概要
阿部秀司が『週刊ヤングマガジン』に掲載していたギャグ漫画。全2部で、第1部(全26巻)は2000年から2005年まで、第2部「風雲野望編」(全25巻)は2005年から2010年まで足かけ10年にわたって掲載された。
タイトルは「エリートヤンキー」とあるが、主人公の大河内三郎はヤンキーではなく、周囲が勝手に持ち上げているだけである。また、第1部までは(途中主要メンバーは1度全員留年しているが)きちんと暦年が刻まれていたものの、第2部になってからは次第にそうした設定が薄れ始め、季節感もアバウトになってズルズル続いて行った末に、三郎が母校・徳丸高校を卒業して完結した。
実写化もされており、ドラマと激情版(誤記ではない)が存在する。
あらすじ
日本史動くところにこの一族ありと言われる闇の最強勢力大河内家。その長男・次男の大河内一郎・二郎兄弟は、千葉県下最低偏差値を誇る徳丸高校を圧倒的武力で支配していた。そんな折、大河内兄弟の末弟大河内三郎が、遂に徳丸に籍を置くこととなった…。
しかし三郎はただバカでヘタレなだけのオタクで、ヤンキーでも何でもなかった。それを知らない周囲は三郎が一郎・二郎同様の極悪人だと勘違いし、三郎軍団を結成して神輿を担ぐ。口から先に生まれた銭ゲバの副総長河井星矢や、脳筋の親衛隊長石井武も加わり、三郎の理想とする平凡な学園生活は脆くも崩れ去る。だが、三郎には本人も知らぬもう一つの恐るべき人格があり…。
主な登場人物
三郎軍団
大河内三郎(演:石黒英雄)
主人公。大河内宗家の三男ながら、軟弱でキモオタなヘタレ。本人は全くその意図が無いにもかかわらず、生まれ持っての不幸体質で三郎軍団の総長に担ぎ出される。
学力に関しては学園一の頭の悪さで、猛勉強したにも関わらず小4レベルのテストで60点しか取れない程。必死で勉強したにもかかわらず酒でベロベロの河井に負けるほどのアホであり、ドラマ版に至っては石井にすらテストの点で明確に負けている(ただし、原作でも石井より頭が悪い事が示唆されている)。
第2部ではわがままで身勝手な部分が強調され、TVゲームや食べ歩きにかこつけて受験勉強をおろそかにする、破綻した金銭感覚で周囲を呆れさせるなど果てしなく堕落していった。
しかし、実は失禁すると猛烈に凶暴化して強くなる特異体質の持ち主で、覚醒した際の強さは間違いなく作中最強。無論、本人も含め、周囲は誰もその発動条件を知らない。
(ただし、河井のみトリガー自体は知らないものの、凶暴化する時とそうでない時の二面性を正しく理解している)
ドラマ版では失禁暴走時の歌(もはや怒鳴り声)が凄まじく音痴という設定で、近くで聞いていた河井と石井が耳から血を流して気絶し、校舎中を震わせていた。
第1部の頃は比較的まともな感性の持ち主だったが(ただし、無責任さや世間から大きくズレた金銭感覚は変わらず)、第2部以降は大河内家の財力に甘んじて贅沢三昧の堕落した生活に溺れて怠惰になった上、態度も我儘かつ傲慢になり、ある意味ポジティブになった。
最終的には成績も出席日数も足りてないが、厄介払い同然に学園を卒業。
卒業後を描いた読切では26歳になっても未だ浪人生を続けるも、海外の(内乱真っ只中の小国の)大学に留学が決まった事が語られている。
副主人公。
三郎軍団副総長で「知の河井」の異名を持つ。尖った頭蓋骨と四本しかない歯がトレードマークのブ男。河内弁のような訛りがある。
金と名誉と保身以外の全てが脳から欠落しているような生粋の人間のクズであり、己の野望の為ならば平気で嘘をつき、破壊工作も厭わない危険人物。三郎ですら金づるくらいにしか見ておらず、当初こそ媚び諂っていたが終盤では見下した態度を隠そうともしなくなった。
自分の利益になるのであれば相方だろうが総長の三郎だろうが腐った果物を食わせようとしたり、敵に売り飛ばしたりする。
早い話が良心のブレーキが一切無い両津勘吉みたいなやつ。
しかし、意外にも手先は器用かつ知識も豊富でスポーツ万能と、軍団の中では最もハイスペックだが、一方で喧嘩の実力はモブと大差無く改造スタンガンなど卑怯な手段で補っている。
様々なインチキ商売やイカサマギャンブルに手を出すが、往々にして目先の欲に目が眩んでは失敗し、何度か反省はするものの、それでも欲をかいて失敗する。
第2部では事実上のもう1人の主人公のような立ち位置であり、彼(とチャン)が様々なインチキ商売に手を出す長編が描かれた。
第1部と同様、欲に忠実なのは相変わらずだが、真っ当な仕事でも儲かるのであればそっちに鞍替えするし、仕事する上で信用を第一に考えるなど作中において唯一性格が良い方向に変わった人物である。
(※ただし、あくまで第1部よりマシになった程度でクズに変わりはない)
卒業後も相変わらずチャンと屋台を引く傍らでインチキ商売に手を出し続けている。
石井武(演:橋本じゅん)
三郎軍団親衛隊長で「武の石井」の異名を持つバカの中のバカ。
思い込みが激しく、自分の理想が他人にとっても理想と信じて疑わず、三郎による日本制覇を夢見て、現実の三郎含む周囲に果てしなく迷惑を齎していく狂人。今でいう陰謀論者。
実害という意味では河井以上に酷く、第1部の頃は比較的仲の良かった三郎も、第2部後半からは「本当に迷惑」「死んでほしい」と罵声を吐く程に嫌悪感を露わにしている。
喧嘩は異常に強く、ギャラクティカマグナムが使える。
第2部終盤からは三郎への狂信が同性愛の域にまで達してしまった。
何度か夢オチで美少年化したことがある(笑)。
関雲竜(演:津田耕作)
女好きな色欲魔で、女と食い物に目が無く、三郎(と萩原)を巻き込んで暴走するため、石井からは目の敵にされている。
こんなのでも軍団の中では比較的常識派に位置する。
初登場時は単なる喧嘩自慢で、学園祭のボクシング大会に参加したが、2回戦で後藤田の反則を食らって敗退した。
しかし再登場して以降は女好きなエロ豚というキャラ付けが確立し、石井と互角に渡り合うまでにパワーアップ、最終的にレギュラー化した。
福士譲(演:聡太郎)
第1部での河井の側近的立ち位置。河井がスタンガンを弄ったせいで「オウヨ!」しか言えなくなった(ドラマでは最初からオウヨ以外の台詞が一切ない)。
見た目はバカだがスポーツ万能で、特にやらかしもしなかったために三郎の同級生で唯一ストレートに進級して卒業し、美人だけど変人な彼女も手に入れた勝ち組電波野郎(しかし第2部では別の女を連れていたので別れたか浮気している可能性がある)。
2部終盤は元相方の河井への嫌がらせ目的で万引きに手を染めるなど、河井に匹敵するクズに成り果てた。
(ただし、手癖の悪さは1部の頃から既にあった)
前田直也(演:虎牙光揮)
二郎の側近だった1学年上の先輩。三郎をやり込めようとしたが返り討ちに会い、相談役という何のメリットも無いがデメリットも無い閑職に付く。イケメンだが口先だけの見掛け倒しで、ヤバくなったら自分だけ逃げるビビリ野郎。
(ただし、初期の頃は失禁三郎に殴られても1発だけだが殴り返したり、ヘタレが板に付いて以降も関と互角に殴り合ったりする辺り、そこまでザコというわけではない)
『ウルフ』の異名を持つが、別に一匹狼のような孤高の存在でも狼のように強いという意味ではなく、格好付けの嘘吐き野郎な性格が原因で中学時代についた仇名である『オオカミ少年』が転じてウルフと名乗ってるだけである。
卒業後も不況や自身の失態により様々な職を転々とし、一時期ホームレスにまで落ちぶれているが、その後ラジオのヘビーリスナー&売れないケータイ小説家を経て、売れない放送作家にまで這い上がった事がモノローグで語られており、一応の救済はされている。
萩原洋二
三郎達の一年後輩(後に三郎達が留年して同級生になる)。
怪力自慢で『マンモス萩原』の異名を持つが、やや押しに弱く、相方の後藤田の腰巾着的な存在。
後藤田と共に三郎軍団に対してクーデターを起こすが失禁した三郎にボコられ、敗北。
以後は三郎軍団の軍門に下るが、三郎とは学園内では比較的常識的な者同士で気が合い、関と共に遊び仲間となり(ただし関からは「お前は何も担当してねーだろ」とバカにされ、戦力外通告された事がある)、軍団内では総長側近としての立ち位置に落ち着いた。
軍団内では常識人だったが、作中終盤では三郎・関共々奇行に走り、立派な変人となった。
一方で石井の事は、石井の普段の際どい言動や不幸な偶然が重なった事もあり、ホモだと誤解しており、大の苦手。
(そして、作中終盤でその誤解は現実のものとなってしまった)
後藤田拓也
三郎達の一年後輩。
『カミソリ後藤田』の異名で恐れられる札付きのワル。
萩原や他の同級生を率いてクーデターを主導するが、失禁した三郎に敗北。
勝つ為ならどんな卑怯な手段も厭わない卑劣漢だが、頭はそこまで回らず、ガチクズの河井と比べると単なる卑怯者程度な為、キャラが立たなかったのか、萩原とは対照的に出番はクーデター以降徐々に減っていき、終盤ではほぼモブ同然にまで落ちぶれた。
大河内家
大河内一郎(演:小沢仁志)
大河内家長男。超が付くほどの極悪人で小麦粉(意味深)の売買を営む。二郎共々早々に校長の車を盗もうとして(実写版では学校の金庫を盗んで)停学となる。後付けで教育ママな奥さんとふてぶてしい息子が登場した。狂信的な愛犬家で、可愛らしいミニチュアダックスの他、狂暴なドーベルマンを何匹も飼っている。2部終盤では愛犬家が高じて二重人格に目覚め、ドッグラン内限定で超紳士的な性格になる。
二郎共々、過去に三郎を虐めすぎて覚醒させてしまい最初の犠牲者となったため、三郎の覚醒を恐れている。
意外と恐妻家で、妻に対しては尻に敷かれがちな一面も見せる。
大河内二郎(演:小沢和義)
大河内家次男。メイン画像の人(実写版ではハゲてない)。兄に勝るとも劣らぬ極悪人で、後付けで奥さんと子供が登場した。狂信的なゴルフマニア。
かなりの愛妻家で、妻の不倫疑惑が上がった際は泣きながらブチ切れていた(結局は誤解だった為、丸く収まったが)。
また、一郎ほどではないが妻には頭が上がらない。
大河内銀之進
三郎達の叔父。パチンコ屋を経営しているが2部で潰れた為、無職。
大河内一族でありながら腕っ節は弱く、その癖自己中な性格で普段から碌な事をしないトラブルメーカーであり、バカでスケベという、ぶっちゃけ平時の三郎と大差無いどうしようもない無能(要するにコレ)で、「大河内のガン」と蔑まれている。
選挙マニアで度々出馬するが、投票者達からは「冗談でも投票しません」と馬鹿にされている。
また、歌手志望だがダミ声で音痴、その上サビの部分ばかり延々と歌う事しかしない為、講師からも匙を投げられている。
こんな有様だが、本人には自分が無能という自覚は一切無い上、失敗は全て周囲のせいにした挙句、自分の事を有能で格好良い男だと本気で思ってる最悪のナルシスト。
ロザンナ・大河内
二郎の妻でイタリアンマフィアの娘。
第一部の頃は脇役だったが、第二部からレギュラーに昇格した。
二郎とは相思相愛で夫婦仲はとても良く、料理上手で他の兄弟からも絶賛されるなど、家庭的な人物。
しかし一度キレるとヒステリックに銃を乱射するヤバすぎる二面性の持ち主。
とはいえ、平時であれば大河内家の中では常識人寄りな為、三郎のダメさ加減に呆れて匙を投げる事もしばしば。
マリオ・ロッセリーニ
ロザンナの弟で、大河内家三兄弟の義弟に当たる殺し屋。
ただし、あれこれ理由を付けてまだ誰も殺した事がない。
その上、姉には全く頭が上がらず、女と付き合った事が無く、乗り物酔いも酷いなど、ヘタレな面が目立つ。
とはいえ曲がりなりにも裏社会出身なので腕っ節は強く、黙っていればイケメンなので、一度だけ三郎・関と共にイケメン担当として合コンに助っ人として参加した事があり、関が狙ってた女を掻っ攫いかけた事もある。
その他
その他
浅井春菜(CV:倉科カナ)
ヒロイン。県会議員の娘で美人だが、超料理下手な上に異常なほどの天然で、ゲームやスポーツに異常なまでにのめり込みやすく別人の如くキレ散らかす(しかも、次の回では口先だけでしか反省しない)など、性格に著しく問題がある。三郎と知り合い、ガールフレンドになったが、たびたび三郎のヘタレぶり&失禁暴走により距離を置いている。一時期、三郎と政略結婚しそうにもなった。末期では完全に我儘放題の悪女と化している。
一方で、三郎に対しては満更でない様子を見せたりするなど、全く気が無い訳でも無い。
ドラマ版では中学時代から三郎と知り合いで、ほぼ原作とは別人。
激情版では山本ひかるに配役が変更され、如月春菜という名称になっている。
桐山秀樹
第1部のラスボス。大阪最強の暴走族「マッドブルズ」番長で、喧嘩が三度の飯より好きな戦闘狂。熊を一撃で倒すほどの実力者。大坂城で失禁した三郎に完敗した後は、三郎を勝手にダチ呼ばわりして馴れ馴れしくしている。今でいうYoutuberの走りのような過激な動画投稿(例:ガケから飛び降りて大瀑布で顔を洗う等)で世界的な人気を博している。
チャーンチャイ・ヤンチャイヤット
第2部で河井がそこらへんで拾ってきた相方。イケメンのタイ人でムエタイの達人。就労ビザ切れの不法滞在をダシに河井の悪行に加担させられているが、時々反逆している。カレー作りはプロ級だが、味付けが日本人受けし辛い。
テレビドラマ版
テレビ東京系列局「スポパラ・ドラマ24」枠(ただしテレビ大阪は放送日時差し替え)にて、2007年4月から6月にかけて放送された。また、テレビ和歌山に加えてテレビユー山形や北陸放送(いずれもTBS系列局)でも放送されたことがある。
深夜放送なので、原作には一切無い、話に何ら関係が無いギャグ的なお色気要素がある。また、某超有名女優もノンクレジットで毎週出演している。
激情版
要するに映画版である。
2009年2月28日に公開された。キャスティングはテレビドラマ版と同一だが世界観はパラレル設定である。
関連項目
自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪:本作の主要キャラの大多数。