フランケンシュタインの花嫁
ぶらいど
原題は"Bride of Frankenstein"。
1935年にユニバーサル・ピクチャーズが制作・公開した。
1931年の『フランケンシュタイン』の続編で、シリーズ第二作にあたる。
前作のラストで炎に巻かれ死滅したと思われた怪物(ボリス・カーロフ)が実は生き延びており、更なる騒動が引き起こされる。
一方でヘンリー・フランケンシュタイン(コリン・クライヴ)の許には大学時代の恩師・プレトリアス博士(アーネスト・セジガー)が訪ねてきて…
タイトルにもなっている『花嫁』もさることながら、プレトリアスが作り出した小人サイズの人造人間や、カタコトの人語を話せるようになった怪物が絶望の涙を流し、ヘンリーとエリザベスを脱出させる場面なども見所である。
また『一度死亡扱いになったキャラクターが、続編で復活登場する』というパターンはこの作品が元祖とも言われる。
プレトリアスがヘンリーの妻・エリザベスを人質にして、強引に協力させて作り出した第二の人造人間。
『フランケンシュタイン』といわれて誰もが想起するアレが正式な名を持たない『怪物(Monster)』であるように、その伴侶となるべく作り出された『花嫁(Bride)』にも姓名は存在しない。
『起動直後にわけもわからず無理心中に巻き込まれる』という出オチのキャラクターであり目立った芸もないのだが、女優エルザ・ランチェスターの美貌を活かしつつ、人外の存在であることを強烈に印象付けるメイクと髪型は大きなインパクトを残した。
なお、ランチェスターは映画の冒頭で原作者メアリー・シェリー役も演じている。
最初の人造人間の伴侶となるために作り出される第二の人造人間は、1818年に出版された原作小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』においてすでに描かれている。
こちらは人造人間に懇願され(半ば脅迫もされ)たヴィクター・フランケンシュタインがしぶしぶ作り出したのだが、人造人間が繁殖し新たな種となることを恐れたヴィクターは完成寸前にこれを破壊してしまい、人造人間との敵対関係を決定的なものとしてしまう。
よく知られている『盗んできた死体の継ぎ接ぎ』という要素は映画化に際して加えられたもので、原作の人造人間はどのような素材からどのような工程でつくられたのか意図的に曖昧にされており、人造人間の繁殖の可能性がどの程度あったのかも明らかではない。
ユニバーサルはこの後もフランケンシュタインの名を冠する映画作品を複数発表し、1940年代以降は狼男やドラキュラとの競演(対決)路線に踏み込んでいくが、花嫁の再登場は実現しなかった。
おそらくより人間に近い容姿を得た反面、肉体の強度は怪物より劣っていたのだろう。
が、人造人間が男女のつがいとして作製されるという展開は後代のリメイクおよびパロディ作品に受け継がれている。
Frankenstein Created Woman
ハマー・フィルム・プロダクションによるフランケンシュタインシリーズの第四作。1967年公開。邦題は『フランケンシュタイン 死美人の復讐』。
フランケンシュタイン男爵の下男であるハンスは冤罪で処刑され、その恋人クリスティーナも自ら命を絶ってしまう。二人の亡骸を引き取った男爵はクリスティーナの身体にハンスの魂を宿した人造人間を完成させる。
ハンスとクリスティーナのどちらも生前は善良な人間であっただけに、蘇った人造人間は純粋な怨念の化身となり、仇敵である悪漢たちに復讐を遂げた後に男爵の目の前で自決して果てる。
Flesh for Frankenstein
伊仏合作、1973年に西ドイツで公開され、イタリアでは1975年に公開された。『Andy Warhol's Frankenstein』(アンディ・ウォーホルのフランケンシュタイン)としても知られる。
日本では『悪魔のはらわた』という邦題で、『死霊のはらわた』と間違えやすい。
本作のフランケンシュタイン男爵は男女の人造人間を交配させて理想の人類を作ることを目的としており、臓器フィリアに近親婚とかなり高レベルの変態で、目的に適した死体を得るため殺人も辞さない危険人物。
女型人造人間(ダリラ・ディ・ラザロ)は男型より早く完成しているが、男爵と助手のオットーに散々弄ばれ、目的を果たすことなく破壊されてしまう。
The Bride
男型人造人間(クランシー・ブラウン)にはヴィクター、女型人造人間(ジェニファー・ビールス)にはイーヴァという名が与えられている。
イーヴァの人造人間としての完成度は非常に高く、フランケンシュタイン男爵はヴィクターを怪物として排除し、イーヴァを淑女として教育し執着を強めていく。
だが二体の人造人間には、離れ離れになっても精神的なリンクが備わっていた。
Frankenhooker
ブラックユーモアと下ネタをスプラッター風にまとめた作品で、女型人造人間の口を歪めた変顔で有名。
ニュージャージー州在住のジェフリー・フランケンは、死亡した婚約者のエリザベス・シェリー(パティ・ミューレン)を人造人間として復活させる。
フランケンシュタイン系人造人間の多くが、『肉体がまず作製され、仕上げとして脳が調達される』パターンであるのに対し、本作では『蘇生させたい脳のために肉体を作製する』という珍しいものになっている。
またジェフリーは人造人間のパーツを調達するために、ニューヨーク市で街頭の売春婦(hooker)たちをパーティーに招き爆殺するというとんでもない方法をとっており、歴代のフランケンシュタインの中でもその凶行が特に目立つ存在といえる。
Mary Shelley's Frankenstein
英日米の合作。1994年に公開。
ヴィクター・フランケンシュタインの婚約者エリザベスのなれの果てとして登場。
ストーリーは原作小説を元にしているが、人造人間に殺された妻と無実の罪で処刑されたジャスティンの肉体を繋ぎ合わせて誕生した。
蘇生した後はヴィクターと人造人間の両方に愛されるものの、ほどなく自分の醜い姿に気づいて錯乱した末に焼身自殺した。
エミリー・フォン・ゲルデンハイム
格闘ゲーム『ヴァンパイア』シリーズの登場人物。
ゲルデンハイム博士が作成した人造人間ビクトルに対し、花嫁ではなく妹として振舞うが、実際にはビクトルのプロトタイプに相当する。
容姿・知能共に人間そのものに近い完成度を持ち、『ハンター』のエンディングで機能停止に陥るものの、『セイヴァー』では霊体となってビクトルを見守り、必殺技にも参加。『人造人間の幽霊』とは…
伊藤潤二版フランケンシュタイン
ホラー漫画家の伊藤潤二による原作小説のコミカライズ作品。
原作小説と違って人造人間の要求を聞き入れて花嫁を作ったものの、誕生した花嫁は知能が無い怪物だった上に目の前に現れた人造人間に危害を加える等、結局失敗に終わってしまう。最期は逆上した人造人間に肉体をバラバラに引き裂かれた。
Frankenbravo(訳題『フランケン・ジョニー』)
カートゥーンネットワークのTVアニメーション作品『ジョニー・ブラボー』のエピソードの一つ。シーズン3第12話(通算第47話)Cパート。
人造人間の性別と容姿は花嫁がベースになっているが、ストーリーは初代『フランケンシュタイン』のパロディ。