概要
信濃は度々有力な大名たちによる勢力圏争いに巻き込まれ、その度に小県(ちいさがた)の国衆たちが集まって今後の対応を議論するというシーンが頻繁に盛り込まれている。
信濃の国衆を取り纏めていたのは真田昌幸(演:草刈正雄)であったが、真田に次ぐ勢力を持っていた国衆:室賀正武(演:西村まさ彦)はそんな真田が気にくわず、真田のやり方に毎度反発する(9話のような例外もあるが)。それを昌幸の息子である信幸(演:大泉洋)が何とか宥めようとするも、正武に「黙れ小童!」と一蹴されて黙り込む…というのがお決まりのパターンになっている。
ちなみに、回が進むごとに徐々に正武の台詞が食い気味になっていっており、一方の信幸も最初のうちこそ大人しく引き下がっていたものの、徐々に不満で何か言い返したげな表情を見せるようになってきていた。
昌幸が小県の国衆を集める際の鉄板ネタ・お約束の展開となっており、室賀正武の名がOPのテロップに出てくるだけで、「今週は『黙れ小童!』が飛び出すのか」と注目され、ちゃんと台詞が出てきた際には、twitter上のタイムラインが「黙れ小童!」一色に染まるなど、一部のファンの間で妙な人気を博した。
使用例
3話
武田氏が滅亡した後、真田昌幸は織田信長に仕えることを決意し、そのことを信濃の国衆に伝え、説得しようとする。
出浦「真田殿に伺いたい」
昌幸「おお、出浦殿」
出浦「何故にそれほどまで、織田信長をかっておられるのか?」
昌幸「勘でござる。」
出浦「御屋形様の近くにいながら、穴山梅雪や小山田信茂の裏切りにまるで気付かなかったお主の勘とやらを、どうして信じろというのだ。」
昌幸「はっはっは。いやいやそれもそうだな。はっはっは。」
室賀「そもそもわしは、お主が我らの長のように振る舞っていることが解せん」
信幸「父、昌幸は、御屋形様のご信任誰よりも厚…」
室賀「武田は既に滅んだ!」
信幸「父は常に、御一同のことを考…」
室賀「黙れ小童!」
5話
本能寺の変の後、昌幸は上杉氏に仕えることを決め、またも信濃の国衆を集める。
昌幸「皆の衆、ご承知の通り、信長が明智光秀に討たれ申した。せっかく織田に従った我らであるが、これで全ては水の泡となった。よって…」
室賀「ちょっと待て! 最早わしらは、お前の言う通りにはならん!!」
昌幸「わしに従えぬと申すのか?」
室賀「その通りだ!」
信幸「お待ちください! 既に皆々様は、父の下で一つになろうと決…」
室賀「黙れ小童!」
6話
今度は滝川一益に協力することを決めた昌幸。
昌幸「子細あって、滝川一益に手を貸すことにした」
(国衆たち、驚きざわめく)
室賀「聞いたか? 皆の衆! 何たるいい加減さ! 何たる考えの浅さよ!!」
昌幸「熟慮の上である。」
室賀「そういうのを朝礼暮改というのだ。」
昌幸「朝礼暮改の何が悪い? より良い案が浮かんだのに、己の体面のために、前の案に固執するとは、愚か者のすることじゃ!」
室賀「話にならぬ!」
信幸「我ら小県の国…」
室賀「黙れ小童!」
9話
昌幸の仕向けた工作により、上杉景勝は家臣の謀反の鎮圧に精一杯で、北条と徳川は互いにドンパチやりだしたために、信濃は手薄になった。
この気を逃すまいと、国衆たちの寄合により信濃の国を治めることを決めた昌幸と、珍しくそれに賛同する正武。
しかし、他の信濃の国衆たちの反応は悪かった…。
室賀「みな、大名達の顔色を窺うことしかできぬ。情けない奴らじゃ。」
昌幸「やはり、無理があったか…」
室賀「根気よく説けば、誇り高き武田の旧臣ならば分かってくれるはずじゃ!」
出浦「室賀殿。前向きではないか。」
室賀「悪いか。」
信幸「お気持ちは嬉しいのですが、あまり派手に立ち回りますと、我らの動きを北条に悟られます。お気を付けを…」
室賀「黙れ小童! 分かっておるわ!!」
じゃがではござらん!!!
しかし、言われっぱなしであった信幸も、確実に成長を遂げていた。
10話
北条と同盟を結んだ家康は、交渉の折、氏政に沼田を差し出すことを了承してしまった。
上田城の築城と引き換えに沼田を引き渡すよう促す家康だが、そんなことをすれば真田の領地は大幅に減ってしまう。
しかも、以前家康は真田に対して沼田城と岩櫃城の安堵を約束していた。
家康「その代わりと言ってはなんだが、沼田を貰い受けたい。」
信尹「しかしながら、先日沼田城と岩櫃城の安堵を徳川様はお約束下さいました。」
家康「う~ん……しかし、約束してしもうたのじゃ。」
信幸「徳川様こそ真田と約束下さったはず! 沼田を北条に渡すなど理不尽至極!!」
家康「じゃが…。」
信幸「じゃがではござらん!!!」
相手は室賀本人ではないが、相手が台詞を言いかける中で若干喰い気味に怒鳴り散らすなど、室賀の言い方を意識したかのような演出が見られる。
なお、この直後、信之の態度に激怒した本多忠勝が「無礼者!!」と叫んで斬り殺そうとするが、信繁と家康に止められたことで事なきを得る。
信幸「いささか疲れ申した……」
そんな信幸と忠勝が将来的に義理の父子の関係になることなど、この時誰も知らなかったのである。
そして……
視聴者から黙れ小童の人と愛された室賀正武であったが、11話で史実同様家康に唆されて昌幸暗殺を画策。討ち取られて退場する(詳細は本人の記事を参照)。
そこからさらに時が経ち、信幸は信之と改名し、黙れ小童の記憶も視聴者から薄れていき。
最終話直前の第49話……
大坂方についた弟・幸村(信繁)を説得するため、身分を隠して叔父・信尹の調略任務に随行する事となった信之。
その途中、一行は徳川家の家臣によって身分改めを受ける。
家康からの書状を見せる事で、すぐに疑いは晴れるが……。
久太夫「失礼致した。尾張徳川家家臣、室賀久太夫」
信尹「将軍家旗本、真田隠岐守信尹」
久太夫「真田……」
信尹「先を急ぎますゆえ」
久太夫「待たれよ! 真田と言えば、真田安房守……」
信尹「安房守は我が兄でございます」
久太夫「通すわけにはいかぬ。我が父・室賀正武は、真田安房守の罠に嵌り……」
信之「黙れ小童!」
久太夫「……スイマセン」
信之「……参りましょう」
40話の時を経て、室賀正武の息子に対して、見事に黙れ小童返しを決めたのである。
余談
- この台詞の由来とも言える台詞が、過去の大河ドラマにも登場している。1976年の『風と雲と虹と』に登場する田原藤太(演:露口茂)の台詞で、こちらでは「口を塞げ小童!」となっている。同作、そして露口の大ファンであった脚本担当・三谷幸喜が台詞を転用したもので、露口へのリスペクトがそこには込められていた事を、後に松村邦洋との対談の中で明かしている。
- 室賀正武を演じている西村雅彦も、自身の台詞が話題になっていることを知っており、公式twitterでもこのことについて肯定的な発言を残している……というか、「来週は、出ると思うよー……あの台詞についてはナイショですが……」「今週はアレを言ってくれるか!?」と書いたこともあり、本人も割とノリノリなご様子。
- 信繁役の堺雅人は、「(脚本担当の三谷幸喜が)『黙れ小童』をあそこまで重ねてくるとは思わなかった。流行語大賞を狙っている。」と話していた。果たして…。
- 一方三谷は自身の連載エッセイで「ネットで話題になった時はもう11話(室賀の最期)まで撮影が終わっていた。こんなに人気が出るとわかっていたら、11話の台詞にも『小童!』を入れたのに」「西村雅彦が流行語大賞を狙っているらしいが、日常生活で使いようのない言葉だから無理だろう」という趣旨のコメントをしている。
- 遂には、NHKも第9話の再放送の際に、「今話題の『黙れ小童(こわっぱ)!』が再び。」と宣伝している。今や、「黙れ小童!」は室賀正武を、ひいては真田丸そのものを語る上で(ある意味)欠かせない鉄板ネタと化してしまったようである。
- 真田丸終焉後、その年の紅白歌合戦において紅組の香西かおり氏の歌唱前、彼女の伴奏担当であり真田丸メインテーマのバイオリンソロを担当した三浦文彰氏が真田丸メインテーマを演奏されたが、最中映し出された真田丸の劇中映像の最初が「黙れ、小童ァ‼︎」であった。誰がそこまでやれと言った。
- 49話で室賀久太夫を演じたのは、お笑いコンビ・アンジャッシュの児嶋一哉。「西村雅彦に顔が似ていて、アタフタした感じの演技も似ている」と言う事で起用された。なお、児島は2010年の龍馬伝以来2度目の大河出演である。
- その数年後、室賀役の西村雅彦氏は「麒麟がくる」において光秀の叔父であり父親代わりの存在である明智光安として大河ドラマに再登場し、「黙れ小童再び?」と視聴者の間で話題になった。しかし劇中の光安は前世(?)の室賀とは真逆の厳しくも優しい笑顔が素敵なおじさまであった。
- 「麒麟がくる」と同年にTBSで放送された「半沢直樹」(第2シーズン)の第9話の予告編で、柄本明演じる大物政治家・箕部啓治が、どアップで「小童ァ!」と怒鳴る場面が流れ、真田丸ファンをざわつかせた。このドラマには真田丸で久太夫役だった児嶋一哉が出演しており、しかも役どころが箕部の秘書を長年務めながら、彼の汚職を告発しようと動くという、箕部に恫喝されても何もおかしくないポジションだったため、「児嶋は民放でも小童呼ばわりされるのか」という予想が広がった。しかし実際に第9話のその場面で怒鳴られたのは主人公の半沢……つまり真田丸の主演・堺雅人であった。
- さらにその2年後、今度は信幸役の大泉洋が「鎌倉殿の13人」の源頼朝役として大河ドラマに帰ってきた。脚本が同じ三谷幸喜であり、真田丸セルフパロディが飛び出すのではないかと期待する視聴者もいる。
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