千尋の元気が出るようにまじないをかけて作ったんだ。お食べ
概要
スタジオジブリ『千と千尋の神隠し』のジブリ飯。元気の出るおまじないが込められた絶品の味(と思われる)。
作中で具材の説明はなかったが、具なしのおむすびだった描写や、一般の関連商品名から塩むすびと思われる(備考も参照)。
なお、本作のビデオテープの初回特典として、ハクのおむすびの小物入れが付属されていた。
経緯
それは足を踏み入れてしまった不思議な世界で千尋が―
- 一人で散策していると偶然出会った少年に『ここに来てはいけない!』と警告を受け、
- 急ぎ合流した両親は豚の姿になり、
- 訳も分からず街中を逃げてると黒い影のような不気味な住人達と遭遇し、
- 元来た道を一人で戻ると、たった数時間しか経ってないのに何故か途中で道は湖になって帰り道は失われ、
- そうこうしていると徐々に夜へなっていく時間帯になり、闇夜がひろがるように自身の体は透けていき、
- 何もできず物影でうずくまっていると、先程の少年に助けてもらったら『この世界で働かなければならない』と告げられ、
- 薄暗く絶壁沿いの足場が悪そうな長い階段を降り、
- 熱いボイラー室で蜘蛛のようなお爺さんと煤の妖怪?と出会い、
- 案内人がいるとはいえ、人外な姿である八百万の神々やカエルのような従業員が忙しなく行き交う湯屋を進み、
- 目的地に着いたと思ったら魔法で幾つもの扉にぶつかりそうな勢いで引っ張られ、
- 威圧的で大柄な魔女から脅迫混じりの誘いに耐え、
- 湯屋で働かせてもらえる事になったが周囲の従業員から『人間は……』と差別な視線に晒され、
- 案内された寝床で緊張が解けると震えが止まらず、布団で横になるが一睡も出来ない、
という奇妙な怒涛の体験をした、小学校4年生(10歳)のまだ幼い少女・千が翌日の明朝に少年・ハクから誘われた屋外の庭で差し出された品(おむすび)だった。
この(大人でも)過酷すぎる現実に対し、昨夜から一口も食事をしていなかった千。
案内された庭の近くには養豚場があり、そこは昨日豚になってしまった両親がいる場所だという…。明朝から更に非情な事に、ふたたび塞ぎこんでしまう千…。そっと傍によりそうハクは『千尋の衣服』を差し出した。千はその中に『一枚の小さな紙』を見つけ…
" ちひろ "
" 元気でね また会おうね "
" 理砂 "
それはこの世界へ来る前に千が貰ったお別れカードだった。既に強欲な魔女・湯婆婆の契約で【千になりかけていた千尋】は、これを見た瞬間に自分は【千ではなく千尋】だと自身を思い出す事が出来た。そしてハクから『これからの事』について助言も貰った千尋。
その後『元気が出るようにまじないをかけて作った(塩)むすび』を差し出したハク。千尋はそれを一口食べて…。
……ん……ん、んっ………うわぁああーー、わぁああーーー、あぁああーーん……
つらかったろう。さっ、お食べ
食べ終わった後、ハクと別れた千尋は持ち場に戻る途中、緊張が解け眠気に耐えられなかったのか釜爺のボイラー室で眠ってしまった。その寝顔はハクの元気が出るまじないが効いたかのようにとても安らかだった。ぎゅっと大切に千尋の衣服を抱きしめる少女の寝姿に、昨夜は千尋に厳しく怒号をかけた爺は慈しく座布団を千尋へかけてあげるのだった。
目が覚めた千尋は、昨夜とは違ってちょっぴり自信も湧いた様子で湯屋の初仕事に勤め始めるのだった。
関連イラスト
パロディ
備考
塩はさっくり説明すると―
そのため疲弊した体調ならば(限度を守って)摂取することで【疲労回復に適した食材】でもある。
別作品で有名なものだと、機動戦士ガンダムのタムラコック長関連のエピソードでも、塩と健康の関連性を垣間見ることができる
また信仰において塩は穢れを祓い清める力・魔除けなどの効果があるとされる。今回の千尋なら、昨夜からの恐怖体験で心が穢れてしまったとするなら、落ち込んだ気持ちを清める意味合いも込められるだろう。
更に食事もままならない状態である事は想像に難くない状況で、手軽に食べやすく腹持ちも良い『おむすび』の選択は、千尋の心身に元気が出るよう最適な組み合わせのまじないだったと思われる。
参考
関連項目
タムラ:機動戦士ガンダムの劇中における、塩と健康にまつわるエピソードの中心人物。作中で「塩が無いと戦力に影響するぞ!!」と主張した名脇役。
その他で○○のまじないが込められた事物(エピソード)
- リカ(少年漫画:ONEPIECE_東の海編より)…助けてくれたお兄ちゃんに「おいしい」と思って甘いまじないを込めたおにぎりを差し入れた少女。幼さからくる発想で味は二の次だったが、おにぎりに込めた思いは相手へ確かに届いた。因みにその後の彼女は料理上手へと成長したようだ。
- バンバン爺(少年漫画:ONEPIECE_ウォーターセブン編アニメオリジナルより)…街をのみ込んだ大災害(アクア・ラグナ)後も逞しく生き抜く老人。彼は海の驚異が去った後にもたらされる「自然の恵み」に魅了された料理人だった。そして、この美味しいまじないがかかった絶品飯(食に厳格な海のコックさんが衝撃を受けた美味)を、災害を乗り切った人達へふるまっている。
- 出題タクシー(日本テレビ:週刊ストーリーランドより)…昔から親しむ妙に旨い黄色いまじないの入ったおにぎりを作る男性。これはかつて助けた迷子の少女にとって一生忘れられない優しい味だった。それは利き手の左手へ差し出した何気ない事だったが、彼女の人生に一筋の光を照らす程の出来事だった。
- ホームにて(小雨大豆と酔狂倶楽部制作【酔狂文庫:【ショートショート】ホームにて】より)…時は昭和。受験生だった男子学生は2コ年上で幼馴染みの面倒見が良い彼女が差し入れたおにぎりに夢中だった。どうして彼女の小さな手で、こんなバカみたいに大きなおにぎりを握ってくるのか、不思議で不思議で勉強に身が入らなかった……というのは自分への言い訳で、それとは別のまじないによって彼はあの苦しい時を救わていたのだった。