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「私も夢を信じるわ。だって、あなたは今日まで生き延びて来られたんだから」

「苦しかったでしょうね。でも私たちは人の能力はとても高いものだと信じているの」


CV:兵藤まこ

人物像編集

ウッソ・エヴィンの母親にして、リガ・ミリティア(以下、LM)の中心となる最重要人物である真のジン・ジャハナムことハンゲルグ・エヴィンの妻。

優秀な技術者として、LM活動初期からモビルスーツ開発・量産ライン確保に貢献した人物であり、V2ガンダムの開発者でもある。

LMを結成した中心スタッフであり、重要人物の一人でもあるため、カミオン隊のメンバーたちとも面識があり、マーベット・フィンガーハット「ミューラ先輩」と呼ぶが、戦場で戦っているLMの実戦スタッフ達にとっては理想主義が過ぎるが故に嫌われており、マーベット自身も内心では嫌悪感を持っていた。


かつてはポイント・カサレリアに居を構え、ハンゲルグと共にウッソへ英才教育を施していた。彼女の母親としての愛情は確かに本心からのものであったが、「母」であるよりも「技術者」としての面が強い性であったため、息子であるウッソへの教育に対するスタンスはハンゲルグよりもむしろ厳しいほどであった。

LMの活動が本格化するに伴い、劇中の約1年前に、当時12歳だったウッソを残して宇宙へ上がり月のMS生産工場との交渉活動などに関わっていた。

この途中、地球のNGO『宇宙引越公社(PCST)』のヨーロッパ支部(かつてのハンゲルグの職場)に宇宙への片道チケットを残しており、ウッソがカサレリアを離れざるを得ない状況において、どのように行動するかのテストの準備も同時に行っている。


あらゆる物事(子育ても含め)を理詰めでとらえる面があり、実子のウッソからも「自分を褒めるのは、子供(自分)の成長を促すための効率的な手段として行っている事」だと感じさせる程であった。

性格もかなり苛烈で、更に後述の通りテロリストとしての手腕も高い事から、LMのメンバーを含め、作中の多くの人物(敵側のクロノクル・アシャーにさえ)から母親になるべき人間ではないという評価を受けている(小説版ではアニメ版よりも更に冷酷な印象が強い)。

彼女の死が描かれる事になる第36話の冒頭では、自分の予想を遥かに超えた成長を見せた息子のウッソに対して、喜びとも悲しみとも受け取れるような複雑な心境を独白により吐露している。


「あの子は、もう私たちの子じゃないわ……私たちの子にしては、出来すぎだもの…」


こうした彼女の苛烈さは、放映から20年以上経過して(2018年)なお、ムック本の人物紹介において『人格に問題あり』と書かれる有り様であった。


劇中での動向編集

ウッソがLMにモビルスーツのパイロットとして参加する中、第30話で月面都市のセント・ジョセフにてザンスカール帝国の秘密警察に追われているところを、偶然に市内に潜入していたホワイトアーク隊のメンバーにより救出されて、息子であるウッソと再会する。

久々に息子のウッソと一晩中語り合い、彼がシャッコーで初めて戦ってからVガンダムで数々の戦闘を経験し、そしてV2ガンダムに乗り換えるまでの戦歴を聞かされて、激闘を耐え抜いてきた息子を優しく慰めつつも褒めるのだった。


しかし、第31話では叔父のクロノクルを説得しようと独断行動に走ったシャクティ・カリンがザンスカールの秘密警察に連行されてしまい、彼女の救出に向かったミューラはカテジナ・ルースが駆るMSゲドラフにより連れ去られてザンスカール帝国に囚われてしまい、モトラッド艦隊旗艦のバイク戦艦アドラステアの艦内に軟禁される。


第35話で、ウッソとオデロ・ヘンリークの二人は捕虜にした敵パイロットのゴズ・バールを利用してアドラステアに潜入し、ミューラの救出作戦を敢行する。

ウッソ達がアドラステアに潜入した時点で、既に自力で独房の見張りを気絶させて脱出していたミューラは艦内で息子達と再会を果たした。

ミューラは同じ艦内にシャクティが監禁されている事を告げると、彼女の救出を優先するようにウッソ達に指示し、彼らの持ってきたプラスチック爆弾をアドラステア艦内の各所に仕掛けて次々と爆発させ、囮となってシャクティ救出の手助けをする。

これによってシャクティはウッソ達に救出される事になったが、クロノクルにより「シャクティを人質に見せかけて逃げる」という策を見破られてしまい、ミューラ自身は再度捕らわれてしまう。


「我が子を思う、母の気持ちには敬意を表するが、母親、父親の、エゴというものは、時には子供を殺すこともあるということ、想像して欲しいものだな」


この時のクロノクルの台詞が、余りにも正論なのは何とも皮肉な話である。

救出作戦の最中、シャクティは「クロノクルを説得したいから艦に残りたい」とアドラステアから離れる事を拒んでおり、艦外に脱出した後も 「ウッソ!私が戻れば、おばさまは助かるわ!叔父様に頼みますから!」 と自分の立場を利用すればミューラを助けられると懇願するが、V2ガンダムがアドラステアの艦橋に取り付いた際に艦内のミューラの微笑みを見たウッソは救出を諦めて 「母さんは…笑ってた…!」 とだけ答えて戦場を離脱する。

しかし、ウッソはコックピット内で 「ウッソは、おばさまを助けるべきだったのよ!」 と責める様な発言をしてくるシャクティに対しては苛立ちを隠せず 「そんなことっ…僕が決めることだ!!」 と思わず怒鳴ってしまい、 「ご、ごめんね…ウッソ…」 と不用意な発言を謝るシャクティに対しては 「シャクティだって、僕たちを助けるつもりで叔父さんのところに行ったのに、僕が連れ出してきてしまった…謝らなくちゃいけないのは、僕のほうかもしれないんだ…」 と自責の念を述べていたのだが、彼にとって「母の命令」とは絶対であり、本心では逆らうことは出来なかったのである。


その後、第36話でミューラはラステオ艦隊司令のアルベオ・ピピニーデンが企てた非人道的で破廉恥極まりない策略により、ゴズ・バールのゾリディアの盾としてV2ガンダムを牽制するべく、生身のままモビルスーツの手に握られた状態で人質として利用される。

クロノクルはこの卑劣な人質作戦を良しとせず、彼から捕虜奪還を命ぜられたカテジナの執拗な妨害を潜り抜けてウッソのV2ガンダムはミューラまで近付くのだが、有効な救出手段が見つからない。

ミューラは「私の事は忘れて戦いなさい」とウッソに言い聞かせるも、ようやく会えた母をウッソが見殺しに出来るはずも無く、そして彼女を拘束していたゾリディアはV2ガンダムにより両脚を切断されて落下し、アドラステアの砲身の間に挟まり身動きが取れなくなった。

そんな状況の中、前方を走行していたバイク巡洋艦リシテアがアクシデントによりバウンドして、その後部ホイールがアドラステアの砲塔部分に激突してしまう。

V2ガンダムのビームシールドでは大質量のホイールを止められず弾き飛ばされたウッソは待避せざるを得ず、ミューラはゴズ・バールのゾリディア諸共リシテアの後部ホイールに押しつぶされてしまうという凄惨な最後を遂げた。

この僅か5分後に、地球連邦政府とザンスカール帝国の間で停戦協定が締結し、バイク戦艦アドラスアが率いるモトラッド艦隊は艦橋から白旗を掲げて去って行った。


ミューラが死んだ現場に遺されていたのは、彼女の首が詰まったヘルメットだけであり、ウッソからこのヘルメットを手渡されたマーベットは青ざめて絶句する。


シャクティ 「私のせいで…私のせいで、おばさまは…!」


マーベット 「誰のせいでもないのよ、シャクティ…そうよね、ウッソ…?」


ウッソ 「───よく、わかりません…母さんです…」


マーベット 「ウッソ…!」


ウッソ 「うっ…くっ…うぅぅ…うっ…!なんでっ…!あと5分早く戦争をやめろってぇ!!うぅぅ…」


このミューラの悲惨な亡骸を見たウッソとシャクティ、そしてホワイトアーク隊の仲間達は、その悲劇にただ涙を流す事しか出来なかった。


なお、小説版では「首が飛ぶ」ことはないものの、ウッソと再会した数日後にセカンドVのミノフスキーシールドを整備中、漏電で感電死する最期となっており、顔以外が黒こげになってしまうという、TV版に負けず劣らずな悲惨な死に様となってしまった…。


富野監督の語る「大人の責任」編集

1994年5月に発行された『ラポートデラックス 機動戦士Vガンダム大事典』に収載のインタビュー記事で富野監督「子供に親の期待を押し付けるな!」と主張したうえで、ウッソの両親については「計画的過ぎるという意味の嫌な両親にしています。子供にとってとても迷惑な存在です。あの両親は。」と答えている。

ミューラを劇中でも最初から「子供にとって、とても迷惑な母親」として描くつもりだったそうで、ミューラが初登場となる第30話では富野監督の演出と演技指導が間に合わずに他のスタッフに任せた結果、見事に失敗してしまい、途中から彼女の劇中での動向を全て変更せざるを得なくなって結局は辻褄が合わなくなり、キャラクターの性格や行動がおかしくなってしまったとのことで、これについては「母親については全部演出ミスだと思ってください。」と述べている。

上述した事情から、ウッソの父であるハンゲルグの最後は彼のズル賢さを強調するために敢えて「敵前逃亡」という情けない形に描いたと語っており、それに対して母であるミューラの死に方があの様に悲惨なのは「大人の責任を放棄して、子供に一方的な親のエゴを押し付けた報い」なのであろう。


1994年6月発行の『ニュータイプ100%コレクション 機動戦士Vガンダム VOL.2』に収載のインタビューで富野監督「親と子供の関係を描きたいのではないのです。」として「大人の世代が持つ責任と子供の世代の関係を見せたかったのです。世の中の構造が根本から変革を遂げているのに、何十年も前の価値観と理論で社会を動かそうとしてはならない、ということをね。そして個々の親子の関係というのは、そのことと密接に結び付いているのです。」と前置きしたうえで、次のように述べている。


「なぜなら、子供の問題というのは全て大人に原因がある。だから大人はよほど注意深く行動しなければならないのに、大人は子供に対してあまりに不用意な行動を取りすぎた。」

「そのうえ大人が賢くなるためのわかりやすい方法論が見えない時代になってしまった……つまり、そういう意味での親子の問題を見せたかったのです。」

「ウッソの両親が彼に施した教育、あれなんか子供から見れば、たまったもんじゃないんだよ、とね。」


『クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』において編集

長谷川裕一氏による漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』において、後にカミオン隊のメンバーとなるオーティス・アーキンズと共に『ミューラ』というサナリィの若い女性スタッフがミノフスキー・ドライブ搭載のMSであるF99(レコードブレイカー)の開発に関わっている姿が描かれているが、これがミューラ・ミゲル本人であるかどうかについては劇中でそれらしき情報は全く語られていない。

なお、本作における『ミューラ』は、女性らしい物腰の優し気な人物あり、ミューラ・ミゲルとはかなり性格が異なる。


ちなみに、『鋼鉄の7人』は、富野監督が原作や監修等に一切関わっていない非映像化作品であり、現在はサンライズが認可した「公式の漫画作品」となってはいるが、宇宙世紀の正史に漫画の内容まで全て組み込まれているかどうかまでは公言されておらず、『機動戦士Vガンダム』と『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』のミューラが同一人物なのかどうかは依然として不明のままである。


『スーパーロボット大戦シリーズ』において編集

スーパーロボット大戦シリーズの『D』でも原作同様ゴズ・バールに人質にされてしまい、アドラステアの核爆発に巻き込まれて死亡してしまう。

流石に「母さんです」のような凄惨な最期を再現する訳にもいかなかっただろうが、この回ではオリファー・イノエも戦死してしまったため、自軍部隊は悲しみに暮れてしまった。



『30』もやはりピピニーデンの作戦のために人質にされ、オリファーも自軍部隊を守るためにミューラを見殺しにし、死んで罪を償う覚悟を決めたが……


ヴァン 「見ていろ、艦長!答えってのは、二つの内のどちらから選ぶもんじゃねえんだ!」


皮肉にもそれがウィリアムに敗北したことの恐怖に囚われたヴァンの覚醒とミューラに降りかかる死の運命の回避に繋がった。

ヴァンによって救出・生存されたミューラは、無事ウッソと再会を果たすことが出来た(因みにオリファーも死なずに済んだため、恋人のマーベットとプロポーズを果たし、皆に祝福された)。

ちなみにこのときある条件を満たすと、オリファーの機体が2機目のV2になる、という隠し要素がある。


尚、ヴァンがこういった行動を起こしたのは、自分のように「誰かがいなくなるのをウッソに味わせたくなかったから」とのこと。

悲しみを乗り越え、彼はヒーローとなったのだ。あの「歌」の一節のように


関連項目編集

機動戦士Vガンダム

リガ・ミリティア Vガンダム V2ガンダム

ハンゲルグ・エヴィン ウッソ・エヴィン

 

これ…母さんです…

いけ!いけ!ぼくらのVガンダム!!


ナナイ・ミゲル(逆襲のシャア)

ミゲルという姓が同じ(ただし英字のスペルが違う)だったことから、一時ミューラは彼女とシャア・アズナブルの娘で、ウッソは孫に当たるという説が出回っていたが、これについては富野監督が公式に否定している。

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