概要
キングギドラのメイン武器である光線。後述の派生技もあるが、概ね「金色で稲妻状に波打つ光線」という表現は、全シリーズ共通である。
引力・重力・斥力・反重力を自由自在に操る重力制御能力を持つキングギドラは水爆にすら耐える頑丈な皮膚を持つゴジラを悶絶させる程の威力の光線が、三本の首から広範囲に放たれる。対怪獣戦だけでなく、飛行しながら都市破壊等でも多用される。
各作品での引力光線
昭和シリーズの引力光線
設定上は「命中した対象を無重力状態にして吹っ飛ばす」という効果があるが、劇中では破壊光線として描写される。その威力は、今まで人類の兵器やアンギラス、キングコング、モスラ、ラドンといった怪獣達との戦闘でも、あまり苦しむ事が少なかったゴジラが、目に見えて苦しむ程(モスラ幼虫程度なら簡単に高々と吹っ飛ばされてしまう)。
ゴジラ達地球怪獣はキングギドラとの戦闘の際には、引力光線が使い難いインファイトに持ち込む傾向が強い。
平成VSシリーズの引力光線
ゴジラVSキングギドラのキングギドラとメカキングギドラが使用する。
基本は昭和と同じで、連続攻撃でゴジラを後退させる程の威力がある。
またメカキングギドラは、機械化された中央の首からノーマルの引力光線より高い破壊力の「レーザー光線(レーザー引力光線)」というカラフルな光線を放つ(後にGフォースで解析されてスーパーメカゴジラの主力武器であるメガバスターへと発展した)
設定上は全ての光線を一点集中で発射する「トリプルトルネード」という技があるが、劇中では未使用(一部ゲーム作品では再現されている)
平成モスラ三部作の引力光線
デスギドラはギドラ系の怪獣だが「火砕流撃弾」、「炎龍旋風撃波」といった火炎・熱線砲を武器としている為、引力光線は使わない。
グランドギドラの使う引力光線は、VSシリーズよりも極太の光線として描写される。
その威力はダガーラの攻撃を全て防ぎきったレインボーモスラのシャイニングシールドが全く役に立たず一撃でグロッキー気味になってしまった程。メカキングギドラでは未使用に終わった「トリプルトルネード」も劇中で披露しレインボーモスラを戦闘不能に追いやった(逆に鎧モスラにはトリプルトルネードでも全くダメージを与える事が出来なかったが)。
白亜紀の若い時代のグランドギドラ(通称ヤングギドラ)は引力光線がまだ使えない為、火炎弾を吐く。これはシャイニングシールドで防げる威力であるが、劇中ではシャイニングシールドの張られていない後方等からの攻撃でレインボーモスラに大ダメージを与えた。
ミレニアムシリーズの引力光線
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の魏怒羅/千年竜王キングギドラは、不完全体では引力光線を使えず、噛み付いて電撃を流す程度の事しか出来なかったが、完全体になって引力光線を使用できるようになった。
「ゴジラFINAL WARS」ではモンスターXとその正体であるカイザーギドラが使用する
モンスターXの時は「引力光線デストロイド・サンダー」という名称で、頭部と両肩の骸骨から発射。この状態でもゴジラを大苦戦させる程の威力であるが、カイザーギドラになると「反重力光線デストロイド・カイザー」となり、ゴジラの全力の放射火炎をも凌駕する威力を見せた。
モンスターバースシリーズの引力光線
『ゴジラ/キング・オブ・モンスターズ』のギドラ(KINGGHIDORAH(モンスターバース))が使用。
今までのシリーズの引力光線に比べると、やや直線的な見た目ではあるが、高い破壊力は相変わらずで、劇中ではゴジラを何度もふっ飛ばし、既に満身創痍だったとはいえモスラも粉々にした程。
またゴジラとの最終戦では、ゴジラとこれを援護する軍隊にボコボコにされている最中に、ふと電線を見つけて電気を吸収してパワーアップを果たし・・・
首だけでなく翼からも大量に引力光線を発射し、どっかで見た光線の嵐を彷彿とさせる光景をキングギドラは使うという。シン・ゴジラを見た視聴者からすればニヤリとする演出を見せつけた。
「ゴジラ対エヴァンゲリオン・ザ・ リアル 4-D」の引力光線
ゴジラと三機のエヴァとの戦いの最中に突如乱入したキングギドラが使用。
形状は歴代と同様稲妻状の光線で単純にゴジラやエヴァにダメージを与えるのも同じだが発射直前に対象に向かって口から光が出ており、威力はATフィールドを貫通するほど強力。しかしこの光線には最大の特色がありギドラはこの光線を周りの無機物に発射して浮かせ、羽で操作して相手に飛ばすという芸道を見せた。
ある意味歴代で最も引力光線らしいと言える。
引力光線が産まれた訳
本来はキングギドラは、企画段階ではゴジラ放射火炎の様に直線的な光線を吐く予定であった(スチル写真等では火炎っぽいものを吐いているキングギドラが確認できる)
特撮の神様円谷英二監督からキングギドラの光線作画を任されたのは、ゴジラの放射火炎やウルトラマンのスペシウム光線を世に生み出し、東宝特撮やウルトラシリーズの光学合成を支え続けた光学合成技師、飯塚定雄氏である(2019年当時も現役で活躍中だったが、2023年没)。
だが光学合成のプロ中のプロを実力をもってして、キングギドラの光学合成は
「(円谷の)おやっさん!これ無理だよ!」
だったそうな(汗)
キングギドラは三本の首を(通称、一郎・二郎・三郎)をスタッフが操演で動かす為、常に首がブラブラしており、直線の光線を合成しても発射地点と着弾点にズレが生じてしまう為、光学合成ではどうにもならないのであった。
そして飯塚氏の懸命な訴えに対する特撮の神様の返答は
「無理でもなんとかしろ!!」
だったとかないとか(汗)
試行錯誤しているうちに、「いっそ光線もグニャグニャさせてしまえばいいんじゃね?」という感じで、現在の稲妻状の光線になったという。職人達の努力の結晶が引力光線なのある。