概要
対象年齢0歳~と言っても過言ではない国民的な幼児向けアニメ『それいけ!アンパンマン』のキャラでありながら、その中でひと際異彩を放つキャラクターである。そのため、小さなお子様は勿論そのご両親やいわゆる大きなお友達からも注目され続けているキャラクターである。
誕生の経緯
メロンパンナの姉、バタコさんの妹として、ジャムおじさんの手で作られたパン戦士の一人。1994年9月19日(関東地区での放送)の300回記念の時にアニメで初登場、その後1995年1月発行のアンパンマンのおはなしでてこい4巻『アンパンマンとロールパンナ』で原作絵本にも登場した。
メロンパンナが偶然見つけた『まごころ草』という珍しい花の花粉と、メロンパンナの『メロンジュース』を生地に混ぜ、「ひとに優しく、ひとに尽くすように」との願いを込めて作られた。ジャムおじさんは当初「メロンパンナのお友達に」と構想していたが、彼女の希望により「お姉ちゃん」として制作することになった。誕生自体はメロンパンナの後だが、アンパンマンワールドにはこういった概念がないので、誰もが望めば兄や姉、弟や妹が作れる世界なのだろう。
しかし、話を聞きつけたばいきんまんによって製作中のパン種に『バイキン草』のエキスを混ぜられてしまったため、善と悪の二つの心を持つという宿命を背負って誕生してしまった。彼女の胸にある赤と青、二つのハートマークはその象徴である。また公式設定では悲劇のヒロインと言われている。
こうしたシリアスな設定のためか、近年のアニメでは登場する回数が少なくなっており、年に数回ぐらいしか登場しないが、前述のように子供から大きなお友達まで人気のあるキャラクターなので、今後の活躍も期待できる一人であろう。
二つの心
善状態では赤いハートが光り、悪状態では青いハートが光る。また、悪状態に染まると体色がブラック化し瞳の色も青緑→赤に変わる(初期の頃は外見変化の設定はなかった)。
ロールパンナのキャラソンである「ふたつの心」は、善悪双方の心理描写を見事に表現した名曲である。
(作詞:やなせたかし・作曲:本島一弥・唄・冨永みーな)
普段のロールパンナ(善)
善状態のロールパンナは、冷静沈着かつ寡黙でありつつ花や動物を愛する優しい性格で、メロンパンナやクリームパンダにとっては良き姉である。しかし本人は、悪の心の存在やアンパンマンとの関係に引け目があるのか、妹達に懇願されてもパン工場へ帰ることを拒否している。今は『くらやみ谷』などで独り野宿をして暮らしているようだ。
普段は善状態が続いているのだが、人知れず悪の心と常に戦っている。そのため、積極的に他者と関わろうとはしないが、誰かが危機に瀕していると反射的に助けたり、自分に向けられた好意や親切には少なからず答えたりもする。
劇場版『うきぐも城のひみつ』では、大量の『まごころ草』に囲まれ、その花の成分によって善の心が急激に強まり、メロンパンナも驚くほど女の子らしくなったことがある。その際に、「戦いは嫌です」と発言し戦闘を拒んでおり、ドキンちゃんからも「変よ。弱々しい」と不審がられた。
近年では、特に戦うことなく、悩みを持つ者の相談相手となるケースが多い。善悪両方の心を持ち、常に思い悩んでいるからこそ、良き相談相手となれるのだろう。
なお、誰かを守る為に生き甲斐を見出しているアンパンマンとは異なり、「何のために生まれてきたのか?」という命題に対しての答えを明確に持っておらず、ドーリィに問われた際にも「わからない」と回答している(劇場版『いのちの星のドーリィ』より)。
劇中設定ではメロンパンナのために作られたと言えばそこまでだが、この問いはあくまでもロールパンナの人生観はどうなのか?というところに焦点が当てられている。
ブラックロールパンナ(悪)
『ばいきん草』のエキスを大量に与えられるなどして、赤いハートが非常に弱まると、善状態の記憶が著しく欠落し、体が黒く染まる。この状態は「ブラックロールパンナ」と呼称されることがある。主にばいきんまんがそう呼んでいるが、ブラック化したロールパンナ自身が名乗ったこともある。
生まれた直後に「アンパンマンはお前の敵だ」と、ばいきんまんによって刷り込まれたため、アンパンマンと関わる度にほぼ必ず青いハートが光り、出会い頭に即戦闘となることもしばしばある。
ばいきんまんからアンパンマンの話題を振られると、過剰にブラック化する傾向にあるようで、ブラック化すると、ばいきんまんの命令を聞いて人々が嫌がり困るような事を進んで行うようになる。
しかし、どんな状況においてもメロンパンナの声にだけは反応し、自我を取り戻す。また、メロンパンナの『メロンジュース』は、ロールパンナのブラック化を解除する特効薬とも言える。
悪い心の原動力である『ばいきん草』の効果は時間経過で薄れるため、特殊なケースを除き、ずっとブラックロールパンナのままでいることはない。『ばいきん草』の成分が薄れるとアンパンマンへの敵対心も薄れるため、その事に気づいたばいきんまんは、定期的に『ばいきん草』のエキスを注入しなおしているようだ。
とは言え、原作本や全国にあるアンパンマンミュージアムではアンパンマンと仲良くする場面があるので、ばいきんまんが邪魔をしなければ、アンパンマンは味方であると思っているのであろう。アニメでもアンパンマンは敵ではないと理解しつつあるのかブラック化の機会は減少してきており、2009年から2015年の6年間ブラックロールパンナが全く登場しなかった時期もある。
原作本でも、むしろ『アンパンマンにはないしょ』『アンパンマンとバナナダンス』のように、みんなが集まっているところに自然に紛れ込んでいる描写がとても多い。
完全なブラックロールパンナ
特殊な条件によっては、完全な善または悪の状態になることもある。
劇場版『ゆうれい船をやっつけろ!』(1995年7月29日公開)では、ドクター・ヒヤリによってまごころ草の成分を完全に抜き取られ、善の心がない完全なブラックロールパンナに変身した。なお、ブラックロールパンナの初登場は本作である。
アニメ第654話『ふたりのロールパンナ』(2002年4月19日放送)では、ドクター・ヒヤリの作った「フタリニナール」という薬の効果で、ロールパンナが善と悪の2人に分離した。この時は薬の制限時間によって最終的に1人に戻った。
完全なブラックロールパンナは破壊と闘争を好み、アンパンマンのみならず「すべてを壊す!」と言い放っている。ばいきんまんの命令は全く聞かなくなり、最愛の妹であるメロンパンナですら攻撃の対象となってしまう。その戦闘力は尋常では無く、アンパンマン、しょくぱんまん、カレーパンマンをいずれも軽々とあしらい、さらに電撃・石化能力が加わる。
一方、完全な善のロールパンナは戦いを好まないが、完全なブラックロールパンナがメロンパンナを攻撃するのを阻止し、彼女に対して「あなたが壊すと言うのなら、戦うと言うのなら、私も戦います。私は守るために戦う」と言う。
また、劇場版『ロールとローラ うきぐも城のひみつ』では、大量のばいきん草を浴びてしまい、前述の劇場版とは別の完全なブラックロールパンナが登場。こちらは額のマークがRからBに変わり、胸のハートマークも青いハートのみ(そのハートも中央に移動している)となる。ブラック化の特効薬であったメロンジュースも効かず、更にロールリボンには相手をブラック化する効果も追加されている。そちらもばいきんまんの言う事も聞かず、メロンパンナも攻撃の対象となってしまう。
能力と特徴
相手の弱点を的確に衝くことが出来、沈着冷静で迅速な戦闘を見せてくれるので、他のパン戦士よりも頼もしく見える場面が多々ある。
彼女が助けに入ると、大抵の敵を一掃してくれるので安心感が凄まじい。しかし同時にパワーバランスが崩壊することもしばしば…。
何らかの形でロールパンナを戦闘不能にしなければ、主人公の活躍が失われてしまうほどである。
ロールリボン
新体操のリボンのような武器で、パン戦士にしては珍しい標準武装としての得物。
伸縮自在で打撃や拘束、風を起こす事もでき、非常にチートで有力な武器である。
なお、ロールリボンは二本所持しており、時には両手持ちで扱うこともある。リボンの力を最大限に生かして、竜巻を起こすことが出来る『ローリングハリケーン』という必殺技も持っている。
ロールリボンが切れた際には、パンチやキックで戦うこともできる。
詳しくはアンパンチのページを参照。
飛行能力
身体能力も高く、特に飛行速度は抜きん出て速い。効果音と演出が他のパン戦士と明らかに違っている。特定の場合を除いて、飛行の際に腕を前に伸ばさないのは彼女だけである。
耳が良いのか、テレパシー能力があるのか分からないが、妹の呼び声や悲鳴を聞きつけるとどんなに遠く離れていてもマッハで飛んで来てくれる。
電撃・石化能力
完全なブラックロールパンナの時のみ、電撃と石化能力が使える。この二つの特殊能力は潜在的なものらしく、善状態の時にはよほど切迫しないかぎり使えないようだ。また、ばいきん草の成分を大量に注がれた際に、電撃を浴びせた相手(しょくぱんまんとカレーパンマン)をブラック化させたこともある。
二次創作における扱い
強くて優しくて美人で影があるうえギャップ萌え要素も備え持っているので、彼女単体でも人気が高いのではないだろうか。
本編におけるメロンパンナとの姉妹愛が非常に堅いので、百合的な表現に用いられることが多い。
また、劇場版『うきぐも城のひみつ』は大きなお友達からは百合映画として絶賛されている。
アンパンマンとの関係性が幼児向け作品とは思えないほどシリアスかつ不憫なので、いつかは二人が打ち解け合って幸せになって欲しいという願いから、アンロールも人気である。
トリビア
- 彼女が誕生した回でばいきんまんに『ばいきん草』の存在を教えたのはばいきん仙人である。また、パン生地にばいきん草のエキスを混ぜる前にホラーマンがこぼしてしまったため、実際に混入した量はばいきんまんの計画よりもかなり少なくなった。
- 劇場版『虹のピラミッド』にて、すなおとこのトライアングルの力でピラミッドにされたジャムおじさんに代わってアンパンマンの顔を制作したことがある。最初はアンパンマンの名前に反応して青いハートが光り、ブラックロールパンナに変身して拒否してしまうも、ピラミッド化した面々が次々と石化していくことに見兼ねたばいきんまんが『早くしろ。メロンパンナも石になっちまうぞ』と言ったことで元に戻った。手でこねて作ろうとしたがなかなか上手く作れなかったため、ロールリボンを使って完成させた。また、バタコさんに代わって破れたマントも繕った(破ったのはブラックロールパンナである)。
- いつも覆面をしているため、飲食をする場面が見られないが、「ロールパンナとドクダミ夫人」で一度だけドクダミ茶を飲んだシーンがあった。その際に覆面を外したと思われるが、後ろを向いていたため、やはり素顔は謎のままである。
- ゲームボーイソフトの『それいけ!アンパンマン 不思議なにこにこアルバム』では、ばいきんまんによって赤と青二つのハートを同時に失ったことがあるが、その際は意識はあれど言葉を発しない廃人状態となっていた。
- 原作者のやなせたかしは、ロールパンナを制作する際、「今までのキャラクターとは一風違った性格にしたい。そうだ『ジキルとハイド』で行こう。」という事で2つの心を持つ設定を作った。自伝的読み物『アンパンマン伝説』(フレーベル館、1997年)の中で、「こんな複雑なキャラが赤ちゃん向けのアニメに出るか?」と書いていたことがある。またやなせ本人は良いロールパンナより悪いロールパンナが魅力的で好きだと発言している。
- キャラクター作成の際宝塚歌劇団の男役も意識したらしい。この為か、アニメ本編では善状態でも女言葉を使うことはまず無い(後述)。
- ロールパンナのかけ声である「ロォーrrrルァーーー!!」という独特な巻き舌はターザンをイメージしているという。初期は「ローラララー」に近かったが、担当声優の冨永みーなは非常に演じにくそうにしていた。また、初登場時は現在より幼い声質だったが、数年で激変している。
- 頭巾の下から除く顔が肌色だったり前髪のように見える部分があったりと、一見、人間のような外見だが、アンパンマンら他のパン戦士同様、生きたパンである。ロールパンのモチーフはおそらく顔に巻かれたたターバンのような頭巾という意匠なのだろう(ロール=巻く)。
人称・口調・口癖・呼称
関連する話
TV第300話「ロールパンナのひみつ」(初登場回)
TV第301話A「ロールパンナとメロンパンナ」
TV第306話A「ドクロ谷のロールパンナ」
TV第313話「ふたりのパンナのクリスマス」
映画第7作目「ゆうれい船をやっつけろ!!」
TV第378話A「ロールパンナのふたつのこころ」
TV第389話A「アンパンマンとロールパンナ」
TV第396話A「ロールパンナのローリングハリケーン」
TV第418話A「ロールパンナのおともだち」
TV第465話「アンパンマンとブラックロールパンナ」
TV第475話「ロールパンナとクリームパンダ」
TV第560話B「ぼくのロールパンナおねえちゃん」
TV第635話「ロールパンナとしょくぱんまん」
TV第638話「ロールパンナとカレーパンマン」
TV第654話「ふたりのロールパンナ」
映画第14作目「ロールとローラうきぐも城のひみつ」
TV第838話B「ロールパンナとふるどけいさん」
TV第852話「ばいきんまんとブラックロールパンナ」
TV第1283話「メロンパンナとブラックロールパンナ」
TV第1300話「クリームパンダとブラックロールパンナ」
TV第1319話「ジャムおじさんとブラックロールパンナ」
TV第1352話「ブラックロールパンナと勇気の花」 等
関連イラスト
関連タグ
アンパンマン メロンパンナ クリームパンダ ばいきんまん ジャムおじさん
キカイダー:自らに組み込まれた善と悪の心に苦しむキャラクターという類似点こそあれど(特に漫画版)、それぞれの心の状態を表す色の意味が真逆となっている。