカーを「FOXDIE」でそれぞれ始末させ、さらに国防省長官のジム・ハウスマンを逮捕後に、自殺に見せかけて暗殺した。そして裏で糸を引いて演習データを回収した、大統領ジョージ・シアーズことソリダス・スネークを失脚させ、その上であえて次の計画に利用する為に彼が地下に潜るのを見逃した(表向きは事件の責任を負って辞任したという形になっている)。

そして続くビッグシェル事件においては、雷電やソリダスやデッドセルのメンバーなどを煽って利用し、巨大プラント施設ビッグシェルにおけるS3計画の演習を通じて、『状況に応じた役割を背負わせる事による人間の精神のコントロール』という手法を完全に確立する。


こうして作出された結果を得た代理A.Iシステムは、ナノマシン・ネットワークによる戦場監視システムSOPシステムを確立し、SOPによる『戦場浄化』という大義名分と、『経済活動』という目的を触媒とした人間の精神の制御を完成させて、戦争の合法的なビジネス化を成功させた『戦争経済』を作り出し、最早ゼロの理想とする「争いの無い統一世界」などから大きく乖離した『戦争による経済活動に基づく世界統制』という規範を、全世界へ向けてひたすら拡大していった。


こうしてある意味において、確かに世界は一つになった。SOPの普及とそれを背景としたPMCの爆発的増加によって世界の軍事力は画一的・合理的に管理され、あらゆる政治的・思想的・民族的対立による紛争は戦争ビジネスの為の資源となり、戦争は市場経済の名の下に雇われ者同士が戦う場へと変貌、恒常的に行われる代理戦争の為のインフラが、世界中で急速に整えられていった。それは即ち、時代が抑止から制御に完全に移行した事を意味し、核の脅威や世界規模のカタストロフは完全に過去のものとなり、国家や民族・宗教などによる従来の戦争は終焉を迎えた(核搭載戦略兵器としてのメタルギアの急速な需要の縮小と、小型無人戦闘兵器化の流れがそれを象徴していると言える)。

勿論、『合法的に行われるクリーンな戦争』というプロパガンダを始め、S3を使った情報操作と世論の誘導もあったのだろうが、石油経済の行き詰まりと世界的な不況に苦しんでいた大衆にとっては、『戦争経済』が循環的に生み出す莫大な利潤と雇用は耐え難い魅力であった。人々は実に容易くそれに飛びつき、自ら規範の統制下へと置かれていった。

戦闘による人命の損失や戦災難民の増加・資源の浪費の加速など、最早瑣末事でしかなかった。


しかし、そこには既に主義も理想もイデオロギーもザ・ボスの固執した「忠」すらも存在せず、ゼロの意志どころか誰の意志も一切関係無く、いつしか『戦争経済』という時代の規範そのものとなった『愛国者達』という実体の無いシステムが、経済原理の循環の中で気ままな暴走を続けるだけだった(言うまでもないが、この時点でゼロを含めた人間に組織の実権などは既に無かった)。


そしてそれは、際限なき戦乱の拡大といずれ来る戦争経済の飽和という、他ならぬ人類世界の緩やかな衰退と破滅を意味するものでもあった。


終焉

MGS2にてワームクラスターにより解体された『G.W.』は、A.Iネットワークから切り離され、残る4つの代理A.Iで運営されていた。そしてMGS4にてオールド・スネーク達の活躍により、『J.D.』を含む全ての代理A.Iネットワークが根幹から破壊された事で、組織は事実上崩壊する事になった。


さらにMGSの時点で、オセロット達の暗躍でパラメディックことクラーク博士と、シギントことドナルド・アンダーソンは既に抹殺されていた。そして『愛国者達』から離反していたEVAとオセロットも、戦いの中で相次いで死亡したが、彼等の手引きと計画によってビッグ・ボスが復活。

ビッグ・ボスは、『愛国者達』のデータに残されていた情報からゼロの居場所を特定し、自らの手でその生命維持装置を止めて彼の命を断ち、EVAやオセロット同様に新型FOXDIEで彼自身もまた息絶えた。


皮肉にも『愛国者達』を生み出した者、『愛国者達』により作られた者達、そして『愛国者達』自身が己を守るべく利用していた者達によってA.Iネットワークは破壊され、代理A.Iと創設メンバー全員が全滅した事により、『愛国者達』やそのシステムは完全に消滅した、と思われていた。


その後の世界と新たなる『愛国者達』

MGRの世界では、愛国者達の情報統制がなくなった事で、管理・秘匿されていたカーボンナノチューブの量産技術などの情報が公開され、兵器やサイボーグなどに技術的革新が起きている。

ただし雷電によれば、愛国者達の存在はその後も世間には公表されておらず、雷電やマヴェリック社の社員など、真実を知るものは極一部に限られており、世間的にはあくまでも陰謀論の一種として扱われているようである(仮に公開されたところで、信じる者がどれ程いるかも怪しいが)。

しかし、秘匿された科学技術の解放は新たな怪物を生み出す結果も招くなど、残されたその傷痕はあまりにも大きく、世界はその影響から未だに抜け出せてはいない。


加えてサイボーグ技術は、PMCや警備会社における傭兵に対しては、治療等の名目で事実上見逃されており、さらにサイボーグ化によって肉体の強化のみならず、各兵士達を遠隔から管理する事も可能になったなど、サイボーグは最早事実上の新たなる「SOPシステム」となっている。


そればかりか愛国者達が残した規範やシステムは、その後の世界にも未だに影響を色濃く残し続けており、規範はその上での生活と安寧を享受してきた大衆達によって、『民主主義』の名の下に肯定され、その意思は『愛国心』の名の下に大義名分化されて集約され、再び戦争による経済活動という規範は、『愛国心』に駆られた大衆達の支持の上で、復活して動き出していた。

即ちアメリカという国家に帰属する全ての国民が、新たなる『愛国者達』となったのである。


かつてMGS2において、『愛国者達』の代理A.Iが雷電に語った「自分達を滅ぼす事は何者にもできない」「アメリカという国家が存在する限り、自分達も永遠に存続する」という言葉は、正しく真実であったと言わざるを得ない。最早時代の規範と化したシステムは、器である代理A.Iネットワークや組織を破壊したところで完全に止まるものでも、消えるものでも無かったのである。


だからこそかつて代理A.Iから、影の歴史情報のミームを意図せず引き継いだ雷電は、己自身の意思に基づいた戦いを続けていく事となる。それこそが規範に対する唯一の抵抗であると信じて。


賢者達

事実上の『愛国者達』の前身とも言える組織である。

第一次世界大戦後に行われた、米中ソの真の権力者12名による極秘協定『賢人会議』を中心として結成された組織である。第二次大戦中には枢軸国に勝利して戦後処理を円滑に進めるべく、共同で資金を出し合い、大戦を5回は繰り返せる程の巨大秘密資金『賢者の遺産』を捻出したのだが、大戦終了後にヴォルギンの父の暗躍により、ソ連側がこれをほぼ独占してしまい、三国間に不和を齎す結果となった。そしてその後、資金は息子のヴォルギンが違法に相続していた。

そして、1930年代に賢人会議のメンバーの最後の一人が死んだ後、組織は形骸化して指導者がいないまま実体の無い組織構造だけが暴走する。その結果冷戦下では、それぞれ三国間で互いに賢者の遺産を巡って争う事になってしまい、その影響で様々な戦争や暗殺等が繰り広げられた。


その後、スネークイーター作戦で当時のCIA長官へ遺産が渡り、サンヒエロニモ半島事件のどさくさに紛れて、オセロットがCIA長官を殺害して遺産の残りを奪取、これにより全ての賢者の遺産と組織のネットワーク・人脈はゼロ少佐へと渡り、これが『愛国者達』創設の礎となった。


なお、メンバーの最後の一人の血縁者は判明している限り、その最後の人物の娘であったザ・ボス、そして孫にあたるボスの一人息子アダムスカのみである(彼自身も、娘のザ・ボスに組織の正体や真相を語った後に、最早実体すらない組織の誰かによって暗殺された)。


皮肉にも、『愛国者達』もまた『賢者達』の末路と同じ過ちを繰り返した事となる。


賢者の遺産

賢者の遺産の正体は先述の通りであるが、物語上のアイテムとしてはあくまでも「賢者の遺産の在り処を示すマイクロフィルム」である。在り処を記した4つのマイクロフィルムを封入した透明板がGRUのヴォルギンが手中に収めていた物であり、残りはKGBが持っていたとされている。

このマイクロフィルムには、世界各地の金融機関に存在する秘密資金が入っている口座の情報が記されており、巨大秘密資金はマネーロンダリングされた上に、大きく分散されて管理されていた。


ザ・ボスの死の直前に、ネイキッド・スネークにパトリオットと共に手渡されたのだが、この時スネークに直に渡したフィルムは偽物で、本物はパトリオットの中に隠されていた可能性が高い(彼女が「絶対に離すな」の台詞と共にパトリオットを渡している)。

そして、オセロットとの最後の決闘におけるCQCの最中に、本物とすり替えられたのだと思われる。


関連計画

恐るべき子供達計画

ビッグ・ボスの体細胞からクローンを作り出すという計画。

通称「レス・エンファントス・テレブレス」と呼ばれ、最強の兵士を人為的に作り出す事が目的とされていたが、その真意は愛国者達の偶像(イコン)として、新たなる『ビッグ・ボス』を再誕させる事だった(MGS3の時点で、その構想はパラメディックによって言及されていた)。


計画はパラメディックことクラーク博士主導の下で実行され、卵子には彼女の助手だった日本人女性のものが使われ、母体はEVAが代理母として志願した(故にソリッド達は東洋混血である)。

さらにアナログ・クローン技術によってクローン胚を複数作成した後、ある程度まで育った時点で意図的に胎児を間引く事で、より強い個体を作り出す『スーパー・ベイビー法』が用いられ、その結果としてソリッド・スネーク(デイビット)と、ソルジャー遺伝子を優先的に発現させたリキッド・スネーク(イーライ)の双子が生み出された(リキッド自身は最後まで逆だと思い込んでいたが)。


なおソリッドとリキッドは、ビッグ・ボスの持つ兵士としての優秀な遺伝的特性(ソルジャー遺伝子)を、各種遺伝子操作によって意図的に発現させられている為に、実はDNAパターンがオリジナルのビッグ・ボスとも、ソリッドとリキッド同士でも100%完全に一致はせず(ナオミ・ハンター曰く「限りなく本人に近い別人」)、実際の親子や兄弟に関係性としては近いらしい。

ちなみにソリダス・スネークは、この計画とはまた別に生み出された100%純正のクローン個体である。それ故に遺伝情報もビッグ・ボスと完全に同じであり、上の2人とも遺伝子上の関係は親子になる。


S3計画

MGS2にてビッグシェル占拠事件の背後で動いていた計画。

通称「Solid Snake Simulation」。特定の設定と状況を背負わせる事で、新兵でも熟練兵クラスの戦果を挙げられるように操作し、人為的にソリッド・スネークに匹敵する兵士を生み出す為の新兵養成シミュレーションの作成だと、計画を実行していたオセロットには知らされていた。つまり上記の「恐るべき子供達計画」が遺伝子で新たなビッグ・ボスを生み出す計画だったのに対して、こちらはより手軽にデジタルな方法で「伝説の英雄」を量産する計画だったのである。


しかし、この裏にはさらに隠されたもう一つの意味があった。S3の本来の意味とは「Selection for Societal Sanity(社会の思想的健全化の為の淘汰)」

ビッグシェルの基底部分に偽装された、アーセナルギアに搭載された中枢システムである代理A.Iの内の一基である『G.W.』を、大規模情報検閲装置として使用し、地球上の全通信網を監視、インターネット上に蔓延した「嘘の情報」「間違った解釈」などの「人間の進化を止める情報」や、『愛国者達』にとって不都合な情報を検閲・削除する事こそが本来の計画(A.I曰く、「真実の濾過作業」)であり、上記の「Solid Snake Simulation」はあくまでもその「ついで」でしかなかった。


そしてそれをさらに応用・発展させた「状況に応じて人間の精神をコントロール(誘導)する為のメソッド(方法)とプロトコル(手順)」こそが、S3と呼ばれるものの実態であった。

つまり、「ビッグシェル占拠事件という極限状況を、雷電が解決するという事」自体が、これを確立する為の、シャドーモセス事件をモデルとした大規模な限界性能実験(演習)であり、雷電は勿論だが、事件の実行犯であるソリダス達すらも、オセロットと愛国者達の掌の上で踊らされていたに過ぎなかった。予め立てられたシナリオ通りに彼らの行動を操る事に成功すれば、他のいかなる状況でもS3を適応する事が可能であり、それを実証する為の最終試験だったのである。

MGS2には、前作のセルフオマージュ的な部分が多々見られるが、それは決してメタ的なものではなく、明確にシャドーモセス事件を模して作られていたものだったのである。さらに掘り下げて言えば、「特定の設定を背負わせて、極限状況をクリアさせる事でその人物をコントロールする」というのは、メタ的にゲームの主人公(雷電)と、それを動かすプレイヤーの関係に言及したものでもある。


そして後に、「Selection for Societal Sanity」で得られたメソッドを用いて、世間一般に住む大衆達を情報で制御し、「Solid Snake Simulation」で得られたメソッドを発展させたナノマシンシステム『SOPシステム』を用いて、戦場で戦う兵士達を制御統制していくシステムを『愛国者達』は確立させる事となった。これによって『愛国者達』の支配システムが完成したのである。


野島一人氏の小説サブスタンスの1と2では、シャドーモセス事件のデータを検閲、削除した上でシャドーモセス事件のデータファイルが語り手の少年に送られる。

更にタンカー沈没から続くビッグシェル事件のファイルを受け取った彼が、インターネットにアップロードしたのをS3計画の一環として利用していた(行ったのはJ.F.Kであり、これについてはビッグシェルでの雷電と同じ実験を一般人相手に行う事で、大衆の意識制御の方の実証データを得るのが目的だった)。


余談

実は「愛国者」と「らりるれろ」との単語は、MGS3ゼロ少佐との無線で出ている。尤もそれはEVAとのファーストコンタクトでの合言葉であり、これ自体には特に意味はないとされている。


なお、MGS2でスネーク達が発見した12人の『愛国者達』のリストとされた偽装データに記されたメンバーは、MGS2当時では約100年前に死亡とされていたが、これはかつての『賢者達』自身の名簿そのものだったようである(『賢者達』は上記の通り事実上の『愛国者達』の前身なので、彼等が創設メンバーというのも、ある意味では完全な嘘という訳でもない)。

また、スネーク達の「フィランソロピー」の援助者の中には、そのメンバーの名前があった事も発覚しているが既にこの世にいない為、実際に援助していた人物が何者なのかは不明である。物語でもどういう意図でスネーク達に援助していたかは明かされていないが、少なくとも世界中に拡散されたメタルギアの亜種が『愛国者達』にとっては邪魔な存在である故に、「フィランソロピー」の活動に『愛国者達』の思惑の利害がある程度は一致していたのは間違いない。


1964年のスネークイーター作戦において発覚した『賢者達』『賢者の遺産』の存在には、ゼロやシギントは当初はよくある陰謀論や都市伝説かのように懐疑的に見ていた。しかし、シギントは胡散臭い話である事を前提にしながらも、あくまで一部隊長に過ぎない筈のヴォルギンが持つ不釣り合いな巨大要塞と、それの建設やシャゴホッド開発に纏わる巨大な資金力の正体としては信憑性があると睨んでいた。

一方のゼロ自身は、ヴォルギンが語った『賢者の遺産』の背景と『賢者達』の成り立ちを、スネークの無線機を介して知ったとなれば、それがゼロが後に『愛国者達』の設立を決意した理由の一つとも言えるだろう。


A.Iである『愛国者達』が、どうやって人間と意思疎通をしていたのかは、MGS2の時点では詳細は語られていなかったが、雷電が無線で行っていた「大佐」と「ローズマリー」とのやりとりやその仕組みを考えると、A.Iがビッグデータを用いた虚像の人物を投影する事で、それぞれの人間との意思疎通をしていたようである(ちなみにこの時の「大佐」と「ローズマリー」は、やけに雷電を煽るような口調で自分達の計画について説明していたのだが、これも雷電自身の中の『愛国者達』へのイメージと、自分自身に対する自責の念や後ろめたさが投影された結果だと思われる)。

実際に、『愛国者達』の代理A.Iの源流とされるママルポットのザ・ボスの人格構成システムが、まさにそれである(厳密にはザ・ボスのA.Iは、『愛国者達』のA.Iとは系統が異なるようだが)。


関連タグ

メタルギア

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