概要
近年の経済成長が著しく、まだまだ先進国の水準には達していないものの先進国に追いつこうとしている国の総称。
要は「先進国に近い発展途上国」。対義語は最貧国(「最貧国」は国連開発計画委員会(UNCDP)が指定している「後発発展途上国」と同義とされることがある)。
主に一人当たりGDPが先進国レベルに届かない国が新興国として扱われるが、一人当たりGDPだけなら先進国レベルであっても、産油国であったり、民主主義が発達していないなどの理由から新興国扱いされているケースもある。
また、バングラデシュのように後発発展途上国であるにもかかわらず新興国と呼ばれる国もある。
時代によって新興国の定義は異なる。
例えば20世紀初期のアメリカ合衆国はヨーロッパから見れば新興国だったし、日本も1964年に先進国の仲間入りを果たすまでは新興国と見做されていた。また1970~1980年代には新興国であった「アジア四小龍」(台湾、韓国、シンガポール、香港)のうち、韓国は今や名実ともに先進国とみなされている。台湾(中華民国)も同様だが国としてみなされていない。香港は最初から国ではない。シンガポールは民主体制でないので政治的事情により入ったり入らなかったりする。
BRICSの結成後は、主にこの5カ国を新興国家の代表的な事例として挙げるケースが増えている。
新興国のあるある
- 先進国では首都や主要都市のみならず地方の農村の生活水準も高いが、新興国では裕福なのは大都市およびその周辺のみであり農村は未だに貧しいままのことが多い。
- 近年は学歴社会が加速している。場合によっては先進国よりも学歴社会になっている国もある。
- 開発独裁と新自由主義をミックスした体制であることが多い。
- 社会保障が脆弱な事が多い。そのため社会改革を訴える政党が一時躍進するがクーデターや宗教・民族主義勢力動員など何らかの形で潰されるということが多い。
- 先進国に比べて治安が悪い国が多い。
- 先進国に比べて平均寿命が短い国が多い。
- ただしチリのように下手な先進国(アメリカなど)より長い国もある。
- 現時点ではまだまだ高齢化率が低いものの、近年は合計特殊出生率が低下しており将来的には少子高齢化に突入するであろうと考えられている国が多い。
- 中には先進国以上に少子化が深刻化している国すらある。
新興国と言われることがある国
東アジア
東南アジア
- ベトナム
- タイ
- マレーシア
- シンガポール:一人当たりGDPは先進国レベル。しかし開発独裁体制を維持している。
- インドネシア
- ブルネイ:一人当たりGDPは先進国レベル。しかし石油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸出に依存した経済構造でり、未だに国王による独裁政治が行われていることから先進国と認められないことが多い。
- フィリピン
南アジア
- インド:BRICsの一員。アジア有数の経済大国で、後発発展途上国としては扱われていないものの、人口が多いため一人当たりGDPは最貧国に近いレベル。
- バングラデシュ:「アジア最後の新興国」。人口が大きく経済発展が著しいため新興国として扱われることがあるものの、経済的にはまだ最貧国レベルで、後発発展途上国から脱するのは2026年以降となる見込みである。
中東(西アジア)
- サウジアラビア:一人当たりGDPは先進国レベルであるものの、石油などの輸出に依存した経済構造であることや、人権弾圧が酷いことから先進国と認められない場合が多い。
- UAE、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート:一人当たりGDPは先進国レベルだが、石油の輸出に依存している。
- トルコ
- イラン
- パキスタン
- キプロス
南欧(南ヨーロッパ)
- ギリシャ:厳密には「先進国から脱落しそうな国」。かつては先進国だったが近年の経済状況の悪化から先進国から除外されることも多い。しかしそれでも一人当たりGDPは大半の東欧諸国よりは高い。
東欧(東ヨーロッパ)
- ポーランド
- チェコ、スロバキア、スロベニア:一人当たりGDPは東欧トップクラス。場合によってはギリギリ先進国と認められることも。
- ハンガリー
- エストニア、ラトビア、リトアニア:一人当たりGDPは旧ソ連構成国の中ではトップクラス。ギリギリ先進国と認められる場合もある。
- ロシア連邦:BRICsの一員。資源大国・軍事大国ではあるものの、一人当たりGDPは先進国レベルに達していない。エリツィン政権が民主主義の確立に失敗し、プーチン政権以降は開発独裁体制となっている。
アフリカ
- エジプト
- モロッコ
- ナイジェリア:アフリカきっての人口大国で資源大国であるが、失業率が著しく高く治安も劣悪である。
- 南アフリカ共和国:BRICsの一員。アフリカで数少ない経済大国の一つだが一人当たりGDPは先進国からは程遠く、治安も失敗国家並みに悪い。
- モーリシャス :一人当たりGDPはアフリカ上位クラス。
- セーシェル:一人当たりGDPはアフリカ上位クラス。
中央アメリカ
南アメリカ
- ブラジル:BRICsの一員。
- コロンビア
- ベネズエラ
- ペルー
- チリ:一人当たりGDPは南米上位クラス。
- アルゼンチン:かつては南米の先進国として知られたが先進国から脱落した国。しかしそれでも一人当たりGDPは南米上位クラス。
- ウルグアイ:一人当たりGDPは南米上位クラス。