艦体データ
概要
宇宙世紀史上、いやガンダムシリーズ史上においても他に類を見ない、「キメラ軍艦」と言っても過言ではない魔改造艦。
本編での登場は第24話から。
艦長はリーンホースに引き続き、ロベルト・ゴメス大尉が務める。
リガ・ミリティアはザンスカール帝国軍ベスパが衛星軌道上から地球を狙撃する目的で建造したビッグキャノンこと『戦略衛星カイラスギリー』を攻略すべく地球上と宇宙の双方から残存戦力をかき集めて艦隊戦を仕掛ける。
この艦隊戦において地球連邦軍のゴメス艦長の英断により、同作戦の戦略的勝利を収めるばかりか、ザンスカール帝国の最新大型戦艦スクイードⅠを小破状態で拿捕する事に成功した。
しかし代償として同作戦の主戦力となる母艦および護衛艦として運用していた、リーンホースとガウンランドが共に大破してしまっため、これら二艦から使える無傷の部分を回収、または剥ぎ取ってスクイードⅠの大きく欠落した部分に接合するという斬新極まる発想により建造された。
作業は全てドック艦ラビアンローズⅣ(名称より、アナハイム・エレクトロニクスの所有艦と思われる)で行われ、竣工(宇宙世紀0153年4月29日)から進宙(同5月4日)まで僅か五日という、超短期間で完成させている。
加えてゴメス艦長は、就航したばかりの状態で「発進後に慣らし運転とする」「月までの航路の間に艦の操作に慣れろ」等と、いかに民間のレジスタンス組織とは云え、新型宇宙戦艦の運用に対して無理極まる指示を飛ばしている(良く言えば豪胆ではあるが、コトセットが聞けば卒倒するのは間違いない)。
月での補給後、モトラッド艦隊が地球に向けサイド2のザンスカール本国から出撃した為に月面付近で戦闘となり、そのままモトラッド艦隊を追撃し地球に降下している。
大気圏突入がもともと可能なスクイード級をベースに使っているとはいえ、改造してゴチャゴチャと構造物を追加しているにもかかわらず、大気圏突入と大気圏突破をも可能としており、もはや「魔改造」と言わざるを得ない状態である。
計算された設計ではないため、艦体下面の対空砲に死角があるなどバランス面では優秀とは言えないが、物資・資金・人員の全てが困窮しているリガ・ミリティアにとって貴重な大型戦艦であり、戦争終結まで同組織の旗艦として各地を転戦した。
あくまでも継ぎ接ぎのパッチワーク艦であるのは事実だが、船体の8割以上を最新鋭艦であるスクイードⅠから転用したうえ、そこにリーンホースやガウンランドのパーツを組み込んだだけあって、既に旧式化著しい地球連邦軍の制式艦と比較して、性能的にはむしろ上回っている部分も見られる。
ビームラム
本艦は、サイド2のマケドニア・コロニーから強行脱出する際、艦首ビームシールドのビーム発振機を前方方向に倒しシールド状ではなく槍状に変則的に収束することによって、ロックされていた宇宙港の隔壁を破壊して突破するというゲリラ戦法を決行した。
これに気を良くしたメンテナンス・スタッフがビームシールド発生機に追加改修を行う事で、前方へのメガ粒子収束率を大きく高める機構を追加し、中世の海賊船が使った“衝角(ラム)”を宇宙世紀に復活させている。
この「ビームラム」は、言わば超弩級ビームサーベルであり、敵艦の横腹に直撃させられれば、中世の海賊戦法そのままに、敵艦を容易に撃沈する事が可能である。
が、当然ながら宇宙戦艦の装備としては完全に無謀極まるものであり(ミノフスキー粒子が長距離レーダーを無効化させるとは言え、「中世の大砲」と「宇宙世紀のメガ粒子砲」では有効射程と命中率が違いすぎる)、実用性は極めて低い……ありていに言って、ほぼゼロである(強いて言えば大破した敵艦の特攻を食い止める程度)。
つまるところ、このビームラムは、連戦に次ぐ連戦によってゲリラ屋根性の染み付いた各スタッフが、“悪ノリ”で増設した装備である。
(もし正規軍の開発部が、このような装備の企画書を上申したならば、即座に没は当然、最悪左遷か除籍されるのはまず間違いないであろう)
さらばだ、リーンホース!
『機動戦士Vガンダム』の最終回直前となる第50話において、リーンホースJr.は最後の時を迎える事となる。
ザンスカール帝国が建造した超巨大サイコミュ兵器エンジェル・ハイロゥを巡る攻防戦でリガ・ミリティアと地球連邦宇宙軍ムバラク艦隊の同盟軍は成層圏上でザンスカール帝国軍との最終決戦を繰り広げる。
その最中、リーンホースJr.はモトラッド艦隊司令であるクロノクル・アシャーが駆る最新型モビルスーツのリグ・コンティオの猛攻撃により撃沈寸前まで追い詰められるが、オデロ・ヘンリークとトマーシュ・マサリクの操縦するガンブラスター2機が咄嗟に行ったセッターH926を使った捨て身の突撃で辛くも難を逃れる。
「各ブロック!損害状況を報せ!」
「閉鎖弁を全てロックしろっ!!」
「エンジン切り離しをさせるぞ!?艦長っ!!」
「そうだな!」
リーンホースJr.は撃沈こそ免れたものの、甚大な被害により戦闘続行は困難となり、被弾した左舷エンジンを切り離した後、艦橋で部隊の指揮を執る偽ジン・ジャハナムとゴメス艦長、そしてカミオン隊の老人達はある決断を下した。
「う…うーん…そろそろ、覚悟をする瞬間(とき)かな?艦長!」
「ジン・ジャハナム閣下も、そうお考えなら!」
「若い者達だけでも、退艦させた方がいいな…」
【未来を作り上げることができる若者達】を退艦させ、【継ぎ接ぎで誤魔化しながら生き延びてきた老兵達】は【力を合わせて、未来への道を切り拓く】決断をする。
「よーし、ネス!総員に退艦準備をさせろ!」
「…!退艦準備でありますか!?」
「まだ、リーンホースは働けるからな。これからは老人に任せてほしいのさ!」
「レオニードさん…」
「ストライカーも退艦しろ!」
「しかし!」
「残ったモビルスーツは使わせてもらうからな!」
「どうしたんです!?まだリーンホースだって…ああっ!?」
「戦えるさっ!それは任せろ!」
「クッフ!お前さんもさっさと行かんかっ!」
「ゴメス艦長!総員退艦ではないのですか!?」
「そうだ!これよりリーンホースは単独行動を取る!ホワイトアークとモビルスーツ部隊は、退艦したクルーを守ってくれ!」
「……了解っ!!」
「ああーっ!リーンホースが壊れてくー!」
「みんな逃げ出すんだ…!エリシャさん!クルーの護衛に回らないとまずいよ!!」
その際に、レオニード・アルモドバルとロメロ・マラバルの老人二人は半壊したガンイージを起動させて艦橋正面のカタパルトに固定して砲台代わりに使用し、艦橋に残った老人のオーティス・アーキンズはリモートコントロールで残されたミサイルを撃ちつつ、リーンホースJr.はビームシールドを展開したまま突き進んだ。
「駄々っ子のネスも追い出しましたが、いいですな!?」
「当たり前だ!ここまで来て我々の働き場所が無いでは、ジン・ジャハナムの名前が泣くわ!若い者が生き残れば、この名前は私の物として語り継がれるってものさ…行っていいぞ!ゴメス艦長!!」
「あいよ!いいな?オーティスさんや!」
「いいともさ!」
「まだ戦えるじゃないか!」
「おい、戻ろうぜ!!」
「おいっ!?あのガンイージっ!!」
「何をするつもりだぁ!?」
「昔とった杵柄を見せてやるっ!!」
「こ…こんなガタのきてる機体では、何もできんぞ!」
「砲台ぐらいにはなるっ!!」
対峙するモトラッド艦隊に対し、ゴメス艦長の指示でリーンホースJr.は残された最後の武器を使う。
「ビームラムを使うのだな!?」
「そうだ!エネルギーは全て艦首に回す!!」
そして、リーンホースJr.はビームラムを最大出力状態で起動させ、モトラッド艦隊の旗艦アドラステアに向け特攻を仕掛けはじめた。
「ど、どうせなら、思い切りやってくれっ!!」
「長生きしすぎたバチが当たったかなぁ…」
「年寄りに寄って集ってぇ!!」
「右からも来る!右だ!ホレ見ろーっ!!」
特攻を阻止せんとするザンスカール帝国軍のモビルスーツ部隊の猛攻撃によって、砲台代わりのガンイージはアインラッドに乗ったMSゾリディアによる狙撃で撃破され、艦橋は接近してきたMSジャバコにより完全に破壊される。
「遅かったなぁ!!」
しかし、リーンホースJr.は進行を止めることはなく、モトラッド艦隊の旗艦であるアドラステアへの突撃を成功させるのだった。
「かわせーっ!!かわせんのかっ!?かわせ────っ!!!」
「きっ、来ますっ!!!」
「リーンホースが………!!」
リーンホースJr.とアドラステアの両艦の核融合炉が引き起こした大爆発によって、周囲に展開していたモトラッド艦隊を巻き込んで跡形もなく全滅させるという壮絶な最後を迎えたのだった。
「何だと!?我が艦隊が消滅したと云うのか!!」
「リガ・ミリティアの残存艦一隻でモトラッド艦隊が全滅するとは…クロノクルめっ!この帳尻をどう合わせるのだ!!」
リーンホース特攻
この「リーンホースJr.特攻シーン」はガンダムシリーズ全体で見ても特に人気が高いエピソードで、『機動戦士Vガンダム』の数多ある有名エピソードの中でも殊に「屈指の名シーン」だと言われている。
特攻シーンの意味するもの
『機動戦士Vガンダム』の劇中に登場する大人達は、とかく子供達に責任を追わせがちである。
本来なら戦争を恐れ、戦闘行為を望まない様な年端もいかない少年少女達を「自分達に都合良く言う事を聞くように」育てては、最前線に連れ出して戦わせている。
そのくせ自分達がやる事は後方からのサポートばかりだったり、新兵器の開発はするが満足なテストもしないまま実戦に投入したり、世捨人の様に世を儚んで達観しているように見えるが単にやる気がなかっただけだったり、挙げ句に戦場では好き勝手に子供達に命令をする始末。
そうして社会的な責任を放棄し、都合よく適当に生き延び続けて来たダメな大人の年長者達が最後の最後になってせめてもの「贖罪」と「尻拭い」として一念発起してやった事が、このリーンホースJr.の特攻である。
その行為は、結果的に「老人達が覚悟を決め、命を捨ててでも若者達に未来を託した屈指の名シーン」となった。
2004年2月に発行された書籍『それがVガンダムだ』でも著者のササキバラ・ゴウ氏は以下の様に評している。
「状況の進行を様々な角度で描きながら、そのなかで個々人の姿を浮き彫りにしていく群像劇の演出のうまさは、富野アニメ以外ではなかなかあじわうことができない。素直に気持ちの良いものを演出してみせることの少ないVガンダムにおいて、このシーンだけは強い思い入れの加わった表現で突出している。ここまで陰鬱としたものばかりにつきあってきた視聴者にとっては大いに気持ちが盛り上がるシーンだ。」
このササキバラ氏が言う「気持ちが盛り上がる」演出については、2023年6月にFebriのWebサイトに掲載された『機動戦士Vガンダム 30年目の真実』と題した対談記事内で、『ヤマノススメ』等の作品で有名なアニメ監督の山本祐介氏が詳細に語っている。
下積み時代に『機動戦士Vガンダム』の制作に演出として参加した山本氏は、第50話を担当した時がアニメ作品でキャラクターの死を演出するのが初めだったそうで、「こんなに死なせていいのかな?」と不安になったらしく「どうせやるなら丹念にやろうと決めた」とのことで、「元のシナリオでは『みんなで突っ込んで終わり』くらいだったんですが、絵コンテで内容を盛りました。」と述懐している。
山本氏は挿入歌の『いくつもの愛をかさねて』が特効シーンに入ることはダビングの現場で知ったらしく、これは富野監督の指示によるものだと推察しており、「その効果もあって悲壮感というより散っていったキャラ達が輝いて見える、後味のいい話になったと思います。」と述べている。
恐らくは、これこそが原作者であり総監督である富野由悠季氏の狙いである。
そもそも本作は、富野監督の作品制作に対する志向とメインスポンサーであるバンダイ側が要求してくる内容の方向性が食い違い、制作時に監督が重度の鬱病を患った程の「黒富野」と「皆殺しの富野」全開作品である。
一方でそうした劇中の残酷描写を、キャラクターの臨場感溢れる演出や、モビルスーツ同士の戦闘シーンの格好良さなどで覆い隠し、アニメ作品として一定の娯楽にまで仕上げている。
主人公のウッソからして、一見すれば「正統派の良い子な万能タイプ主人公」であるが、よく見れば両親の歪んだ教育によって「大人にとって都合が良いだけの子」として育てられた犠牲者であるのだ。
母親のミューラ・ミゲルは自分の開発したV2ガンダムにウッソが乗ることを予め想定していたかのように、幼児期から彼をスパルタ教育により「戦争の道具」として調教していたし、父親のハンゲルグ・エヴィンはリガ・ミリティアの真のリーダーであり、周囲への立ち居振舞いの格好よさでホワイトアークの子供達からは羨望の眼差しを向けられるが、息子のウッソに対してはその異常拡大したニュータイプ能力に終始戸惑うばかりで「父親」としては向き合おうとはせず、地球連邦宇宙軍主力艦隊の提督であるムバラク・スターン大将から「父親として愛してやれ」と諭される始末である。
これに関しては1994年5月発行の『ラポートデラックス 機動戦士Vガンダム大事典』に収載のインタビュー記事で富野監督は「子供に親の期待を押し付けるな!」としたうえで、こう答えている。
富野監督「計画的過ぎるという意味の嫌な両親にしています。子供にとってとても迷惑な存在です。あの両親は。」
編集者「大人の責任を全うしてくれる人間がロメロ爺さん以下の爺さん連中とか、いい年のおじさんたちでしたね。」
富野監督「49話と50話のアフレコやったときなんか見てますとね感動ものです。『こいつら潔がいいよね』って嬉しくなっちゃう。僕もせめてこういう風に死にたいなあと思うもの。そういう構造にしたのは大人の憧れですね。」
つまり、このリーンホースJr.特攻は「自らの責任と罪を自覚出来た老人達だけに富野監督が与えた『特別』な潔い最期」なのである。
参考:togetter:VガンダムのリーンホースJr特攻シーンとは一体どういうシーンなのか?
所属機マーキング
リーンホース所属機には、ペガサスを象った部隊マーク(ウッソのパーソナルマークとは別デザイン)が施される。これは、「リーン(の翼を有した)ホース(馬)」という、アニメ製作スタッフのお遊びと思われる。
立体物
メガハウスの『コスモフリートスペシャル』にラインナップ。
ビームシールド展開状態のオプションパーツと5mmサイズのガンブラスター、ホワイトアークが同梱されている。
各砲塔が旋回し、カタパルトにはオーバーサイズ気味だが付属するMSのフィギュアを飾る事が可能。
だが、カタパルトハッチの開閉ギミックが採用されていないことやビームラム起動状態のオプションパーツが同梱していないなどの欠点を持っている。
ゲーム作品において
スーパーロボット大戦シリーズ
近年は出番がないが登場した際は主人公部隊の旗艦として登場することが多い。
…が、スーパーロボット大戦αで使徒イスラフェルをビームラムで倒してしまった(倒せてしまう)伝説を持つ。
これで撃破してしまった際は、作中のシナリオにおいてはリーンホースJr.の艦長としてブライト・ノア、部隊の作戦参謀として葛城ミサトが乗艦していたのだが、二人ともリーンホースでそこまでできてしまったのは予想外だったようで、
ミサト「お、お見事です、艦長…」
ブライト「う、うむ。まさか私もリーンホースJr.で使徒を倒せるとは思っていなかった…」
と、どちらも驚愕の顔グラフィックでのやり取りが行われ、エヴァに搭乗し戦闘中だったアスカやシンジも「さ、さすがは…元ホワイトベース艦長ね…」 「す、すごい…」などと呆気にとられていた。
(なお、特定の機体でイスラフェルを倒した際にはシナリオの辿るルートや隠し機体の入手にも関わってくる「熟練度」がプラスされるのだが、リーンホースで倒してしまった際も熟練度が+1される。対使徒兵器であるEVAでも問答無用の大火力で難敵を粉砕するスーパーロボットでもない、リアル系の戦艦で成し遂げただけに「偉業」扱いなのだろうか…)。
続く『α外伝』ではゴメスが乗って序盤に登場するが、ゾラへは行かなかったので、ハードルート終盤、現代のマイクロウェーブ送信施設での再登場まで登場しない。再登場後は母艦として出撃させられるが、性能的に見劣りするため出番があるかは微妙なところ。
以降しばらく出番がなかったが、『30』で久しぶりに参戦。原作と違ってカイラスギリー戦で既にこの状態。武装は原作準拠の3種類しかないが、補給可能、ビームラムの威力も健在でカスタムボーナスでさらに強化される、サブパイロットが4人いるという戦闘だけでなくサポートもこなせる優秀な艦。ゴメスのエースボーナスを取れば足も速くなるが、指揮官技能がないのが惜しいところ。コマンダーターミナルを持たせたい。なお、地味にゴメス艦長が最後まで乗っていて、さらに長期間運用できる初の作品だったりする…
Gジェネレーションシリーズ
高コストだが、ビームシールド防御可能、宇宙でも大気圏内でも出撃できる、搭載数も多いといった強みを持つ宇宙世紀有数の強力な戦艦。
ビーム・ラムがMAP兵器のため狙って当てるのが難しい浪漫兵器であることや、スピリッツ以降のMAP上で大きさの概念があるシステムでは、細長いため小回りが利かないのが欠点。
『DS』では、ライバルルートの後半で何とシーマ・ガラハウ率いる元ジオン海兵隊によって運用されることになる。艦長はなんとデトローフ・コッセル。
艦を提供したクワトロ・バジーナによると「鹵獲艦」らしいのだが、一体どこから鹵獲してきたのやら。
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機動戦士Vガンダム リガ・ミリティア 宇宙戦艦 ミノフスキー・クラフト