概要
『宇宙戦艦ヤマト2202』で初登場する、地球連邦防衛軍の新生航宙艦隊主力戦艦で、オリジナル版における主力戦艦のリメイク版。艦級名はドレッドノートで定められたと同時に、前衛航宙艦という名称も追記されている。
正式名称を『量産型高能力武装運用システムD1 ドレッドノート級前衛航宙艦』(※)という。
ガミラスのガイデロール級航宙戦艦を設計の基礎としているとされ、なおかつヤマトの戦闘データなどを反映したことから、姿形は異なれどもヤマトの簡易版とも言うべき戦闘艦となっている。
コスモリバースシステムによる副作用によって生まれた、通常空間の10倍の時間が流れる特殊空間「時間断層」の力を用いて、早期の開発・生産を実現。
劇中では映っている限りでも最低でも数百隻の同型艦が登場している。
なお、『3199』において、アンドロメダ級は艦種が「前衛武装宇宙艦」から「宇宙戦艦」に変更されているが、ドレッドノート級に関しては今のところ不明。
リデザインを担当したのはヤマトを始めとする地球側主要メカも担当している玉盛順一朗。ただし、『2202』でのカラーリングやマーキングは別の人である。
※ 「ドレッドノート級前衛航宙艦」と称されたのは初登場となる第二章パンフレットだけで、他では専ら「前衛航宙艦ドレッドノート」(級ではない)か「主力戦艦ドレッドノート級」と称されている。
デザイン
基本的な要素は旧作を踏襲しているが、細部の造形はPSゲーム版の主力戦艦級に非常に近い。艦橋部が旧作アニメ版に比べて前後に厚く(ちょうど全長の5分の1ほどにもなる)、その分前部主砲塔などが前にずれている。なので、胴体部分の基本バランスはオリジナルの側面図と全く同じなのだが、パーツが前にずれた分やや艦首側が短い印象を受けるようになっている(デザインした玉盛氏自身「ヤマトやアンドロメダと比較してずんぐり短め」と述べている)。
カラーバリエーション
量産艦であるため多数のカラーバリエーションが存在する。
- 基本色
青みがかった灰色の艦体にクリーム色のアクセント。序盤にて初登場した14隻やエンケラドゥス守備隊がこの色。
- 山南艦隊
『2202』第17話~第20話にて登場。基本色とほぼ同じだが、艦後部のクリーム色部分が黒になっている。
- 火星防衛戦線仕様(火星迷彩)
『2202』第21話に登場する赤い色が特徴の艦(『3199』の解説にて火星迷彩と明言された)。エンケラドゥス守備隊の「E○○」と同じように火星(マーズ)を示すのだろう「M○○」とマーキングされており、明らかに火星の駐留艦隊の仕様と思われるのだが、火星に陣取る艦隊の中には姿が見えず、何故か地球直送のアンドロメダ改にブースターとしてくっついている。
- 地球防衛戦線仕様
『2202』において、白色彗星が土星圏を突破して以降、時間断層で大量生産されたタイプ。
艦体色が紺色になり、艦首周り等のクリーム色だった部分が赤色に変更され、艦橋の窓がオレンジ色になっている(復活篇のヤマトのカラーリングか、同じく復活篇に登場した主力戦艦のカラーリングをイメージしたと推測される)。
第21話にて火星戦線に投入されたほか、アンドロメダブラックにブースターとして接続されたものも存在。第21話以降は基本的にこの色のみ。
- プロメテウス
時間断層制御艦。白と茶色のシマウマ模様という何処ぞの深海救難艇のような色。
艦橋が拡張されているという設定で、実際内部のデザインも異なる(後述)のだが、基本的にモデル流用なので外寸は変わっていない(代わりに窓枠を細分化して数を増やすことで誤魔化している)。
- エピメテウス
プロメテウスと同じく時間断層制御艦。劇中ではアングルの都合でわかりにくいが、黒い艦体にお経が書かれるという奇抜なカラーリングとなっており、二次創作としてならともかく本編に登場するとなるとかなり好みが分かれる存在。実は本作副監督の小林誠が自身の連載で作成した模型のデザイン流用(つまり本当に二次創作からの逆輸入)。
- 火星迷彩仕様(3199)
『REBEL3199』で登場するドレッドノート級。2202版の火星防衛戦線仕様とは異なり艦首や艦橋上部、主砲砲身が黒色になっており、艦後部のアクセントは白となっている。後述のサービス・モードで運用されているため、『2202』に登場したドレッドノート級に比べマーキングが少ない。
ガミラス戦争、ガトランティス戦役において、火星軌道は重要な防衛線として位置づけられ(特に後者では「絶対防衛線」とされた)、火星迷彩はこの防衛線を守る主要な艦艇に採用、時期により若干の差違こそあれ2207年現在の宇宙海軍でも引き継がれているとされている。
マーキング
本作のメカは前作で行っていたディテールアップ作画(寄りの構図でメカのディテールが緻密になるアレ)を廃止した関係でテクスチャマーキングが多めなのだが、本艦はとりわけその個数が多い。
舷側に軍のエンブレムがでかでかと掲げられているだけでなく、上面と艦底にも大きなエンブレム、さらに小さなエンブレムと艦名表記が艦体のそこかしこに大量に置かれている。その数なんと18個、しかもエンブレムはバリエーションがなく全部同じである。
流石に多すぎるので絵面がうるさいと難色を示す人もそこそこいた。もっとも作品後半になるともっとすごいのが出てくるようになったが。
ちなみに『2205』での玉盛氏の独自解釈では、この過剰マーキング(とクリーム色の一部アクセント)は波動砲艦隊の戦力誇示のためのフォーマル・ドレスアップということになっている(なので軍が路線変更した『2205』では控えめな「サービス・モード」に変更)。
後にアンドロメダ級アルフェラッツにて同様の設定解説があり、公式化された模様。
性能
- 全長:250 m
- 全幅:62.3 m
- 全高:99.0 m
- 機関
- 主機:次元波動エンジン×1基
- 補機:ケルビンインパルスエンジン×2基
- 乗員:約150名
- 武装
- 次元波動爆縮放射機×1門(艦首)
- 30.5㎝三連装収束圧縮型衝撃波砲塔×3基
- 六連装大型エネルギー砲×1基(司令塔頭頂部)
- 四連装対艦グレネード投射機×2基(前甲板両側)
- 亜空間魚雷発射機×4基(艦首両舷)
- 小型魚雷発射管×8門(艦首両舷)
- ミサイル発射管×8門(艦底)
- 短魚雷発射管×12門(両舷)
- 多連装ミサイル発射機×16基(両舷)
- 司令塔防護ショックフィールド砲×3基(司令塔前部および基部)
- 近接戦闘用六連装側方光線投射砲×2基(司令塔基部)
- 対空パルスレーザー砲塔×4基(司令塔および基部)
- 拡散型対空パルスレーザー砲塔×3基(司令塔基部後方)
- 対空ミサイルランチャー(前甲板)
- 主な同型艦
- ドレッドノート
- デヴァステーション
- ダンカン
- ドミニオン
- ディアデム
- ドレーク
- デヴォンシャー
- ダートマス
- ダイアナ
- ダナイー
- ダイドー
- ドーリス
- ダブリン
- ダイアモンド
上記艦名は第5話に登場した14隻のもので、『D』で始まる英国風の艦名で占められる。これ以降、推定数千隻が就役しているが艦名は不詳。土星沖海戦時には、エンケラドゥス守備隊のドレッドノート級をナンバーで呼称している。
武装
武装は拡散モードとの切り替え可能な拡散波動砲1門は勿論のこと、新開発された収束圧縮型衝撃波砲を30.5㎝口径9門装備する他、数多くの兵器をその艦体に装備している為、見た目以上に重武装な艦である。
また、主砲が小口径化しているのは、エネルギージェネレーターの大型化と、砲身の中間に設けられた陽電子収束器によって、破壊力と連射力を向上させているためとされる(アンドロメダ級も同様)。
波動砲の構造
オリジナル版の主力戦艦の時から、波動砲口内に用途不明の板状のパーツが存在したが、これに関する公式設定は存在しなかった。メディアによって(公式・非公式含め)は、この仕切り板の存在によって、波動砲を2門扱いとする場合も存在していた(なお劇中で実際に2門に描かれたこともある)。ファンの間では、謎カーボンならぬ、波動砲にすら耐えられる謎金属と呼ばれていた。
本作では、この波動砲口内の仕切り版らしき構造物は、拡散波動砲を放つための補助装備「スプリッター(エネルギー噴流分割整流板)」と設定された。
波動砲に用いられるエネルギーの薬室が二つあり、それを直列配置するというドレッドノート級独自のシステムで配している。これは拡散の際に右旋波と左旋波のエネルギー流を必要とする(つまり普通に設計すれば二門以上の砲口が必要になる)拡散波動砲を、単装の波動砲で使用するための構造である。
どういう発射システムになっているかというと、拡散波動砲を撃つ際には、まず2つの薬室からそれぞれ右・左旋波のエネルギーを直列射出する。すると砲口内のスプリッターによって同時に射出されたエネルギーが左右の旋波に分離される。こうして単装の砲門を疑似的な連装砲として用い、拡散波動砲エネルギー噴流として放出する仕組みになっている。また収束モードで撃つ際には、一つの薬室を用いて右旋波のエネルギーのみを撃ち出すとされている。
設定としてはアンドロメダ級に比して規模が限られるドレッドノート級に拡散波動砲を搭載するため考案されたものと解釈できるが、この発射システムはのちにそのアンドロメダ級に逆輸入されることとなった。
有人型と無人型
『2202』にて一部スタッフが「終盤に出てきたドレッドノート級は無人艦」と発言したため、アンドロメダブラックのような無人仕様が存在するという話が出てきた。
『2202』時点では公式での明言がなく設定として曖昧だったが、『2205』で公式設定として確立され、有人型と無人型が存在していることになった。
経歴
宇宙戦艦ヤマト2202
- 第二章
時間断層工場にて、建造中或いは完成済みらしきドレッドノート級が存在していた。
木星圏で、就役した14隻が、アンドロメダ級5隻と共に艦隊を組んで訓練に参加。マルチ隊形を組み、小惑星帯を漂う岩石や小惑星を標的として砲撃訓練を行っていた。その後のヤマト叛乱の際には旗艦アンドロメダのみの追跡となったため、ドレッドノート級は4隻のアンドロメダ級と待機する事となった。
- 第五章
対ガトランティス戦に備え大量の同型艦が建造され、総戦力数は作中明らかになっていない。ガトランティス軍の侵攻に備えていた中、土星圏を警備していたエンケラドゥス守備隊が、ガトランティス軍第七機動艦隊の先頭部隊と接触する。
エンケラドゥス守備隊30隻には、E23とE24+艦番号不詳の3隻のドレッドノート級が配備されていたが、万単位という規模で迫る第七機動艦隊を相手に苦戦を余儀なくされた。両翼から挟撃され集中砲火を受ける中に自滅型攻撃艦イーターⅠの特攻で守備隊は半数以下に撃ち減らされ壊滅。ドレッドノート級はE23がその餌食となって轟沈している。そこに山南率いる本隊が駆けつけたことで辛うじて旗艦と数隻の金剛型は生き延びた。
拡散波動砲の一斉射で第七機動艦隊に大損害を加えた後、アンドロメダ級の重力子スプレッドという強力な盾もあって、敵のインフェルノ・カノーネを防ぎ切る。直後、土星リング内から、別働隊のドレッドノート級が拡散波動砲を浴びせて、第七機動艦隊にダメージを蓄積させた。
その後は、両軍共に入り乱れ接触し合うほどの至近距離戦で多数のドレッドノート級が撃破されるものの、同様にカラクルム級を沈めていった。数で圧倒するはずの第七機動艦隊は、予想外の戦力数と拡散波動砲の連続攻撃によって苦戦を続けた。さらに、増援として後続のドレッドノート級がワープアウトし、本隊に加勢している。
意を決したズォーダーの命により、ガトランティスは彗星そのものを使って地球艦隊を押し潰そうと迫る。地球艦隊は山南の指示を受けてマルチ隊形を形成し、収束波動砲の発射に備えた。さらに、アンドロメダ級の重力子スプレッドの重力フィールドで、全艦の波動砲を集約させる戦法を取る。
いざ、収束波動砲を一斉掃射し、重力子フィールドで一大集約された波動砲は、白色彗星に直撃するものの、内部を破壊するに至らずガス帯を取り払うのみに終わった。
姿を見せた都市帝国を殲滅すべく第二射を放ったが、都市帝国の異常なまでの重力技術で射線を外されて無効化される。そればかりか、計測不能な重力傾斜によって、都市帝国へ向かって引きずり込まれる事態となる。
当然、地球艦隊は離脱を試みたものの、都市帝国内部に待機していた多数のミサイル戦艦から放たれた破滅ミサイルと超重力により、アンドロメダ級空母アポロノームとともに多くのドレッドノート級が失われることとなった。
この時点で離脱できたドレッドノート級は見当たらないが、第6章では山南艦隊の紋章を付けたドレッドノート級が登場、どうやら少なくとも10隻以上は脱出できていた艦があった模様。
なお、この土星沖海戦に投入された山南艦隊所属のドレッドノート級の数は不明であるが、波動砲発射時に画面上だと一列最低28隻×両側合わせて20列であることから、560隻以上はいると予想される。
- 第六章
その後六章では、盾を装備した数十隻のゼルグート級と共に拡散波動砲を放ったり、銀河と協力することで波動防壁により破滅ミサイルを防ぎきったりするなどのシーンがあったが、アンドロメダ改の両舷に接続された二隻は、アンドロメダの影に隠れながらも推力をカバーすることでアンドロメダが主砲を十二分にバラ撒けるようにしたり、アンドロメダと共にショックカノンの乱射で敵艦を葬ったりなど最後にはイーターⅠに貫かれたが健闘しヤマト救出を大きく手助けした。
- 第七章
第26話の冒頭にて、地球の海の上を暁に照らされながら、大破したカラクルム級をワイヤーで曳航しながら航行するシーンと、時間断層工場から、次々と吐き出されてくるシーンがある。どちらも地球防衛戦線仕様の艦艇である。また、ヤマトが高次元から生還した時には、時間断層制御艦プロメテウスとエピメテウスが大破しているヤマトに近づこうとしている。
宇宙戦艦ヤマト2205
劇中には未登場だが、派生艦が登場しており、次回作での解説も合わせるとドレッドノート級の現事情がなんとなく把握できる。
時間断層の廃棄に伴い、軍は波動砲艦隊構想を凍結。しかし上記の通り戦後~時間断層廃棄までの半年間にも時間断層工場では大量の同型艦が作られており、時間断層無き後の地球の戦力を支える……ことはできなかった。
なぜならガトランティス戦争末期以降に建造された艦はほぼ全てが時間断層のAIによって制御される無人艦であり、時間断層廃棄によってAIも失われたことで運用できなくなってしまったのである。
運用可能にするには有人化改修が必要になるが、時間断層の生産力を失った地球にそれだけ大量の艦をまとめて改修できるリソースがあるわけも無く、結局地球は初期に建造された有人艦を優先して修理・再配備していった。
大量に建造されたドレッドノート級は一転して無用の長物の烙印を押されたわけである。
あまりにも持て余したのか、同型艦の一部を小改造のうえ移民船としてガミラスに供与するほど。仮にも主力艦にこの扱いである。
とはいえただ持て余すだけでは終わらせず、上記の移民船を始め、ドレッドノート級の艦体を流用した派生艦が作られるようになった。
この時期、軍は「地球の規模に見合った軍備の最適化」を志向し、汎用性の高い艦艇の開発に着手。未完成だった無人型ドレッドノート級の艦体を流用した新型艦を建造した。第65護衛隊に配備された補給母艦アスカや戦闘空母ヒュウガはその成果である。
ヤマトよ永遠に REBEL3199
『2205』から2年後の西暦2207年においても当然続投。なお、先述の「アスカ」「ヒュウガ」は正式に艦級化され、複数の同型艦を持つこととなった(それらについてはそれぞれの当該記事を参照)。
第一章では第28護衛隊所属艦として火星迷彩仕様の艦が登場。「オペレーションDAD」に従い、旗艦アルデバランとヒュウガとともに突如飛来したグランドリバースの迎撃に向かう。
余談
因みにアンドロメダ級がオリジナルに比して100m以上も大型化したのに対して、ドレッドノート級が前と変わらぬ250mという設定に収まった理由は
「アンドロメダと同様に大型化してしまうと、元々ドレッドノートの艦首砲口の方がアンドロメダよりも大きいため、寧ろドレッドノートの方が強く見えてしまう恐れがあるから」
とのことである。
本来はヤマトと同じ333mであり、その設定で決定稿が仕上げられ、3Dモデルまで作られていた(というよりモデルを3Dプリントしてアンドロメダと並べた結果上記のようになった)。
なので各部の形状はむしろ333mの方がしっくりくるサイズになっている。特に主砲のサイズはアンドロメダと同じ、艦橋のサイズはヤマトとほぼ同じとなる。また、艦橋内は『宇宙戦艦ヤマト2』でのデザインをアレンジしたものが用意されていたが、全長縮小に伴い艦橋も小さくなってしまったのでアンドロメダのものが流用された。本来のデザインはカラーバリエーションであるプロメテウスに転用されている。『2205』ではアスカ・ヒュウガのデザインに伴い、250m設定で新たに艦橋内デザインが書き起こされた。
関連項目
宇宙戦艦ヤマト2202 アンドロメダ(宇宙戦艦ヤマト) 前衛武装宇宙艦 宇宙戦艦 主力戦艦
竜とそばかすの姫/本作のラストにて、複数の巨大なクジラ型の物体が、光の中から出てくるシーンが存在し、土星リングからの強襲シーンを彷彿とさせる。