データ
概要
『ウルトラマンマックス』で初登場した宇宙人。
昆虫のような頭部に鋏のような形状の短剣が付いた両腕と、バルタン星人を意識したデザインになっている(後に本当にバルタン星人が登場することになるが、それはまた別のお話)。
高速宇宙人という肩書通り超スピードで移動することが可能で、それによって残像を作り出し、それに惑わされた相手を短剣の付いた両腕から発射する怪光線や反重力光線で苦しめる分身殺法を得意としている。
高速移動しながら相手を円で囲むように動いて包囲し攻撃を仕掛ける戦法を別個体でも使用していることから恐らくこれが基本的な戦闘スタイル(対策を知っているマックスでも攻撃を食らうことがある反面毎回破られているので一長一短か)。ただしUGFでグレートと戦った際には回避以外に全く高速移動を用いなかった(ゴーデス細胞に侵されたマックスやヘルベロスも居たため、油断していたのだろうか)
公式サイトによれば高速移動のスピードは時速170km(普通車のスピードメーターに収まる速さなので速いが遅い。作中で追い抜いたダッシュアルファが時速750kmなのでファンの間では誤植説がある}。
マックスに登場した個体は腕の短剣を伸縮させたり、両腕からバリアーや妨害電波を発生させていたが以降の個体は使用しておらず、剣は伸ばしたままとなっている。
擬態能力を持ち合わせているうえ、この高速移動能力は人間に変身している状態でも使用可能で、天井にぶら下がったり、壁面の走行だってお手の物。
また、同族意識の極めて強い(若しくは種族としてのプライドが高かったり非常に執念深い)種族のようであり、本編終了後も同胞の敵討ちを目論む個体が度々ウルトラマンマックスに襲撃を仕掛けるという事案が発生している(後述)。
『ウルトラマンマックス』に最初に登場した宇宙人であり、それもあってかカプセルソフビコレクションの販売やハイパーホビー誌限定ソフビがカラバリのイフとのセットで通販(後に一般発売)されるなど立体化にも恵まれた。
最強最速を謳うマックスをスピードで翻弄した事から、最強最速の座を真っ先に脅かした敵と評価するファンもいる。
しかし、そうは言っても序盤に1度登場した宇宙人でしかなかったのだが、後述する事情から再登場を続け、TV作品、劇場作品、ネット作品に登場し、『ウルトラマンタイガ』に登場した個体以外はすべてマックス絡みで必ず出て戦闘まで行っており、現在は放送当時以上にマックスの代表的なキャラクターの1体として扱われるようになっている。
…逆に言えば、ほとんどマックスとセット扱いになっていて、作中描写では単体での強豪扱いはあまりされない(高速移動は未だに強みではあるが初代とほぼ同じ流れで対応されることが多く、苦戦させたときは何らかの策を用意してる傾向にある)ことから、Xのクワイラが復讐だけにこだわったのもあってファンからはライバルよりもストーカー的な扱いがされ始めている。
『ウルトラマンマックス』
「地球は美しい星だ。だから我々スラン星人の第二の故郷にすることを決めたのだ。
この星の人間は大地を、空を汚し続ける。星の悲鳴が聞こえないのか?」
第4話「無限の侵略者」に登場。
『ウルトラマンマックス』本編に初めて登場した宇宙人で、地球人の環境破壊を口実に自分たちが支配したほうがいいという理由から地球侵略を企てた。しかしいざ行動を開始するとバンバン光線を打ちまくって委細構わず暴れ回るなど、実際はただ口実が有ればよかったのかと思われる。
夜の野球スタジアムに円盤を同化させて潜伏し、スタジアムの警備員に変身。調査にやって着たDASHのトウマ・カイトとコイシカワ・ミズキ両隊員を襲撃して捕獲し、円盤による攻撃を開始しようとした。
スタジアムと同化した宇宙船は歴代宇宙人の中でもトップクラスで大きく、スラン星人本人の頭の発光体を模した部分からは紫色のレーザー光線を放つ。しかし、この部分が弱点となっており、ダッシュマザーにあっさりと撃墜されてしまった。何という見掛け倒し…。
宇宙船内でカイトとミズキに倒され、円盤がDASHの攻撃で破壊されると巨大化。上記の能力でウルトラマンマックスを苦しめたが、マクシウムソードで分身を切り裂かれ、残った本体も背後に現れたところにマクシウムカノンを受け爆死した。
その後も地球に出現していたようで、第25話の新聞記事によれば東京タワー近くに現れて破壊活動を行なったらしい。
『決戦!ウルトラ10勇士!!』
『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』にもエタルダミーとして登場。映像作品の出演は10年ぶり、しかもマックスオリジナル怪獣初の再登場となる(正確にいうと『ウルトラマン列伝』第93話にゲスト出演したタイニーバルタンの方が先と言えば先だが、完全オリジナルはコイツが初)。
時空城の第二階層にてマックスと激突。しかし分身能力で翻弄するも、あの時と同じようにすぐにマクシウムソードに分身を斬られ、ギャラクシーソード(!)であっという間に真っ二つにされてしまった。
登場の経緯
他のウルトラマンに関係する敵・エタルダミーがラスボスや因縁の相手、合体怪獣という中で、物語の超序盤に出現した宇宙人と、かなり浮いたチョイスとなっている。
実際、他の敵はウルトラマンと互角に戦ったのに対して、こいつは割とあっさり倒されていた。
どうしてスラン星人が選ばれたのかというと、『マックス』オリジナル怪獣の着ぐるみがほとんど残っていない、残っているものも、(アトラク用としてはともかく)映像作品では使えないほど劣化しているか、劣化していなくても宇宙化猫タマ・ミケ・クロのように敵役として適さないものしか使えない状態であったのである。
スタッフが悩みに悩んだ末、スラン星人の着ぐるみが保存状態の良かったことを運よく思い出し、やっと見つけ出したのである。
『10勇士』のパンフレットにて坂本浩一監督はゼットンが、脚本家の中野貴雄はツイートにてラゴラスエヴォが候補として上がっていたことを語っており、それぞれ「平成集合作品にてマックスオリジナル怪獣でない昭和怪獣は適さない」「着ぐるみの劣化が激しかったため」という理由で没になったことが明かされている。
もし着ぐるみの劣化がなければラゴラスエヴォやギガバーサークが選ばれていたかもしれない。
そういう意味ではとてもラッキーである。マックスにとっても。
『マックス』以外も、宿敵となるオリジナル怪獣を選んだのは想像以上に苦行だったとのこと。
例えば平成三部作(当然ながら当時の着ぐるみは現存しているものもあるが劣化が激しい)は『ギンガ』登場のファイブキングと戦ったが、コイツにはそれぞれのウルトラマンが戦った怪獣が丁度良くミックスされており、因縁たっぷりで強敵にも相応しい相手だっただろう。
和解がテーマで決まった敵が出しにくく、殆どの着ぐるみが改造されたこともあって同映画でエタルダミーが存在しなかったコスモス(一応ステージではネオバルタンが登場している)は代わりにアレーナの救出シーンがあてがわれており、これはこれでコスモスの「優しさ」が上手く表現できただろう。
作中の都合でオリジナル怪獣の選択肢が少なかったり着ぐるみが残っていなかったりして悪のウルトラマン系列との対決になったネクサス、ゼロ、ギンガにも見て取れる。
強敵エンペラ星人が残っていたメビウスは幸せ者である。
また、今作を切っ掛けにスラン星人の登場回が『ウルトラマン列伝』でも再放送され、前述のように限定販売だったソフビ人形が一般販売される等、ある程度認知度があったという商業的な理由も存在する。
数少ない使用可能状態な『マックス』の悪役と言う事もあって、後述の通り『X』でもサプライズ登場を果たしている。
『ウルトラマンX』
「地球征服などには興味ありませんね。私の狙いは、あくまでもウルトラマンマックスのみ!」
第8話「狙われたX」に、「スラン星人クワイラ」という個体が登場。正体を隠し、「当麻博士」と名乗って、自身の目的のためにXioに協力するふりをする。
初代とは異なり、慇懃無礼な口調が特徴。正体がばれた際には開き直って「大空大地の父親のことを知った時、『これだ!使える!』って思いました!」「案の定、コロリと私の事を信じましたからねえ!」と嘲笑するなど、途轍もなく悪辣な性格。
その一方で地球侵略に興味はなく、目的は同胞の仇であるマックスを倒すことのみ。
格上のマックスに勝つために非常に周到な計画を準備したり、作戦のためとはいえ当麻博士として大地の父のことを語って大地にやる気を出させるなど、綿密な計画を立てて戦う頭脳的な面や、同族を思いやったり、人間の感情を理解している情緒的な面も見られた。同族のかたき討ちを最後まで望んでいたあたり、案外友人としてはいい奴だったのかもしれない。
光線銃も難なく躱したり、等身大の格闘でアスナ隊員を圧倒するなど戦闘力も高い。
自身の所持するゼットンのスパークドールズで街を襲い、一度はウルトラマンエックスを圧倒した上で撤退。大地達にパワーアップが必要だという危機感を植え付けさせる。
そしてトウマ・カイトの姿に化け、「当麻博士」と名乗ってXioに海外から来た青年科学者として協力を装って接触(服装は初代ゼットン星人が化けた岩本博士を髣髴とさせる黒いスーツ)。
大地の父・鷹志の研究仲間だったと詐称し、自分の所持しているゼットンのスパークドールズを研究のために持ってきたと偽りながら、大地にうまくやる気を出させてラボチームを騙し、ゼットンアーマーを開発させる。
その上で再びゼットンを出現させ、大地がゼットンに勝つために装着したゼットンアーマーに仕込んでいた悪性プログラムによってウルトラマンエックスをも操る。
現れたマックスに正体を明かされてしまうも、マックスを、出現したゼットン・自身・エックスも含めた3人がかりで追い詰めた。
だが、マックスに止めを刺そうとしたとき、エックスとユナイトしていた大空大地の強引なハッキングでゼットンアーマーの洗脳が解除されてしまい、意識を取り戻したエックスがマックスに加勢したことで2対2の戦闘になる。
3度目となる分身による包囲でマックスを惑わすも、こちらも3度目となるマクシウムソードで分身を消され、初代同様に背後を取る動きも読まれ、最後は予め地中に潜ませておいたマクシウムソードで逆袈裟に斬られて大ダメージを負ってぶっ倒れたところをギャラクシーカノンを浴びて木っ端微塵に粉砕された。
補足
ダンカンと並び本物のウルトラ戦士を操った数少ない“普通の”ウルトラ怪獣となった(ラスボス級も含めればウルトラマンベリアルやダークルギエルもいる)。
また、「過去のウルトラマンの変身者に化けて防衛チームに協力するふりをする」という手法はアンチラ星人と同じである。
なお、クワイラの存在は予告編や雑誌などの先出し情報でも一切伏せられており、OPでも「高速宇宙人クワイラ」とだけ記述され、スラン星人であることは隠されているなど、シークレットのような扱いを受けていた(ゼロダークネスに近く、後に登場したマーキンド星人も似たような扱いであった)。
ちなみにXオリジナル怪獣と派生怪獣を除けば、『ウルトラマンX』に敵役として登場した初の平成ウルトラ怪獣(宇宙人)である(味方として登場しているキャラを含めれば、ファントン星人グルマンに続き2人目)。
着ぐるみは上記の劇場版で使用されたものの流用だと思われる。
名前の由来は中国語で「速さ」を意味する「快(クワイ)」から付けられている。
『ウルトラマンタイガ』
第23話「激突!ウルトラビッグマッチ!」に登場。
ザラブ星人、ゴドラ星人と共にヴィラン・ギルドの障害となるウルトラマン達を排除しようと画策し、チブル星人マブゼに協力する。
孫の手で背中を掻いていたり、ウルトラマンの戦闘が始まるとスマートフォンのカメラで様子を撮影していたりと、妙に人間臭い部分がある。
ザラブとゴドラの喧嘩を止めたりマブゼから作業を指示されたりとやや苦労人気味。
最終的にはウルトラマントレギアに陽動されたニセウルトラマンベリアルに他の3人共々ビルごと叩き潰されるという最期を遂げた。
ちなみにザラブ星人、ゴドラ星人とはそれぞれ「ウルトラマンもしくはその変身者に化けた」「ベリアルと何らかの接点がある(ザラブ、ゴドラはベリアルに倒され、スランは上述した様に共にエタルダミーとして利用された)」という共通点がある。
『タイガ』第23話の脚本を担当した皐月彩は、本話のスラン星人を「中間管理職」とキャラ付けしており、『ウルトラ怪獣散歩』っぽいノリであったと述べている。
『大いなる陰謀』
「貴様に打ち込んだのは、宇宙の悪魔『ゴーデス細胞』だ。やがてその体を醜い怪獣の姿に変えるだろう…。そしてお前は、孵化したマガオロチにエネルギーを供給し続けるのだ…!」
episode1に登場。
惑星ミカリトを調査中にヘルベロスと戦うマックスとウルトラマンリブットを奇襲と高速移動で翻弄し、マックスにゴーデス細胞を植え付けた上にマガオロチの卵の養分にした。
地味に攻撃を受けて怯んでいたリブットを無視してマックスにゴーデス細胞を打ち込んでいる辺り、この個体もクワイラと同様にマックスには浅からぬ恨みを抱いている様子。
しかし、光の国の分析によると一連の行動は「スラン星人の計画にしては規模が大きすぎる」とのこと。実際、魔王獣の卵やゴーデス細胞など、どれも個人レベルで扱うには荷が重すぎる代物で、それこそ魔王獣関連に至ってはあらかじめ用意された道具を用いなければ入手することすら困難なはずであり、(ゴーデス細胞はその生命力を踏まえると宇宙ではごくありふれた物な可能性もあるが)このことから背後で何者かが暗躍している可能性があるが…?
episode3にてマックスの救出に現れたリブット達を妨害しウルトラマングレートと格闘戦を繰り広げるも、重い一撃を主体とするグレート相手には終始圧倒され、最後はバーニングプラズマを高速移動でかわしきれずに撃破された。この時点ではマガオロチやゴーデス細胞などの手駒が全てパワード、リブットらに対処されていたこともあり、グレート相手には肉弾戦の一辺倒であったほか、焦って高速移動の分身を作ったのにも関わらず的確にバーニングプラズマを当ててくるグレートと対戦したのが彼の運の尽きであろう。(一応このスラン星人を擁護するとepisode1にてマクシウムカノンを完全に避けているので、歴代の個体より鈍足だった訳ではないことは留意したい)
…かと思いきや生きており、アブソリュートタルタロスがマガオロチの卵やゴーデス細胞を与えていたことが判明。もう一度チャンスを与えてくれるよう願うも役立たずとみなされ、光線を喰らって処刑された。
タルタロスとの会話では「助けられた恩返し」と発言しており、光線が直撃した後の爆発に乗じて助けられていた。
…と、単にそう言う意味かと思われていたが、続く「第2章」でタルタロスが時を遡って様々な時代で起きたウルトラマンが関係する事件に干渉し、闇の力を手に入れる前のベリアルを始め、あらゆる時間軸からウルトラ戦士の敵対者達を召集している事実が判明。となれば上述の台詞も別の解釈をする事ができ、マガオロチを利用していたこのスラン星人はタルタロスの干渉によって別の時代から連れてこられた(つまり『マックス』や『X』、『タイガ』で登場したいずれか)個体で、地球でウルトラマンに倒される直前に救われ、本来の運命から外れた存在だった可能性がある。
余談
てれびくん及びテレビマガジンで連載された『ウルトラマン列伝ギャラクシーバトルゼロ』では同族がアナザースペースに現れウルトラマンゼロを襲ったが、マックスからの助言を受けたゼロに同様の戦法で分身殺法を破られ、ワイドゼロショットで倒された。
着ぐるみには青のマジョーラが使われている。マジョーラと言えば『仮面ライダー響鬼』の塗装剥げと塗り直しが度々語り草になるように、アクションを行うと剥げる上、非常に高価という問題点があるがスラン星人の着ぐるみは別の素材と混合させる事で定着に成功している。
初稿では、昆虫系のデザインにするためにさまざまなバリエーションが描かれてた。また、発光部分の内側には、人間の顔のように見えるモールドが入れられている。
本編、『10勇士』、『X』のそれぞれのマックスとの対決で「マクシウムカノン」「ギャラクシーソード」「ギャラクシーカノン」とマックスの大技を3種類も制覇して撃破されているため、意外と贅沢な扱いと言われることも。
UGFに客演した際には本編で2回しか使われなかったグレートのバーニングプラズマを浴びている。やっぱり贅沢なやつである。
『X』第8話の監督を担当したアベユーイチは、『マックス』での分身の撮影方法は難しいと判断し、セット内で撮影して当時の描写に近づけることを意識した。