概要
福島県の沖合いは、太平洋プレートが日本列島下へ沈み込む「日本海溝」の一部であるため、日本で最も地震が頻繁に発生する場所のひとつである。
2011年に起きた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の震源域には福島県沖も含まれており、3月11日の本震以降、福島県沖でも頻繁に余震が発生した。そして、現在もこの海域では震災前よりも地震活動が活発な状態が続いている。
過去の主な地震
「☆」は東北地方太平洋沖地震の余震と見做されている地震である。震災から10年以上が経過し、余震か否かの判別が困難になってきている状況を踏まえた気象庁は、2021年4月以降に震災の余震域(福島県沖を含む)で発生する地震については「余震」と表現しないこととしている。
1938年の福島県東方沖地震
1938年11月5日に発生した地震。規模(マグニチュード)はM7.5。「塩屋崎沖地震」ともよばれる。被害の概要は、死者1名、家屋全壊4戸。高さ1m前後の津波があった。
2016年の福島県沖地震☆
2016年11月22日5時59分に発生した地震。震央は北緯37°21.2′・東経141°36.2′、震源の深さは約25km。規模はM7.4。福島県・茨城県・栃木県で震度5弱の揺れを観測した(震度5弱:福島県14市町村・茨城県1市・栃木県1市)。この地震は陸のプレートの地殻内で発生し、発震機構(CMT解)は北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型である。
気象庁はこの地震に伴い、6時2分に福島県に津波警報を、青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県、茨城県、及び千葉県九十九里・外房に津波注意報を発表した。その後、7時26分に千葉県内房、伊豆諸島にも津波注意報を発表したほか、8時9分には宮城県に津波警報(津波注意報から切替)を発表した。宮城県の仙台港では8時3分に1m44cmの津波を観測した。1mを超える津波の観測は2011年の震災以来のことであった。
幸い直接的な被害は、港の漁業用機材が流されたり、高齢者が転倒した家具で負傷した程度に留まった。避難に関して震災以来新たに整備され直した津波対策が活かされた部分もあったものの、上手く行かなかった部分もあり今後の大きな課題となった。
2021年の福島県沖地震☆
2021年2月13日23時7分に発生した地震。震央は北緯37°43.7′・東経141°41.9′、震源の深さは約55km。規模はM7.3で、兵庫県南部地震や熊本地震(本震)とほぼ同じ。宮城県と福島県で最大震度6強を観測した(震度6強:宮城県蔵王町・福島県相馬市・国見町・新地町)。最大加速度は1432ガル(宮城県山元町)であり、熊本地震(本震)の1362ガル(熊本県益城町)を上回った。
この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生したスラブ内地震である。2016年11月に発生した地震とマグニチュードはほぼ同じであったが、地震のメカニズムが違ったために揺れの大きさ(震度)が異なっている。
被害の概要は、死者3人、負傷者184人、家屋の全壊144棟、半壊3,070棟。
2022年の福島県沖地震
2022年3月16日23時36分に発生した地震。本震の震央は北緯37°41.8′・東経141°37.3′、震源の深さは約57km。規模はM7.4。宮城県と福島県で最大震度6強を観測した(震度6強:宮城県登米市・蔵王町・福島県相馬市・南相馬市・国見町)。両県の沿岸には津波注意報が発表され、石巻港で最大30cmの津波を観測した。なお、本震のわずか2分前には、本震よりも一回り小さいM6.1(最大震度5弱)の前震が発生している。
この地震の発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生したスラブ内地震である。1年前の2月に発生した地震(上↑の地震)と、発生場所やメカニズム、規模や震度、発生時間帯(深夜の23時台)や揺れの特徴などがほぼ同じであったため、その点でも注目を集めた地震である。
被害の概要は、死者4人、負傷者248人、家屋の全壊224棟、半壊4,630棟。
東北地方と関東地方を中心に大規模な停電が発生したが、これは(発電所において)北海道胆振東部地震の際に発生した大規模停電「ブラックアウト」を防ぐための安全装置が作動したことによるものであった。
この地震により、各地で建物が倒壊するなどの大きな被害が出た。仙台市青葉区の仙台城跡の石垣が崩れたり、「伊達政宗公騎馬像」が傾いたり、東北自動車道の路面に大きな亀裂が生じたり、ゲームセンターやコンサートホールの屋根や壁が崩落したりした。
また、激震によって東北新幹線(やまびこ223号)が脱線する事故も発生している。営業運行中の新幹線が地震により脱線したのは、新潟県中越地震による上越新幹線(とき325号)の事故以来2例目であった。