概要
永世七冠資格保持者の羽生善治と同世代の棋士にはA級順位戦・タイトル獲得を複数期経験している強豪棋士が集中的に存在しており、彼らが50歳を過ぎた令和時代においても、依然その下の世代の棋士にとって非常に高い壁となっている。
2010年度前半までは、ほぼ全てのタイトル戦が「羽生世代VS羽生世代」または「羽生世代VSそれ以外」で行われており、これは将棋界の歴史上でも非常に特徴的な現象であるため、彼らを総称した「羽生世代」という呼称が生まれた。
ちなみに羽生世代が獲得した合計タイトル数は136期であり、ほぼ20年以上羽生世代がタイトルを保有していたことがわかる。
たまったものではないのはその下の1970年代後半生まれ世代であり、1975年生まれの久保利明から1984年生まれの渡辺明の間にタイトル獲得者が一人もいないという氷河期世代の不憫さを体現した状況になっている。伝説の棋士熊坂学もこの世代の一人である。
主な「羽生世代」の棋士たち
※タイトル獲得数順、カッコ内は保有する永世称号資格。
羽生善治九段(永世七冠資格保持者) |
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タイトル獲得数99期、A級以上在籍29期、1組以上在籍32期 |
言わずもがな、将棋界のスーパースター。永世七冠資格保持者。日本将棋連盟会長(2023年〜)。1996年に将棋界の7大タイトルを独占し、2017年には永世七冠を達成した。詳細は個別記事参照。 |
佐藤康光九段(永世棋聖資格保持者) |
タイトル獲得数13期、A級以上在籍25期、1組以上在籍28期 |
日本将棋連盟前会長(2017年~2023年)。永世棋聖資格保持者。定跡にとらわれない独創的な力戦形の将棋を指すことが多く、「丸太流」と評されることも。ネット上でのあだ名は「モテ」「怪鳥」。詳細は個別記事参照。 |
森内俊之九段(十八世名人資格保持者) |
タイトル獲得数12期、A級以上在籍22期、1組以上在籍18期 |
日本将棋連盟専務理事(2017年~2019年)。十八世名人資格保持者。強靭な受けの棋風で「鉄板流」と呼ばれる。ネット上でのあだ名は「ウティ」。最近YouTubeで「森内チャンネル」開設した。詳細は個別記事参照。 |
郷田真隆九段 |
タイトル獲得数6期、A級在籍13期、1組在籍18期 |
史上唯一の四段でタイトルを獲得した棋士(現在は制度上不可能)。直線的な攻めを得意とする剛直な棋風であり、その指し手は格調高いと評されることも多々ある。詳細は個別記事参照。 |
丸山忠久九段 |
タイトル獲得数3期、A級以上在籍14期、1組在籍22期 |
角換わりなどを得意とする居飛車党。一切の取りこぼしをなくそうとすることから「激辛流」と呼ばれる(いわゆる「友達をなくす手」)。早稲田大学卒業。詳細は個別記事参照。 |
藤井猛九段 |
タイトル獲得数3期、A級在籍10期、1組以上在籍16期 |
振り飛車御三家のひとりで、革新的な対居飛車穴熊四間飛車の戦法である「藤井システム」を始めとして、独創的な序盤構想に定評がある。ネット上でのあだ名はてんてー。詳細は個別記事参照。 |
村山聖九段 |
棋戦優勝2回、A級在籍3期、1組在籍4期 |
故人。優れた終盤力から「終盤は村山に訊け」と称された。腎臓の難病であるネフローゼを患いながらも戦い続けた。その生きざまを綴ったノンフィクション作品「聖の青春」はドラマ化・映画化している。詳細は個別記事参照。 |
先崎学九段 |
棋戦優勝1回、A級在籍2期、1組在籍6期 |
データには頼らず、局面に対する感覚を重視する「無頼流」。棋界一の文才を持ち、将棋漫画の監修やエッセイの寄稿など多彩な活躍をする。詳細は個別記事参照。 |
羽生世代に入れられることもある棋士
深浦康市九段 |
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タイトル獲得数3期、A級在籍10期、1組在籍11期 |
羽生や藤井聡太などの将棋星人(天才)から地球を守る「地球代表」と称される。将棋に集中し、対局中は相手を終始意識する「恋愛流」。詳細は個別記事参照。 |
屋敷伸之九段 |
タイトル獲得数3期、A級在籍6期、1組在籍16期 |
プロデビューから史上最速の1年10ヶ月で初タイトル獲得という未だ破られぬ大記録を持つ。変幻自在な指し回しは「忍者屋敷」、「お化け屋敷」と称される。詳細は個別記事参照。 |
※彼ら2人は下記の「ポスト羽生世代」に入れられることも多い。
ポスト羽生世代
羽生世代の一つ下の世代。羽生世代(厳密には羽生善治)の層の厚さに隠れているが一癖も二癖もある強者揃い。またこちらも全員九段である。彼らも2010年代前半までに数多くタイトル獲得・登場や一般棋戦優勝を果たしている。
※タイトル獲得数順、カッコ内は保有する永世称号資格。
久保利明九段 |
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タイトル獲得数7期、A級在籍13期、1組在籍12期 |
振り飛車御三家の筆頭。軽快な捌きに定評があり「カルサバ日本一」、「捌きのアーティスト」と評される。詳しくは個別記事参照。 |
三浦弘行九段 |
タイトル獲得数1期、A級在籍19期、1組在籍13期 |
羽生善治の七冠独占を終わらせた男として知られる。また、将棋に対するストイックな姿勢から「武蔵」と呼ばれる。詳しくは個別記事参照。 |
木村一基九段 |
タイトル獲得数1期、A級在籍5期、1組在籍12期 |
粘り強い受けの棋風で知られる「千駄ヶ谷の受け師」。解説が面白いことで知られ「将棋の強いおじさん」とも。46歳3ヶ月での初タイトル獲得は従来の最年長記録を大幅に更新した。詳しくは個別記事参照。 |
行方尚史九段 |
棋戦優勝2回、A級在籍6期、1組在籍7期 |
粘り強い居飛車の本格派。自由奔放かつ破天荒な発言で棋界をしばしば賑わす。詳しくは個別記事参照。 |
鈴木大介九段 |
棋戦優勝2回、A級在籍4期、1組在籍10期 |
振り飛車御三家のひとりであり、豪快な攻めが特徴。石田流に新風を吹き込んだことで知られる。麻雀の強豪として知られ、2020年には麻雀最強位を将棋のタイトルよりも先に獲得した。 |
「はにゅうせだい」
表記は同じだが1994年生まれのアスリートを意味する「はにゅうせだい」という呼称も存在する。
冬季オリンピックを日本人として初めて連覇した羽生結弦にちなんだもので、スポーツ雑誌『Number』900号の記念特集「羽生世代、最強の証明。」の表紙キャッチコピーや新聞の見出しなどにも用いられていた(1994年生まれの大谷翔平が称したもの)。
高木美帆、萩野公介、瀬戸大也、桃田賢斗、土性沙羅、ベイカー茉秋、上地結衣、鈴木誠也、藤浪晋太郎など、オリンピックや世界選手権の金メダリストを多数輩出する黄金世代となっている。
また前述の将棋でもこのあたりには序盤中盤終盤隙がない強豪が多い。ただし肝心の1994年世代はまだタイトルがない。