国鉄、JRにおける急行形電車
専ら急行列車(初期には準急列車も)に使用することを目的に新製された電車。日本国有鉄道(国鉄)における構造上の定義は「客室が出入口(デッキ)と仕切られ、横型の座席(いわゆるクロスシート)を備え、長距離の運用に適した性能を有する」こと。修学旅行専用列車用として新製された車両(155系・159系・167系)についても上記に類した構造と急行形と同格の運転性能であり、多客期には臨時急行列車運用もあったことから、広義の急行形電車とされる。これらデッキ付き・固定クロスシート車の製造は1970年を最後に終了している。185系は、当初は急行「伊豆」置き換え用の転換クロスシート装備の急行形として計画されていたが、特急型として分類されている。(最初に優等列車運用に入ったのは急行「伊豆」である。)
国鉄分割民営化後は急行列車が格上げあるいは快速化で減少したこともあり、急行形としての新系列は登場していない。継承された急行型電車もローカル運用に充当され、近郊形電車に改造されたり後継車両の登場で置き換えられたりして数を減らしていった。
接客設備改良として、保全工事や更新工事の際に発生品のリクライニングシートや簡易リクライニングシートが設置され、引き続き急行や快速に使用された車両も一部には存在したが、経年には勝てずそれらはしなの鉄道の169系を最後に2013年引退している。
2015年3月14日のダイヤ改正でJR西日本北陸本線で運用されていた475系・457系が終焉。富士急行に譲渡された元「パノラマエクスプレスアルプス」165系である「フジサン特急」(1980年代後半のバブル期に内外とも徹底的に改造され、内装は特急形グリーン車並みになっている)も2016年に引退を迎え、この時点で営業運転用として残っていたのは413系と混結編成を組むクハ455形700番台の2両のみ。413系は2020年より521系に代替されることが決まっており、455系の形式消滅によって「国鉄・JRの急行形電車」のカテゴリーに入る車両は完全消滅する。
系列名一覧
80系 153系 155系 159系 163系/165系 167系 169系
451系 453系 455系 457系 471系 473系 475系
参考
上記を除く私鉄などの急行形電車
旧国鉄やJRを除く私鉄などでは急行料金を必要とする急行列車はほとんど運転されなかったこともあり(大手私鉄で走る急行は、JRでは快速に近い)、急行専用の車両が製造されることもほとんどなかったが、私鉄で料金が必要な急行形電車車両としては東武鉄道のりょうもう用の1800系、200系などが代表例として挙げられた(200系の時に特急化、現在の東武の急行電車は料金不要となった)。
現在、急行料金を必要とし専用車両を使用した急行電車を走らせているのは秩父鉄道の「秩父路」がある。秩父鉄道はかつては自前の急行形電車・車両を走らせていたが、その後JR東日本より165系を購入し改造した上で3000系として使用。現在は西武鉄道から新101系を購入し、改造した6000系を使用しており、現役の急行形電車としては唯一の存在となっている。
なお電車以外では、SL急行「かわね路」を走らせる大井川鉄道などがあるが(秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」は急行ではない)、同鉄道はかつては急行料金の必要な急行電車も走らせていたが、現在も走る急行電車は料金不要となっている。
料金不要の急行で使われる通勤形車両は、上位の特急や下位の準急、普通と共通して使われることが多いが、各駅停車用と完全に切り離されている例として阪神電鉄の急行用車両(赤胴車)がある。これは阪神電鉄の路線事情(駅間が極端に短い)ことから、各駅停車は低速域にステ全フリ(起動加速度4.0~4.5km/h/sec)した青胴車・ジェットカーが使われており、これと分離する必要があるため。