ウルトラマンギンガS
うるとらまんぎんがえす
『強くあれ!強くなれ!英雄(ヒーロー)になれ!』(OP主題歌より引用)
概要
『ウルトラマンギンガ』の続編。現在では「新世代ヒーローズ」シリーズの第二作目として扱われることも多い。
前作の主人公・礼堂ヒカル/ウルトラマンギンガに加え、もう一人の主人公にして主役ウルトラマンのショウ/ウルトラマンビクトリーが新たに登場し、主人公のバディ体制が構築された。また、前作では存在しなかったギンガの強化形態も誕生した。
キャストは一部を除いてほぼ一新されているが、後期ストーリーからは降星町の仲間たちがゲスト出演している。
学校という極めて狭い範囲が舞台だった前作から一転して、従来のような都市部が舞台となった。また、制作における余裕ができたことから、テレビシリーズとしては久しぶりに市街地戦が行えるようになり、前作では登場しなかった防衛チームが復活するなど、ストーリー・特撮共に前作からさらにボリュームアップした。
本作最大の特徴として、地底の民「ビクトリアン」が登場し、第三勢力に近い役割を担っている。それに伴い、地底世界も描写され地下鉱石「ビクトリウム」がストーリーの鍵となり、終盤におけるビクトリウム・キャノンを巡る展開に繋がっていく。なお、こうした展開はこれまでのシリーズ同様人類の科学技術の暴走をテーマとしているが、本作では福島での原発事故後の世相を意識しているという。
メイン監督には、過去に『ウルトラ銀河伝説』の監督を務めた坂本浩一氏が起用された。坂本氏がウルトラ作品のTVシリーズ本編のメイン監督を務めるのは初となる。
また、後に「新世代ヒーローズ」製作チームの中心となる田口清隆氏が初めて参加したウルトラマン登場作品でもある(田口氏はそれまで『ウルトラゾーン』『ネオ・ウルトラQ』など、ウルトラマンが登場しない円谷作品に携わっていた)。
前作より話数が増えた全16話構成で、『新ウルトラマン列伝』内で7月~9月初頭、11月~12月の2期に分けて8話ずつ放送された(次回作『X』はさらに話数が追加され全22話、そして単体番組となった『ウルトラマンオーブ』以降は全25話体制に固定されている)。
本作の放送終了後、スピンオフ作品『ウルトラファイトビクトリー』が放送された。
評価
ストリウムブレスを始めとした歴代キャラの力を借りる展開や、『10勇士』で行われたウルトラマンゼロとのコラボなどは、次回作『ウルトラマンX』で本作を含めた過去シリーズとの関係を一旦リセットし、後続の作品も独自路線を歩んで以降も、後のシリーズ展開でも採用されている。
メイン監督の坂本氏がアクション重視の作風なこともあってか、ナパーム爆発やオープンセットなどの量が前作の『ギンガ』よりも多くなり、『銀河伝説』を彷彿とさせるスピーディーな戦闘シーンは後々の『ファイトオーブ』や『ギャラクシーファイト』にも生かされている。
無論、放送当時ではこのスピード感のある演出が今まであまりなかった試みで斬新だと言う好意的な意見もあった一方、ウルトラマン特有の重量感がないと一部の視聴者に批判を受けていた所もあった。坂本氏もこれらの意見を受けてか、後に自らが再びメイン監督を務めた『ウルトラマンジード』では大規模な爆発やオープンカット、スピーディーな演出をある程度抑えることでウルトラマンや怪獣の巨大感の描写を更に強化しているので、気になる人は本作と『ジード』を比べて観れば雰囲気の違いを楽しむ意味でも面白いかもしれない。
本作は続編モノでありながら新設定を積極的に採用しており、大迫力の特撮を含め本作で培われた要素が後のシリーズにも多かれ少なかれ影響を与えている。
また、この時期に制作に携わった坂本監督・田口監督の両氏は後々のウルトラシリーズに大きく関係を深めていくことになる。
その点を鑑みると、本作はむしろ前作以上に『新世代ヒーローズ』の礎を築いた作品と見ることもできる。
評価点の分かれる本作だが、本作では坂本監督がパワーレンジャーシリーズで培った技術を導入し、無駄な予算をかけず短期集中撮影により質の高い作品を生み出せることが証明し、以降の作品にも好影響を及ぼし続けている。万年赤字だった円谷プロには大きな改革だったと言え、そういう意味では今後の土台としても大きかったのだ。
あらすじ
舞台は前作から2年後の世界。
とある事件をきっかけに防衛チーム・UPGに入隊した礼堂ヒカル、そして地底からやってきた青年・ショウが謎の鉱石「ビクトリウム」を狙う侵略者に立ち向かう。
戦いの中で次第に信頼を深めていくヒカルとショウ。一方、侵略者・チブル星人エクセラーはビクトリウムを利用し、2年前にギンガに倒された"グランドマスター"の復活を目論んでいた。
果たして、ヒカル達はエクセラー、そしてその背後に暗躍する存在を撃ち倒し、地球の平和を守ることができるのだろうか?
登場人物
降星町の仲間たち
※後半シリーズ(第9話)から登場
- 石動美鈴
- 渡会健太
- 久野千草
怪獣・宇宙人
- 地底聖獣シェパードン
- チブル星人エクセラー
- アンドロイド・ワンゼロ→マナ
- チブロイド
- ガッツ星人ボルスト
- アクマニヤ星人ムエルテ
- メトロン星人ジェイス
- ゼットン星人ベルメ
- キングジョーカスタム
- ファイブキング
- ビクトルギエル
上記以外はスパークドールズを参照。
主題歌
- オープニングテーマ:THE ALFEE『英雄の詩』
- エンディングテーマ:ボイジャー feat.ウルトラマンギンガ『キラメク未来 〜夢の銀河へ〜』
スタッフ
放映日程
太字新怪獣。
話数 | サブタイトル | 登場怪獣 | エージェント | 脚本 | 監督 | 放送日 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 切り拓く力 | シェパードン、EXレッドキング(SD) | アンドロイド・ワンゼロ | 小林雄次 | 坂本浩一 | 2014年7月15日 |
2 | ギンガ対ビクトリー | エレキング(SD) | アンドロイド・ワンゼロ | 中野貴雄 | 坂本浩一 | 7月22日 |
3 | 孤高の戦士 | キングジョーカスタム、インペライザー(SD) | ガッツ星人ボルスト(SD) | 三好昭央 | 坂本浩一 | 7月29日 |
4 | 強さの意味 | シェパードン、グドン(SD)、サドラ(SD) | アンドロイド・ワンゼロ | 武井彩 | 石井良和 | 8月5日 |
5 | 仲間と悪魔 | 巨大ヤプール(SD)、バキシム(SD) | アンドロイド・ワンゼロ | 小林弘利 | 石井良和 | 8月12日 |
6 | 忘れ去られた過去 | シェパードン、ゴモラ(SD) ファイヤーゴルザ(SD) | ヒヨリ、アンドロイド・ワンゼロ | 黒沢久子 | 田口清隆 | 8月19日 |
7 | 発動!マグネウェーブ作戦 | シェパードン、ガンQ(SD)、ファイヤーゴルザ(SD)、ファイブキング(SDU) | ガッツ星人ボルスト(SD)、チブル星人エクセラー(SD) | 林壮太郎 | 田口清隆 | 8月26日 |
8 | 朝焼けの死闘 | ファイブキング(SDU)、EXレッドキング(SD)、エレキング(SD)、キングジョーカスタム(SD) | チブル星人エクセラー(SD) | 小林雄次 | 田口清隆 | 9月2日 |
9 | 取り戻す命 | シェパードン、ベムスター(SD)、ベムラー(SD) | ガッツ星人ボルスト(SD) | 黒沢久子 | 石井良和 | 11月4日† |
10 | 未来への聖剣 | シェパードン、ベロクロン(SD)、ドラゴリー(SD) | ガッツ星人ボルスト(SD) | 三好昭央 | 石井良和 | 11月11日 |
11 | ガンQの涙 | ガンQ(SD) | アクマニヤ星人ムエルテ(SD) | 中野貴雄 | 田口清隆 | 11月18日 |
12 | 君に会うために | メトロン星人ジェイス(SD)、ゾアムルチ(SD)、インペライザー(SD) | ガッツ星人ボルスト(SD) | 林壮太郎 | 田口清隆 | 11月25日 |
13 | 分裂!UPG | バードン(SD) | ガッツ星人ボルスト(SD) | 武井彩 | 小中和哉 | 12月2日 |
14 | 復活のルギエル | ハイパーゼットン・イマーゴ(SD)、ダークルギエル、ビクトルギエル | ゼットン星人ベルメ(SD)、チブル星人エクセラー(SD) | 小林雄次 | 小中和哉 | 12月9日 |
15 | 命という名の冒険 | ビクトルギエル | チブル星人エクセラー(SD) | 小林弘利 | 坂本浩一 | 12月16日 |
16 | 明日を懸けた戦い | ビクトルギエル、ダークルギエル、ダークルギエル特戦隊 | チブル星人エクセラー(SD) | 中野貴雄 | 坂本浩一 | 12月23日 |
小説
『マウンテンピーナッツ』
『S-Fマガジン2015年1月号』に掲載された外伝短編小説。
著者は小林泰三。イラストは鷲尾直広。
久野千草が主人公であり、『ギンガS』の前日談と言える内容であるが、同作の世界観とはかけ離れたハードでシリアスなストーリーや、劇中に登場する過激な環境保護団体『マウンテンピーナッツ』の暴挙等、読者からは賛否が分かれている。
詳細はリンク先を参照。
余談
本作以降、ヒカルとショウは他シリーズにゲスト出演する際はUPGの制服を着用している。
ウルトラシリーズとして初めて、日産自動車との共同プロモーションを行なっている。初代リーフがUPG専用車両として登場し、実際の車両同様に予備電源としての使用描写があるなど、気合いの入ったプロモーションとなっていた。
この日産とのコラボレーションは、以降の「新世代ヒーローズ」でもたびたび展開されている。
キャストには坂本氏が推薦した人物が多く、特にショウ役の宇治清高氏は本編にてキレのあるアクションを披露している他、劇場版では鍛え上げられたマッスルボディを拝むことができる。
関連タグ
仮面ライダーBLACKRX:前作の完全な続編であり、2作品続けて同じ主人公が活躍した特撮番組繋がり。