概要
この項目では音痴を「歌が下手な人」に絞った形で紹介する。
運動音痴、方向音痴など、「音痴」を含む単語は当該項目を参照のこと。
そもそも「歌が下手」というのは、「歌唱において発声すべき正しい音程、リズムを表現できないこと」である。人間は聞いた音を覚えて自分の持つ楽器(この場合は声帯=歌唱)で再現することで演奏を行う、あるいは、楽譜に沿って再現することで演奏を行うが、音痴はなんらかの要因で正しい音が再現できず、練習を繰り返しても改善されない場合に呼ばれる。
転じて「何か特定の感覚に鈍い人」や「ある分野における知識・技術が全く覚えられない人」のことを「○○音痴」と呼ぶことがある。
原因
音痴は大別すると次の2つに分類される。
音痴と言われる人は、実はほとんどが喉音痴タイプに属しているとされる。
喉音痴
喉音痴はおおむね発声法が正しくない、自身の声域を把握できていない、などの場合に起こりうる。
例えば、それほど歌が下手がではない人でも、カラオケなどで男性(または声の低い女性)が声の高い女性ボーカルの楽曲を歌った際、ファルセット(裏声)などの「声帯に負担がかかりにくい状態で、自身の得意な声域を超えた声を出す」というテクニックを知らないと「高い声で無理やり絞り出すように歌う→音程が取れない」という事態が起こる。
また、ロングトーン(長音)を安定した声量で出せず、伸ばしているうちに音が外れていく、といった場合がある。
喉音痴自体はいわば「歌唱に関する技術が身についていない」ことが原因と言える。
ジャンルごとに基本となる発声法や音階の捉え方は異なり(例えば西洋のオペラと日本の民謡など)、またその人の元々の声質や声域もあるので一概に「正しい歌声」というものを定義することはできないが、本来なら正しい音程を把握して再現できる音感を持っているのに、「声を出して歌う」技術の低さ、知識のなさのせいでそれが発揮できていないのが喉音痴といえる。
正しい発声法や腹式呼吸などの歌に適した呼吸法を身につけることで、短期の訓練でも矯正可能と言われている。
耳音痴
耳音痴に関しては直感的な音階自体が狂っているため、矯正には苦労が伴う。
音楽用語的な「音痴」はこちらの耳音痴を指し、「大脳の先天的音楽機能不全」、つまり生まれつき、または幼少期からの経験が原因で、正しい音程を把握できず、他の人や楽器の演奏に音を合わせることができない場合に呼ばれる。現在では「調子外れ」と呼ばれることが多い。
聴力や脳の働きに障害がない限り、幼少期の「聴いて覚える」体験が希薄な場合に起こることが多い。家族が音楽を聞かせる機会が少なかったとき、複数の音楽を意図的に避けて生活していたときなどが原因として挙げられ、「基準となる音程が認識できない」ことが耳音痴の特徴といえる。
ごく稀に大脳の異常により、「生まれつき音感がなく、聴いた音を自分の歌で再現することができない」という人がいる。ジェームズ・ディーンがこのタイプであったようだと言われている。
絶対音感の音痴
江戸川コナンのように、「絶対音感を持っているが音痴」という場合もある。
この場合は正しい音を把握していながら単純な歌唱技術が低い(喉音痴タイプ)ということもあれば、相対音感が弱いため自分の出している歌声と周りの音の違いを正しく把握できておらず、周りの音と合わせることが難しい(耳音痴)ということもある。ただし、音感が発達していることから、多くの音痴に比べれば改善が早い可能性が高い。
解決法
喉音痴は先述通り、専門家や声楽に詳しい人に指導してもらい、歌唱に適した発声法と呼吸の取り方を習得することで大幅な改善が見込める。
耳音痴に関しては、音階を正しく認識し、音のテンポを正確に把握できるよう、地道な訓練を繰り返すこと、自分の出している音を正確に把握する訓練を受けることで徐々にではあるが解消される可能性が高い。また、幼児期から音声を通じたコミュニケーションを家族と行い、多彩な音楽に触れることで、先天的な耳音痴の回避につながると考えられている。
音痴と呼ばれる人は、本来なら正しい音程を取ることができるにもかかわらず楽曲のテンポやリズムの掴み方を間違えている場合も多く、出だしで躓くことで後がグズグズに崩れてしまう→正しい音程からどんどんずれていく→自信をなくしどんどん声が出なくなっていくという負の連鎖が起こりうる。
これは苦手意識からくる緊張も原因となるので、訓練を積み、歌うことへの緊張を和らげることで解消できる。
その他にも、自分の好きな、歌いたい歌曲と自分が出せる声域を把握することで、声帯に負担を掛けて調子が外れる可能性を下げられる。音痴の改善に限った話ではないが、歌いたい歌が自分の音域に合っていない場合、カラオケなどではマシン側でキー(音階)を自分の歌いやすいところに調整するというやり方がある。
いずれの場合でも、トレーニングを繰り返し、少しずつ音感を上げて、歌唱技術を高めていくことが改善において重要であるが、何より楽しく歌えるような環境で歌うことが大切である。
音痴とされている実在の人物
※いずれの人物も「面白さのために大袈裟に外している」という部分も少なからずあると見られる。
ジャニーズ
アイドル
- 新田恵利(おニャン子クラブ)
- 立見里歌(同上)
- 秋元康も認めるほどであり、『私は里歌ちゃん』は立見の歌唱力をあえて前面に出して企画したものであると言及している。
- 小倉優子
- 北原里英(AKB48)
- 小嶋菜月(同上)
- 現役当時から音痴で、その音痴の実力はAKB内No.1音痴に輝いたレベル。
- 木崎ゆりあ(SKE48)
- 現役当時から音痴で、北原に並ぶかそれより上と称されていた。イベントで横山らと3人で歌唱した際、ソロパートの下手さに2人が笑ってしまっていた。
- 秋元真夏(乃木坂46)
- グループの中でも歌が苦手なメンバーとして知られる。外番組で急遽歌うことになり、披露したら共演者から「あなた本当にアイドル?」といった具合に疑われてしまった。また、冠番組で「バレッタを鼻歌で披露した際も鼻歌ながら音痴っぷりを披露。
バンドマン
- ダイナマイト・トミー(元COLOR、現フリーウィル社長・プロデューサー)
お笑い芸人
- 出川哲朗
- 音程はそれなりに取れるようだが、基本的に歌詞やメロディがうろ覚えのまま歌うため全く違う曲になっていることもある。またダミ声で声量もあるため外したのが目立ちやすい。『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』などその歌唱力を全国のお茶の間に披露している。
- 飯尾和樹(ずん)
- 若林正恭(オードリー)
- 学生時代に友人とカラオケに行った際に音痴と自覚し、気まずい雰囲気になってしまったことがある。その後、歌へた王座決定戦に出演したり、DA PUMPの「ごきげんだぜっ!〜Nothing But Something〜」を歌ってISSAから「ふきげんだぜっ」とコメントされてしまったりと音痴ぶりを披露。森公美子からは「若林くんは3音しか出ていない」と指摘される。…ところが2011年10月26日、まさかのCDデビューを果たしてしまった。一方ヒップホップを好むラッパーという一面もあり、リズム感は優れたものがある。
- 村上健志(フルーツポンチ)
- 三村マサカズ(さまぁ~ず)
- 『リンカーン』のワンフレーズカラオケで度々その酷さを披露している。
- にしおかすみこ
- 思いっきり大声で歌うが、音程が一定である。本人曰く「母親からの遺伝である」とのこと。しかし、とあるバラエティーにて歌った「赤いスイートピー」のサビの最後の部分は普通に音程が取れていたため、大袈裟に音を外している可能性がある。
- 斎藤清六
- ネタなどではなく重度の耳音痴(おそらく音の高低も把握していない)で、専門家の元トレーニングを受けたがほとんど改善しなかった。かつてレギュラー出演していた「欽ちゃんのどこまでやるの」などで騒音を撒き散ら…もとい歌声を披露したこともある。
- 光浦靖子(オアシズ)
- ノブ(千鳥)
- 小沢一敬(スピードワゴン)
- かなりのハスキーボイスのためか、音程以前にとても声量が少ない。歌へた王座決定戦では声量が少ないにもかかわらず座って足を組んで歌っており、時には村下孝蔵スタイルでギターの弾き語りをすることも。『IPPONグランプリ』に出場した際、歌モノのお題で回答したが、その下手さから笑いの方向性が違うと判断されたのか放送時に回答シーンがカットされていたという。
- あいなぷぅ(パーパー)
- 歌唱力に定評のある相方とは逆になかなかの音痴。自身のYouTubeチャンネルに投稿したオリジナル曲『パンパンパパパーン★』には「ドとファが同じ音に聞こえる」「リズムが全然取れない」というフレーズがあり、いわゆる耳音痴だと思われる。
- 博多大吉(博多華丸・大吉)
- 本人も大喜利に歌の問題がある時にネタにしてた程。漫才やバラエティでの彼とは別人かのように歌う際は極度に緊張しており、高確率でのどちんこを飛ばしてしまう。上記の若林・小沢・光浦とは歌へた王で「歌へた四天王」と呼ばれ、テレビ千鳥では上記の飯尾とノブを合わせて「歌ヘタBIG3」と呼ばれていた。
- 又吉直樹(ピース)
- 高音は得意と豪語していたが、「愛唄」を歌った際にサビやサビ直前では強烈な裏声になってしまった。
- 矢部浩之(ナインティナイン)
- 歌へた王座決定戦などめちゃイケではMCとして歌へた出演者を相方と共にイジる側にいるのだが、集計中にエキシビションとして「黙ってずっとMCしているから」という変な理由で歌うよう強要され、彼の十八番「HOWEVER」を披露したのだが、若林ら歌へた出演者から「全然歌へたの本戦出場できる」と言われてしまった。
俳優
- 沢口靖子
- 1980年代に歌手活動も行っていたが、その評価はお世辞にも高いとは言えないものであった。
- 山口もえ
- 歌へた王座決定戦で、全くリズムに乗れていない「恋愛レボリューション21」を披露した。先天的に舌の筋肉が弱いため滑舌が悪いというのも関係していると思われる。
- 宮内洋
- 倉田てつを
- 主演作である『仮面ライダーBLACK』の主題歌を歌った事で露呈。本人も自覚あり。ただしその歌声は「下手」と言うよりも「てつを」と言う表現をした方が正しく、関根勤からは「パワフル」と称賛された。
- 橋本淳
- 主演作である『魔法戦隊マジレンジャー』の挿入歌「勇気はフェニックス」を歌った事で露呈されてしまった。こちらもその力強さやキャラのイメージから「下手」というよりは「マジ赤い」と称するべきという意見がある。なお「勇気は〜」は本人の声からすると低めの音域であるため、声が出しにくかったのではないかと思われる。
- 仲村トオル
- 出演映画『ビー・バップ・ハイスクール』で挿入歌「ビー・バップ・パラダイス」を歌った際に発覚。曲自体そうというのもあるがかなりの一本調子。本人も歌は苦手だと自認している。
アナウンサー
政治家
- 片山さつき
- 序盤から素っ頓狂に外す「ひなげしの歌」を歌うなど、政界随一の音痴。
- 河野太郎
- 岩屋毅曰く「驚き、感動した」…とのことだが、実際には「うまい、、、のではない。それどころか、音程が完璧と言っていいほどにはずれているのだ。失敬ながら「下手」などという次元を通り越している。(原文ママ)」とのこと。更に山本一太は自身のブログで「東京都と神奈川県の迷惑防止条例により、河野太郎氏がカラオケで2曲以上歌うことは禁止されている」と冗談めかして書くほど。『情報ライブ!ミヤネ屋』では番組が独自のルートで入手したというカラオケで歌声を披露する映像が流されたが、圧倒的な声量と微妙な音程で、宮根誠司からは「確かに2曲以上聞くのはしんどい(笑)」とコメントされている。
スポーツ選手
- 藤波辰爾(プロレスラー)
- トーマス・オマリー(野球選手)
- 六甲おろしを歌唱したCDが発売されるが、あまりにも音痴で話題となる。1番は日本語・2番は英語で歌唱しているが英語でも音痴である。
- 松野明美(陸上選手)
- 「My Revolution」では緊張のあまりにSweet Painを「スイートペン」と言い、サビ終盤の英語の発音をハッキリさせすぎていた。また、「DEPATURES」では勝手にアレンジを加えたりした挙句、米良美一から「なんでそんなにガチャガチャするの?」と指摘されるほど落ち着きが無かった。なお、彼から「声は良い」とも評価されている。
文化人
- 六代目三遊亭円楽(落語家)
- ムラトミ(R.A.B)
- フローレンス・フォスター・ジェンキンス(ソプラノ歌手)
- もともとは資産家で音楽が趣味であり、夫の勧めもあって自費で財団を立ち上げて仲間内に向けてリサイタルを開催したが、とてつもない音痴であった。あまりに音痴過ぎて逆に注目され人気が出たという稀有な人物で、死の少し前にはカーネギー・ホールで歌声を披露している。
- 山口めろん(タレント)
- ピアノの腕前はプロレベル(日本大学芸術学部音楽学科卒業)で、絶対音感を持っているのに音痴。アイドル時代は一人だけダミーのマイクを渡されていた。自身で編曲した弾き語りもたびたび披露しているが、弾いているメロディと歌っているメロディが何一つ合っていない。本人によればプロに「これをわざとやっているなら凄い音楽の才能がある」と称されたとのこと。
- レトルト(実況者)
「自称」音痴
「音痴」、「歌声に自信がない」と自称している実在の人物。
ここでは、音痴を理由に実際に歌声を披露していない人物のほか、キャラソンなどで歌ったことはあるが自身の音楽活動には消極的である人物について述べる。アイドルなど歌う機会が多い人物や、「音痴であること」を自身のタレントとしての売りにしている人物は「音痴の実在人物」でまとめるものとする。
- 水嶋ヒロ(俳優)
- 松坂桃李(俳優)
- 事務所の方針としては所属俳優に歌手デビューさせる機会が多いものの、本人は「歌が苦手」「(自身が歌唱に参加した場合)CDが出ることはない」と公言し滅多に披露しない。ただし、歌唱力自体に大きな問題があるわけではなく「演技としてであればできる」とも発言している。
- 石田彰(声優)
- 1990年代に個人でもCDを発売したほか、当初はいくつかの作品でキャラソンを歌っていたが、2002年以降は「自分の歌を商品として流せる自信はない」「とりあえず歌わせるという業界の風潮に疑問がある」としてキャラソンは歌わない姿勢を取っている。キャラソンがある作品では、自身が演じるキャラは語りや朗読として収録されるのみとなった。「音源化しない前提」だと歌う事もあり、その歌唱力は決して低いわけではない。
- 羽生結弦(フィギュアスケーター)
- 「自分は音痴」「歌が上手くなりたい」と周りにこぼしていたことが報じられており、実際にCMなどの企画で歌う演技を披露したこともあるが、いずれも口パクだった。
音痴を克服した人物
- 石川界人(声優)
- 柴田あゆみ(メロン記念日)
- 結成当初はよく言えば純朴、悪く言えば平坦な歌声で、デビュー曲の担当パートは他の3人の添え物的な位置づけだったが、2曲目から突然に他のメンバーとの遜色が少なくなり、気付けばいつの間にかグループ内でメイン扱いになっていた。解散後もソロで楽曲をリリースしている。
- 道重さゆみ(元モーニング娘。)
- モーニング娘。の合宿オーディションを受けるまで「歌に音程があることを知らなかった」「歌は歌詞を読めばいいだけだと思っていた」と語るほど酷かったメンバー。彼女のパートの大半やソロ楽曲では音声を加工されまくっていた。音程に自信がないのか語尾をしゃくり上げるくせがあり、ある程度上達してからも歌い方はそのままである。リズム感はつんく♂からも評価されていた。卒業後は歌手として活動している。
- 植村あかり(Juice=Juice)
- 結成当初は冗談抜きでへっぽこだったが、歌唱指導の先生との相性が良く、いつの間にかホイッスルボイスを教わるほど上達していた。当然、ソロパートも格段に増えている。
- 百田夏菜子(ももいろクローバーZ)
- デビュー当初は「安定(して音痴)の夏菜子」と比喩されるほど歌唱力が酷かったが、ライブで場数をこなすごとに向上した。
創作での音痴キャラ
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