データ
概要
『ウルトラマンマックス』第4話『無限の侵略者』で初登場した宇宙人。
昆虫のような頭部に鋏のような形状のブレードが付いた両腕と、バルタン星人を意識したデザインになっている(後に本当にバルタン星人が登場することになるが、それはまた別のお話)。
胸には車のライトを思わせる発光体が確認でき、頭の発光体は地球人と会話する際に発光する。
『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』(デアゴスティーニ・2009年・26-20より)によると、関節は360度稼働するという。
また、同族意識の極めて強い(若しくは種族としてのプライドが高かったり非常に執念深い)種族のようであり、本編終了後も同胞の敵討ちを目論む個体が度々マックスに襲撃を仕掛けるという事案が発生している(後述)。
元々コイツは序盤に登場した敵でしかなかったのだが、後述する事情から再登場を続け、TV作品、劇場作品、ネット作品に登場し、『タイガ』に登場した個体以外はすべてマックス絡みで必ず出て戦闘まで行っており、現在は放送当時以上に『マックス』の代表的なキャラクターの1体として扱われるようになっている。
能力
高速宇宙人という肩書通り超スピードで移動することが可能で、それによって残像を作り出し、それに惑わされた相手を短剣の付いた両腕から発射する怪光線や反重力光線で苦しめる分身殺法を得意としている。
マックスと戦う際は高速移動しながら相手を円で囲むように動いて包囲し、そこから光線や剣で攻撃を仕掛ける戦法を見せた。
ダッシュアルファのオートバルカンも難なく躱せてしまうほど回避力が高い一方で、マクシウムソードのような分身を纏めて攻撃できる武器で対応されたり、グレートがバーニング・プラズマを当てたりするなど歴戦の戦士には破られる事さえある。
公式サイトによれば高速移動のスピードは時速170kmと普通車のスピードメーターに収まる速さなので、速いが遅い。作中で追い抜いたダッシュアルファが時速750kmなのでファンの間では誤植説がある。ただし、『ウルトラマンオフィシャルデータファイル』(デアゴスティーニ・2009年・26-20より)や『決定版 全ウルトラ怪獣完全超百科 ウルトラマンティガ〜ウルトラマンマックス編』(講談社・2006年・110Pより)、円谷プロの公式アカウントで配布された『円谷プロ大怪獣カード 69 高速宇宙人 スラン星人』などの公式メディアを参照しても時速170kmとあるので、現状、この設定で定着しているような節がある。
『マックス』に登場した個体は腕の短剣を伸縮させたり、両腕からバリアーや妨害電波を発生させていたが以降の個体は使用しておらず、剣は伸ばしたままとなっている。
擬態能力を持ち合わせているうえ、この高速移動能力は人間に変身している状態でも使用可能で、天井にぶら下がったり、壁面の走行だってお手の物。
最強最速を謳うマックスをスピードで翻弄した事から、最強最速の座を真っ先に脅かした敵と評価するファンもいる様子。
劇中での活躍
「地球は美しい星だ。だから我々スラン星人の第二の故郷にすることに決めたのだ。この星の人間は大地を、空を汚し続ける。星の悲鳴が聞こえないのか?」
『ウルトラマンマックス』本編に初めて登場した宇宙人で、地球人の環境破壊を口実に自分たちが支配した方がいいという理由から地球侵略を企てた。しかしいざ行動を開始するとバンバン光線を打ちまくって委細構わず暴れ回るなど、実際はただ口実があればよかったのだろう。
夜の野球スタジアムに円盤を同化させて潜伏し、スタジアムの長崎警備員に変身。調査にやってきたDASHのトウマ・カイトとコイシカワ・ミズキ両隊員を襲撃して捕獲し、円盤による攻撃を開始しようとした。
スタジアムと同化した宇宙船は歴代宇宙人の中でもトップクラスで大きく、スラン星人本人の頭の発光体を模した部分からは紫色のレーザー光線を放つ。
しかし、この部分が弱点となっており、ダッシュマザーにあっさりと撃墜されてしまった。見掛け倒し…。
宇宙船内でカイトとミズキに倒され、円盤がDASHの攻撃で破壊されると巨大化。上記の能力でウルトラマンマックスを苦しめたが、マクシウムソードで分身を切り裂かれ、残った本体も背後に現れたところにマクシウムカノンを受け爆死した。
その後も地球に出現していたようで、第25話「遥かなる友人」の新聞記事によれば東京タワー近くに現れて破壊活動を行ったらしい。
その後の作品での登場
決戦!ウルトラ10勇士!!
エタルダミーとして登場。映像作品の出演は10年ぶり、しかもマックスオリジナル怪獣初の再登場となる(正確に言うと『ウルトラマン列伝』第93話にゲスト出演したタイニーバルタンの方が先だが、完全オリジナルはコイツが初)。
時空城の第二階層にてマックスと激突。しかし分身能力で翻弄するも、あの時と同じようにすぐにマクシウムソードに分身を斬られ、ギャラクシーソードであっという間に真っ二つにされてしまった。
登場の経緯
他のウルトラマンに関係する敵・エタルダミーがラスボスや因縁の相手、合体怪獣という中で、物語の超序盤に出現した宇宙人と、かなり浮いたチョイスとなっている。
実際、他の敵はウルトラマンと互角に戦ったのに対して、こいつは割とあっさり倒されていた。
どうしてスラン星人が選ばれたのかというと、『マックス』オリジナル怪獣の着ぐるみがほとんど残っていない、残っているものも、(アトラク用としてはともかく)映像作品では使えないほど劣化しているか、劣化していなくても宇宙化猫タマ・ミケ・クロのように敵役として適さないものしか使えない状態であったのである。
スタッフが悩みに悩んだ末、スラン星人の着ぐるみの保存状態が良かったことを運良く思い出し、やっと見つけ出したのである。
『10勇士』のパンフレットにて坂本浩一監督はゼットンが、脚本家の中野貴雄氏はツイートにてラゴラスエヴォが候補として上がっていたことを語っており、それぞれ「平成集合作品にてマックスオリジナル怪獣でない昭和怪獣は適さない」「着ぐるみの劣化が激しかったため」という理由で没になったことが明かされている。
もし着ぐるみの劣化がなければラゴラスエヴォやギガバーサークが選ばれていたのかもしれない。
そういう意味ではとてもラッキーである。マックスにとっても。
『マックス』以外も、宿敵となるオリジナル怪獣を選んだのは想像以上に苦行だったとのこと。
例えば平成三部作(当然ながら当時の着ぐるみは現存していても劣化が激しい)は『ギンガ』登場のファイブキングと戦ったが、コイツにはそれぞれのウルトラマンが戦った怪獣が丁度良くミックスされており、因縁たっぷりで強敵にも相応しい相手だっただろう。
和解がテーマで決まった敵が出しにくく、殆どの着ぐるみが改造されたこともあって同映画でエタルダミーが存在しなかったコスモス(一応ステージではネオバルタンが登場している)は代わりにアレーナの救出シーンがあてがわれており、これはこれでコスモスの「優しさ」が上手く表現できたといえるだろう。
ちなみにステージで登場したネオバルタンも、バルタン星人自体がコスモスオリジナルではないため、スラン星人以上に浮いている……。
作中の都合でオリジナル怪獣の選択肢が少なかったり着ぐるみが残っていなかったりして悪のウルトラマン系列との対決になったネクサス、ゼロ、ギンガにも見て取れる。
強敵エンペラ星人が残っていたメビウスはある意味幸せ者である。
また、今作を切っ掛けにスラン星人の登場回が『ウルトラマン列伝』でも再放送され、前述のように限定販売だったソフビ人形が一般販売される等、ある程度認知度があったという商業的な理由も存在する。
数少ない使用可能状態な『マックス』の悪役という事もあって、後述の通り『X』でもサプライズ登場を果たしている。
スラン星人クワイラ
『ウルトラマンX』第8話「狙われたX」に登場。詳細はリンク先を参照。
ウルトラマンタイガ
第23話「激突!ウルトラビッグマッチ!」に登場。
ザラブ星人、ゴドラ星人と共にヴィラン・ギルドの障害となるウルトラマン達を排除しようと画策し、チブル星人マブゼに協力する。
孫の手で背中を掻いていたり、ウルトラマンの戦闘が始まるとスマートフォンのカメラで様子を撮影していたりと、妙に人間臭い部分がある。
ザラブとゴドラの喧嘩を止めたりマブゼから作業を指示されたりとやや苦労人気味。
最終的にはウルトラマントレギアに陽動されたニセウルトラマンベリアルに他の3人共々ビルごと叩き潰されるという最期を遂げた。
ちなみにザラブ星人、ゴドラ星人とはそれぞれ「ウルトラマンもしくはその変身者に化けた」「ベリアルと何らかの接点がある(ザラブ、ゴドラはベリアルに倒され、スランは上述した様に共にエタルダミーとして利用された)」という共通点がある。
『タイガ』第23話の脚本を担当した皐月彩氏は、本話のスラン星人を「中間管理職」とキャラ付けしており、『ウルトラ怪獣散歩』っぽいノリであったと述べている。
何気に今回で初めてマックスとセットではない、単独での登場を果たした。
ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀
「貴様に打ち込んだのは、宇宙の悪魔『ゴーデス細胞』だ。やがてその体を醜い怪獣の姿に変えるだろう…。そしてお前は、孵化したマガオロチにエネルギーを供給し続けるのだ…!」
Episode1で登場。
惑星ミカリトを調査中にヘルベロスと戦うマックスに不意打ちをかまし、ウルトラマンリブットを高速移動で翻弄した上でダメージを与え、リブットを助けようとしたマックスにゴーデス細胞を植え付けた上にマガオロチの卵の養分にした。
地味に攻撃を受けて怯んでいたリブットを無視してマックスにゴーデス細胞を打ち込んでいる辺り、この個体もクワイラと同様にマックスには浅からぬ恨みを抱いている様子。
しかし、光の国の分析によると一連の行動は「スラン星人の計画にしては規模が大きい」とのこと。実際、魔王獣の卵やゴーデス細胞など、どれも個人レベルで扱うには荷が重すぎる代物で、それこそ魔王獣関連に至ってはあらかじめ用意された道具を用いなければ入手することすら困難なはずであり、(ゴーデス細胞はその生命力を踏まえると宇宙ではごくありふれた物な可能性もあるが)このことから背後で何者かが暗躍している可能性が推測されていた。
Episode3にてマックスの救出に現れたリブット達を妨害しウルトラマングレートと格闘戦を繰り広げるも、重い一撃に徐々に翻弄され、最後はバーニングプラズマを高速移動でかわしきれずに撃破された。
…かと思いきや生きており、アブソリュートタルタロスがマガオロチの卵やゴーデス細胞を与えていたことが判明。もう一度チャンスを与えてくれるよう願うも役立たずとみなされ、光線を喰らって処刑された。
本作に登場する敵の多くは、タルタロスによって本来の運命から外れた「並行同位体」と化した存在、もしくは再生個体や人工生命体であった。マガオロチの卵など、全ての敵に対しては回想も含めて最終話までにどちらかである描写があったが、スラン星人とヘルベロス、そしてナイトファングに対しては一切触れられることはなかった。
なお、タルタロスとの最後の会話では「助けられた恩返し」と発言しているが、これがレイバトスの同位体のように死の運命から救出された事なのか、或いはグレートの戦いの中で救出された事を指しているのかは不明。
戦闘においては、ゴーデス細胞以外の光線技は使用しない、高速移動も直線の移動のみで生成される分身と今までの個体と比べて少なく相手を取り囲まないなど、今までの個体と比べて能力の使用が得意ではなかった様子。特にグレート戦においては油断していたのか、種族最大の特徴である高速移動を利用した攻撃を一切行わなかったことが敗因と思われる。しかし能力の大半を使用せずともグレートが現場に到着してからマガオロチの戦いが終わる直前まで足止めしていた。
また、『決戦!ウルトラ10勇士!!』が今作の後日談であるならば、結果的にマックスを絶望の淵まで追い詰めることには成功したことから、エタルダミーがスラン星人として現れたのではないかと一部のファンから考察されている。
他媒体
結集!ウルトラヒーロー宇宙大決戦!
ドラマCDパートに登場。本作においては『コスモス』と『マックス』は同一の世界観と見なされており、コスモスのいる遊星ジュランとマックスの防衛する地球を襲撃。兼ねてより月面にミサイル基地を建造しており、再生させたカネドラス、ギコギラー、ルナチクス、カオスウルトラマンカラミティといった客演に恵まれないメンツで構成された再生怪獣軍団を差し向け、コスモスとマックスを苦戦させるが、TDG三部作のヒーローが駆けつけた事により、形成が逆転。奥の手として通常のサイズよりも超巨大化したエレキングと融合するも、TDGヒーローズのエネルギー補給を受けたコスモスとマックスのコズミューム光線とマクシウムカノンを浴びて消滅した。
以上のように『大いなる陰謀』に勝るとも劣らないスケールの大きさを見せたのだった。時代が時代なら、超巨大エレキングもハイパーエレキングになっていただろう。
ウルトラマンアバレンボウル
くじガシャポンでは通常のスラン星人に加え、何と「エタルダミー」版も参戦した。
立体化/玩具
ソフビは『ウルトラ怪獣シリーズ2005』から玩具情報誌『ハイパーホビー』誌上限定品として登場したのちに『ウルトラ怪獣シリーズEX』として一般販売も成された。『カプセルソフビコレクション ウルトラマン2』として10cmほどのミニソフビ化も行われた。
また、『X』放送当時は玩具オリジナルの『サイバースラン星人』のサイバーカードが発売されたが、ソフビ(スパークドールズ)は発売されなかった。
余談
てれびくん及びテレビマガジンで連載された『ウルトラマン列伝ギャラクシーバトルゼロ』では同族がアナザースペースに現れウルトラマンゼロを襲ったが、マックスからの助言を受けたゼロに同様の戦法で分身殺法を破られ、ワイドゼロショットで倒された。
着ぐるみには青のマジョーラが使われている。マジョーラといえば『仮面ライダー響鬼』の塗装剥げと塗り直しが度々語り草になるように、アクションを行うと剥げる上、非常に高価という問題点があるが、スラン星人の着ぐるみは別の素材と混合させる事で定着に成功している。
初稿では、昆虫系のデザインにするためにさまざまなバリエーションが描かれてた。また、発光部分の内側には、人間の顔のように見えるモールドが入れられている。
本編、『10勇士』、『X』のそれぞれのマックスとの対決で「マクシウムカノン」「ギャラクシーソード」「ギャラクシーカノン」とマックスの大技を3種類も制覇して撃破されているため、意外と贅沢な扱いと言われることも。
UGFに客演した際には本編で2回しか使われなかったグレートのバーニングプラズマを浴びている。やっぱり贅沢なやつである。
『X』第8話の監督を担当したアベユーイチは、『マックス』での分身の撮影方法は難しいと判断し、セット内で撮影して当時の描写に近づけることを意識した。『大いなる陰謀』で得意戦法を放棄していたのは、撮影コストの事情もあるのかもしれない。