「おや?中立だから…ですか? いけませんねぇ、それは。皆命を懸けて戦ってるというのに、人類の敵と…」
概要
反コーディネイターを掲げる政治団体「ブルーコスモス」の盟主。
初登場はPHASE-38(HDリマスター版36話)からで、アバンからいきなり出ている。
名前自体はPHASE-32(HDリマスター版30話)で連合内部から登場していた。
古くから反コーディネイター運動に最大の出資をしてきたアズラエル財閥の御曹司でもある。
また、国防産業連合理事の任にあり、デトロイトに本拠を置く大手軍需産業の経営者でもある。
大西洋連邦政府及び同国軍に対して強い発言力を持ち、現場指揮官に直接命令を下すことすらある。
家系の影響に加え、幼少期に同年代のコーディネイターにどうしても敵わず、軽くあしらわれて以来、彼らに対して激しいコンプレックスを持つようになった(皮肉なことにその時の構図はキラ・ヤマトがサイ・アーガイルにした仕打ちと酷似していた。)。
そして母親に「どうして自分をコーディネイターにしてくれなかったんだ」と言った際に母から殴られ、「あんな悍ましいもの」と言われた経験から「強い力を持つものは鎖でつないでおくか退治するべきである」という思想に取りつかれるようになってしまった。
因みに親族(父親とも)と思われるブルーノ・アズラエルは、ロゴスのメンバーであり、ムルタ自身もロゴスのメンバーだと思われる。
年齢は30歳と、地位に対して非常に若い。
作中には登場しないものの妻子持ちである。
軍需産業を指揮しているだけに洞察力は鋭く、最初にキラが駆るフリーダムと、アスランが駆るジャスティスの戦闘を見た後に、両機が核エネルギーを使用している事を見抜いている。
ただし、普段はクールな皮肉屋を気取っているが根は短気で、余裕がなくなると感情的に怒鳴り散らすなど、特に物語後半では精神的な脆さを見せる場面が多い。
アラスカ基地の情報を提供する見返りにスピット・ブレイクの情報をバーターし、ザフトの攻撃部隊の8割と連合内の反対派閥を抹殺する事に成功。
パナマ防衛が失敗した後は脆弱化したビクトリアを陥落させ、地球連合軍の宇宙進出を成功させた。
その後、後述の経緯でニュートロンジャマーキャンセラーの技術を入手し、プラントへの核攻撃手段を手に入れる。
…と功績を列挙すれば後任の盟主と違って結果を残しているのだが、最初のスピット・ブレイクの情報獲得時点でラウ・ル・クルーゼと通じており、結果的に地球内に閉じ込められていた連合軍の大規模宇宙進出による最終決戦の引き金となった。
その後のニュートロンジャマーキャンセラーの入手さえも彼の計らいが多分に含まれており、最終的には相互確証破壊さえも無視した先制核攻撃を敢行し、怒りに燃えるパトリック・ザラにより、ミラージュコロイドによって隠匿されていたジェネシスの反撃を受け、多くの部隊と月面基地を失った上、最後の照準として地球を危機にさらしてしまう。
一連の行動は人類の滅亡を望むクルーゼの思惑通りに進んでおり、アズラエルもまた仇敵=コーディネイターのトップであるパトリック・ザラ同様、仮面の男の掌の上で踊らされていた人間の一人であったのかもしれない……。
劇中での活躍
パナマ攻防戦において地球連合軍はマスドライバーを失い、宇宙への橋頭堡確保のため、マスドライバーを持つオーブへの侵攻を提案し、自ら指揮する。
オーブへの侵攻とマスドライバーの奪取はオーブ側のマスドライバーを含む軍関連施設およびモルゲンレーテ社の自爆により失敗に終わったが、第2期GAT-Xシリーズのカラミティ、フォビドゥン、レイダーを実戦投入するという、もう一つの目的は大きな戦果と共に達成された。
その後のアークエンジェル討伐戦では、フリーダムとジャスティスに核エンジンが搭載されていることを見抜き、捕獲を命令。
宇宙に上がってからは、ナタル・バジルールが艦長を務めるアークエンジェル級2番艦ドミニオンに乗り込む。
「しかし……ボクらの乗る艦の艦長サンが、こんなに若くて美人の方だってのは-イキな計らいってヤツですか?」
と、ナタルを軽んじていた節のあったアズラエルだったが、同行してきた将校から彼女が優秀な軍人家系の出であり、以前アークエンジェルの副長であった事を知らされると、アズラエルは
「期待しますよぉ?ボクらこれから、そのアークエンジェルを討ちに行くんですから」
と、軽薄な口調でナタルにその過酷な運命の任務を告げた。
民間人でありながら実質的な指揮官の座に立ち、元アークエンジェル副長であるナタルにかつての仲間を討つ任務を遂行するようプレッシャーを与える。
「あなたは確かにこの艦を指揮する艦長さんなのかも知れない。けどね、その上にはもっとこの戦争全体を見ながら考えたり指揮したりする人間がいるんですよ」
ザフトから解放されたフレイ・アルスターの「戦争を終わらせる鍵を持っている」という言葉に関心を持ち彼女を救助し、ニュートロンジャマーキャンセラーのデータを手に入れ、それがクルーゼによる戦争どころか世界を終わらせるための企みとも知らず狂喜した。
尚、ナタルがキラの名前を口にした時、赤ん坊だった頃のキラが当時のブルーコスモスの最大の標的だったことから、反応している描写がある。
その後は地球へのエネルギー供給の優先を提案していた地球連合上層部を説き伏せ、Nジャマーキャンセラーを利用したMk5核弾頭ミサイル搭載モビルアーマー部隊「ピースメーカー」を編成。ザフトの宇宙要塞ボアズを核攻撃で沈めた後、プラントに対しても核攻撃を行おうとする。
しかし、最終決戦である第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦において投入された核ミサイルは、キラ達によって全弾撃墜され、腹心であるサザーランドが戦死、主力の連合新型MSが2機も撃墜されパイロットのシャニとオルガも死亡するなど劣勢に追い込まれる。
同時に、かねてよりアズラエルの行動に疑問を抱いていたナタルが造反。フレイをはじめとする全クルーをアークエンジェルに投降させた後、心中を図るべくアズラエルを艦内に閉じ込めた。
追い詰められたアズラエルはナタルの全身を拳銃で撃ち、自分の解放を強要。
それが叶わぬと見るや、自分用の端末でドミニオンのコントロールを掌握しローエングリンを起動、アークエンジェルを沈めようとするがムウの犠牲により失敗。
激昂したマリューが放ったアークエンジェルのローエングリンでナタルと共に最期を迎え、断末魔と共にアズラエルは宇宙の藻屑となって散って逝った。
なお、この際にアークエンジェルのローエングリン発射より早くドミニオンのローエングリンを発射し、艦橋への直撃コースのそれを庇ったムウのストライクを結果的に撃墜しているが、本来武器管制や照準、艦隊姿勢等で複数名の連携が必要なそれを、ナタルに造反を食らう直前まで部下がある程度進めていたとはいえ単身で行い(アークエンジェル型は少数運用出来るように設計されている戦艦であるとはいえ)、訓練を受けているマリュー達アークエンジェルクルーよりも先にこなした上で、前述の通り艦橋への直撃コースで放つという離れ業を披露している。意外とそっちの才能も有ったのだろうか?しかもアークエンジェルの操舵者はガンダム屈指のチートキャラであるノイマンで彼が「回避不可能」と断言したほどである。
「機動戦士ガンダムSEEDC.E.73STARGAZER」でも声なしで登場し、スウェン・カル・バヤンが属していた軍隊の教官と揉めて胸ぐらを掴まれている。話の流れからスウェン達を生体CPUにするか否かで口論になった可能性が高い。
ファンからの支持と余談
やったこと自体は非道ではあるのだが、後述する理由から『SEED』を代表する名悪役としてファンからの人気は高い。
中の人が某勇者などに出演していたため、ファンからの通称は「盟主王」。
アズラエルに限らず檜山氏が演じるキャラクターは別に王の地位に就いていないのに「⚪︎⚪︎王」と呼ばれるケースが多く、例を挙げるなら『天元突破グレンラガン』の登場人物ヴィラルの「公務王」がある(ロボットアニメの悪役という点も共通している)。
外伝作品「SEED ASTRAY」シリーズでは遺伝子操作によってナチュラルに服従する措置を施したコーディネイター兵であるソキウスが登場し(これらも研究の引き継ぎという形でブルーコスモスが関与していた)、スニーカー文庫版1巻ではブーステッドマンの導入によって不要となった彼らを演習の的にするなど、コーディネイターに対して冷淡な面が強調されている。
尚、小説版によると、彼が盟主を務めるブルーコスモスには自身の遺伝子操作を憎悪したコーディネイターも在籍しているとのことであるが、それをアズラエル本人が感知していたかは不明。
本編・外伝ともにコーディネイターとは交友した場面も無く、オーブ侵攻作戦の際は軍事協力とオーブの見逃しを打診したロンド・サハク姉弟に二枚舌を使った一面も見せている。
本編では初登場するやその言動(冒頭の台詞もその一つ)でブルーコスモスに属していない他の地球連合の高官から顰蹙を買う場面もあり、宇宙に上がってからもナタルと度々対立していた。
劇中においては完全な悪役であり、追い詰められると落ち着きが無くなった言動をする様とラウ・ル・クルーゼに踊らされる姿から小物のイメージが定着しているが、戦争の本質を突いた正論を放つ場面も少なくなく、当時はザフトの全体的な人格面もやや悪かった所為か良くも悪くも熱血漢なためファンからの支持は厚い。
恵まれた立場にありながらコーディネイターへのコンプレックスにまみれた人間臭さや徹底した現実主義が共感を呼ぶのかもしれない。
戦争にさえ関わらなければ、優秀な経営者、もしくは政治家として大成できていた可能性が高い。
続編『DESTINY』において、彼の後釜として登場したロード・ジブリールが口先だけの小物であったことも、彼の評価を相対的に上げる要因となっている(どちらもユダヤ教の天使が名前の由来である点は共通している)。
総じて有能だが、それ故に器用に立ち回りきれない馬鹿という評価に落ち着くだろう。
声を演じた檜山修之氏にとってもアズラエルは特にお気に入りのキャラの1人であり、自身が担当したキャラの中でも「ヒーロー役の集大成」としている『勇者王ガオガイガー』の獅子王凱と対比する形でアズラエルを「悪役の集大成」と評したり、「自分が演じた代表的な悪役」とまで語るなど、かなり強い思い入れを持っている。
「大暴れしてスカッと倒されてくれたのが魅力的」「ナタルを撃ったのが許せない、分かりやすく嫌な奴」と悪のカリスマとしての完成度の高いキャラクターであることが令和まで続く人気の秘訣であるのか、2024年3月24日に発表された「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ グランプリ2024」でもキャラクター部門23位と健闘している。
【ガンダム】アズラエルっていつからこんなに人気だったの?(あにまんch)
ゲーム作品にて
『第3次スーパーロボット大戦α』に登場した際はその某勇者と共演し、「あのライオンロボ……なんとなく、気に入りませんね」「勇気などという不確かなものに頼っていてはいつか敗北しますよ」などという声優ネタが見られる。
ちなみに、『SEED』シリーズと『ガオガイガー』シリーズはこの『第3次α」以降のスパロボ作品でも何度か共演しているのだが、何気にシナリオで凱とアズラエルの直接の絡みが描かれたのは、令和より始まった『スーパーロボット大戦DD』が初めてである。
この『DD』でのアズラエルはヤキンの戦いを敗北するもナタルやフレイ共々生き延びており、盟主の座は結局ジブリールに奪われる形となったが、代わりにオリジナルの敵勢力と何らかの関わりを持つ。
その後ろ盾を得て自分と同様に敗北を経験した他作品の敵キャラクター達と徒党を組み、因縁のある三隻同盟(尚、ナタルも復帰している)のメンバー達を内包するプレイヤー部隊と再び敵対。
そして、『DESTINY』の戦争への介入を開始すると、オーブ侵攻の際に家族を喪ったシン・アスカを擁するミネルバ隊に目を付け、ステラ・ルーシェの暴走の際には原作とは違って彼女を救出しようとしたキラが結局死なせたように見せかけてシンを欺き、結果、ギルバート・デュランダルが動くより前にフリーダムの撃墜を達成すると言う暗躍を行った。
この通り、今作ではデュランダルを差し置いてシンとキラの対立関係の黒幕となっており、ただでさえ『DESTINY』は前作における彼の悪行の影響が色濃く描かれていたが、復活したことで真の元凶としての立場がより強調されており、これからもどのような悪事を働くのか注目される。
名台詞集
- 「言って分かればこの世に争いなんてなくなります。分からないから敵になるんでしょう?そして、敵は討たねば!」(第43話)
- 「無理を無理と言うことくらい誰にでも出来ますよ。それでもやり遂げるのが優秀な人物。これ、ビジネス界じゃ常識なのですけど?」(第45話)
- 「ビジネスだって同じですよ。貴女って、もしかして確実に勝てる戦しかしないタイプ?」(第45話)
- 「クハハハハッッ、アハハハハッッッ、ぃやったーー!!!!」(第46話)
- 「核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない!強力な兵器なんですよ?兵器は使わなきゃ。高い金かけて造ったのは使う為でしょう?」(第47話)
- 「勝ち目のない戦いに"死んでこい"って自分の部下を送る人たちより、僕の方がよっぽど優しいと思うけど?」(第47話)
- 「何がナチュラルの野蛮な核だ…!あそこからでも地球を撃てる奴らのこのとんでもない兵器の方がはるかに野蛮じゃないか!」(第48話)
- 「自軍の損失は最小限に!そして敵には最大の損害!戦争ってのは、そうやるもんだろ!?」(第49話)
- 「撃て!撃たなければ討たれるぞ!」(第49話)
- 「僕は勝つんだ!そうさ、いつだって…!」(第49話)
関連イラスト
劇場版『機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM』公開決定記念
関連タグ
シロー・アマダ…中の人繋がりのガンダムキャラだが、性格や人望、何より敵側の人間と心を通わせるなど、どこまでもアズラエルとは真反対の熱血漢主人公。