概要
死後、別の存在として生まれ変わるという考え方。バラモン教や仏教などインド系宗教の特徴。原始宗教にも見られる。
輪廻と合わせて「輪廻転生」とも言い、今の自分が生きる生を「現世(今世)」、その前に送った生を「前世」、次生まれ変わる先の生を「来世」と称する。
基本的には肉体から抜け出た魂から記憶・人格等がリセットされ、新たな存在として次の命を得る。この際、生前と同じ種の生き物になるとは限らない。また、「あの世の時間の流れはこの世のそれと一致しない」という考え方もあり、自分が死ぬより前の時期に転生することも起き得るとされる。
仏教においては最終的に「煩悩を捨てて仏に生まれ変わるのがゴール」とされ、そのための様々な理論が組まれた。死後の輪廻を待たず今世で仏になるために補陀落渡海や即身仏等に至る者も現れた。
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教には存在しない概念である。(これら唯一神教では死者は最後の審判の日に生前の状態で復活し、そのまま天国で永遠の幸福を享受するか地獄で永遠の責め苦を受ける。)
現代科学の観点では遺伝子の継承と発現・物理原子の循環をある種の輪廻転生と捉えることはできるが、霊魂の存在は観測・実証されていない(それらしい実験は度々行われたが結果には疑問符が付く)ため、「善人には褒美として幸福な来世、悪人には罰として過酷な来世」「今世で得られなかった幸福を掴める来世」といった信仰は幻想の域を出ないと言わざるを得ない。
まして異世界、それも魔法が実在する世界等、観測・実証が不可能な要素が重なる領域への転生ともなれば、文字通り夢のまた夢であろう。
とはいえ転生物語のロマンは千年以上に渡り人々に根付いており、メディアなどでは転生というものは興味深いテーマとして用いられ、同時にフィクションなどの創作物では転生という事象を扱っているものが多く存在する。
近年では前述の唯一神教圏からも転生物語はしばしば発信される。
創作物における転生
元々が宗教概念であるため、生命存在や世界の在り方を見つめる哲学的な内容や、生き方を戒める教訓としての側面を強く含むものが少なくない。
エンターテイメントを重視する場合は「世代や時空を超えた因縁」「付きまとう宿業」「果たすべき使命」「死してなお失われない想いや絆」を演出する要素として扱われる。
また、「生前果たせなかった未練・掴めなかった幸福への再挑戦権」「今のダメダメで嫌いな自分を根本的に変えるチャンス」としての転生も需要が高い。
夢小説においては「違う世界に住む大好きなキャラクターに会いに行くための通過儀礼」の一つとして採用されている。
転生が関わらない他のジャンルと差異を出すため、以下のような手法を取ることが多い。
- 対象キャラクターに前世の記憶を引き継がせる(成長してから思い出す場合を含む)
- 前世の身体的特徴や特殊な能力、アイテム等を引き継がせ、転生者の証とする
- 対象キャラクターの前世を知るキャラクターを登場させ、過去と現在の橋渡しをさせる
- 前世の自分との邂逅、前世の自分やその関係者からのメッセージといったイベントを設ける
- 回想や外伝等で対象キャラクターの前世の話を描き、本編と対比させる
作品によっては転移や憑依、復活・蘇生・複製と区別せず纏めて転生と呼ぶこともある。
これ以上細かい話は「転生もの」の記事を参照されたし。
怪談のネタとしての転生
転生は怪談の定番ネタとしても使用され、死んだ被害者が加害者の前に戻ってくる話が伝統的に存在する。
よくあるケースとしては次の通りである。
<パターン1.「今度は○○しないでね」>
ある夫婦に子供が生まれたが容姿が大変醜く、親はどうにかして彼を捨てられないものかと考えていた。
ある日、家族旅行に出た夫婦はフェリーからの景色を楽しんでいた息子を突き落として殺した(景勝地の崖で小便をしていた息子を蹴落としたとも)。
そして数ヶ月後に第二子が誕生。容姿も非常に恵まれており、夫婦からは非常に可愛がられたという。
夫婦は再び家族旅行を計画、何の因果か今度の旅行も船旅であり、息子は急に小便がしたいと言い出したので付きそうと息子は第一子の顔に豹変して「今度は落とすなよ?」と言った。
<パターン2.「こんな晩」>
- たまたま自宅に泊めてやった見ず知らずの旅人が大金を持っていることを知る。
- その旅人を殺して金を奪う。
- その金で幸せを得る。
- やがて旅人を殺して金を奪った者は子供を授かるが、その子供は口がきけない。
- 口がきけない筈の子供が、ある夜、突然、殺した旅人を思い出させる声で「そう言えば、こんな晩だったよな」
ゲームシステムとしての転生
キャラクリエイトや育成のシステムの一つとして転生が用意されていることもある。
この場合生まれ変わることによりキャラクターが弱くなってしまうが、別の職業に就くことが出来る、育てると前より強くなる、などメリットがあることが多い。
比喩表現としての「転生」
役者に使われる「転生」
ドラマやアニメの演者繫がりを疑似的に転生ものに見立てることを指す。
例えば、大河ドラマのような歴史モノのドラマ・映画の劇中で死を迎えた俳優が違う時代を舞台にした別作品に似たような役柄で出演する時に話題になりやすい。
同じような役柄でも物語の展開によって全く違う立ち回りを見せることも多いため、内容によっては前世のリベンジや救済にも見えることがある。もちろん同じことの繰り返しや、さらにひどい末路になることもあるが。
役者の中には過去に自分が演じた役をイメージしながら演技に臨む例もあるので、明言はしていないが意識している場合もある。
ただし、基本的には作品の二次的な楽しみ方なので、あまり他人に押し付けてはいけない。
商品の転生
売れ行きが悪かった商品Aを改良・改名して新商品Bとして売り出す、販売を終了する商品Aのシステムやパーツを流用して新商品Bを開発する、といったケースもある種の転生と言える。
一例としては、パチンコやパチスロ、ソーシャルゲームのシステムだけを流用して別のゲームとしてガワ変えする、プラモデルやトランスフォーマーの一部流用等。
それ以外では、何とスーパーカップシリーズでラーメンから焼きそばへ転生という展開も生み出した。詳細は以下のねとらぼのリンクにて。
大盛りカップ麺「スーパーカップ」からラノベみたいな名前の新商品爆誕 カップ麺にまで転生ブームが……(ねとらぼ)
その他
インターネットにおいて名前を変えてアカウントを作り直すことを転生と呼ぶ(転生組)。
別名・表記ゆれ
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