砂漠の戦線を支えた功労者
他国の軽戦車に相当する機動力を有し、広大な北アフリカの砂漠戦域で機動戦を仕掛けるドイツ・イタリア戦車隊を相手に奮戦。
戦線が連合軍の勝利によって終結するまでイギリス軍戦車戦力の一員であり続けた。
制式呼称は「Tank, Cruiser Mk VI, Crusader」(Mk.VI巡航戦車クルセイダー)。
開発
1938年からイギリスで開発が開始された「Mk.V巡航戦車」が搭載予定の国産エンジン「メドウス」には出力不足や信頼性などの問題があり、実用化に不安があったため、従来の巡航戦車と同様にアメリカ製エンジン「リバティ」を搭載する「保険」として「Mk.VI巡航戦車」が同時開発されることとなった。
結果、1940年半ばに「カヴェナンター」の制式呼称が付与されたMk.V巡航戦車はエンジントラブルの絶えない事実上の失敗作となったが、同年末に「クルセイダー」の制式呼称が付与されたMk.VI巡航戦車は成功作となり、量産化が決定。
翌年の1941年6月からは北アフリカ戦線で実戦投入が開始された。
特徴
- 火力
Mk.IとMk.IIは「2ポンド砲」(50口径40mm砲)を搭載。当時の戦車砲としては平均的な対装甲火力を発揮した。
しかし、2ポンド砲用の榴弾は爆発の威力が手榴弾並みと貧弱でかつ配備数も非常に少なかったため、敵の歩兵や対戦車砲といった非装甲目標の排除が困難となり、前線で問題視された。
Mk.IIIは「6ポンド砲」(43口径57mm砲)を搭載。高初速の徹甲弾により装甲射貫能力は大きく向上した。
しかし、大型砲を搭載した影響で砲塔内部のスペースが減少、装填手が搭乗不能となったため、乗員数が4人から3人へ減少。戦車長は状況判断と指揮に加えて装填作業の兼務を強いられ、Mk.II以前に比べて指揮能力が大きく低下した。
また、榴弾威力の低さは相変わらずで、前線の将兵からの評価は芳しくなかった。
- 機動力
カタログ上の路上最高速度は約44km/hと、当時の戦車としては平均より少し上程度の値。
だが、「クルセイダー砲運搬車に搭乗していた87歳の退役軍人」いわく、クルセイダーには通常時リミッターがかけられており、リミッター解除+空荷状態時の最高速度は89km/hに達したとか...。
(参考資料:Nevington War Museum - Crusader II Gun Tractor)
- 防御力
正面の最大装甲厚はMk.Iで40mm、Mk.IIで49 mm、Mk.IIIで51 mm。
数百メートルの距離が確保されていれば口径50mm級以下の戦車砲・対戦車砲は防げたが、それ以下の距離での防御力は期待できるものでは無かったし、口径75mm級の戦車砲・対戦車砲の攻撃を被弾すれば致命傷はほぼ確実だった。
ただし、当時の他国における軽戦車と比較すれば、この防御力は平均程度。そのうえ、クルセイダーは小型・低車高のため被弾面積が狭く機動力にも優れたため、相手側にとっては弾を当てづらい難敵として映った...かもしれない。
運用・実戦と評価
砂漠とクルセイダー | ドイツ主力のIII号戦車 |
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クルセイダーは1941年6月からの北アフリカ戦線における実戦投入で、ドイツ・イタリア軍主力のIII号戦車やM13/40を凌駕する優秀な機動力を発揮、広大な砂漠地帯における戦闘で優位を示した。
しかし、当時の機械にとってはあまりにも厳しすぎる猛暑・砂塵が災いし、エンジン故障をはじめとする駆動系の不具合を頻発。損失の大きな要因となった。
ただし、この問題は北アフリカに投入されたあらゆる戦車に共通して発生した。
それでも、クルセイダーは北アフリカにおけるイギリス軍主力の一角を担い続け、アメリカ製のM3グラントやM4シャーマンの配備が進むと英軍内での旧式化も進んだが、北アフリカ戦線最後の戦いであるチュニジア戦まで運用は継続された。
その後、クルセイダーの役割は後継のクロムウェル巡航戦車に引き継がれることとなる。
イタリア版クルセイダー・サハリアノ快速戦車
イタリア軍は自軍戦車よりも砂漠戦に適したイギリスの巡航戦車に対抗すべく、1941年5月ごろからサハラ砂漠向けの新型としてサハリアノ快速戦車の開発を開始。
1942年に完成した試作車は、イギリスの巡航戦車と異なり装甲の傾斜配置が本格的で、車重13.5トンで路上最高速度70km/hを発揮する正真正銘の快速戦車となったが、戦況の逼迫により既存の戦車生産ラインを割く余裕のない当時のイタリアでの量産は叶わず、お蔵入りとなった。
なお、サハリアノ快速戦車の開発時期はクルセイダーの実戦投入より早い。つまり、この戦車は決してクルセイダーの模造品ではないし、実際のところ両者の外見はかけ離れている。
派生型
- クルセイダー指揮戦車
無線機器の充実化に引き換え、主砲をダミーに変更。
- クルセーダー対空戦車
砲塔を口径20mmか40mmの対空機関砲を搭載し上面の開放された新型に変更。
- クルセイダー砲運搬車
17ポンド対戦車砲運搬用の車輌とするため砲塔を除き車体上面を開放、乗員や砲を防護するため装甲板を追加。
登場作品
- 『ガールズ&パンツァー』シリーズ
TV版では聖グロリアーナ女学院所属と思われるMk.IIが雑誌の表紙や背景などに散見されたが、実際に使用されることはなかった。
劇場版からは聖グロリアーナ女学院でMk.IIIがローズヒップ率いるクルセイダー隊の装備車輌として登場。
PS4/Switch版ゲーム「ドリームタンクマッチ」ではローズヒップ搭乗車のみステータスが異なり、スピード特化の為に横滑りしやすいというピーキーな車輌となっている。
Mk.Iがトリニティ総合学園の備品、水着版ヒフミの搭乗兵器および敵の不法流通車として登場する。
- 『コンバットチョロQ』シリーズ
シリーズ皆勤の戦車。
初代PS「コンバットチョロQ」にはMk.IIIが登場。作戦2「激震の地雷原」と作戦3「SOS!大列車強盗」に登場する。
速度性能が高めで耐久力が低い序盤の敵タンク。
PS2「新コンバットチョロQ」にはMk.IとMk.IIIが登場。Mk.Iは初期選択可能。「爆撃の閃光都市」をクリアすると使用可能になるが、初期選択可能なラインナップではT-34ともども最後にあたる。Mk.IIIは「越えろ!大防衛線」をクリアすると使用可能となる。
Mk.Iは「爆撃の閃光都市」で友軍タンクとして登場。街中にも駐留している。
Mk.IIIは「越えろ!大防衛線」で友軍タンクとして登場する。
いずれも同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備でき、Mk.Iは車体機関銃タイプ「B」カテゴリーの武装も装備できる。
GBA「コンバットチョロQ アドバンス大作戦」ではMk.IとMk.IIが登場。「クルセイダー」、「クルセイダーII」表記。
「アーマードカノン」と「山岳戦闘型タンク」で再現可能。
ピンポイント攻撃に適したアーマードカノンとその名の通り山岳での戦闘に適した山岳戦闘型タンクを備えるタンクで、Mk.III巡航戦車と共に序盤の敵タンクとして多く登場する。
敵タンクとして登場する際にはMk.Iはレーザー攻撃を無効化する「Mブラックホール」、Mk.IIは遠距離攻撃武器の「Sミサイルポッド」と電撃攻撃を無効化する「サンダーロッド」を備えている。
またミッション01「はじまりの戦場」で救助対象となるクリーク王国軍の将校ブリテンも同型であり、増加装甲の「カッパーシールド」を装備している。
- パンツァーフロントAusf.B
Mk.Iが登場。
Mk.IIとMk.IIIがイギリスの戦車として、ボフォース40mm機関砲を搭載したAAMk.IとエリコンSS20mm機関砲2門を搭載したAAMk.IIが対空戦車として登場。
イギリスの中戦車として登場。5.5インチカノン砲を搭載した試作自走砲も登場している。