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発達障害の編集履歴2022/08/09 16:33:33 版
編集者:こんぽた
編集内容:追記と項目整理といろいろ

発達障害

はったつしょうがい

先天的な様々な要因によって主に乳児期から幼児期にかけてその特性が現れ始める発達遅延であり、自閉症や学習障害(LD)、注意欠如(欠陥)・多動性障害(ADHD)などの総称。

概要

知的発達の障害のひとつで、生まれつき脳の働きに特徴があることで、特に行動面や情緒面の発達に関係して起こる障害である。

学習障害(LD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD。多動が目立たない注意欠陥障害も含まれる)などの様々な種類があり、さらに同じ障害の診断を受けていても、人により特性の現れ方や知的な発達については違いが大きい。

精神医学においては知的障害(ID)を含めて、神経発達症と言う枠組みで捉えられている。

基本的に先天的(つまり生まれつき)だが、幼少期のうちの病気交通事故などによる脳の損傷で発症することもある。しばしば知的障害や精神障害を伴うことが知られている。

知的障害のない発達障害(アスペルガー症候群など)の存在が広く知られるようになったのは近年のことであり、区別する目的で特に知的障害を伴わないタイプのみを発達障害と呼ぶこともある。知的障害を伴わない発達障害の研究は本格的に始まってからまだ30年もたっておらず、未だに混乱や誤解が多く、また生物学的なメカニズムもほぼわかっていない。

なお、現在はより広い概念として「自閉症傾向やその症状は連続して分布している」という考えに基づく「自閉症スペクトラム」として、従来の自閉症や広汎性発達障害、アスペルガー症候群などとして分類されていたものも含めて診断されることが増えている。

診断など

DSM-5:「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」やICD-10:「国際疾病分類第10版」といった医学書に記載されている診断基準をもとに、普段の症状や生育歴、(特に子供の場合)家族からの聞き取りや、本人が感じている日常での困り事などを総合的に判断して診断が行われる。

障害ごとに診断の基準や症状の治療方針は異なるため、ここでは詳細を述べないものとする。

発達障害は大前提として(外傷などによるものを除き)生まれつきの特性であり、決して完治するものではない。このため、診断や治療にあたっては「特性やそれによる症状をうまくコントロールし、日常生活での障害となることを減らしていくこと」が重視される。

先天性の場合、ダウン症口蓋裂無脳症等と異なり出生前診断で判定する事はほぼ不可能(遺伝する可能性も議論はされているがまだ不明な点が多い)で、出生直後には判明しない事が多く、生後数年以上経ってから判明することも珍しくない。

乳幼児期は単なるイヤイヤ期と判別が付きにくい場合も多く、乳幼児健診などで「傾向がある」と診断されても後に「発達障害ではなかった」と結論づけられたり、逆に当初の見立て以上に重い障害だったことが判明することも珍しくない。

また、「健常者」と「発達障害」の間に「グレーゾーン」(あるいは「ボーダー」)といわれる、「障害という診断はつかないが、普通の人よりは生きにくさを感じる」という人も存在する。

特に知的障害を伴わないか軽度である場合、未診断であるという人もおり、その人の特性や性格、周囲の環境によっては普通の人(健常者)と特に変わりなく穏やかに過ごしている。しかし、コミュニケーションや社会的規範にうまく対応できず、またそれが障害の特性によるものであることがわからないまま、周囲との軋轢を起こしたり、変人扱いされ誤解を受けたりといった人間関係の悩みや、能力はあるのに学業・仕事が上手く進められない、日常生活でもミスが頻発してしまうといった問題を抱えているということも多い。

さらに、大人になってトラブルの種となる自身の特性(例えば衝動性や多動など)をある程度抑制できるようになった後も、強い不快感に耐えなければならない精神的ストレスからうつ病などの二次障害を発症し、精神科を受診したことから自分が発達障害者だと気づく人も多い。中にはアルコール依存症や盗癖、ギャンブル・買い物依存症・浪費癖といった反社会的行動につながる形で二次障害を発症する場合もあり、さらなる窮地に陥ることもある。

また本人がそれほど困っていなかったり自覚が薄くても、そのつもりがないのに周辺の人を振り回し摩擦が起きることも多い。特に発達障害者の配偶者と、その特性により意思の疎通が上手く出来ないなどの理由で精神的に追い詰められてしまう状態を「カサンドラ症候群」とも呼ぶ。

障害の特性の一つとして、感覚過敏(特定の音や触感などの感覚にひどい苦痛を覚える)を抱えている人や、特定の動作がうまくできない発達性協調運動障害を抱えている人も多い。

具体例としてはネクタイ等が結べない、字が極端に下手、重要書類の作成が出来ない、整理整頓が下手、時間感覚のズレ、顔と名前が一致しないといった、一人で日常生活を円滑に過ごしていく上での支障を抱えていることも多く「社会人なのに…」と周囲から悪く見られてしまうこともしばしばある。さらに、発達障害のタイプによっても様々だが、「特定の音や光の具合」「ものや数字の並び方」「ある時間とある時間の間の相対的な概念」など一般的な人には理解しがたい理由で強い不快感を感じ、感情をうまくコントロールできずにパニックを起こしてしまうという場合も多い。

診断がつくことで本人も自覚をして行動しやすくなり、周囲もより適切な対処法を知って救われることも多い(例えば一部の学校では、発達障害を抱える子供に対して授業中にタブレットやパソコンなどを利用して学習を支援したり、耳栓やサングラスなどで感覚過敏を和らげたりといった対応が進められている)

正確な知識に関してはなるべく最新の専門書や専門サイトをあたっていただきたい。

また、診断が難しいので自己完結せず、最新の知見を持った専門家に相談することをお勧めする。

治療について

知的障害がさほど重度でない場合は、「療育」を受けることで本人がある程度周囲との折り合いをつけることが可能になる場合もある。例えば、ある特定の動作をどうしても覚えられない障害の場合はその障害に応じた作業手順を決める(一例として、漢字の熟語がかけるようにならない場合は漢字自体の意味を調べそこからゆっくりと覚える)、といった具合である。

一部の人を除くと身体能力はあまり高くないが運動をさせることにより、発達が遅れがちな脳の部位の発達を助けたり苦手な動作を補わせることもある。

特に9歳までに療育に着手できるかどうかで大きく差が出ると言われているが、成人後でも目覚ましい効果がなくとも「少し改善する」だけでも生き辛さが変わるため全くやらないよりはマシである。

また、場合によっては抗うつ剤や神経伝達物質の不足を補う薬を処方し衝動性を抑制したりする場合もある。

効く効かないの個人差が非常に大きい故にある意味「やってみなくてはわからない」部分が多く、副作用(主なもので、眠くなる・吐き気・少食になるなど)とのバランスも考慮しなければならないため投与量も主治医と試行錯誤しつつ決めていくことになる。

これらの薬は精神安定剤という特性上目的外の乱用に使われかねず(※一部の薬品はいわゆる「スマートドラッグ」として、治療が必要な当事者以外にも広まっている)それを防ぐために処方までには厳しい規定がある。病院でも一部の薬品に関しては「処方許可を得ている」ことを明確にしており、処方にあたっては患者側も複数の検査を受けることとなる。

知的障害がある場合でも、療育を適切に受けることで本人や周囲のトラブルや生き辛さがある程度軽減できる場合もある。

いずれにしろその対処方法は障害の状態が多様であるためすべての発達障害に一律に効く方法はなく、個人にあわせて試行錯誤していくことになるため、診断が降りた場合はなるべく早く、新しい知見を持った専門家に繋げることが望ましい。

また前述のように発達障害に対する知見が進んだのがごく最近であるため、幼少期には知能検査などで引っかからず療育を受けられず二次障害を起こして「勤務先にいられなくなり不利な転職を繰り返したり失業してしまう」「配偶者や親族と険悪になり離婚、離縁されてしまい孤立する」といった窮地に陥る者も珍しくない。

先進国や裕福な家庭ほど発達障害者が多い、増えやすいという意見もあるが、逆に発展途上国や貧困層では情報が少ないので中々気付かないら仮にそのような人がいても殆ど気にしないのでは?とも考えられている。ただし北欧アメリカ等は世界全体で見てもかなり多く、また治療研究も進められている。

最近では、スティーブン・スピルバーグマイケル・フェルプストム・クルーズといった世界的な有名人が、自らが発達障害の診断を受けている事をカミングアウトするような機会が増えている。

招くきっかけになる物

諸説あるが現時点では不明。だが後述の研究で遺伝が深く関わっているのではないかと言われている。

発達障害児の親を調べた所、高確率で親にも発達障害が見られたことがいくつもの学術記事にて報告されている。

特にADHDは7割の確率で親にもADHDが見られたという報告もあり、総合的に見て7〜8割の確率で親から子へ遺伝すると考えられている。

ただ、発達障害の要因が100%遺伝によるものかどうか(発達障害に影響する要因が遺伝のみかどうか)は未だ解っておらず、環境要因などとの関連も指摘されている。

参考

発達障害の主な対人関係のタイプ

特に自閉症スペクトラムについてこのように分類されることがある。

積極奇異型

発達障害の中でも比較的気づかれやすいタイプ。他人に対してやたらと馴れ馴れしかったり、適切な礼儀を弁えていなかったりといった言動が目立つため、問題となりやすい。

衝動性や多動・加害性が強く、情緒不安定で攻撃的という印象を与えてしまう人もいる。無論、このタイプの全ての人がそのような傾向というわけではない。

孤立型

周囲に関係が薄いタイプ。コミュニケーションに対する関心が低く、集団の中にいても人がいないかのように振る舞う。孤立してしまい、助けを求められない状況になってしまうことも起こりうる。

主に幼児期に見られ、成長して改善する場合もあるがこの状態が生涯続くこともある。

尊大型

高圧的で、大きな態度で振る舞うタイプ(いわゆるナルシスト気質)。基本的に協調性がなく、自分や周囲の状況を客観視できないため、トラブルを起こすことが多い。

自信家で能力をアピールすることに長けているため、学校で教師から信頼されたり、仕事でも重要なポジションを任せられたりといったケースも多いが、一度の成功をパターン化して拘り、失敗しても繰り返すため大きなミスに繋がってしまうこともある。

受動型

周囲とのコミュニケーションを受け入れ、言われたことに対しても従順なため、上記のタイプに比べると障害の特性が目立ちにくいタイプ。

一方で自分からコミュニケーションを積極的に取るようなことは少ないため、良くも悪くも流されやすく、利用されてしまう可能性がある。自分からうまく不満を言い出せずフラストレーションが溜まり、些細なきっかけでパニックを起こしてこともある。

能力の傾向など

その程度は別として、基本的に「苦手な事」と「得意な事」に極端な偏りがある。たとえば、数学のテストでは毎回90点代を獲得していても、英語のテストでは赤点スレスレという場合がある。

認知能力においても本人の中で差が大きい傾向にあることが指摘されている。

一部の人は特定の分野に異常な集中力を発揮する、常人離れした記憶力を持つなど一部の分野に限って卓抜した知的・技術能力を持っている場合があり(サヴァン症候群)、知的障害を伴わないタイプの場合はシステムエンジニアや研究職などの知的職業に就いている人もいる。

しかし注意すべきは「異能天才の人にはしばしば発達障害の傾向がある」というのは成り立つが、発達障害の人が必ず「普通の人には無い能力を持っている」とか「天才である」とは言えない事。

語弊を恐れずに言えば、天才だの異能だのというのは「稀にそういう奴がいるだけ」であり、乱暴にいえば発達障害でも凡人が大多数。というかそれは健常者だってそうである。

才能と発達障害の度合いが比例するのも発達障害の特性で才能に恵まれていても軽度であれば精々、常人よりは優れている程度(むしろ健常者と勘違いされて必要以上に期待されやすいのでそれなりに苦労しやすい)で逆に下記のアインシュタイントーマス・エジソンのように重度でなければ「圧倒的な才能」と恵まれないのである(それでも天才でない人の方が圧倒的に多い)。

 

ただしあくまでも「傾向」なので、「飛び抜けた才がないから何をやったってムダ」という事では断じてない。得意なことを見極め、それを伸ばしていけば良いのだ。

少なからずあるとてつもない誤解

上記に記したように「治る」類いのものではないのだが、「発達障害は親の愛情不足」「発達障害は〜すれば治る」などの誤った言説が後を絶たず、こうした障害をもった当事者や親の苦悩につけ込むインチキ商売もまた多い。

例をあげれば、ホメオパシー団体の中には「発達障害にきく」と称するものを販売しているところもある。

実際には発達障害者の中には、他人の愛情を感じ取る能力が薄い・もしくは欠如した障害を持つ人もおり、また感覚過敏などの障害を持つ人もあるため、普通の人間関係なら問題の無い愛情表現そのものが伝わらない、苦痛を伴う場合もあり得る。

インチキ・詐欺商売人や疑似科学業者ならまだしも、教育学者や医療有資格者にもこのような誤った言説を主張する人が少なからずおり、教育学者であっても本来発達障害学を専門としない学者の意見には注意が必要。

特にこの手の学者の一人である高橋史朗(専門は教育史)が保守的価値観に近い意見の持ち主だったことから政治的保守層の間でこういった誤解や偏見が影響力を増してしまっている。高橋の学説を支持する国会議員による「親学推進議員連盟」では安倍晋三が会長、鳩山由紀夫が顧問に名を連ねている。

さらに一部の過激な陰謀論者の中には「発達障害など存在しない」「発達障害の診断をつけようとするのは医師の金儲け」などと主張する者もおり、診断や療育を受ける事自体を妨害するような言説を唱える者もいる。

教育行政関係者の一部には、発達障害者でない子を素人判断で「発達障害児」というレッテル貼りを行い、「親の過保護虐待のせいで発達障害になった」と決めつけ、子供を「一時保護」と称して拉致するなど問題のある人物がいるのも事実ではある。

この場合専門医の診察を受けることで誤解は解けるのだが、それでも根深い問題である。

また「昔は発達障害はなかった」との誤った言説も根強くあるが、「知的障害を伴わない発達障害」の研究が進んだのがごく最近であるため、昔は「単なる変人」扱いされていたり、障害特性がむしろプラスになるようなルーティンワークや職人仕事等をしていて目立っていなかった可能性が大きい事も留意すべきである。

昔は家事なども手間がかかって忙しかった=親の眼が届かない時間も多く、その間に事故を起こして早期に落命していた障害者も少なくなかったと思われる。

著名人の中ではエジソンが「幼少期からの強いこだわり」「周囲との軋轢」などのエピソードから今で言うADD(注意欠陥障害)だったのではないかと言われている。

アインシュタインは相対性理論の基本的な数値を忘れる、手紙をよく書いたが綴りにミスが多い、言葉を発するようになったのは5歳になってからだったなど、学習障害が疑われている。

また黒柳徹子最初の小学校を退学になったことで転校したが、その原因は多動性障害、注意欠陥、学習障害といった発達障害が原因と現在は言われている。

また、発達障害はインターネット及びネット依存症と関連付けられることもあり、現実世界での人間関係構築や他人との距離感で苦しみや悩みを抱えてしまい、のめりこんで依存に進む傾向にあると考えられている(参考1参考2)。

相談先

発達障害かの判断は大変難しく、医師でさえ判断が分かれることもある。さらに年齢や環境により目立つ症状が違ってくるので、診断された時期により、診断名が異なることもありうる。

病院にいきなり行くことに不安を持つ方は地域に支援センターがあるのでまずは電話をかけてみることがいい(公共施設の場合センターの利用は無料の場合もある)。検査・面談・相談の結果病院を紹介されるときもあるが、その場合医師への紹介状を書いてもらえる場合がある。

発達障害情報・支援センター大人の場合はこのような支援センターだが、高校生も含めて、子供はセンターに電話した結果別の窓口を紹介される場合がある。

発達障害であることを公表している著名人

発達障害をテーマにした作品

音楽

  • GOMESS「人間失格」「LIFE」自身が起こした二次障害であるパニック障害の模様が歌詞に描写されている。

自伝的小説

エッセイ漫画

  • 「毎日やらかしてます。」シリーズ(沖田×華)

関連タグ

自閉症 統合失調症 ADHD 障害者 コミュ障

反抗期 - 反抗期が異常に長かったり、自傷行為を繰り返したり他者へ危害を加えるなどの問題行動から発達障害に気づかれることもある。

過保護モンスターペアレント - 発達障害を患っている子供が育った環境に比較的多いとされる。過干渉毒親も参照のこと。

無自覚な荒らし - 数字や規則性に対して、生活に支障をきたすほどの強いこだわりが起因して、こうなるケースもあり、ネット依存症も併発している場合もある。

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