オスカー・フォン・ロイエンタール
おすかーふぉんろいえんたーる
「遅いじゃないか、ミッターマイヤー」
cv:若本規夫(石黒監督版)、中村悠一(Die Neue These)
銀河帝国側の軍人。
pixivでは、姓である『ロイエンタール』タグのみが付けられていることが多い。
ニヒルで頭の切れる二枚目。左右の瞳の色が違う「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)」が特徴で、右が黒、左が青。
親友・ミッターマイヤーと並んで「帝国軍の双璧」と称される。乗艦はトリスタン。
その戦術戦略的センスは攻守ともに高レベルで安定しており、ミッターマイヤーやビッテンフェルトのような突出した技能を有しない代わりに高い安定性と対応能力を有している。
また白兵戦でも優れた戦士であり、ミッターマイヤーと共に多くの戦果を挙げてきた。
複雑な家庭環境で育ったため、自他ともに認める歪んだ性格の持ち主。特に後述の経験からか大の女性嫌いだが、同時に何人もの女性と関係を持つプレイボーイでもある。
これは女性から言い寄るケースがほとんどのため、ロイエンタール自身に責められるほどの非があるわけではないが、彼の命を狙ったエルフリーデにわざと自身が彼女の仇であると曝したり、合理的でありながら自傷的な行動を取るなどその内心は矛盾で満ち満ちている。
その最後はルビンスキーと地球教の姦計に嵌められ、しかもあえてその姦計に乗る形で銀河帝国に対し造反。激しい戦闘の後に部下のグリルパルツァーの裏切りによって負傷し、ミッターマイヤーを待ち侘びながら息を引き取った。
なお、死の直前に彼の元へ現れ、主君のラインハルトを侮辱した高等参事官トリューニヒトを殺害している。
ラインハルトと出会った頃には少将、元帥府開設時は中将、リップシュタット戦役後は上級大将。新帝国では帝国軍三元帥に叙せられ、統帥本部総長、新領土総督を歴任。反逆後、新領土総督の任を解かれ、元帥号も剥奪されたが、反乱が鎮圧された後、「ロイエンタールを新領土総督に任じたのは失敗だったかもしれないが、元帥に登用したのを間違いとは思わない」と考えるラインハルトによって、彼の死後直ちに元帥号は返還された。
左右の瞳の色が異なる形で誕生したロイエンタールは、夫以外の男と密通を重ねていた母親にこれは黒い瞳の愛人との子であるという強迫観念を抱かせた。
父親は官界の閉鎖性を見限って投資に専念し、20年掛けて成功して財をなした。ようやく腰を据えて嫁探しを始めた際、貧しくも美しい貴族の娘を見初め、彼女の生家を援助する形で娶ったという。しかし、年齢も価値観も離れたふたりの婚姻は、やがて妻を浪費と不貞に走らせる結果となった。
そして、生まれたのがロイエンタールである。彼女は不貞の発覚を恐れてわが子の黒い右目をナイフで抉り出そうとしたものの失敗し、ほどなく自殺。以後ロイエンタールの父は事あるごとに「お前は生まれてくるべきではなかった」と息子を罵り、かくして彼の人格は歪な形で構成されていくに至った。
冷徹かつ沈着、物事の本質を突く理論家ながら、女性に対しては自身の破滅をも顧みない自棄的な面を見せる。母親の一件のせいで強烈な女性不信を抱きながら、一方で女性と関係を持つこと自体は拒否しないという、一見矛盾する行動を見せる。
また、プライドも相当に高く、自身の能力にも絶対の自信を持っており、自身も貴族の血を引く身であるにもかかわらず、実力もなく相続によって富と権力をほしいままにしていた門閥貴族を嫌悪していた。貴族制度、ひいてはそれを育んできたゴールデンバウム王朝自体が滅びてしまえばよいと考えていたが、自分の手でそれを成そうとは考えられず、後に現王朝打倒の考えを彼に披露したラインハルトに対して大きな衝撃を受けた。以後ロイエンタールはラインハルトこそが覇者となるべき人間と考え、窮地のミッターマイヤーのために助力を求めて以来、彼に対し絶対の忠誠をもって尽くすこととなる。
しかし、忠誠心の一方、ラインハルトを凌駕したいという一見矛盾した野心を秘めていた。本来ロイエンタールは他人に対し膝を屈するようなことを進んでする人間ではなく、ロイエンタールはラインハルトに対して自らの野心を暴発させることのないよう覇者に相応しい言行を求め、銀河に平和がもたらされることでラインハルトの覇気に翳りが生じ始めると、そのあり方に内心で不満を感じているようであった。
ラインハルトの側でもロイエンタールを「自らが才能と器量で上官に相応しいことを示さなければならない」「無償の忠誠心は期待できない」と評し、たやすく御し得ない存在であることを理解していたが、ラインハルトは上下のそうした緊張感を決して嫌っていなかった。
本伝における反逆事件は形式的にはルビンスキー、地球教の思惑にのせられる形であったが、ロイエンタール自身にもラインハルトと戦いたいという野心があり、「反逆者になるのは構わないが、反逆者に仕立て上げられるのはごめんこうむる」と語っているように、姦計にのせられるくらいならいっそ自発的に乱を起こしてしまおうという気持ちもあったと思われる。
それでいて彼のラインハルトに対する忠誠心は少しも損なわれることはなく、叛逆の名目はラインハルト個人ではなくラングやオーベルシュタインの専横の排除であったし、ロイエンタールに同調したつもりでラインハルトを貶したトリューニヒトを殺害した一件がそれを証明している。
唯一女性不信の原因を打ち明けた相手であるミッターマイヤーに対する友誼は篤く、彼の竹を割ったような人柄、自分には到底為しえない正道的な生き方に惹かれていたようである。ミッターマイヤーを「気持のよい男」と評し、能力も含めて彼のことを誰よりも理解し評価していた。
沈着をもって知られるロイエンタールが感情を剥き出しにするのはたいていミッターマイヤーに関わることであり、軍議の席で、ラインハルトの権力を笠に着る形でミッターマイヤーの正論を封じたラングを痛烈に罵倒し、回廊の戦いにおけるミッターマイヤー戦死の誤報には周囲の目も憚らず動揺する姿も見せた。
神速の艦隊運用による速功に定評のあるミッターマイヤーに対して、攻守における高水準のバランスと、あらゆる状況における沈着さを評価される。智勇の均衡において”智”に重点を置いたヤン・ウェンリー、”勇”に重きを置く傾向があるラインハルトをも凌ぐといわれる希代の用兵家であり、その作戦案は時にラインハルトさえ舌を巻く。マル・アデッタの戦い、回廊の戦いにてラインハルトの傍らにあって全軍を指揮した際は、艦橋にてラインハルトと二人、天才同士にしか通じぬ会話を繰り広げた。新領土総督に任じられてからは行政官としても優れた手腕を見せ、旧同盟領を同盟政府以上の公正さをもって治め、安定と秩序をもたらした。
後にユリアン・ミンツから「(初代皇帝の不足したところを是正することができる才覚があるので)三代目辺りの皇帝にふさわしい能力を持っていた」と評価されている。
ミッターマイヤーは「俺はロイエンタールには遠く及ばぬ」と、軍人としてだけでなく、多方面に才能を発揮するロイエンタールに最大限の賛辞を送り、第二次ランテマリオにて雌雄を決した際にも「自分には信頼できる配下の提督がいたが、ロイエンタールにはそれがいなかった」とも語り、断固として自身を勝者とは認めなかった。
また、ラインハルトに対する反逆が表沙汰になった時、周囲の者がその事実をどこか納得をもって迎えたのも、ロイエンタールにはラインハルトに比肩する才能があることを周囲が認識していた証ととれる(同時にベルゲングリューンやディッタースドルフをはじめとした多くの軍人が彼の旗下に着いたのも、ロイエンタールが強く評価されていたことの証左と言える)。
裏を返せば、彼の軍事・政治両面でバランスの取れた能力は戦乱が終わった後の「平穏な時代の統治」にこそ活きるものであり、その意味でロイエンタールは生まれてくる時代を間違えた人物とも言える。
アレクサンデル・バルトハウザーのように器量も才幹も少ないが忠実で手足のように使える部下の扱いには非常に優れている一方、有力な部下を育成して副将とする能力においてはミッターマイヤー、部下の階級が上昇するほど上官の人格的影響力が増すと言われたビッテンフェルトらに劣っていた可能性がある。ロイエンタールが統帥本部総長に就任していたため麾下の艦隊に手柄を立てる機会が少なかったなどの事情を考慮しても、移籍組でないロイエンタール直属から大将以上に昇進した軍人は出ていない。ベルゲングリューンはキルヒアイスの部下であり、グリルパルツァーとクナップシュタインはレンネンカンプの部下である。当時の大将級の中でもトップクラスの3人を付属させられたのは副将不足を懸念されたものと思われる。
これはロイエンタールがあまりに有能過ぎて何事も一人で出来る為に参謀や配下の提督に補佐される事が少なく、自然と彼の部下たちはロイエンタールの命令に従うだけの存在となり、自立性を失っていったからとも考えられる。(同じことは主君であるラインハルト自身にも言える)
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