概要
『銀河英雄伝説』は田中芳樹、星界シリーズ(『星界の紋章』と、その続編『星界の戦旗』)は森岡浩之が執筆したスペースオペラ小説で、その後は漫画やアニメ、ゲームなどのメディアミックスが行われるほどの人気である。
相違点
どちらも「専制君主制国家と民主主義国家との間で行われる宇宙戦争」が舞台になっているが、その様相は大きく異なる。
主人公
- 銀河英雄伝説は、専制国家側のラインハルト・フォン・ローエングラムと民主国家側のヤン・ウェンリーであり、それぞれの視点から描かれる。
- 星界シリーズの主人公であるラフィールとジント・リンはどちらも専制国家側の人間で、敵となる民主国家側からの視点はあまり描かれない。ただしジントはその特殊な出自から、専制国家上層部の価値観に染まりきってはいない。
登場勢力
- 銀河英雄伝説は、専制国家である銀河帝国と民主国家である自由惑星同盟との戦争を主軸に、第三勢力であるフェザーン自治領や地球教が関与する。
- 星界シリーズは、専制国家であるアーヴによる人類帝国と、民主主義国家4か国の軍事同盟であるノヴァシチリア条約機構加盟国(人類統合体、ハニア連邦、人民主権星系連合体、拡大アルコント共和国の4か国で構成。劇中では単に「4か国連合」と呼ばれることが多い)との戦争が主軸であるが、4か国連合構成国同士や構成国内部の対立等も描かれる。
遺伝子操作
- 作中では人間に対する遺伝子操作は登場しない。銀河帝国では開祖ルドルフ大帝が制定した「劣悪遺伝子排除法」が存在するが、これは「遺伝病などの劣悪な因子の持ち主を抹殺する」方式である。
- 本編開始時点では形骸化していたが、先天性の視覚障害を持って生まれたパウル・フォン・オーベルシュタインも「もし私がルドルフ大帝の時代に産まれていたら、劣悪遺伝子排除法に引っかかって処分されていた」と発言するなど、その影響は銀河帝国の社会に根強く残っている。
- 星界シリーズでは、アーヴによる人類帝国の支配階級であるアーヴ自体が遺伝子操作の産物であり、地上人(平民)が功績を立てて貴族に叙された場合には、子弟を遺伝子操作により生物学的な意味でのアーヴにする必要がある(これを拒否した場合、爵位・領地の相続が認められない)。
- 唯一の例外規定として、叙爵される以前に誕生した子弟に限り、生物学的には地上人であっても爵位・領地の相続が認められる。ジント自身も父の死後、この規定に基づきハイド伯爵位を相続した。その場合も、叙爵以降に産まれた子弟(ジントなら子供)には、生物学的なアーヴにするための遺伝子操作が義務付けられる。
- 逆に四か国連合の場合は、少なくとも盟主である人類統合体においては出生前の遺伝子操作(に限らず、青髪や人工子宮などのアーヴ的要素)に強い忌避感情を抱く傾向がある(他の3か国は不明)。『紋章』で登場したカイト憲兵大尉は、自身が遺伝子操作による不老化処置を受けた『シレジア不老族』であることから、軍内部で「部下を預けてもらえない」「進言・報告をまともに取り合ってもらえない」など、恒常的な差別に晒されていた(シレジア不老族の出自が、人類統合体に征服された軍事独裁国家「シレジア共和国」の支配階級の子孫であることも影響している)。
作中の時間
- 銀河英雄伝説の本編は、アスターテ星域会戦が起きた宇宙歴796年/帝国歴487年から、皇帝ラインハルトが崩御する宇宙歴801年/新帝国歴3年までの、およそ5年間の物語である。
- 星界シリーズは2023年10月時点でまだ連載が続いており、『紋章』の本編開始(帝国歴952年)から『戦旗VI』(帝国歴968年)の時点で17年が経過している。
作中の言語
- 銀河英雄伝説の場合は明確な設定が無いが、艦艇名や人名、惑星等の地名、役所などの名称から銀河帝国公用語はドイツ語、自由惑星同盟公用語は英語がベースとなっている。
- 星界シリーズの場合は、アーヴたちは独自の言語であるアーヴ語を用いており、アニメでは文字も設定されている。さすがに登場人物たちの会話は日本語だが、それでも「アニメのオープニングナレーションはアーヴ語で読み上げられる(日本語字幕付き)」という演出が使われる。4か国連合の言語については、人類統合体がリクパルと呼ばれる公用語を使っている。
- また、星界シリーズはその性質上各惑星ごとの固有の言語も多いが、少なくともアーヴ帝国領内においては、帝国併合後にテラフォーミングと入植が行われた惑星については、アーヴ語が公用語となることが多い。
- この他、ジントはその特異な出自から、生まれ故郷であるハイド星系惑星マーティンの公用語であるマーティン語、第二の故郷である惑星デルクトゥーの公用語であるデルクトゥー語、アーヴ語、リクパルの4つの言語を操れる。アニメ版では、マーティン語は英語、デルクトゥー語は広東語がベースとなっている。
コラボ例
『紋章』や『戦旗』のI~III時代のラフィールやジントなら、ユリアン・ミンツとはほぼ同い年である。
またジントは主計科の翔士(将校)であるが、アレックス・キャゼルヌも同じく主計科の将官である。
共通出演声優一覧
声優の名前の五十音順に表記
星界シリーズのアニメ版は、銀河英雄伝説の石黒版OVAとほぼ同時期(1990年代)に制作されているため、主要人物に共通する声優が多い。
また、2018年から放送が始まったリメイク版の「Die Neue These」においても、星界シリーズで端役を演じていた声優が主要キャラに抜擢されている例がある。
銀河英雄伝説の側の略称は以下の通り。
※旧:石黒版OVA(サブタイトルは、外伝のシリーズ名)
※黄:劇場版『黄金の翼』
※新:Die Neue These(サブタイトルは、シリーズ名)
声優名 | 銀河英雄伝説 | 星界シリーズ |
---|---|---|
有本欽隆 | アントン・ヒルマー・フォン・シャフト(旧) | ゲオル・メイディーン |
池水通洋 | エベンス大佐(旧) | カイト憲兵大尉 |
石塚運昇 |
| エントリュア・レイ(ルーヌ・ビーガ市警察警部) |
井上和彦 | ダスティ・アッテンボロー(旧) | ビボース兄弟 |
江川央生 | アウグスト・ザムエル・ワーレン(新) | パーヴェリュア(※2) |
大谷育江 | マルガレータ・フォン・ヘルクスハイマー(旧:奪還者) | フェグダクペ・セールナイ |
大塚明夫 | チュン・ウー・チェン(旧) | サムソン=ボルジュ・ティルサル=ティルース |
小杉十郎太 | カスパー・リンツ(旧) |
|
小室正幸 | グエン・バン・ヒュー(旧) | アイザン(ルーヌ・ビーガ市警察管理官) |
子安武人 | ジークフリード・キルヒアイス(黄) | アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ男爵・クロワール |
小山武宏 | マシューソン准将(旧:螺旋迷宮) | サンプル・サンガリーニ(人類統合体大使) |
塩沢兼人 | パウル・フォン・オーベルシュタイン(旧) | ドゥサーニュ(皇太子) |
鈴置洋孝 |
| ドゥビュース(クリューヴ王、ラフィールの父親) |
田中秀幸 |
| リン・スューヌ=ロク・ハイド伯爵・ローシュ(旧名ロック・リン。ジント・リンの父親) |
長克巳 | ディートリッヒ・ザウケン(旧) | グェン・タウロン(ハニア連邦大使) |
土井美加 | ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ(旧:千億の星・千億の光) | ラマージュ |
徳弘夏生 | ラウディッツ中佐(旧) | シドリュア・ボルジュ=シド・シーズ(帝国宰相) |
長嶝高士 | カムフーバー(旧) | アランガ憲兵少佐 |
日野由利加 | アデレード(旧:螺旋迷宮) | マルカ |
ふくまつ進紗 | パエッタ(新) | ブラーシュ(シドリュアの後任の帝国宰相) |
真殿光昭 | ヨッフェン・フォン・レムシャイド(新) | ベルソート |
麦人 | オーブリー・コクラン(旧) | アトスリュア・スューヌ=アトス・フェブダーシュ前男爵・スルーフ |
梁田清之 | フォンク(旧) | ミケ・アンガスン |
遊佐浩二 | デグスビイ主教(新) | レーリア(ゴースロス副長) |
※1:2018年8月に石塚運昇が死去したため、『星乱』以降は山路和弘に交代。
※2:『戦旗II』以降。『戦旗I』では小西克幸が演じる。
※3:ラジオドラマ『星界の断章 併呑』のみの出演。後のゲーム版『星界の戦旗』では、山崎たくみに交代。
関連小説
プロットのみ。また4か国連合のうち銀河英雄伝説(自由惑星同盟)のキャラが登場するのは人類統合体のみで、他の3か国の軍指導部には『七都市物語』のキャラが割り当てられている。