怪彗星ツイフォン
かいすいせいついふぉん
『ウルトラマン』第25話。
1967年1月1日放送。
監督:飯島敏宏
脚本:若槻文三
元日に放送されたとあって第8話「怪獣無法地帯」同様怪獣がたくさん登場するお祭り的な回である。
本来のサブタイトルの表記は「怪彗星ツイフオン」表記となっているが、劇中での呼称は「ツイフォン」であるため記事中では後者の表記とする。
地球に接近する彗星ツイフォン。一時は衝突の危険性があるとまで思われたが、岩本博士が再計算したところほんのわずかに地球の軌道を逸れることが判明した。
しかしツイフォンからの宇宙線により、水爆が爆発する可能性があることが判明する。
世界各国が保有する全ての水爆の起動装置が解除されたが、オホーツク海に廃棄された水爆が行方不明になっていることが明らかになった。
ツイフォンが去った翌日、科学特捜隊はイデ隊員がこんなこともあろうかと開発した水爆探知機を携えて反応があった日本アルプスを調査する。
そこへ冷凍怪獣ギガスが現れる。
同時に空にはツイフォンから飛来したと思われる彗星怪獣ドラコの姿が。
2体が争っている間に科特隊は水爆を探す。
やがて水爆探知機が示す方向からどくろ怪獣レッドキングが現れる。なんと水爆はレッドキングが飲み込んでいた。
3体の怪獣は争い、ドラコはギガスとレッドキングに痛めつけられ、飛んで逃げようとしたが掴まれ羽をむしられ、エビ固めを受け倒された。
うかつに攻撃するとレッドキングが飲みこんだ水爆が起爆する恐れがある。ハヤタは単身レッドキングを引き付け、イデとアラシは残ったギガスを追撃。
レッドキングに打ちのめされたギガスを捕捉したイデとアラシはジェットビートルからイデ隊員発明の新兵器「強力乾燥ミサイル」を投下。ギガスは木っ端みじんにはじけ飛んだ。
ハヤタはウルトラマンに変身してレッドキングに応戦する。
水爆が誘爆する恐れがあるためスペシウム光線は使えない。手出しできないウルトラマンはレッドキングに苦戦を強いられるが、隙を突いてウルトラエアキャッチで空中に静止させる。
八つ裂き光輪を分裂させてレッドキングを三等分にすると、水爆が入っている頭部を抱えて宇宙へ飛び去って行った。
その頃科特隊本部では岩本博士が遠い未来にツイフォンが確実に地球に衝突するという計算結果を算出する。しかしその時代にはツイフォンを回避する技術が確立しているはずだと未来へ希望を託した。
東宝の特撮映画『妖星ゴラス』を思わせる惑星衝突モノのエピソードだが、実際に第3クールへの要望として「『妖星ゴラス』的なもの」という項目があった。
準備稿ではレッドキングではなくゴルゴスが登場していたが、当初より「あるいはレッドキング」と但し書きがありこの時点でレッドキングの再登場も検討されていた様子。
楳図かずお版では舞台が日本ではなくヒマラヤ山脈になっており、怪獣たちの勝敗や戦闘経過、ウルトラマンがレッドキングを倒した方法が異なる。
実は決定稿では決戦の舞台がヒマラヤ山脈になっており、楳図版はこの描写に則って描かれたものと思われる。
さらに準備稿段階では決戦の舞台はチベットとされていた。
決定稿はヒマラヤ山脈で残った水爆のひとつが爆発し、その影響でギガスが現れるという描写もあったが、最終稿で削除された。
この最終稿には金城哲夫の名前も記されており、金城が最後の手直しを行ったことが分かる。放送でクレジットされていないのはもともと手直しの分量が少なかった、本話がウルトラシリーズの初担当となった若槻へ配慮したためといわれている。
ツイフォンの接近を地下鉄の入り口から見守る一般市民はインテリ風の男が『ウルトラセブン』で通信隊員(ウエノ隊員)を演じた勝部義夫、マダム風の女が毛利幸子。
そして宇宙服を着こんだ少年ター坊は『快獣ブースカ』の屯田大作役の宮本智弘、ター坊の父親役はゴジラのスーツアクターとしておなじみ中島春雄である。
日本アルプスのシーンは蓼科高原で撮影された。飯島監督によると寒くてバッテリーの電圧が上がらず、カメラがなかなか回らなかったそうだ。
日本アルプスの雄大な景色を眺めるハヤタが「地球ってのは本当に美しい星なんだ」と漏らす。飯島監督は「ハヤタおよび千束北男(=飯島)の思いを込めた台詞」と語っている。
ホシノ・イサムは演者の津沢彰秀が並行撮影していた第24話の撮影後によみうりランドで骨折、そのまま降板となってしまったため本話が最後の登場になった。津沢の証言では「2ヶ月入院してちょうど2月に中学受験があった」とあり、撮影は1966年11月~12月ごろだったと思われる。