「もう大丈夫よ リンリン ママ達が迎えに来るまで みんなで仲良く暮らしましょう!」
概要
巨人族の住む新世界の国「エルバフ」の外れで孤児院『羊の家』を開いていた、人間のシスター。
アニメ版での髪色などは乳白色。
若い頃はスラリとした長身の美女(後述の通り185㎝もあった)で、その頃からヘビースモーカーだった。老女となった頃には美女の面影はないが、常にあけすけでフランクな笑顔を絶やさない人物だった。
身寄りのない子供達を育てており、常に優しく親身に接していたため、『羊の家』にいる子供はどんな悪童でも更生し、良き里親と巡り合うとして評判になり、いつしか『聖母』と呼ばれるようになった。エルバフの人々からも慕われ、孤児院の子供たちと一緒に祭事などによく招待されていた。
プロフィール
本名 | カルメル |
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異名 | シスター・カルメル、マザー・カルメル、聖母(マザー)、山姥 |
年齢 | 43歳(100年前)→80歳(63年前) |
身長 | 185cm |
所属 | 羊の家聖母 |
悪魔の実 | ソルソルの実(超人系) |
出身地 | 西の海 |
誕生日 | 12月21日(ひ(1)つ(2)じ(2)のい(1)え) |
血液型 | S型 |
好物 | 子羊肉、チョコレート |
CV | 平野文 |
来歴
100年前、43歳だった彼女は、頭目二人を失い油断して海軍に捕まった巨兵海賊団残党数名が公開処刑される場に”シスター・カルメル”として現れ、 「天が和解を求めている」 と処刑をやめるよう進言。彼女の言葉に呼応するかのように天候は荒れ、「その者達を殺せば!! エルバフの戦士達は再び軍隊を成し!! 人間達に復讐を誓うでしょう!! 罪を許しなさい!! 私が導きます!! この世のあらゆる種族が手を取り、笑いあえる世界へ!」というと、稲妻の光が指し示すがごとく彼女を照らした。
カルメルの言葉で処刑は取りやめられ、その宣言通り、エルバフの地「ウォーランド」に身分種族を問わず行くあてを失った子供たちを受け入れる孤児院である「羊の家」という施設を開いた。
そこでは奴隷にされかけた子供や、暴動の末に国を追われた王子、親の手にも負えなくなった問題児等の身寄りがない子供たちの面倒を見たり、それらに加え、人間とエルバフの巨人たちの交易を取り持ち、巨人族と人間の交友の懸け橋となった彼女は子供たちからも巨人達からも「聖母」と呼ばれていた。
63年前、40年近く羊の家を運営し、80歳となった彼女は、手に負えなくなった両親によってエルバフに捨てられた、後の四皇”ビッグ・マム”となるシャーロット・リンリン(当時は5歳児だったが巨人の子供並みの体格)を拾う。
規格外のリンリンのパワーによって、彼女が何ら悪意なく善意のもとで多くの者を傷つけた際には、驚きながらもリンリンの気持ちを察し、全てを許して彼女を諭し、子供達や巨人と打ち解けられるよう尽力した。
そのかいあってリンリンは無自覚の暴力で傷つけることも少なくなっていき、巨人族や羊の家の子供達とも友達になれた。
カルメルはリンリンにとって生まれて初めての理解者であり、リンリンは彼女を強く慕った。
リンリンが冬至祭前の断食の時、初めて食いわずらいを起こしてエルバフの村を壊滅させ、更には元巨兵海賊団団長にして巨人族の英雄である“滝ひげのヨルル”に致命傷を負わせてしまった際には、リンリンの食いわずらいを抑えるとともに、ソルソルの実の力で村を燃やす劫火を支配下に置き鎮火。
“山ひげのヤルル”がリンリンを処刑しようとした際には彼女をかばい、自分を慕う他の子供たちと共に巨人族の村を後にした。
―――彼女は多くの子供を育てリンリンの命も守ったが、それは決して純粋な善意によるものではなかった。
実はその正体は裏で世界政府・海軍とパイプを持ち、秘密裏に孤児を将来の海兵・サイファーポール諜報部員候補として人身売買をしていた人買いであり、裏社会では「山姥」の異名で知られていた。
50年に渡り子供を売ってきた経験を持ち、37年前の巨兵海賊団処刑の一件も、エルバフに潜り込むための海軍との一芝居に過ぎなかった。
「羊の家」の子供達を育て、器量のいい孤児を2年に1度、世界政府や海軍に売りつけていたのだった(子供達には一切気づかれていない)。
孤児は足がつかないため諜報部員にうってつけであり、更には彼女が人間と巨人族の間に交流・人脈を築いたおかげで巨人初の海兵も誕生するきっかけをつくっている。
将来は大将・元帥クラスになれる稀大な資質を持ったリンリンをきちんと教育した上で、政府の役人に対し高く売りつける事を目論んでおり、彼女をかばったのもこのためである(リンリンを売り飛ばした後は足を洗って引退を考えていた)。当然この事実をリンリンが知ることはなかった。
エルバフを追われた後は違う別の巨人族の国で、自分を慕う巨人族の力を借りて羊の家を再建し、また子供達と同じように暮らし始める。
この時、子供達には「ここを私達の国にしましょう! みんなが平等に暮らせる夢の国!! 種族間の差別も何もない、みんな同じ目線で暮らせる国!!」と言い(無論この言葉も大嘘で、”聖母”としてのお題目、要するに口八丁。子供達が風貌や素性などを理由に感情的な行動に出ず、生活できるようになるまでの方便ともいえるが)、一層の笑顔で励まし、そのかいあって数日で子供達は元気を取り戻し、また日常が戻ってきた。
……だが、その日常はあまりにも呆気なく、あまりにも悲惨な形で終わりを告げた。
リンリンが6才の誕生日(※)を迎えた日、羊の家の子供達と共にクロカンブッシュを用意してサプライズパーティーを開く。
※アニメでは、子どもたちを海軍に引き渡す日であることが明らかになっており、カルメルは「その前に、たくさんお祝いしてやるよ、リンリン」と、悪意に満ちた表情で独白している。子どもたちとの別れの日になるため、カルメルの最後の優しさのつもりでのパーティーだったのかもしれない。そのため、カルメルも笑顔で参加しているが………それを踏まえて続きの文章を読んでいただきたい・・・。
そして、リンリンが大喜びで涙を流しながら、無我夢中で机もかじる勢いでクロカンブッシュを食べ終えて一息ついたとき、リンリンの前から他の子供達やカルメルは姿を消していた。
どれほどリンリンが探しても、彼女たちは二度と姿を現しはしなかった。
残されたのは、テーブルの木片とカルメルの服の残骸だけであった……。
この出来事はリンリンの大きなトラウマになり、唯一の形見である一枚しかないマザーの写真を落としたりするだけでパニック状態に陥るようになってしまった。
その描写は未だに明らかになっておらず、真実は闇の中である。
そしてこの事件以降、どういうわけかリンリンは悪魔の実の能力が使えるようになっていた。
繰り返すが、一度も悪魔の実を口にしたことが無いはずの彼女が、である。
この世に二つと無いはずの能力、マザーと同じ「ソルソルの実」の能力を.....。
もうここまで読めばおわかりいただけるだろうか。
しかし我々と同じように、彼女が真実を知ることはないだろう。
子供であるが故に純真無垢で悪意がない彼女が、
子供であるが故に自分が国さえ滅ぼしうる恐ろしい力を持っていることも知らなかった彼女が、
底なしの食欲を持ち、たった一つのお菓子のために国一つ滅ぼすまでに暴走するような彼女が。
……………そして、人を殺そうが村を滅ぼそうが、食欲を満たす本能の前には全てを忘れてしまうような彼女が。
追放こそしたものの、カルメルと羊の家の子供達を気にかけて密かに見守っていたエルバフの一人はその光景を目の当たりにし、その恐怖に青ざめながら大慌てでエルバフに帰還して事の次第を報告。
こうしてリンリンは、カルメルを慕う全巨人族にとって名前を出すことさえ憚られる、忌わしい存在として憎悪されることとなった。
またその時、現場にはシュトロイゼンもおり一部始終を見ていた(因みに彼はその狂気に満ちた光景を見て笑い転げていた)。
リンリンはカルメルが目をかけていたこともあり、サイファーポールから危険視され、当時6歳という幼さでありながら5000万ベリーもの懸賞金をかけられる。
だが、カルメルの蒸発によって暴走を止めるものが誰もいなくなった彼女は、己の欲を満たすため、彼女の「誰もが平等に平和に暮らせる国」をつくる夢を叶えるため、「言うことを聞かない奴は殺す」という信念のもと、災厄として破壊を繰り返してゆき、海賊として暴れまわるようになっていった。
人物評
『マザー・カルメルは悪人と言えるのか?』
「孤児の人身売買」を行っており、本人も聖者を騙っている偽善者のつもりであったが、実は結果も含めて行為そのものを見ていると一方的に悪人と言えるのかどうかは甚だ疑問がある。
というのも、彼女自身の本心はともかく約37年間、羊の家で孤児を育ててきた実績がある。家にやって来た子供達は、誰もかれも皆捨て子や孤児であり、カルメル自身が一般家庭の子供を拉致・誘拐するなどして集めてきた訳ではない。同時にフランキー並の問題児も多々おり、カルメルに拾われなかった場合、その子達はのたれ死ぬか海賊などの犯罪者や奴隷に身を墜とすのが関の山であった。
そんな問題児たちの心を開き、彼らを真っ当な人間に育て、素質のある子供は海兵や諜報部員になるよう根回ししてきたのは、紛れもなくカルメルの実績と手腕である。
終生バレなかったことを踏まえると子供の側も売られた自覚がなく「新たな里親の手配」や「就職斡旋」という認識をしていた可能性が高い。子供達の将来を手前勝手に決めていると言えばその通りだが、世間に居場所の無い孤児達の立場を考えれば、衣食住を安定して得られるだけ十分恵まれた将来を与えているとも言える。
ただし、これは海兵になれそうな才気ある子の話であり、そもそも海兵としての適性を欠く他の子供はなんと――
一般家庭にあてがわれるのである。
そう、人以下の扱いが罷り通る奴隷として売り払うのでもなければ、適性もないのに海軍という危険を伴う職場へ売り払い犬死させるのでもなく、かといって穀潰しとして虐待するのでも、身一つで放逐するのでもない。海軍に引き渡す予定の子と同様に暖かく育て、そして普通の家庭へ養子として預けられていくところまで面倒を見るのだ。
まして『ONE PIECE』の世界観は暗黙の了解として奴隷が公然と取引されている。一応『世界政府非加盟国の人間と犯罪者が対象』との取り決めはあるがこれはあくまで建前に過ぎず、実際には天竜人の目に留まったというだけで容易にそういった目に遭っている。まして羊の家にやってくるような子供たちであれば、幾らでも『おそらく世界政府非加盟国の人間』として処理できるだろう。
現実の世界においても、長いこと一人っ子政策を強いたことによって大量に生まれた中華人民共和国の「黒孩子」、独裁政権の無茶な政策により人口爆発を起こしたルーマニアの「チャウシェスクの落とし子」などは、戸籍や親権者を有さないため犯罪や売春などといった悲劇の片棒を担がされている。
それにも拘わらず、わざわざしっかりと育て上げた上で、大した実入りも無いであろう一般家庭へと送り出すというのは慈善事業以外の何物でもない。また、施設での生活についても適正のない子供に無理やり軍事訓練を強いているわけでもなく、虐待やネグレクト、逆に子供が窃盗などの犯罪行為に手を染める様子なども見られない。
もっとも、ここの出身者が海軍に進むのだから悪事を働けば間違いなく発覚するし、世間一般からの評価を得ておけば商売がやりやすくなるといった打算的な考えもあったのかもしれない。
だが裏に打算があろうとも、結果的に彼女の行動は善行以外の何物でもなかった。
この事業で稼いだお金が何処へ消えたのかは不明だが、人身売買の価格相場とカルメルが行なっていた2年に1回という人身売買の頻度、そして羊の家の運営費を考えると、それほど巨額の富を得たとは考えにくい。
また仮にある程度の富を築いていたとしても、シーザー・クラウンのように豪遊をしていた描写もなく、嗜好品らしい品も煙草ほどしか見受けられない。
そもそも斡旋先から斡旋料などを受け取るというのは事業として当然の事であり、カルメルの行動はもはや「人身売買」というよりも「民間の海兵養成機関」といったほうが正しい。
その中である程度の収益があったとしても、この所業を悪行と断ずるのは流石に無理がある。
何せ彼女がやっていたことは、数十年以上孤児達を預かり、育て、おまけに就職まで面倒を見るという、善行にして偉業そのものなのだ。
また、(後継者を見れば解るとおり)かなりの有用性を持つ悪魔の実の能力者でありながら、その力を海賊行為はおろか商売にすら使わず、消火活動や子供達を喜ばせるための手品など、無償の善行にばかりその能力を使用している。また、後継者が行っているような「他者の魂を強制的に徴収する」能力も(使わなかったのか、使えなかったのかは定かではないが)行使している様子も見られない。
例外は海軍との連携をもって巨人族の海賊たちなどを相手にペテンを仕掛けたことだが、それも巨人族とのパイプの強化が目的であり、巨人族たちに損失を与えるためではない。
むしろ、その行動によりエルバフと人間に交友関係が築かれ、詳しい経緯は不明ながらも海軍初の巨人の海兵が入隊するにまで至っている。
諜報部員・巨人海兵の誕生など彼女の行動が世界平和のために及ぼした影響は計り知れない。
カルメル本人はその生き様を「羊の家でガキ共をダマし続けるガキ売り稼業」「聖母を演じるのも楽ではない」と自嘲し、いい加減に引退した方がいい悪党の所業と語っている。
だが結果的にその行動と実績は多くの人々の役に立っており、何より多くの子供達が愛と糧を得て救われていた。
そもそも、"海賊を殺すためなら民間人や部下すら殺しても正義である""先祖が世界を作ったから自分達は何をしてもいい""世界政府非加盟国の人間には人権は存在しないから何人殺しても罪にならない"などといった破綻した倫理観すらあるこの世界で『自分は子供を騙して金を得ているから悪人だ』という彼女の倫理観は善良過ぎるとさえ言える。
彼女は根が善人過ぎたために、自分のやっている偉業を悪行と思い込んでいたが、
「「完璧な聖母」を完璧に演じきれば、それはすなわち「完璧な聖母」そのもの」なのであり、「どんなしょうもない本心……真実を持っていたとしても、結果として完全なる救済を悉く齎すなら『救済者』である事は紛れもない『真実』」なのである。
だがカルメルは最後の最後で、リンリンの異常な危険性を図りそこねて、取り返しのつかない失敗を犯してしまった。
本人にも一切制御どころか理解すらできない怪物の如き欲望と狂気を秘めたリンリンは、図らずもわずか6歳にしてカルメルの庇護を離れてしまう。
抑えられる者が誰一人としていなくなった彼女は衝動のままに暴れ続け、いつしか四皇として世に君臨。そしてカルメルの言う理想郷を築く事を夢見て行動するようになっていった。
万国の平和も、カルメルの「みんなが平等に暮らせる夢の国」という夢をリンリンなりに叶えようとしたものである。
私利私欲の金儲けという悪意を持って善行を成す彼女に育てられたリンリンが、差別のない世界を作るという善意で海賊行為という悪行を行うというのはなんとも皮肉なものである。
もしもカルメルがリンリンの狂気に気づき、そして正しい道へと導くことが出来ていたら、リンリンは多くの人々を救う海軍大将になっていたかもしれない。
余談
- 巨人部隊とハグワール・D・サウロ
彼女が豪語している通り、本編時間軸から約100年前、彼女がエルバフをはじめとする巨人族と人間の交易の懸け橋となったことで、巨人族初の海兵の誕生につながった。
つまり彼女の存在がなければ、今日に至る海軍本部中将が多く所属する巨人部隊の設立は大幅に遅れる、もしくは成立すらしなかった可能性がある。
その場合、22年前、ハグワール・D・サウロは海軍本部中将としてオハラ殲滅作戦に携わることもなく、ニコ・オルビアは牢獄から脱走できず、極論ニコ・ロビンはオハラで死亡していたかもしれない。
当然その場合はバロックワークスの運営やアラバスタ王国の内乱、そして何より麦わらの一味の冒険も全く違ったものになっていたというのも有り得る話である。
- 声質
- 元ネタ?
この人物も、表の顔と、噂される裏の顔のギャップとが凄いことで有名。
関連イラスト
pixiv内では現在若々しい方のカルメルが多く存在している。
関連タグ
ONEPIECE シャーロット・リンリン エルバフ(ウォーランド)
サイファーポール
海軍(ONEPIECE) ジョン・ジャイアント
リドヴィア=ロレンツェッティ…こちらも裏表の顔の差が激しく、宗教を通して一癖ある者達の更生や生活改善等に奔走したシスター。裏の顔は強烈ではあるが傍迷惑か怪しいうえ、時には心中にあった宜しくない偏見について、自分なりに反省する・自身達の行動を絶対視せず非暴力による解決を模索する等、真人間寄りととれる点でも共通している。
怒突…彼も表向きは保育園の保父さんとして子供たちや保護者から慕われているが、裏では異端な力や精神を持った子供をしかるべき組織に流している。それも表の社会では受け入れられない子供に生きる場所を与えるためという目的で行っており、取引先が子供を虐待していた場合はブチ切れて単身相手を壊滅させるほどの「子煩悩」っぷりを見せている。やっている事は悪事なのだが、子供の幸せや人生を大事に思っていて、単純に悪とは断じ切れないのはマザーと同じ。自身の行いには罪悪感を感じている模様。
姑獲鳥(鬼滅の刃)…こちらも「子供たちを育てる」「慈母のような女性を演じる」共通点を持つ。
しかし、こちらの本性は全くの正反対。理由は・・・ご自分で確かめることをお勧めします。