銃社会アメリカだからこそ起きる凶悪犯罪
そして警察もこれに対する対抗策を持っていなければいけなかったが、1960年代までの警官の装備は拳銃のみで、パトカーにショットガンか、M1カービンやボルトアクション式などのライフルを積んでいるのが精々であった。
そしてこの十分とは言えない装備が続く中、1966年にテキサスタワー乱射事件が発生し、事件を管轄したオースティン市警察は対応し切れず、結果として警察官を含む15名が死亡した。
これを契機にロサンゼルス市警が設立したのが、アメリカ初となる警察系特殊部隊Special Weapons Assault Team、略してSWAT(スワット)である。
現在はロサンザルス市警だけではなく全米の法執行機関内に設立されており、FBIや保安官事務所などにもSWATが存在する。
任務
平時は普通の制服警察官として勤務し、必要であれば召集される。ただしSWATスナイパーのような専門的な技能を有する人員は専任となる場合もある。このため日本の都道府県警察で言うと、SATではなく機動隊銃器対策部隊に性格が近い(SATは後述のHRTとSWATの中間、またはHRTに近いか)。
主な任務は立てこもり犯などの凶悪事件における突入である。軍隊系特殊部隊と違い発砲して裁判になることもあるので、警察の最終手段として存在する。かつてはローカルな事件に後手の対応が多かったが、現在では麻薬組織やテロリストといった州や国家を跨ぐような組織犯罪にも対処する必要があり、他の警察組織との繋がりと共に装備が強化され、即対応できるような組織に変化している。
ニューヨーク市警のようにSWATを持たない警察組織でも、同様の任務を担当する部隊が全土に存在する。たとえばニューヨーク市警のESU、FBIのHRTなどがそれである。ESUは警察のレスキュー隊がSWAT任務を兼ねているケースもあるが、HRTは証人の保護が第一であり、SWATよりも高い技術を要求されるため専任の人員で構成される。
装備
装備は当時の通常の警官と違いAR-15スポーターや狙撃銃に閃光弾、ガスグレネードランチャーといったものを使う。服装としては全身黒ずくめや紺色の出動服に黒の装備といった格好が一般的だが、訓練時や郊外地域での出動では迷彩服を着用する事もあり、最近では黒系よりも迷彩効果の高いUCPやマルチカムといった迷彩服を着用して活動することも増えている。
装備メーカーも黒系装備の製造は減りつつあり、コヨーテタンやレンジャーグリーンのような単色やマルチカムやデジタルパターンなどの迷彩柄が主に製造されている。黒系は受注生産という事が多く、物によっては黒系は単色のものはなく、A-TACS LEやkryptek typhon、MULTICAM BLACKといった黒系迷彩のみとなっている事もある。
PMSCsや軍隊と変わらない装備を用いていることから、SAWTのパッチといった組織を示すものが見えないと、州兵や陸軍等と区別が付かない事がある。
Swatting
スワッティングとは、いたずらやテロリズムのひとつ。本来事件や事故が起きていないにも拘わらず、虚偽の通報を行い、対象の場所や施設などに警察官やSWATを出動・派遣させるというもの。スワッティングをけしかける者を指してスワッター(Swatter)という。もちろん法律で禁止された行為、すなわち犯罪である。
虚偽通報は世界各国どこでもあるが、銃が社会に浸透しているアメリカでは、たとえとばっちりでも対応を一歩間違えれば警察部隊の銃弾が自分めがけて遠慮なく飛んでくるため、一瞬の行動が命取りという点でスワッティングは特筆される。
実際に出動することなく報告書をまとめただけで捜査を終了した小規模な事件から、銃の誤射で死人が出たり、施設の利用者を自主避難させる、特殊部隊が施設に突入するという大規模な騒ぎに至った事例も存在している。スワッターも捜査を経て裁判にかけられ、実刑判決を下された判例もある。
行政も法整備や現場を事前に確認するなど対策を進めているが、虚偽通報する側も秘匿性を上げるために公衆電話を使ったり、他人をだまし虚偽通報をそそのかすとか通信手段を乗っ取るなど手口が巧妙であることや、社会的弱者の救済や迅速な救難要請に応えるために公共性(=匿名性)の高い通報手段を残さざるを得ないという事情も相まって、いたちごっこな状況が続いている。
SWATを扱った作品
最も有名なものが1975年放送のテレビドラマ『特別狙撃隊S.W.A.T.』である。同作は2003年に映画化された他、2017年よりリブート版が放送されている。
ドラマ『特別狙撃隊S.W.A.T.』(1975年)
映画『S.W.A.T.』(2003年)
ドラマ『S.W.A.T.』(2017年)