解説
『ドラゴンボール』の登場人物であるクリリンと人造人間18号のカップリング。
公式の夫婦であり、原作中で結婚、娘マーロンを授かっている。
主人公孫悟空の親友であり、名脇役として物語の各所で活躍してきたクリリンだが、決して良いとは言えないビジュアルのせいか、アニオリを除けば浮いた話は一つもなかった。
一方の18号は、その強さや美貌に加え、作中で初めて本格的に悟空たちの前に立ちはだかった女性の敵役ということもあり、連載当時から大きな人気を集めていた。
そんな一見釣り合わなさそうな2人によるカップリングは、悟チチやベジブルと並んで、今もなお人気の高い組み合わせとなっている。
なお、作中ではクリリンは結婚前から結婚後以降も18号と呼びタメ口で接しているが、超のアニメ版では18号さんと呼び敬語(漫画版超では呼び捨てタメ口のまま)で接している。(※後述の<接し方>を参照)
人造人間編
悪の天才科学者ドクター・ゲロによって改造され誕生した、人造人間18号。
当初はゲロに対して反抗していたためにカプセルの中で眠らされていたが、Z戦士たちに追い詰められたゲロによって、17号とともに起動させられる。
その後17号がゲロを殺害する。(18号は直接的には手を加えておらず、現代においてはひとりも殺していない)
自分たちで起動させた16号とともに孫悟空の抹殺に向かうが、それを阻止しようとするZ戦士たちを、18号は圧倒的なパワーで壊滅させた。
唯一恐れから戦いに参加できなかったクリリンに対し、18号はさり際、気まぐれにキスをしてから飛び立っていった。
キスをされるコマのクリリンは頬を赤らめており、たとえ仲間たちを叩きのめした怨敵であろうと、18号の美貌には反応してしまったようである。
セル編
最強の人造人間、セルがトランクスの時空から自分たちの時空にやってきたことを知ったクリリンは、トランクスと共にゲロの研究所の跡地に向かい、(自分たちの時空での)セルを破壊。
その際、17号と18号の設計図も入手し、それを元にしてブルマに2人の緊急停止用のコントローラーを作成してもらう。
しかし、ベジータと17号を吸収したセルによる戦いの最中、クリリンは16号と共に見物していた18号を発見したものの、彼女への恋愛感情から、コントローラーを起動せずに破壊してしまう。
これにより、セルによる18号の吸収を許してしまう結果となった。
(ただし、この時のコントローラーはあくまでも動きを停止させるものであるうえ、すでにセルが間近に迫っていたため、停めた所で破壊する前に吸収される可能性は高かった)
セルゲーム後
完全体となってしまったセルだが、セルゲームでの数々の死闘の末に、超サイヤ人を超えた超サイヤ人へと覚醒した孫悟飯によって撃破された。
その最中で、吸収されてしまった18号も無事に解放される。
神様の神殿で、デンデによる治療で目を覚ました18号は、自身がセルから吐き出された後、クリリンが懸命に守っていてくれたこと、そしてクリリン本人の好意を(悟飯の口から)告げられる。
それでも当初は相手にせず、「ふざけるんじゃないよ」「手でもにぎってほしいのか? チビのオッサン」とクリリンの好意を一蹴して神殿から飛び去っていった。
しかし、神龍の召喚を見て戻ってきた18号は、クリリンが17号を含めたセルの犠牲者たちを生き返らせてくれたこと、更にはゲロによって自分と17号の体内に埋め込まれていた爆弾を取り除いてくれたことを知る。
片思いしていた18号だけでなく、なぜ17号の爆弾も取り除いたのかと問う天津飯に対し、「確かにオレは18号のことスキだったけど、18号には17号がおにあいだろ?」と半ば諦めた顔で答えるクリリン。
その様子を物陰で見ていた18号は、思わず一行の前に飛び出し──
「バーーーカ!」
「17号とわたしはふたごの姉弟だ!」
「だからってその気になるなよ!!」
「爆弾のことだって感謝なんかしてないからな!!」
「タコ!!」
「またな」
……まだツンデレという言葉など影も形もなかった時代。
クリリンのみならず、読者の子供たちの心を射抜くのには十分すぎるほどの破壊力を持ったデレシーンであった。
魔人ブウ編
時は流れて7年後。
高校生に成長した悟飯は、久しぶりに開催されることになった天下一武道会に出場することになり、ベジータと悟空の参加表明をきっかけに、かつての仲間たちにも出場を呼びかけることにした。
最初に向かったのはカメハウス。
髪を伸ばし、戦いも止めてしまったクリリンに対し、御飯は悟空が一日だけあの世から帰ってくることを伝える。
「オ…オレも出ようかな……」「でも悟空や悟飯やベジータが出るんじゃ絶対優勝できないしな」と出場を悩むクリリン。
そんな彼の傍らには、カメハウスの主である亀仙人に加え……
……18号とその娘が、当然のように立っていたのだった。
出会いから心変わりまで、2人の馴れ初めがしっかりと描かれていた前章での丁寧さはどこへ行ったのか、
再会→交流→告白→結婚→妊娠→出産の各ステップを全てすっ飛ばして子供を登場させるという凄まじい離れ業によって、カップリングの成立がお披露目されたのであった。(なお後述するドラゴンボール超全集によるとセル編の3年後に結婚、翌年出産したとのこと)
また、このシーンでは悟飯も特に驚いておらず、武道会当日に全員が集まった時でも、驚いたのはあの世から戻ってきた悟空ただ一人だったため、一連の経緯はほぼ全員が知っていたことになる。
見事恋を叶えたクリリンは喜びもひとしおであり、その後も再会した悟空との会話の中で幸せを語っている。
一方18号からは、本人が元々感情を表に出すタイプでないこともあってか、直接的な言及はほぼ見受けられないが、戦いに赴くクリリンに対し「やばかったら逃げなよ」とさりげなく身を案じた言葉をかけている。
アニメオリジナルでは、クリリンの「オレは今すんげえ幸せなんだからよ~。な!(18号を見て笑いかける)」というセリフに対し、顔を赤らめて「ば~か」と返事をしている。
略歴
エイジ767 5月12日 ドクターゲロの研究所で18号と出会う
エイジ767 5月26日 セルゲーム終了、18号の爆弾を除去
エイジ770 結婚
エイジ771 マーロン出産
作中において直接的な馴れ初めは描かれていないが、ドラゴンボール超全集4巻年表によると上記の経緯を辿っている。
セルゲーム終了から3年後に結婚、翌年に出産という、前例のカップルたち(悟チチは再会後にいきなり結婚、ベジブルは結婚すらすっ飛ばして出産)と異なり、しっかりと順当な交際期間を経てきたことが予想できる。
これについては作者も二人の馴れ初めについて恥ずかしいので描かなかったとしつつ、
『クリリンのまじめで純朴な性格に18号のほうも徐々に惹かれていった』
『不良少女の18号にとって今まで出会ったことのない誠実なタイプのクリリンが新鮮だった』とインタビューで答えている。(18号は改造される前は姉弟そろって札付きの不良であった)
接し方
作中でのクリリンは出会ったとき(結婚前)から結婚後も18号と呼び、タメ口で接しているが、アニメドラゴンボール超放映以降18号さんと呼び敬語で接している。
同じ超でも漫画版(鳥山明が全話監修)では呼び捨てかつタメ口のままでありアニメ版超のみの変更であるが、超の放送以降は劇場版や各種ゲームシナリオでもさん付け敬語の接し方が定着してしまっている。
これについてはファンの間で賛否両論があり、特に永年のファンの中では未だ反対意見の声も少なくない。
というのも原作、Z、GT(パラレル世界ではあるが)では結婚前から結婚後マーロンが生まれて以降もずっと呼び捨てかつタメ口で接していた(正確には原作で結婚後直接的に名前を読んだ場面はないが「おまえ」呼び、タメ口である)こと、
さらに、アニメ放送が終了してからのゲーム作品における掛け合いでも同様(特にこのペアは18号が戦えることもあり掛け合いが多かった)ため、何十年と聞き馴染みのある接し方が突然変わったことに寂しさを感じるファンも多い(近年では特に超からのファンや二次創作から参入したファンからは、最初からそうだったと誤解している層も増えている)。
なお、悟飯も妻のビーデルをさん付けで呼んでいるが、彼らに違和感の声が挙がらないのは悟飯がもともと原作・Z時代からビーデルさんと呼んでおり敬語交じりに接していたためである。
また、二次創作や一部ファンの考察では
・クリリンはもともと女性に対して丁寧に接している(ランチ、ブルマ、チチらにさん付けし敬語で接するため)
・味方になって結婚したから変わった
といったものも見受けられるが、上述したように漫画版の超では現在も18号呼び・タメ口のままである。
余談だがクリリンの丁寧口調は特に女性相手に限った話ではない。最初から味方で歳上のヤムチャや亀仙人らにも終始敬語で敬っている(歳上だが最初は敵だった天津飯にはタメ口である)。また女性でもビーデルなど明らかに歳の若い相手にはタメ口であるなど、性別というよりも年齢や相手との関係性によって使い分けているという見方の方が自然である。
以前の会話場面
2015年アニメDB超放映以前の原作、アニメ等、作中の具体的なクリリンの台詞や18号との会話場面に下記の例がある。さん付け敬語で接する場面は超放映(厳密には2015年「劇場版 ドラゴンボールZ 復活のF」にてさん付け、後のアニメ超放送開始からさん付け+敬語)以前には一つも存在しない。
ちなみに勘違いされやすいが、アニメやゲームを含む公式ではクリリンは18号を "君(キミ)" ではなく、"おまえ" と呼んでいる。
以下、時系列順記載
◆原作及びアニメ セル編
・DB32巻 セルから18号を逃がす場面
18号「お、おまえは…」
クリリン「うまく逃げるんだ!絶対セルに吸収されないでくれ、頼む!!」
・DB35巻 神龍へ爆弾除去を願う場面
クリリン「人造人間の17号と18号を元の人間に戻してやってくれないか?」
(※こちらの願いは叶えられず、代わりに爆弾除去を願う)
クリリン「オレ、18号のことスキだったけど、18号にはやっぱ17号がお似合いだろ?」
◆原作及びアニメ ブウ編(結婚から4年後)
・DB37巻 天下一武道会の対戦相手を決める場面
クリリン「おい、おまえ、ミスターサタンとだってよ!」
18号「誰、それ?」
・DB37巻 界王神に付いていくことを18号に報告する場面
クリリン「それじゃあ、殺さないように試合やっててくれよ」
18号「やばそうだったら逃げなよ」
◆アニメ ブウ編
・第260話 魔神ブウへ単身特効する場面
クリリン「18号!オレが突っ込むから、おまえはこいつ(マーロン)を連れて神殿に隠れるんだ…!」
◆劇場版『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』
・18号から留守番を任される場面
18号「あんたはこの子(マーロン)のお守り」
クリリン「しかし、18号……」
18号「あたしの言うことが聞けないのかい?」
クリリン「わかったよ…」
・18号の絶体絶命を救助する場面
クリリン「大丈夫か!? おまえのことが気になってな!自分の女房くらい、亭主が助けてやらないとな!」
◆アニメ ドラゴンボールGT(Z最終回より5年後)
・第44話 超17号により18号が洗脳されかけた場面
クリリン「行くな、18号!おまえはオレの女房だろ!!」
◆その他
・ゲーム(1995年発売)『ドラゴンボールZ 真武闘伝』
クリリン「18号!オレと勝負してくれ!」
18号「いいけど怪我しても知らないよ?」
・ゲーム(2006年発売)『ドラゴンボールZ 真武道会』
クリリン「18号、そろそろ帰らないか?」
18号「ん-、そうだね。じゃあクリリンが私の相手してよ」
・ゲーム(2007年発売) 『ドラゴンボールZ スパーキングメテオ』
18号「たまにはわたしが稽古をつけてやるよ」
クリリン「死なない程度に頼むよ…」
・ドラゴンボール改 第78話(2010年放送) 次回予告
18号「なぜわたしを破壊しない!?」
クリリン「とにかく逃げよう!オレ弱いけど、手伝うからさ。おまえにやられるとオレ、困るんだ…」
なお、DB改の次回予告はファンが思わずにやりとするような掛け合いが含まれることがあり、上記のやり取りも後の二人の関係性を意識した掛け合いの一つとなっている。
余談
◇上述の通り、「諸々の恋愛描写を全カットし子供を登場させる」という現代でも類を見ない手法で2人の仲が描かれているが、そもそも人造人間編の時点で、全く同じ手法で成立したカップリングが登場している。(しかもある種順当な組み合わせであるこちらとは違い、向こうは別の相手が居る中での成立であった)
これは作者の鳥山明が、恋愛描写を苦手としており、ラブロマンスがどうしても描けなかったための策だという。
◇もともと女の子にモテたくて修行をはじめたほどのクリリンは、チチと結婚した悟空を泣くほど羨ましがったり、ナメック星でも「く、くそ~。オレも結婚したかったな」とぼやくほど結婚願望があった。
18号との出会いに対しクリリン役の田中真弓は、「クリリンの真面目な恋愛描写があるとは思わなかった」と戸惑ったとしつつ、「18号は、初めて自分の命を捨ててでも本気で守りたいと思った相手」と当時の役作りについて答えている(原作においてクリリンの恋愛相手は18号が最初で最後である)。
なお、近年のインタビューにおいても「(力の大会は早く落ちてしまったが)、最後まで18号を応援しました!夫婦の愛の力はどこにも負けません!」と答えたり、
クリリンの好きなところを聞かれ「幸せな結婚生活を送って家庭を大事にしているところ。結婚するならクリリン!」等となにかとクリパチ愛にあふれたコメントをしている。
最強夫婦?
夫婦でタッグを組んだ場合、作中では最強の組み合わせになる可能性が高い。
クリリンは悟空やベジータ、悟飯には当然敵わないものの、彼らは配偶者がかなり足を引っ張ってしまう(それでもブルマ以外は一応武芸者なのだが……)ため。
18号は瞬発力では悟空やベジータに劣るものの、スタミナ切れの心配がなく、『超』では鍛え上げれば彼らのレベルにも食らいつける様子が描かれている。
クリリンとて生身の地球人の中では最強であり、映画やゲームなどのメディアミックスでは、協力しての合体技もいくつか披露している。少なくとも戦闘面でのチームワークという点ではピカイチと言えるだろう。
もっとも、『ドラゴンボール超』まで含めた「鳥山明ワールド」になると、ダントツが出てきてしまうが……