ロクセリ
ろくせり
ロックは以前からセリスのことを知っており、鎖に繋がれたセリスをなんとなく眺めているうちに、死んでしまった元・恋人であるレイチェルの面影をセリスに見出し、彼女を救出する。
しかも、セリスがなんとなく口走ってしまった「私を守れるはずがない」という台詞に、過去のトラウマを重ねて「絶対に守る」と叫んでしまう(トラウマの内容は、後にセリスが知ることとなる)。
この時のセリスは帝国のやり方に反発した裏切り者として処断される直前であった。
しかしながら、帝国の将軍らしい強気な面も見られたが、物語を進める内に徐々に女らしくなっていき、自分を助けてくれたロックに惹かれるようになる。
コーリンゲンのイベントを経験した後に、オペラ座のイベントを攻略すると、セリスの「あの人の代わりなの?私は」という台詞が聞けるが、過去の恋人に捕らわれるロックに呆れている演出ではなく、おそらくロックを男として意識している自分に気付き始めている演出である(オペラ座では、ロックがレイチェルとセリス、セリスがドラクゥ(劇中劇のヒーロー)とロック、セッツァーがマリア(劇中劇のヒロイン)とセリスの間で揺れているような演出になっている)。
帝国の魔導研究所に潜入した際にケフカの策謀でスパイ疑惑を掛けられた際にも、ロックにだけは信じて欲しい様子を窺わせていた。
崩壊後の世界はセリスがメインの主人公としてスタートし、シド博士が死亡した場合に、その事とロックも居ないと絶望し、「世界はもうおしまいなのね」と言って身投げをするなど、徐々にロックへの思いは強くなっていったようである。
世界崩壊前にロックとセリスのフラグが立ったのにもかかわらず、ロックは世界崩壊後にレイチェルを復活させるフェニックスの魔石を探し続けている。これは、安易に会ったばかりの女に流れず、過去の自分と決別する為の演出であろう(セリスが嫌う「弱い男」の条件からも外れている)。ロックが浮気者なら世界崩壊後にティナでもセリスでもない新しい女、レイチェルの面影がまったくない美女に遭うはずで、故人の女性よりも今現在目の前にいる高嶺の花を優先するはずで、危険なお宝を探す役を他人にやらせるはずなのに、亡き恋人に捕らわれていて、危険を承知の上で宝物を探しているのである。その宝物は死人を生き返らせるアイテムという不可能の象徴のようなもので、その為に機械の王国の王様や、亡骸を温存する薬を作る科学者(村にいるあやしいジーサンだが)も味方に付けているのである。
FF6は群像劇で女性主人公やロック以外の男性主人公も相手を選ぶ立場に立っており、ロックを加えなくてもEDを迎えられる為、ロックに都合が良過ぎるストーリーではない。
実はセリスはレイチェルを蘇らせる前にロックに「それ(フェニックスの魔石)を取り戻すまで、俺にとって本当のことは何もない」という台詞で一度ロックに振られている(世界崩壊前のような仲違いではなく、きっぱりと振られている)。
セリスに嫌われる言動のように取れるが、普段の言動が美女の気を引くための悲劇のヒーロー「気取り」ではないという確固たる証拠であり、セリスがロックの過去のトラウマと行動要因を知らず、レイチェルが生き返る可能性を考えないままロックに尽くしていた可能性も低い(玉砕する覚悟か、生き返ったレイチェルと戦う覚悟でロックを追いかけていたのであろう)。
通常のEDではこの二人は一緒であり(ただしロックを仲間にする必要あり)、EDでも二人の専用BGMが二重に重なっており、公式カップリングと言える。
地図に夢を馳せるロックとアンティーク絵本に夢を馳せるセリス、キノコに縁があるロックと魚に縁があるセリス、ゲーム中の会話以外からも接点が窺える。
そして大きな接点は宿敵ケフカとの対比。セリスは帝国で人工的に魔法の力を植え込まれた人造魔導士という出自の点で、相違点は精神への侵食の有無。
一方ロックは前述の「俺にとって本当のことは何もない」との台詞から本質的には虚無と解釈されている。ケフカが決戦の口上で「命…夢…希望…どこから来てどこへ行く? そんなものは…この私が破壊する!!」との台詞を発していて、これも虚無を象徴している。ロックはフェニックスの魔石という手段でレイチェルの蘇生を試み、感謝及び悔恨の払拭と新たな恋の成就を願う真の遺言で虚無から解き放たれ、対してケフカは破壊という手段で虚無を埋めようとした。
ロクセリは、Vジャンプの読者コーナー(FF闘技場)で行われた『FF6で好きなコンビ・カップリングは?』という人気投票でも他の組み合わせより抜きんでて圧倒的一位で、同コーナーのFF7のアンケートでは『クラウドの相手のヒロインは誰派か』『エアリスとティファのどっちが好きか』というアンケートが行われていて、クラウド×自分が好きな夢女子の意見、クラウド以外の男性×ヒロイン派の意見なども載せられていた。
また、キャラクター単体の人気投票では、Vジャンプではエドガーが一位(ゲーム発売前はロックの投稿が多かった)、アニメージュではセリスが一位で、ゲーム誌ではティナが上位になることが多かった。
なお、初期設定では本当にセリスはスパイで、ロックに引かれていき、正体を明かせず迷うという設定であった。上述のように「弱い男」が嫌いなセリスがロックに引かれていく理由を考察する人も多い。ティナが愛が何かを知りたがっていたように、セリスも力が何かを知りたがっていたのではないだろうか。
序盤にロックがティナとも発展しそうな雰囲気で、セリスが登場してからはそういった雰囲気がほぼ無くなっていったことから、バウムクーヘンエンドとする声もあるが、ティナはサマサでロックとセリスが出来ているのを見て笑っている。
ゲーム中にはロックが男性であるセッツァーを守るシーンもある。
同社の『ロマンシングサガ3』のユリアンとエレンとモニカの関係(ゲーム序盤にユリアンの気持ちがエレンからモニカに移ってしまうが、エレンはユリアンに恋愛感情を持っていない。パーティー編成によってはユリアンとエレンがいい感じになるEDもある。)、『聖剣伝説3』のホークアイとリースとジェシカの関係(ロクセリに似た盗賊と女騎士の恋愛関係で、ジェシカがホークアイと結ばれない理由は、外伝で納得しやすい理由付けがされた)にも言えるが、どのケースも「最初に登場する二人以外をくっつけることで、ストーリーのパターンを広げたかった」「人間関係を型にはめないことで、前半に登場する王道的なキャラと後半に登場する冒険的なキャラの両方の魅力を引き出したかった」というのが真相であろう。主人公が複数いるのも同じ意図で、女主人公を選んだプレイヤーで、昭和以前の少女漫画のお約束パターン以外に萌えを感じたプレイヤーもいるはずである。
ロックがいないEDでセリスがセッツァーに助けられる時はバンダナを介してフラグが立つ。セッツァーが初登場時にバンダナを着けているのはおそらくこの演出の為で、セッツァーは「マリアを演じるセリス」に執着しており、セリスはセッツァーに助けられてもロックを思い続けている。
世界崩壊後にエドガーがジェフ(偽名の由来は尊敬する伯父のあだ名らしい)になってセリスと再会する時は、茶髪寄りの銀髪&盗賊というロックを彷彿とさせる服装をしており、この姿で触手戦に突入している。また、同じく崩壊後に「ロック」という即死技を使う雑魚敵と戦っている(セリスのヤンデレを揶揄しているのだろうか?)。盗賊ジェフのイベント以外でエドガーがセリスを口説く時は、男性と女性を同時に助ける時と近くにロックがいて間接的にロックをからかう時だけであり、恋愛対象として女性を口説いたことや仲間の恋人を取ろうとしたことはない(彼はフェミニストであり、女性を口説く台詞を考えるのが好きなだけで、女性陣にロックの「守る」発言以上に言葉の真相を見透かされている)。
ロックがセリスと仲良くしているのを見て焼きもちを焼いた男性はドラクゥ(劇中劇のマリア=セリスの恋人)、ラルス(誰のメタファーなのかは不明)、セッツァーだけであり、セッツァーとは仲直りしている。ケフカの陰謀でセリスをスパイと疑う事件の後で、ロックは反省して帝国との会食で「セリスは仲間だ」と言い切っている(カイエンは主人公の一人でありながら、セリスの無実が証明された後も「あやしい女だと思ったわい」と発言していて、ロックの疑いの目も一理あったのが分かる)。このイベントからフェニックスの洞窟までの間はセリスが帝国に在籍していた過去と完全に決別するまでの過程が描かれている(大三角島に向かうのは三角関係を揶揄しているのだろうか)。
このイベントでセリスを疑わない方が周りに嫌われて、情けない男に見えていたに違いないし、この一連の流れはセリスがますますロックに惚れるキッカケとなった。
「あの人の代わりなの?私は」の台詞と同様に、ゲーム後半のセリスからロックへの態度がポジティブともネガティブとも取れるのは、公式が用意した罠と言えよう。
ガウのおめかしイベントでロックとエドガーがファッションセンスを競って争ったのはギャグ表現で、「ロック以外の男性キャラがロックよりもイケメン」と説明されたことは一度たりともない(女性キャラに至ってはレギュラーは全員美人で、絵で差が分かるのは胸のサイズだけである。セリスはロックに出会ったばかりの時に「兵士にしては背が低い」と駄目出ししているが、セリスが女性にしては背が高いだけであろう。ロックがこの台詞を言われた時に怒っていないのにも注目。ロックが男女両方を守る性格なのと、エドガーが女性を容姿で差別する性格ではないのも忘れてはならない)。
世界崩壊後に仲間に加入させた時に、ロックは金と戦闘力には不自由していない様子であった(鍵をこじ開ける能力を自慢したのが一部のプレイヤーの間で問題視されたが、同社には似たようなキャラがてんこ盛りであるし、ロックがぶんどったお宝(魔石)を使う仲間も同罪なのを忘れてはいけない。コーリンゲンの村を滅ぼし、幻獣界から幻獣をさらったガストラ帝国だって大泥棒である)。
セリスは「ロックに似てる」「ロックのように格好いい」といった理由でロック以外を頼ることはあっても、「ロックに呆れた」「ロックよりも格好いい」といった理由でロック以外を頼ることはないのだ。
「私を受け止めてくれる人がいる」という台詞のせいで勘違いされがちだが、ゲーム全体を見ても、セリスはロックに守られようとする行動よりも守ろうとする行動のほうが多く(ディッグアーマー戦、魔導研究所、孤島を旅立つ時など。魔導研究所ではハッキリと「今度は私があなたを守る番」と言い切った)、相手がロック以外の時も例外ではない(ケフカは攻撃しているため、自分とその仲間が悪と認識した人物だけは例外のようだ)。セリスと対照的なティナも自分が守られる立場であることに疑問を持ち出す演出があり、序盤、ナルシェで周りに守られるのを快いと思ってなかったのは「愛を知らない」だけが理由だったのではない様子。セリスと同様に、ロックに「守る」と言われた後で、言い方が不自然なのにも気付いていた様子。
設定年齢は7歳差だが、ファンアートでは身長差の少ない成人男女カップルのように描かれたり、役者自体はセリスが年上のように描かれたり、ファンタジーなだけに解釈に幅があるようだ(その上、魔法や幻獣界はファンタジーの中のファンタジーといった位置付けで、女主人公全員がゲーム開始時点で魔法に関わっているため、EDで魔法が消えた後の女性キャラの解釈も個人差が大きい)。
本作は群像劇でキャラの名前が変えられるゲームな為、ロックやセリスをプレイヤーの分身として描くか、独立したキャラとして描くかでも雰囲気に差が出てくる。
ロックはハーレクインロマンスのヒーローのような性格ではないが、ロックが「そうさ、俺はろくでもない男さ」と開き直っていて、ロックと同じくレイチェルを想うセリスがロックに同調し、優しく対応するという、ロックをハードボイルド調の味のあるダメンズに描く二次創作も散見される。
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