「儂が死んだら誰がお前達に知恵を授けてやるんじゃ!」(第一章)
「逃げろ、黒騎士。お前にはどうしてもゼイハブを倒してもらわねば…」(第四十九章)
CV:茶風林
概要
宇宙海賊バルバンの幹部の1人。一人称は「わし」。
バルバンの知恵袋であり、妖帝イリエスとその弟のデスフィアスの叔父でもある。ブドーからは「御老体」、イリエスからは「叔父様」、バットバスからは「爺さん」、シェリンダからは「ブクラテス」、ゼイハブ船長からは「先生」と呼ばれている
知恵袋を自称するだけあって相応に博識で、お頭の弱い銃頭サンバッシュと彼が率いるサンバッシュ魔人団の作戦もほぼ彼の立案に基づいた物である。普段彼のことを「樽ジジィ」と罵倒してどつく等、ぞんざいに扱うサンバッシュも作戦立案と言う都合の良い時だけとは言え「樽学者の大先生」呼ばわりする等、作戦参謀としてそれなりに重宝されていた。
とはいえ余り役に立ってはいないため、やはり他のメンバーからは無下に扱われ、的を射た作戦を立案する闇商人ビズネラが登場してからはそれも更に顕著になった。
ただ、今から3000年前に魔獣ダイタニクスと共に地球を襲撃した際、初代ギンガマンや星獣達との戦いで重傷を負ったゼイハブ船長の身体に星の命を埋め込む手術を施し、延命どころか不死身の肉体を授けているところからも、決して無能ではない事だけは留意しておきたい。
また、劇中ではドレッドレッダーの力を強化した小型の樽や、タグレドーの放つ毒を消したスプレー、ゴウタウラスを閉じ込めた樽と言ったアイテムを所有している点も見逃せない。
劇中での活躍
上記の通り、サンバッシュが行動隊長を務めた際は彼にどつかれながらも助言を行い、魔人団の作戦行動の補佐をしていた。後の活躍を思えば、この時期がブクラテスにとって最も幸せな時間だったかも知れない。
サンバッシュが倒れると、彼が隠し持っていた「ギンガの光」の存在が明らかになり、同時に剣将ブドーが次の行動隊長に就任。ブドー魔人衆によるギンガの光の探索及び争奪戦が始まるのだが、この時を境にサンバッシュ時代と比べて参謀としての活躍はめっきり鳴りを潜めてしまう。
ブドーの手回しの良さからバルバンの知恵袋としての自身のアイデンティティも形無しにされ、「これならサンバッシュの方が、まだ可愛げがあったわい」(第十八章)と発言するほどに煙たがる等、ブクラテスは肩身の狭い想いをすることになる。
裏を返せば、日頃の態度こそいただけなかったものの、何だかんだで自分を頼りにしてくれるサンバッシュをそれなりに気に掛けていたとも言えるだろう。
ギンガの光の探索が佳境に差し掛かり、四将軍の氷度笠に白羽の矢が立つ頃には彼のブドーへの不満もかなり膨張していた。そこへ折しもブドーと仲が悪く、手柄を奪われることを危惧していた姪のイリエスから奸計を持ち掛けられ、彼女と結託してブドーの作戦を妨害するようになる(第二十章)。やがて怒涛武者がギンガの光を発見した際、遂に彼女との共謀によってブドーを失脚させた(第二十三章)。
ブドー魔人衆全滅後、イリエスが次の行動隊長に就いた時が彼にとって運命の転換期であった。
イリエスを強固に推して行動隊長の座に就けたのはブクラテスであり、作戦中もしつこいぐらいにイリエスを褒めそやしていたが、当のイリエスは内心ブクラテスを考えなしだと感じて見下している節があり、イリエスの作戦でも参謀として重宝されない時期が続いた。
イリエス魔人族を全滅させられ、第三十四章で自身もギンガマンに倒されて宝石となったイリエスを復活させるための儀式の最中、背後からゼイハブに急襲される。
実は彼等がブドーを陥れたのをゼイハブはとうに見抜いていたのだ。だが、粛清しても戦力の低下に繋がってデメリットしか無いからと、敢えて見逃していたのである。そのことを告げられて愕然とするも、諦めずに宝石を取り返そうとするブクラテスだったが、眼前でバットバスの斧によってイリエスの宝石を砕かれたことで遂に絶望に苛まれながら倒れ、身体を鎖で縛られた状態で海中に沈められてしまう。
そして宝石となったイリエスも、中途半端に封印が解けたせいで腐りかけたダイタニクスの防腐剤にされたため、ブクラテスは全てを失うこととなる。
復讐の樽学者ブクラテス
「ゼイハブ。儂は知っとるぞ、お前を倒す方法を……黒騎士を使って、いつか必ずお前を倒す!」(第四十一章)
(視聴者からも)死んだと思われていたが、第三十七章にて生存が明らかとなる。実は彼も自らの体内に星の命を仕込んでいたおかげで命拾いしていたのだ。
だが、顔色も以前と違って血色の悪いそれに変わり、頭髪の乱れた髪型となった。
「長いつき合いながら追放され、かつて自身の星もゼイハブに滅ぼされた」ことへの憎しみから復讐鬼と化したブクラテス。だが、非力な老体でしかない自分にはゼイハブを屠る力など無いため、先のイリエスとの戦いで重傷を負っていたゴウタウラスを人質に取ることで黒騎士ヒュウガを抱き込み、ゼイハブへの復讐の道具として利用せんとする。
ゼイハブ打倒のため、ギンガの森における禁断の薬草「沈み草」を飲ませたヒュウガにアースを捨てさせると、ヒュウガと共に作り上げた斧「ナイトアックス」を彼に授けた。
「寝首をかかれては困る」という理由でゼイハブの弱点をヒュウガに教えず、自身の星の命を練習台にし、ゼイハブの体内にある星の命を破壊できるように修練させる。
当初はヒュウガを「自身の復讐の道具」としか見ておらず傷の手当をする時も「勘違いするな」と念を押していたが、長い間苦楽を共にしている内に互いに確かな信頼感情(絆)が生まれていた。
そして終盤、操舵士シェリンダに致命傷を負わされたことで自身の死期を悟ると、ヒュウガにゼイハブの弱点を教えた上でゴウタウラスを解放。潜伏先に現れ、自身を包囲するヤートットを道連れに自爆した。
デギウスと同様に「星を滅ぼされた身」とはいえ、バルバンに入って悪事の片棒を散々担いで来た挙句、追放の原因となった姪の立場のために仲間を陥れた行動まで取った点では彼にも非があるのは事実であり、それを棚上げどころか逆恨みまでしてヒュウガを復讐の道具扱いする身勝手さは許せたものではなかったが、最後の最後に善人として逝けたのは彼にとって唯一の救いだったのかも知れない。
余談
モチーフは樽と本と科学者で、名前の由来も本の英訳である「ブック(book)」とギリシャの哲学者ソクラテスから。
本がモチーフに含まれる証拠として、髪には本のページをパラパラと捲った時の様な意匠が見受けられる。
なお、実際に樽に入っていた古代ギリシャの哲学者はソクラテスの孫弟子にあたるディオゲネスである。
声を演じる茶風林氏は今作がスーパー戦隊シリーズ初出演となったが、その前年にも同じ東映の特撮作品『ビーロボカブタック』のレギュラーキャラのスパイドンの声を当てていた。作品こそ違えど、この短期間で2度特撮作品で声を演じてしかもレギュラーキャラと言う例は、当時としては珍しい。
そして12年後の『天装戦隊ゴセイジャー』ではブロブの膜インと言う一大敵組織の首領を演じることとなり、こちらも同じく他人の心につけ込む卑劣な策を好む組織である点がイリエス魔人族と共通である。
関連タグ
宇宙海賊バルバン 星獣戦隊ギンガマン 樽学者ブクラテス
エホンボーマ:『高速戦隊ターボレンジャー』に登場した本モチーフ繋がりの戦隊怪人。同じモチーフのブクラテスの登場まで9年のスパンを要した。
ドゴルド:15年後の敵幹部で、同じく自らの行いで組織内での立場が悪くなるが、因縁がある戦隊メンバーの一人と心通わせて最期を遂げる点まで共通する評価が二分する人物。
クバル:18年後の敵幹部で、同じく故郷の星を滅ぼされた幹部繋がり。後半に入って復讐の為に動き出す点も共通だが、こちらは失敗するばかりか、死にたくない一心で仇に帰依する無様極まりない醜態を晒した。
黒ひげ危機一発:第一章での初登場シーンが、樽に開いたある特定の穴に付属の玩具の剣を刺し込むと黒ひげが飛び出す場面を彷彿させている。
命長ければ恥多し:第三十七章以降の彼にふさわしいことわざ。