概要
「近年、女性のお客さまが電車内で痴漢行為などの被害に遭っている」という事例が多発していたことから、アンケート調査の結果で首都圏および関西圏などで2000年頃から導入された。
平日朝ラッシュ時に導入されている事例が多い。朝の9時(or9時半)に一斉終了となるケースが首都圏の鉄道事業者で目立つが、種別のみで限定、あるいは種別と時間帯の両方で限定して設定している鉄道事業者もある。
OsakaMetro御堂筋線や名古屋市営地下鉄東山線などにおいては平日ダイヤの終日だったり、JR西日本の関西地区や神戸市営地下鉄などにおいては平日だろうが休日だろうが関わらず終日設定されている。
女性専用車は、小学生以下の男の子、お身体の不自由な方とその介助者の男性にもご利用いただけます。(※JR東日本公式サイトより。各事業者で異なるが概ね共通)
…とある通り、実は完全な女性専用ではない。しかし許可されていても女性に心無い言葉を投げられる事例もなくはない。
歴史
1912年1月31日に当時の東京府の中央本線で朝夕の通勤・通学ラッシュ時間帯に登場した「婦人専用電車」が最初とされているが短期間で廃止。その後神戸市電や阪神急行電鉄(阪急)で導入されたが続かなかった。
太平洋戦後の1947年5月に、やはり中央本線で「婦人子供専用車」が登場し、同年9月からは京浜東北線にも連結された。
京浜東北線の「婦人子供専用車」は短期間で廃止されたが、中央線は1973年9月15日(当時の敬老の日)より導入された「シルバーシート」(優先席)と入れ替わりに前日14日に廃止。
その後導入迄30年近く空くことになる。
寝台特急においても就寝中の防犯対策もかねて、1990年代から一両丸ごと女性専用車とする「レディースカー」が一部列車に連結されていた。
エピソード
利点と欠点・解決策
この車両の利点は車内は女性のお客さましかいないため、女性のお客さまが暴力・痴漢行為などの迷惑行為から逃れることができること、また女性のお客さまが不安を抱えなくて済むことである。
欠点は、他の車両が混雑する為、電車が遅延するリスクを抱えている。京都市営地下鉄では乗車出来ない乗客が発生することが懸念されることから、JR東海と名鉄、JR神戸線・JR京都線・琵琶湖線の快速・新快速では増解結が頻繁に行われる事から運用上の問題が発生する為、一切導入していない。
これに関して、車内に防犯カメラを設置して、車内トラブル等迷惑行為を未然に防ぐという手段があり、JR東日本埼京線で初めて導入された。2018年度からは山手線を皮切りに防犯カメラを全車両導入。
しかし、痴漢を減らす為には混雑率の減少が最優先される為、女性専用車が却って痴漢を助長している傾向がみられる他、相鉄本線の夕方下りの大和駅~海老名駅は夕方の4号車に女性専用車が設定されているにもかかわらず、多くの男性がこの車両を通り抜けるなど効果を成していない。女性専用車両が男性客の車内での通行の阻害となり、乗換駅で乗換目的の駆け込み乗車を誘発する場合も多く、安全面での問題が起こっている。
実際の所、男性の乗客数を削減して女性の乗客を自然と増やすことや、混雑緩和に力を入れる事こそが、痴漢を減少させる最良の手段だと言える。
問題は、それができれば苦労はしないと言う点なのだが。
都心部の人口集中や通勤ラッシュ、労働需要の男性偏重などは、鉄道会社が単独でどうこう出来るものではなく、社会全体で変えて行かなければならないものである。そして、その社会全体の努力も虚しく、長年に渡り改善する事が出来ていないのが実情なのである。
女性専用車両とは、そんな実情から苦し紛れで産まれ、問題点を理解されながら、なかなか廃止する事も出来ない、場当たりの策といえるだろう。
女性専用車両をめぐるトラブル
2018年2月16日に東京メトロ千代田線で、同月22日にはJR東日本京浜東北線で女性専用車両に男性が乗り込み、電車が遅延するトラブルが発生したことがニュースで報道された。彼らは「差別ネットワーク」という団体で、女性専用車両は男性差別だと主張し、男性も乗れることをアピールすることが目的らしい。女性専用車両は法律で定められていないのでその趣旨で1000回以上も乗っていたという。鉄道会社はご理解とご協力のお願いを求めているので「譲り合い」が大切である。
女性専用車両に男性が乗り込む行為は、女性のお客さまの方々が何をされるのか不安など恐怖感を持たせる原因となり、電車がストップして遅延するとほかの乗客にも迷惑になる。
しかし、彼らの言うこともまた一つの真実であり、特に近年女性の同情されやすい立場を利用し男性のお客様も女性に同様の感情を抱いているので、男性側から見れば女性専用車も差別以外の何物でもないのである。
海外では?
海外では宗教上の理由で設定される場合もある。(インド、パキスタン、イラン、エジプト、イスラエル等)
イランの首都、テヘランの地下鉄では先頭車2両が終日、女性専用車が設定されているが男性専用車は設定されていない。
ロシアでは長距離列車に酔客対策としてかつての寝台特急の「レディースカー」と同様の「女性専用コンパートメント」も存在する。
関連項目
女性専用車(表記ゆれ)