諸元
概要
地球連合軍が製造したGAT-X105 ストライク用に製造されたオプションパックストライカーパックの一つ。これを装着したストライクの事を「エールストライク」と呼ぶ。「エール(Aile)」はフランス語で「翼」を意味する。
無重力下(宇宙)における機動性を増強させる事を主眼とした宇宙戦高機動型パックであり、計4発の高出力スラスターにより装着した機体へ高い機動性を与える。
開発
発注元は地球連合軍だが、その入札の際に技術力の高さに目を付けられたオーブ連合首長国の国営企業モルゲンレーテ社の子会社モルゲンレーテ・エアロテック社が談合紛いの行為の末に受注して担当することとなった。同時期に地球連合側(P.M.P社)もI.W.S.P.というストライカーパックを開発していたが、幾つかの致命的な問題点を抱えていたため、本パックを始めとするモルゲンレーテ社製のストライカーパック3種(エール、ソード、ランチャー)が採用された。
型番
前半の「AQM/E」は地球連合製(あるいは地球連合軍が発注した)ストライカーパックを意味する。
後半の「X」は「eXperiment」の略であり実戦運用を想定した試作品であることを示し、末尾の「01」と合わさり「試作一号機」を意味する。
構成
上部にはビームサーベルラック・固定式高出力スラスター・主翼、下部には可動式高出力スラスターを左右対称に備え、中央部には突き出した白いバッテリーパックを備える。
大型スラスターを4発も搭載した影響により、主翼の大きさも合わさって図体が大きく、その図体に相応した重量もあり、高機動型ストライカーながら初期ストライカーパックの中では最も重い。また、他の初期ストライカーパックと異なり、肩部のハードポイントを一切使用しないため、背部にストライカーパック用のコネクタがある機体であれば例外なく装備することができる。
主翼
ラジエータープレート(排熱板)を兼用している後退翼。
上下方向の可動域が存在し、戦艦等に収容される際は主翼を下方向に折り畳む事でコンパクト化でき、装備した機体が発進カタパルトから射出された直後に展開される。
ビームサーベルラック
そのマウント位置の関係から、ビームサーベルを使用する際は背中に手を回して引き抜く形式となる。そのため、腰部のサイドアーマーにマウントしているタイプとは異なり、ビームサーベルを持つ手と同じ側のマウントラックからビームサーベルを抜くことになる。
また、このマウント部は前方へ折り畳む事ができ、戦艦等に収容される際はコンパクト化するために折り畳まれている。
性能
宇宙戦高機動型パックとして宇宙空間における高機動を実現可能なだけでなく、重力下においても高い機動性を与える。その大推力と主翼の空力効果により、重力下でも短時間の滑空だけでなくハイジャンプや空中での方向転換さえも可能とする。しかし、ハイジャンプによる高高度の飛翔こそ可能だったものの、上昇高度を持続する事が出来ないため滞空は不可能である(まるで初代)。
宇宙での推進には古典的なガス圧を用いているが、重力下(大気圏内)での推進は宇宙とは異なり吸入した空気を電導体に見立てローレンツ力で吐出する超電導電磁推進を用いている。更に、超電導電磁推進によって水を吸排出する事により水中でも運用可能というフレキシビリティも有している(なお、水中で使用可能な武装を持たないため水中戦で使われる事はなかった)。これらの推進方法はストライカー内部で自在に切り替える事が出来、推進ガスや空気が同じ推進器から出力される構造となっている。
機動力を強化するという性質上汎用性に優れており、C.E.71年の大戦後期(1月25日から9月27日)に活躍したストライクにより宇宙空間・大気圏内を問わず最も多く使用された。また、M1アストレイの背部に設置された大型スラスターの設計などに影響を与えている。更に、可動式の高出力スラスターを持つ事から後年開発された高機動型ストライカーAQM/E-A4E1 ジェットストライカーに比べて小回りが利く。そのため、C.E.73年11月からの戦争(二次大戦期)においても対MS戦において重宝され、同時期に出力強化により大気圏内での滞空時間が向上した改良モデル(後述)が開発され、MBF-02 ストライクルージュやGAT-01A2R スローターダガーへ装着するストライカーパックとして採用された。しかし、ダガーLやウィンダムは、より加速性に優れたジェットストライカーの方が普及していたことに加え、ビームサーベルを標準装備しているため本パックを装備するとビームサーベルを4本と過剰に成るからか、劇中で装備した事はなく、宇宙戦でもストライカーパック非装備で出撃する事が多かった。
モビルスーツ以外にも、ストライカーパックシステムが採用された戦闘機FX-550 スカイグラスパーへ装着することもでき、その際は加速性能と航行距離が強化される。しかし、唯一の固有武装であるビームサーベルを使用することはできないため、他のストライカーパックを装備した場合と比較すると火力面で大きく劣る。
セット運用される装備について
エールストライクが装備している「57mm高エネルギービームライフル」と「対ビームシールド」はエールストライカーの標準装備ではなく、ストライクの標準装備である(実際に、ストライクが素体のままバズーカと対ビームシールドを装備して水中戦を行った事が有った)。これらの装備がエールストライクで採用されるのは、他のストライカーと異なり腕部を占領する装備や両マニピュレーターを同時に用いる(両手持ち)装備が存在しない事に加え、固有武装の少なさからエネルギー消費が比較的少なくバッテリーに余裕があり、大量のエネルギーを消費するビームライフルを使用する事に最も適していたためである。それでも、ビームライフルを連射すれば短時間でエネルギー切れに陥ってしまう。
武装
ビームサーベル
ミラージュコロイドを物体表面に定着させる技術(磁場形成理論)を応用して刀身状に形成したビームにより対象物を溶断する近接格闘戦用のビーム兵器。本パック唯一の固有装備であり、デュエルと同型。
C.E.において初めて実用化された近接格闘戦用ビーム兵器の一つだが、通常装甲のモビルスーツで在れば装甲の厚さに関係なく一刀両断出来る程の威力を持つ。さらに、ビーム刃同士が反発し合わないために切り結ぶ事が出来ない事もあり、防ぐには対ビームシールドを用いる必要がある。
高威力で防ぐのが困難な攻撃性を持つ反面、ビーム兵器であるためエネルギー消費は激しい方であり、本体の残存エネルギーがレッドゾーンとなりフェイズシフトダウンが発生すると同時にビーム刃の発振も自動的に止まってしまう。
小型のバッテリーを内蔵しているためか、マニピュレーターから離れエネルギー供給が途切れても短時間で在ればビーム刃を維持し続ける。その特性を活かして、投げナイフの様に使用された事もある。
同型を装備するデュエルがザフトに奪取されたため、ザフト製ビームサーベルの祖にもなっている。
バリエーション
エールストライカー(コスモグラスパー用)
宇宙戦闘機コスモグラスパーに装着される専用設計のエールストライカー。地球連合製。
推進器はガス圧を使用した古典的なロケットエンジンを用いている。
コスモグラスパー専用なため、モビルスーツの携行兵器として設計されているビームサーベルはオミットされている。
詳細はコスモグラスパーを参照。
エールストライカー(C.E.73年版)
C.E.73年にアップデートされたモデル。モルゲンレーテ社製。
外観は初期モデルと変わらないがスラスターの出力が向上しており、持続した滞空が可能となっている。
『SEED DESTINY』にてストライクルージュが装備している(HDリマスター版ではオオトリ装備に変更されているため未登場)。
エールストライカー(スローターダガー用)
GAT-105 ダガーの特殊部隊仕様である105スローターダガーに装備されたモデル。地球連合製。
カラーリング以外の外観は初期モデルと変わらないが、設定上はサーチライトが増設されている他、上記のC.E.73年版と同じく滞空時間が向上している。
スペキュラムストライカー
アナザートライアルストライカーパックの1つであり、エールストライカーから推力が大幅に向上している。また、主翼がジェットストライカーと同様にミサイルポッドやプロペラントタンク等の兵装スリングが可能となっている。
開発に携わったコスモグラスパーからの技術もフィードバックされており、主翼などの外観にその面影を残している。
シールドストライカー
ゲイルストライク用に設計されたエールストライカーの発展形パック。ライブラリアン製。
詳細はゲイルストライクを参照。
ヴィーヴルストライカー
アストレイ ブルーフレームD専用のエールストライカーのカスタムモデル。
基本的な外観は初期モデルと変わらないが、ビームサーベルがビームキャノンドラグーンに変更されている。
マルチプルアサルトストライカー
エールストライカーを基礎とした全領域型ストライカーパック。
追加のバッテリーと武装マウント用アームを増設、ソードストライカーとランチャーストライカーの各武装を装備している。
詳細はマルチプルアサルトストライカーを参照。
立体物
一番登場回数が多いストライカーパックなのも在って、ストライクガンダムが新ブランドで立体化する度にセットになっている事が大半。
HGCEではストライクルージュにも付属した他、HGスローターダガーにも付属している。
PGはスカイグラスパーとのセット販売だった。
BB戦士シリーズには、ストライカーウェポンシステム、EXスタンダードシリーズのストライクガンダムに各々同梱する。
2024年6月にHG1/144用のものが「オプションパーツセット ガンプラ 01 (エールストライカー)」名義でついに単品発売される事となった。
最大の特長はそれまでストライカーパックという独自の規格にあった関係上ストライク系列にしか装着出来無かったのが今回は3mmジョイント×2との交換も可能、つまり「ユニバーサル規格」に対応している事である。
とは言えエールストライカーはストライク本体に結構密着する形状のため、肩部にマシンキャノンを抱える様な機体のHGは加工が必要になるだろう。
ただし、オリジナルギミックとして下部スラスターを外し、専用のジョイントパーツを用いることでエールストライカーの主翼部を垂直に装備したプラモオリジナル形態にすることが可能であり、この状態なら干渉を抑えることができる。
更にHGCEのものをそのまま流用した訳ではなく、主翼の赤部分までしっかりとパーツ分けされている。
また、パーフェクトストライクのマルチプルアサルトストライカー用のジョイントやバッテリーパックも付属しており、後者は旧HGでは白一色だったのがグレー部分も色分けされているためこちらも新規造形な様だ。
その他オプションパーツにグランドスラム、ディン用MMI-M1001 90mm対空散弾銃も付属。これらは過去にラウンドボックスエントリーグレードストライクのカラバリで付いて来たオプションパーツで、それらがそのまま付属する。
エントリーグレードストライク用という事になっているが、ライフルとシールドは付属しないためライトパッケージ版では完全なエールストライクにする事は不可能なので注意(ライフルやシールドを採用しないパーフェクトストライクの場合は「オプションパーツセット ガンプラ 02(ランチャーストライカー&ソードストライカー)」を買えば一式揃うのでこの限りではない)。
余談
- 初期ストライカーパックの中で唯一フランス語なのは、英語だと先輩と名前が被るためと思われる。
- ウイングストライカーはともかく「ウイングストライクガンダム」では彼方の派生機に思われても仕方が無いとは言える。
- 作中最も使用されたストライカーパックであり、ストライカーパックの代名詞とも言える存在だが、初期ストライカーパックの中では最も登場が遅かった。
- 初登場したのはランチャーストライカー(PHASE-02)、次にソードストライカー(PHASE-03)、そして本パック(PHASE-04)だった。
- 宇宙用高機動型ストライカーパックと言う触れ込みながら、見た目の影響かゲーム媒体では大気圏内飛行用ストライカーパックの代名詞として扱われる。主にスパロボとGジェネの事だが。
- それも在ってか、続編の『SEED DESTINY』でストライクルージュが飛行している事に対して、疑問を持たなかった視聴者もそれなりに多かった。更に、OVAのスローターダガーが飛行しているのだから、疑問の持ちようが無いとは言える。
- コスモグラスパー用エールストライカーが宇宙戦闘特化パックとして出たのも、通常のエールストライカーが大気圏内飛行用パックと思われてしまう原因だろうか。
- 似た例としては、イージスのMA形態もゲーム作品では飛行形態として扱われている事がある。尤も、翼すら無いイージスのMA形態が飛ぶ事には、流石に違和感を覚える人もいたようだが…。